よくある質問(FAQ)をカテゴリー別にみる

よくある質問(FAQ)をカテゴリー別にみる2023-07-20T11:42:18+09:00
栗名月とはなんですか? 今年(2024年)の栗名月はいつですか?2024-10-15T11:40:01+09:00

栗名月は、中秋の名月(十五夜)から約1ヶ月後の満月の直前、十三夜(旧暦9月13日)の月を指します。
中秋の名月(十五夜)がよく「芋名月」と呼ばれるのに対し、十三夜は「栗名月」と呼ばれます。これは、その時期に栗がとれるシーズンであることから呼ばれるものです。また別名として「豆名月」「裏名月」「後の月(『のちのつき』、あるいは『あとのつき』)」などという言い方もあります。
また、特に月を限定しないで呼ぶ「十三夜」は栗名月を指すこともあります。

栗名月は、日本独自の行事です。はっきりした起源はよくわかっていません。一説には平安時代の宮中の行事で、この時期に月見の宴を催したことから始まったともいわれています。また、たまたま中秋の名月の時期が喪に服する時期だったため、時期をずらしてこの時期にお月見を行ったことが始まりともいわれています。

現在では、中秋の名月と並んでこの栗名月もお月見を行う習慣があり、片方だけのお月見は「片見月」として、縁起が悪いとされることもあります。

今年(2024年)の栗名月は、10月15日(火曜日)です。

2023年の栗名月は、10月27日でした。
2022年の栗名月は、10月8日でした。
2021年の栗名月は、10月18日でした。
2020年の栗名月は、10月29日でした。
2019年の栗名月は、10月11日でした。
2018年の栗名月は、10月21日でした。
2017年の栗名月は、11月1日でした。
2016年の栗名月は、10月13日でした。
2015年の栗名月は、10月25日でした。
2014年の栗名月は、10月6日でした。
2013年の栗名月は、10月17日でした。
2012年の栗名月は、10月27日でした。
2011年の栗名月は、10月9日でした。
2010年の栗名月は、10月20日でした。
2009年の栗名月は、10月30日でした。


■参考資料
『ニュートン』別冊 「月世界への旅」


■関連Q&A


今年(2024年)の中秋の名月はいつですか?2024-08-27T14:10:45+09:00

今年(2024年)の中秋の名月は、9月17日(火曜日)です。

■過去の中秋の名月の日付

2023年の中秋の名月は、9月29日でした。
2022年の中秋の名月は、9月10日でした。
2021年の中秋の名月は、9月21日でした。
2020年の中秋の名月は、10月1日でした。
2019年の中秋の名月は、9月13日でした。
2018年の中秋の名月は、9月24日でした。

これ以前の日付につきましては、資料室

をご覧ください。

■将来の中秋の名月の日付

2025年の中秋の名月は、10月6日です。
2026年の中秋の名月は、9月25日です。
2027年の中秋の名月は、9月15日です。
2028年の中秋の名月は、10月3日です。
2029年の中秋の名月は、9月22日です。
2030年の中秋の名月は、9月12日です。

中秋の名月に関連してよく寄せられるご質問については、以下の「関連Q&A」をご参照下さい。


■関連Q&A


月には大気がないということになっていますが、その場合、月の地表に立てた旗がなびくということはありえますか?2024-06-11T14:14:02+09:00

もちろん月には大気がないため、月の地表に立てられた旗がなびくということはあり得ません。

アポロ11号が月面に着陸したとき、月面にアメリカ国旗が立てられられました。その時立てられた旗は風が無くてもしおれてしまわないように上辺に横棒が入っていました。
また旗を立てているときになびいているように見えるビデオが撮影されていますが、そのビデオをよく見ると、旗をしっかり立てようと宇宙飛行士が地面に旗の柄をねじ込んでいるときになびいている様に見えていることがわかります。この現象も、月には大気がないため、旗の柄の動きをダイレクトに表した結果と考えることができます。

月に立てられたアメリカ国旗については以下の資料が参考になります。
“Where No Flag Has Gone Before: Political and Technical Aspects of Placing a Flag on the Moon”
(カリフォルニア州サンタバーバラ校) [英文]
https://escholarship.org/uc/item/93t5x9dq

※月探査情報ステーションにて同じPDFファイルをダウンロードし、公開しています。

月面に立てられた旗について、政治的、技術的な解説が書かれています。


アポロ11号でアメリカ国旗を立てるオルドリン宇宙飛行士
(Photo by NASA, AS-11-40-5875)
画像をクリックすると大きな画像が表示されます(サイズ: 336KB)。


■関連ページ

月が光るのはなぜですか? 月は自分で光を発しているのですか?2021-05-26T20:39:07+09:00

月は明るく光っていますが、自分で光を出して輝いているわけではありません。太陽は自分で光を出して輝いていますが、月はその、太陽の光を反射して輝いているのです。
…これだと回答としては短すぎるので、もう少しご説明しましょう。月は地球と同じように、光を出して輝いていません。もし太陽のように、みずから光を出すほどのエネルギーを出しているとすれば、宇宙飛行士が降りて立てるほど「冷たく」はないはずです。
ところが、月は夜空に輝いていますが、その光の源である太陽の姿はありません。これは、満月のときの太陽と月と地球の位置関係を考えれば、説明できます。


満月のときの太陽、地球と月の位置関係

満月のときには、太陽、地球、月という順番で天体がならびます。つまり、太陽からの光は地球を過ぎて月で反射され、それが我々の夜の側で、満月としてみえるということになります。
さて、この図をみて「おや?」と思われるかもしれません。なぜ光が、地球を突き抜けて(あるいは、地球の影に入らずに)月までとどくのでしょうか?
月の軌道は微妙に傾いています。従って3次元で眺めると、地球の影にならずに、太陽と地球が位置している平面(黄道面といいます)から離れたところにいます。そのため、太陽の光が月まで届いて、それを我々が(夜の側で)みることができるというわけです。
ただ、もしたまたま月が満月のときに黄道面の近くにいたらどんなことになるでしょうか? そうです。地球の影に隠れてしまって月がみえなくなるわけです。この現象を「月食」と呼びます。


月食はどのようにして起きるのですか? 次に日本で見える月食はいつですか?2021-05-27T10:55:46+09:00

地球も月も、太陽の光による長い円すい形の影を持っています。月食は、月が地球の影を通過するときに起こります。
影に入るといっても、月食の間に月が全く見えなくなるわけではなく、赤っぽい色に見えます。これは、太陽光線が地球の大気によって屈折して月にあたるためです。
また、太陽と地球と月が一直線上に並ばずに、月が完全に覆い隠されない場合は部分月食と呼ばれます。

月食は満月のときにのみ起こりますが、月の地球に対する軌道面は黄道面(地球の太陽に対する軌道面)に対して約5.1度傾いているので、満月のたびに月食が起こるということはありません。月が黄道面上に来るためには、それが、昇交点あるいは降交点付近にいる必要があります。
地球から見て、月の両交点を結ぶ直線と、太陽あるいは月の方向が12度15分より大きいときには皆既月食は決して起こりません。
食の持続時間も地球と太陽と月の位置関係の違いで変化しますが、皆既の時間は最高で1時間44分です。

なお、2009年以降の月食の起きる日時は以下の通りです。(2028年まで) 時間は日本時間です。

  • 2010年1月1日 午前4時23分〜 (部分月食)
  • 2010年6月26日 午後8時38分〜 (部分月食)
  • 2010年12月21日 午後7時17分〜 (皆既月食)
  • 2011年6月16日 午前5時13分〜 (皆既月食)
  • 2011年12月10日 午後11時32分〜 (皆既月食)
  • 2012年6月4日 午後8時3分〜 (部分月食)
  • 2013年4月26日 午前5時7分〜 (部分月食)
  • 2014年4月15日 午後4時46分〜 (皆既月食)
  • 2014年10月8日 午後7時55分〜 (皆既月食)
  • 2015年4月4日 午後9時00分〜 (皆既月食)
  • 2015年9月28日 午前11時47分〜 (皆既月食)
  • 2017年8月8日 午前3時20分〜 (部分月食)
  • 2018年1月31日 午後10時30分〜 (皆既月食)
  • 2018年7月28日 午前5時22分〜 (皆既月食)
  • 2019年1月21日 午後0時34分〜 (皆既月食) ※日本ではみられない
  • 2019年7月17日 午前5時1分〜 (部分月食)
  • 2021年5月26日 午後6時45分〜 (皆既月食) 皆既 午後8時9分〜午後8時28分
  • 2021年11月19日 午後4時18分〜 (部分月食)
  • 2022年5月16日 午前11時28分〜 (皆既月食) ※日本ではみられない
  • 2022年11月8日 午後6時9分〜 (皆既月食) 皆既 午後7時16分〜午後8時42分
  • 2023年10月29日 午前4時34分〜 (部分月食)
  • 2024年9月18日 午前11時12分〜 (部分月食) ※日本ではみられない
  • 2025年3月14日 午後2時9分〜 (皆既月食)
  • 2025年9月8日 午前1時27分〜 (皆既月食) 皆既 午前2時30分〜午前3時53分
  • 2026年3月3日 午後6時50分〜 (皆既月食) 皆既 午後8時4分〜午後9時3分
  • 2026年8月28日 午前11時34分〜 (部分月食) ※日本ではみられない
  • 2028年1月12日 午後0時44分〜 (部分月食) ※日本ではみられない
  • 2028年7月7日 午前2時9分〜 (部分月食)

なお、時間は月食の開始時間で、月が完全に欠ける時間とは異なります。


■参考資料


日本で月の石を見ることができますか?2018-01-01T13:29:27+09:00

日本で月の石を見ることができる場所の代表しては、東京・上野の国立科学博物館です。ここには、アポロ11号とアポロ17号により持ち帰られた月の石が展示されています。

また、北九州にあったスペースワールドでも、NASAから月の石を長期にわたって借りて展示していましたが、2017年12月31日をもって閉園となりました。従いまして、2018年1月現在、日本で月の石を(常設で)みられる場所としては、上記、国立科学博物館だけということになります。


■参考ページ

月の内部が空洞であるということは絶対にないのでしょうか?2023-07-10T10:02:39+09:00
<2017年11月17日更新>
先日、日本の月探査機「かぐや」のデータにより、月に空洞が発見されたというニュースが流れ、本Q&Aに関しても「巨大な空洞があるではないか」というお問い合わせを頂いております。
本Q&Aにおける「巨大な空洞」の意味は、月の内部、すなわちコアやマントルに相当する月の奥深くの部分が空洞であるということがない、という意味です(全文をお読みいただければこの点についてお分かりいただけるかと思います)。
ただ、上記の成果を報道した記事の多くが「月に巨大な空洞を発見」といった内容で「巨大」「空洞」という言葉を使用していました。そのため、大変紛らわしいことになってしまっているように思います。
この状況を受けまして、本Q&Aについても記事内容を抜本的に見直し、現状に即してよりわかりやすい内容にしていきたいと思います。現在まだこの「月に空洞が発見された」というニュースについての月探査情報ステーションのブログ記事を執筆中です。これが執筆でき次第、本Q&Aの文章を見直し、最新の成果に即した形にしていきたいと思います。
皆様におかれましては紛らわしい部分が残ってしまい申し訳ありませんが、今しばらくのご辛抱をお願いいたします。

まず、我々はドリルで月の中心まで穴を掘ったわけではありませんので、「絶対に」空洞であるということはまずいえないと考えてよいでしょう。但し、月の内部が空洞である可能性は、科学の視点からみて極めて低いということはいえます。
理由はいくつかありますが、最大の理由は、「慣性能率」と言われるものです。慣性能率は、月や地球が自転するときに、その回転の大きさを表したものです。物体の中身の様子によって、回転の仕方が変わってくることは日常的にもよく経験することです。

さて、地球や月などの天体も自転しています。従って、慣性能率という値を持つことになります。実際には、この慣性能率の値を半径の2乗と質量とで割った値(慣性能率比)を使って、天体の自転の様子を表すことが多いのです。この値は、内部が均一になっているときに0.4という値になります。内部に重たいものが集中しているほどこの値は小さくなります。逆に、中に行くほど軽い(空っぽの場合も含めて)場合には、0.4を上回ります。

アポロなどが測定した月の慣性能率比の値は、0.389となっています。この値は、他の探査機などでも確かめられており、かなり信頼性が高いと思われます。この値を信用すれば、月の中身が空っぽである(あるいは、中に行くほど軽い)ということはあり得ないことになります。
もう1つ、やや間接的ですが、月の内部に起きている地震(月震)の存在があります。今のところ、月震の中には深発月震と呼ばれる、深さ800~1100キロメートルで起きる地震があることがわかっています。そこで、この深さには地震を起こすような物質があり、その深さより上には、地震波を伝えるような物質(=固体)があることは間違いありません。
地球でも「地球空洞説」が唱えられたことがありますが、地震波の伝わり方などの証拠により、現在ではほとんどの科学者が否定するところとなっています。月についても、内部が空洞ということはまず考えられないといってよいでしょう。

■関連Q&A

これまでに、月で何か変わった現象が観測されたということはありますか?2021-05-26T20:46:47+09:00

月の表面が光ったり、煙が出たり、色が変わったりする—といったような異常な現象が、これまでにも時折観測されています。このような現象を、月の一時異常現象(TLP: Transient Lunar Phenomena)といいます。

TLPは短い場合には1秒程度、長い場合には1日以上にわたって観測されることがあります。また、TLPが起きる場所には特徴があり、特に海と高地の境界付近で起こることが多いことがわかっています。また、TLP全体の60パーセントはアリスタルコスクレーター、アルフォンススクレーターなど7地点に集中しており、特に全体の30パーセントがアリスタルコスに集中していることがわかっています。

ただ、実際にはTLPと見間違えるにはいろいろなものがあると考えられています。たとえば、

  • 観測者が影のある地形を観測することが多いため、明るいところなどをTLPとして報告してしまう。
  • 夜の部分にある山の頂上が太陽光によって照らされてしまい、それをTLPと勘違いする。
  • 月の前面を通過した人工衛星などをTLPと見間違える。

などが考えられています。しかし、アリスタルコスやアルフォンススなどでよくみつかるTLPは、月の内部構造などに関連したものであると考えられています。実際、月で起こる地震(月震)の震源の位置とTLPが起こる場所とは関係があるという研究結果もあります。


このFAQ回答は、次の論文を参考にしています。
柳澤正久(電通大)、月の異常現象、「遊・星・人」(日本惑星科学会誌)、vol.6, No. 3,1997


■関連Q&A


月がいちばんきれいにみえるのは何月ですか?2016-12-31T14:50:19+09:00

美しさは、科学的な解釈とは異なり、個人個人の主観が入ります。そのため、ある人が「この季節はきれい」と言ったとしても、別の人はそうは思わない、ということがあるかと思います。

一般的に、月がいちばん美しくみえるとされているのは、やはり中秋の名月の頃、秋(9月~10月)くらいです。この季節は雨などが定期的に降るため、空気中のちりが洗い落とされ、澄んだ空気の中で月がみえるということも影響していると思います。
また、冬の季節は空気が澄むために星がみやすいのですが、やはりこの季節も月をみるにはいいシーズンでもあります。ただ、寒さの問題から、あまり長時間外で月をみるのは辛いと思います。

これに対し、春は春がすみや黄砂などの影響で視界が落ちることが多く、はっきりとした月はなかなかみられません。また、夏も天体観測の季節でもあるのですが、この時期は大気中の湿度が多いこともあり、ややぼんやりとみえることが多いようです。
やはり月を眺めるとすると、先人の教えもありますが、中秋の名月の時期がいちばんおすすめのようです。
ただ、「おぼろ月夜」などという言葉の通り、おぼろげに見える月も美しいとされて愛でられてきた伝統はあります。その意味では、どのような季節であっても、月はその季節なりの美しさがあるといえるでしょう。


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月と地球の間でエネルギーを伝送するためには、どのような技術があるのでしょうか。たとえば、月と地球の間にケーブルを結んで、エネルギーを伝送することは可能なのでしょうか?2016-12-31T14:49:24+09:00

地球と月とをケーブルで結ぶ場合、大きな問題になるのはその重量です。強度を保つためには非常に強い物質が必要になります。

同じように、長いケーブルを使った宇宙構造物として、軌道エレベータがあります。これは、静止衛星と地表を結ぶために構想されているものです。軌道エレベータはせいぜい36000キロメートルですが、月までは38万キロメートルもありますので、それよりもはるかに強度が強い物質が必要です。
しかも、軌道エレベータも、まだ我々の技術では作ることが難しいとされています。それほど強度が強い物質を、大量に、しかも安価に作ることは困難だからです。
それに、距離が長くなればなるほど、電気抵抗が問題になります。超伝導物質でない限り、これだけ長い距離で電力をケーブルで送ることは現実的ではなさそうです。
月にエネルギーを送る、あるいは月からエネルギーを送るためには、レーザー光かマイクロ波を使うのがよいと思われます。また、地球から月への軌道上にいくつかの中継衛星を置き、エネルギーや通信を中継するというアイディアもあります。

月面でのエネルギー伝送については、レーザー光を使って、月の裏側に電力を送り込む可能性について検討が行われたことがあります。しかし、このような方法は理論的には可能ですが、月面上で着陸機やローバなどを運用するためには、今よりも効率がはるかに高い太陽電池が必要になりますので、今すぐ実現できるというわけではありません。

月の夜の間もローバーや着陸機を動作可能にするためには、1つのアイディアとして、昼の間に発電した電力を夜に利用する、というものがあります。再生型の燃料電池や、高効率の蓄電池などが検討されています。
通信を目的として、月の周りに衛星を打ち上げるという考え方もあります。月の裏側を常にみられる位置にあるような十分に高い軌道上に衛星を打ち上げ、月の裏側と通信を中継することは可能です。

かぐや」でも、月の裏側から地球への通信を中継する「リレー衛星」を使いました。これと同じようにして、通信やエネルギーを中継する衛星は、将来的に月の裏側での活動を保証するために必要となるでしょう。


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月に衛星が7つあるという話を、小学校のころ聞いたのですが、本当ですか?2016-12-31T14:47:44+09:00

月自体は地球の衛星です。その月にさらに衛星が7つあるということはないようです。

アポロから今までに、月にいろいろな探査機が飛んで、月周辺を含めていろいろな写真を撮影しています。当然、衛星があれば何らかの形で写真にとられたりするはずですが、そのような報告は今のところありません。
通常、衛星がある場合には、地上からの観測や、惑星本体の運動への影響などから、衛星があると推測されるのですが、月ではそのような報告もありません。

そういったことから、どうやら「月に7つの衛星がある」ということは、残念ながら(?)ないと思われます。

隕石は月にどのくらい頻繁に衝突するのでしょうか? 月のまわりを飛ぶ衛星には危険はないのですか?2016-12-31T14:46:45+09:00

アポロが測定した月の地震(月震)のデータのうち、隕石の衝突はかなり明確に区別できました。他の月震と比べてかなり大きかったからです。
月震全体のうち、隕石の衝突によると思われるものは、全体の15パーセント程度です。数でいいますと、7年間に隕石の衝突と判明したものは、1743個になります。
実際には、アポロの月震計は月の表側の一部に集中して設置されていますので、月面全体に落下する隕石の数は、これよりはるかに多いことは間違いありません。また、アポロの月震記録の中にも、隕石の衝突かどうかわからない(そもそも、どういう種類の月震かわからない)ものが6割以上を占めていますので、この中にも隕石の衝突による月震が混じっている可能性が高いと思われます。

落下してきた隕石の大きさは500グラムから50キログラム程度と考えられています。
これは、確かに人工衛星などに当たるとかなり危険ですが、実際にはその確率はかなり小さいと考えられていますので、まず心配はいらないと思います。
月は地球の回りのように、人工衛星のゴミ(スペースデブリ)でいっぱいというわけではありませんので、その意味でもまだ安全と考えてよいでしょう。

ただ1つ問題が起きるとすれば、流星群のように一時的に隕石の量が増えるときです。
実際、月震の観測でも、流星群が地球に近づいたとき、隕石の落下が増えたという報告があります。地球も月も流星群からみれば同じような位置にありますから、地球が流星群の真っ只中にいるときには、月にも流星群(つまり、ごく小さな隕石)が降り注いでいることになります。

さらに、月には大気がありませんから、小さな隕石でも高速でぶつかってきます。これは衛星にとって脅威になる可能性があります。将来、月の上空に人工衛星を打ち上げるときには、こういった流星群への対策が必要になるのではないでしょうか。


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月の自転周期と公転周期はぴったりと一致していて、常に同じ面を地球に向けていますが、これは他の惑星や衛星にもよくあることなのでしょうか? 単なる偶然なのか、それとも、物理学的にそうなりやすい理由があるのでしょうか?2016-12-31T14:45:38+09:00

太陽系内の天体は、軌道運動力学的(太陽の周りを回る上での力学的な性質)にいくつかの規則性を持っています。
例えば、一つの天体の公転周期と自転周期が簡単な整数比で表される場合があり、そのことを「尽数(じんすう)関係にある」といいます。
尽数関係という言葉は、2つ以上の天体の公転周期などが簡単な整数比で表される場合にも使います。

月の場合には、公転周期と自転周期の比は1:1の尽数関係になっています。つまり、自転周期と公転周期が、まったく同じなのです。
そのため、月は地球に対していつも同じ表側を向けています。
その他に、木星のガリレオ衛星(イオ、エウロパ、カリスト、ガニメデ)もまた公転周期と自転周期が1:1になっています。

このような尽数関係は、すべて潮汐力の結果と考えられています。
たとえば、月の場合、地球の重力によって月はわずかながら変形します。この力は潮の満ち引きを起こす力と同じであって、そのため潮汐力と呼ばれています。
西洋なしのように変形した月が公転周期よりも早く自転していると、地球重力は自転にブレーキをかけるように働きます。逆に月が公転周期よりも遅く自転していると、地球重力は自転に加速をかけるように働きます。
このような力の作用により、最終的に公転と自転が同じ周期を持つ状態に必ず落ち着きます。


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月の公転、自転について教えて下さい。2016-12-31T14:42:50+09:00

まず、公転の定義をはっきりさせておきましょう。
月が太陽の周りを回転することを指す場合には、単に「公転」ということにします。
次に、月が地球の周りを回転することを指す場合には、「地球−月系の公転」ということにします。

はじめに、太陽系形成過程のあらましをみてみましょう。
太陽系は、銀河系内空間に漂うガスと固体微粒子からなる星間雲(地球の雲を想像して下さい)から作られます。
我々の太陽系は、もともと回転していた星間雲が46億年前に収縮を始めました。その結果、中心に太陽が生まれ、太陽の周りにはガスと固体微粒子が円盤状に取り巻いて太陽の周りを回転(公転)しています。固体微粒子は、やがて微惑星という半径10キロメートルほどの惑星の卵に成長します。
微惑星は、互いの重力で引き合うことによって衝突合体し、現在の惑星や衛星になりました。

惑星が作られる過程を通して、もともと星間雲に含まれていた固体微粒子の回転(公転)がそのまま保存されるため、固体微粒子から成長した惑星や衛星は太陽の周りを公転しているのです。
ですから、月の公転も月を作った固体微粒子の公転が保存されたためなのです。

次に、月の月−地球系の公転や月の自転は、月の形成(起源)に関わる重要な問題です。しかし、月がどのようにして形成されたか、よくわかっていないため、現在の月の月ー地球系の公転や自転の起源について詳細に答えることはできません。

月の形成については、次のような仮説が提案されています。

  • 月は地球に捕らえられた天体である(捕獲説)
  • 月は地球からちぎれて作られた天体である(分裂説)
  • 月は地球と一緒に作られた天体である(双子説)
  • 火星サイズ の天体と地球との衝突によって作られた天体である(巨大衝突説)

いずれの仮説も一長一短があり、どれが正しいのかは今後の研究を待たなければなりません。
特に、 月形成の仮説を検証する新たな観測結果が待ち望まれています。「かぐや」をはじめとする月探査によって得られたデータの解析が進むことで、月の形成に関する有力な情報が提供されると期待されています。


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月の裏側にはなぜ海が少ないのですか?2016-12-31T14:41:08+09:00

月の裏側に海が少ないことは、月周回衛星による月探査によって明らかにされました。
これらの月の画像データから、月の表層が、玄武岩が噴出した海の面積の広い表側と、斜長岩からなる裏側に大きく二分されることがわかります。

一方、月の地殻の厚さに注目したとき、表側と裏側では違います。このように、月の表側と裏側の地形の違いは、横方向の月の内部構造にも密接に関連した問題である考えられています。
この問題は月の二分性といわれ、月の進化におけるもっとも基本的な問題の一つです。しかし、月の二分性がなぜあるのかということについては、現在まだよくわかっていません。
これからの月探査でさらに月について調べていくことが必要といえます。


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月の内部はどのような構造になっているのでしょう? 地球と似ていますか?2016-12-31T14:39:25+09:00

月の内部構造は、地球の場合と同じ方法で調べることができます。
そのうちもっとも有効なのは、月の地震波(月の地震を月震といいます)の伝播を調べる方法です。そこで、アポロ計画では月に月震計が設置され、月震の観測が行われました。
これらの月震データから、月内部には、地球ほどはっきりとはしないものの、いくつかの層構造が存在することがわかりました。

表層から深さ60キロメートルまでの層が、月の地殻です。ただし、60キロメートルという地殻の厚さは、地震計の置かれた場所(月の表側の海)の厚さを表すものであって、これが月の地殻の代表的な厚さを表すものではありません。
実際、その他の観測(重力分布等)から、地殻の厚さが場所によって変化していることが推定されています。特に、月の裏側では地殻の厚さが100キロメートル以上もあると考えられている一方、最近の「かぐや」などの観測で、東の海(オリエンタル盆地)では厚さが4キロメートル程度という場所もみつかっています。

深さ60〜300キロメートルの層は、月の上部マントルといわれ、地球の上部マントルに似た組成を持っていると考えられています。
深さ300〜800キロメートルの層は、月の中部マントルといわれ、月をつくった始原物質であると考えれています。

深さ800キロメートル以深の内部構造はよくわかっていません。深さ1300〜1500キロメートルより浅い層は、月の下部マントルで部分的にせよ溶融状態にあると考えられています。それより深い層(すなわち半径400〜200キロメートル)は、核があると考えられています。

最後に、地球との違いをみていきましょう。
地球の表面は厚さ10~30キロメートルくらいの、岩石でできた地殻に覆われています。その下はマントルと呼ばれる、岩石質の厚い層になります。その下は、液体の金属(鉄やニッケル)などでできた外核と呼ばれる部分、その下は同じく金属ですが、固体でできている内核になります。
なお、よく「地球の中心はマグマですか?」という質問を受けますが、地球の中心は内核ですので、マグマ(これは、火山などから噴出する、溶けた岩石の総称になります)ではなく、金属でできていることになります。


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月の裏側はどういうふうになっているのか教えてください。映像や説明が欲しいです。2023-07-10T10:02:39+09:00

まず、月は確かにいつも同じ方向を向けていますが、これは月が自転していないためではありません。
実際のところ、月も自転はしているのです。しかし、その自転周期は月が地球を回る公転周期と同じなため,地球から見たときいつも同じ面を向いているように見えるのです。

さて、月の約半分は地球から見えないわけですが(約半分というのは、月と地球の微妙な動きによって実際にはちょうど半分よりもう少し広い範囲を見ることができるためです)、裏側の様子は月探査のかなり早い時期に写真にとらえられています。1959年にソ連が打ち上げたルナ3号が初めて月の裏側を撮影しました。このため月の裏側にある地形の名前は「モスクワの海」などロシア系の名前が多いのです。
その後、いろいろな探査で月の裏側について調べられています。その結果、裏側は表側と比べて海と呼ばれる暗い地域が極端に少ないことなどがわかってきました。
しかし、アポロ計画で宇宙飛行士が着陸したのは月の表側だけですから、まだまだ裏側については詳しいことはわからないままです。これからの月探査でさらに月の裏側について調べていくことが必要とされています。

ルナ3号により撮影された月の裏側

旧ソ連の探査機、ルナ3号が世界ではじめて撮影した月の裏側の写真(1959年10月7日、距離63500キロ)。
出典: http://solarsystem.nasa.gov/multimedia/display.cfm?IM_ID=386, Photo: NSSDC Photo Gallery

 

ガリレオ探査機が撮影した月の裏側

木星探査機ガリレオが、木星に向かう途中で撮影した月の裏側。
出典: http://solarsystem.nasa.gov/multimedia/display.cfm?IM_ID=2091, Photo: NASA/JPL

 

火星探査機「のぞみ」が撮影した月の裏側

日本の火星探査機「のぞみ」が撮影した月の裏側の画像
出典: http://www.stp.isas.jaxa.jp/nozomi/MIC/0925_j.html
Photo: ISAS/JAXA

 

ルナー・リコネサンス・オービターのデータによって作成された月の裏側の図

ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)の画像から作成した月の裏側全球図。LROカメラで撮影された15000枚以上の画像を合成して作られている。
出典: http://solarsystem.nasa.gov/multimedia/display.cfm?IM_ID=11823
Photo: NASA/GSFC/ASU


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なぜ、月の重力は地球の6分の1なのですか?2016-12-31T14:28:22+09:00

まず結論から言ってしまいますと、理由は、「月の大きさが地球の4分の1で、重さが約100分の1だから」ということになります。しかし、これではあまりにも簡単過ぎますので、せっかくですので計算してみることにしましょう。
なお、ここから先は、高校の物理で習う内容が含まれていますので、やや難しくなります。

まず必要になるのは、ニュートンの第2法則です。これは、「物体が受ける力は、物体の重さと加速度をかけたものになる」というものです。言葉で書くと難しそうですが、いま、力の大きさをF、重さをm、加速度をaとしますと、式としては簡単で、

F=m×a

となります。1キログラムの重さのものを、毎秒1メートルずつ加速する加速度で加速してやるための力は、1ニュートンといいます。

もう1つは、「万有引力の法則」です。これも言葉で書くと難しいのですが、「物体同士が受ける力は、互いの質量に比例し、距離の2乗に反比例する」というものです。これも式で書きますと、質量mと質量Mという、2つの物体が距離Rだけ離れていたとき、互いに働く引力の強さFは、

F=G×M×m÷R÷R

となります。
ここで出てきたGという数は、「万有引力定数」という、決まった数(定数)です。

さて、月の「重力」と私たちはよく言っていますが、これは、月と私たちの間に働く引力ということになります。私たちが地球の表面で、地球に引っ張られているように、月の表面にある物体も、月の引力を受けて引っ張られています。この引っ張られている力は万有引力にあたります。仮に、ある物体を月に持って行ったとして、そこに働く引力は、

月の引力=G×(月の質量)×(物体の質量)÷(月の半径)÷(月の半径)

となります。同じ物体を地球に持って行った場合、地球上での引力は、

地球の引力=G×(地球の質量)×(物体の質量)÷(地球の半径)÷(地球の半径)

さて、上で2つの式が出てきましたが、両者の比をとってみることにします。

  月の引力     G×(月の質量)×(物体の質量)÷(月の半径)÷(月の半径)
------------=------------------------------------------------------------
 地球の引力    G×(地球の質量)×(物体の質量)÷(地球の半径)÷(地球の半径)

式をみてみると、Gと「物体の質量」は、分母と分子で同じですから打ち消しあい、

  月の引力        (月の質量)÷(月の半径)÷(月の半径)
------------=------------------------------------------
 地球の引力    (地球の質量)÷(地球の半径)÷(地球の半径)

となります。さて、「理科年表」などの資料を見てみますと、月の質量は地球の0.0123倍となっています。また、地球の半径は6378キロメートル、月の半径は1738キロメートルとなっています。
これを、上の式にあてはめてみます。

  月の引力        0.0123÷1738÷1738
------------=-----------------------=0.16594...
 地球の引力         1÷6378÷6378

ほぼ、0.16倍ということになります。6分の1は0.1666….となりますので、大体、6分の1と考えてよい値です。

高校で習う物理の内容ですので、やや難しいかと思いますが、ぜひチャレンジしてみてください。また、「理科年表」を参考にして、他の惑星と比べてみるのも面白いと思います。

天体はどうして丸いのですか?2023-07-10T10:02:39+09:00

実は、太陽系全体で眺めると、必ずしも丸い天体ばかりではないのです。
下の図は、日本の小惑星探査機「はやぶさ」がとらえた、小惑星「イトカワ」です。大きさがさしわたし約540メートルの天体ですが、ごらんの通り、球形とはほど遠い、ラッコというか枝豆というか、ちょっと変わった形の天体であることがわかります。
ほかにも、私たちが知っている小惑星の中には、球形ではなく、不規則な形をした天体が多数あります。
小惑星ばかりではありません。衛星などの中にも球形ではないものがあります。火星の衛星フォボスとデイモス、土星の衛星などにも、球形ではないものがあります。

イトカワ

日本の探査機「はやぶさ」が捉えた小惑星イトカワ
(はやぶさサイエンスデータアーカイブより。ST_2422969200。
2005年10月1日撮影。© JAXA)

このように、球形ではない天体には1つの共通点があります。いずれも小さいということです。
天体は、太陽系を漂っている岩のかけらなどが少しずつ集まってできたと考えられています。物質には重力があります。物質が集まってくると、それ自体が重力を持ち、内部(重心)に向かって引っ張ろうとする力が次第に強くなります。
小さい天体の場合、その重力が小さいため、物質自体の強度が重力よりも強く、重力によりつぶされることがなく、それ自体の形を保ち続けます。しかし、ある程度物質が大きくなると、重力の方が上回るようになります。
重力が、天体の中心に向けて均等に働くようになると、中心に向かって平均して同じ力が働くような形になってきます。その形が球形なのです(中心から等しい距離の形になる)。

では、どのくらいの大きさの天体が、丸くなるかならないかの限界なのでしょうか。これは、内部を構成している物質によっても変わりますが、だいたい直径300キロが1つの境目ではないかと考えられます。たとえば、木星の衛星アマルテアはさしわたし260キロですが、形はいびつです。一方、土星の衛星ミマスは直径380キロですが、球形です。
このあたりが、球形になるかならないかの境目ではないかと考えられます。

木星の衛星アマルテア

木星の衛星アマルテア。長い部分のさしわたしは約260キロメートル。
(出典: NASA Planetary Photojournal, PIA02531. Photo: NASA)

 

土星の衛星ミマス

土星の衛星ミマス。球形であることがわかる。
(出典: NASA Planetary Photojournal, PIA08842. Photo: NASA/JPL/Space Science Institute)

月の中心部にも鉄の核があるのですか?2016-12-31T14:04:56+09:00

今のところ、月の内部構造については、大まかなことしかわかっていません。それによると、月も地球のように、「地殻」「マントル」「コア」に分かれていると考えられています。
このコアについては、おそらく地球と同じように、鉄(鉄とニッケル)でできていると考えられています。
しかし、そもそもコアがあるかどうか、という点についても、科学者の間では完全な意見の一致をみていません。アポロ計画における月震の解析結果では、コアがあるという考え方が有力にはなりましたが、完全に説得力がある証拠は提示できませんでした。1998年のルナー・プロスペクタ計画では、軌道の解析などから、月の内部に重い物質でできたコアが存在する可能性が高いことがわかってはきましたが、大きさについては半径が200〜600キロの範囲と、あまりはっきりと同定することはできませんでした。

以前計画されていたルナーA計画では、月震を測定することで月のコアの存在を確かめる予定でした。「かぐや」では、搭載されている重力測定のための装置で、月の内部構造について明らかにできると期待され、現在解析が進められています。
また、ロシアが2012〜2013年に打ち上げる予定の「ルナグローブ」探査機では、12本のペネトレータを搭載して、月の内部構造を探る計画になっています。私たちは近いうちに、月の内部にコアがあるか、あるとしてどのくらいの大きさなのかを知ることができるでしょう。


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月にも、地球上のような鉱物資源はあるのでしょうか? 鉄やアルミ、ケイ素などがあるのでしょうか?2016-12-31T14:03:00+09:00

月にも鉱物資源は存在します。
月の表面はおよそ10〜1000マイクロメートル[注]の範囲の細かい粒子(レゴリス)で覆われています。
月のレゴリスの主要鉱物は、

  • 輝石
  • 斜長石
  • カンラン石
  • チタン鉄鉱

であり、これらの鉱物が地域により様々な構成比により存在しています。

例えば、月の高地と呼ばれる地域では斜長石が比較的多く、海と呼ばれる地域ではチタン鉄鉱が豊富です。
これらの鉱物は、鉄、アルミニウム、ケイ素、チタン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、酸素などの元素により構成されています。すなわち、鉄やアルミ、ケイ素などは上記に代表される鉱物の形で、しっかりと月に存在しています。

しかしながら、月では、地球上のようにある元素が極端に濃集した「鉄鉱石」や「ボーキサイト」、「水晶」などの塊はほとんど存在しません。

その理由としては第一に、

月は地球のように豊かな水や大気、生物に取り囲まれていないため、地球上で多くみられるたい積系の鉱床(河川や風により生成される鉱床)や生物系の鉱床 (生物の排泄物や死骸などにより生成される鉱床)が成立する環境にないこと

が挙げられます。
第二に、

月では地球のようなプレート運動がないため、マグマ系の鉱床が地表近くに現れる機会も極端に少ないこと

がその原因といえます。

さらに、月表土は何十億年もの間、激しい隕石の衝突にさらされてきたので、月の表面を覆っている鉱物は激しく砕かれ、攪拌されており、それが濃集を妨げる要因となっています。
月には地球と同じような元素が豊富に存在していますが、地球と比較するとそれらが極めて均質にちりばめられていることが大きな特徴といえます。


[注]1マイクロメートル=100万分の1メートル=1000分の1ミリメートル
満月や三日月のような、月の名前には他にどのようなものがあるのでしょうか?2023-07-20T11:32:06+09:00

日本では昔から、月にいろいろな名前をつけてきました。
その中でも有名な呼び名について、月齢順にご紹介してきます。

  • 三日月…月齢3日前後の月。
  • 上弦の月…半月(月齢7日前後)。
  • 待宵の月…月齢(陰暦)14日の月。満月の1日前。翌日の満月を楽しみに待つという意味。
  • 満月…月齢15日の月。
  • 立待月(たちまちづき)…月齢(陰暦)17日前後の月。
  • 居待月(いまちづき)…立待月の翌日、月齢(陰暦)18日前後の月。
  • 寝待月(ねまちづき)…居待月の翌日、月齢(陰暦)19日前後の月。
  • 下弦の月…月齢22日前後の月。

ところで、「立待」「居待」「寝待」と続く月の名前ですが、これは、満月やその翌日の月が見えない場合に、まず立って待ち、それでもやはり見えなければ座って待ち、それでも見えなければ寝て待つ、という、月を待つ人々の心情を表わした言葉だそうです。
(また、「立待」は立って待っている間に、「居待」は座っている間に月が出、「寝待」は寝ていないと(相当遅くならないと)月が出て来ない、という説もあります)。


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月齢の見分け方を教えて下さい。2016-12-31T13:52:25+09:00

月齢を見分けるには、いくつかの方法があります。

1. 今日の月齢を知る

まず、すでにご存じとは思いますが、本サイトの「今日の月」ではその日の月齢を写真とともに見ることができます。また、たいていの新聞にはその日の月齢が日没などの時間とともに書かれています。

2.任意の日の月齢を知る

「天文年鑑」や「理科年表」などの書籍を見ると、その年一年分の毎日の月齢が書かれています。また,最近はウェブサイトで月齢を計算してくれるところもあるようです。Yahoo!JAPANやGoogleなどの検索サイトで探してみて下さい。

3.月を見て月齢を知る

まず、月の満ち欠けは以下のようになっていることを覚えて下さい(カッコ内が月齢)。
新月(0) →上弦の月(1-14) →満月(15) →下弦の月(16-28) →新月(0)

また、上弦、下弦のそれぞれ半月は月齢7と21です。
さて、新月と満月は見ればすぐにわかりますね。普段の欠けているいる月が上弦なのか下弦なのかは月の右と左のどちら側が欠けているのか、また いつ、どこに見えるのかで区別できます。
簡単にいうと、夕方西の空に見えたり、夜半には沈んでしまう月は上弦、逆に夜半以降昇ってきたり、明け方東の空に見える月は下弦です。
また、月を真南に見たときに、左側(東側)が欠けているのが上弦、右側(西側) が欠けているのが下弦の月です。
あとの月齢は月の形を見て、だいたいの月齢を考えてみて下さい。基本的に、月齢は一日1進むのですから、三日月や半月を思い浮かべて、そこから何日ぐらい進めば(もしくは戻せば)いま見ている月の形になるか、考えればいいのです。

月が東から昇って西へ沈む理由を教えてください。2016-12-31T13:49:35+09:00

月が東から昇って西へ沈む理由は、太陽のそれと同様です。
月や太陽だけではなく、地球上で観測される天体はすべて東から西へ移動するのですが、これは地球の自転によって天体がこのように動いて見えるためです。

地球の自転によって天体が動いて見えるため、赤道付近と南極や北極では天体の動き方が大きく異なります。
赤道付近ではほぼ真東から昇り真西に沈みますが、極地ではほぼ真上を中心に天体がぐるぐる回るように動きます。極地では夏に太陽が月の地平線すれすれに動いて沈まない「白夜」という現象が現れます。このときには月も沈むことはありません。

午後3時ごろ出る月の呼び名を教えて下さい。2016-12-31T13:46:15+09:00

月にはいろいろな名前がつけられています。その多くはこのサイトでも紹介している「月齢」すなわち、月の満ち欠けに因んだものといえます。
新月から2~3日たった細い月のことを指す「三日月」、それが半月に育った「七日月」(上弦の月)、お盆のような「満月」、それが欠けていく過程の「二十三夜」(下弦の月)など、月齢に応じた呼び名はこのほかにも多数あります。
紙の上に太陽と地球と月を描いてもらえればすぐに理解していただけると思いますが、月の満ち欠けはこの三天体の位置関係により定まるものであり、「月の満ち欠け」と「月の昇る時刻」は密接に関係しています。

午後3時頃出る月ということですが、出るという表現を「出現する」、すなわち「東の空に昇る」と解釈すると、概ねの月齢が推定できます。
午後の3時頃に月の出(東の空から月が昇る)の時刻を迎えるのは月齢12~13頃の月で、「十三夜」などと呼ばれるのが一般的です。
太陽が西に沈み始める頃、太陽と交代するかのように東の空に昇ってくる月、上弦の月が膨らんだやや満月に満たない月がこの「十三夜」に相当し、満月に次いで美しいと表現されることもあります。まさにこれから満ちようとする縁起の良さも「美しい」とされる理由の一つでしょう。

夕方に見える月は「夕月」と呼ばれますが、これは一般的に夕方西の空に見える「三日月」を指すものです。
また、昼間に見えている非常に薄い月を「昼の月」と呼ぶこともあります。
その他、日が暮れてからしばらくすると、ためらい(いざよい)ながら昇ってくる、満月をやや過ぎた月が「いざよい」(十六夜)と呼ばれているあたり、月の呼び名に込められた叙情的要素を深く感じることもできます。


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10月のある日の夜明け頃、真南の空に月が見えました。このときの月の形はなんというのでしょうか。2016-12-31T13:48:29+09:00

お住まいの地方の月と太陽の状況を調べてみると、月の南中時刻と日の出の時刻が最も接近していたのは10月21日でした。

この日の月齢は23で、「下弦の月」「下の弓張」などと呼ばれます。この日、夜半過ぎに月待ちをすると願い事が叶うと伝えられることから、皆が集まって供物を備え、飲食やおしゃべりをしながら月の出を待つ「二十三夜待ち」という風習が生まれました。
真夜中に月が出ることから、「真夜中の月」と呼ばれることもあります。また、静岡県富士郡では、「二十三夜の月を拝んで寝ると病気にならない」という言い伝えもあるそうです。

雲がない状態のとき月の周りにボゥと円がでていました。どういう現象で、どういう時に起こるものなのかおしえてください。2016-12-31T13:48:18+09:00

ご報告の「月の周りにボゥと円がでている」様子は、「月の暈(かさ)」と呼ばれる現象と推定されます。
「月の暈」は空にある氷の結晶の中を光が屈折しながら通り抜けることによって月の周りに円形が出る現象をいいます。

俗に「月にかさがかかると雨が降る」と言われますが、これは温暖前線や低気圧が近づくと上空に暖かい空気が入り、絹(巻)層雲(けんそううん。氷の粒でできた雲)ができて、そこに月の光が反射する状態を表現しているものといえます。
大気の特定の部分と月との位置関係は刻々と変化するものですので、同じ場所にいても「月の暈」はそう長く続かないのが一般的といえます。

月・地球・太陽の赤道での自転の速さと公転の速さについて教えて下さい。2016-12-31T13:45:07+09:00

まず、それぞれの天体の自転についてお答えしましょう。赤道における自転の速さは、天体の赤道の長さを自転周期で割れば算出できます。

  • 地球: 秒速466 メートル
  • 月: 秒速4.64 メートル
  • 太陽: 秒速1.89 キロメートル

実際には潮汐の影響などで月や地球の自転速度には変動があります。また、太陽は地球や月と違って気体の天体なので、赤道付近と極付近では自転周期が違い、赤道付近の方が極付近よりも短い周期で自転しています。

次に公転についてですが、ここでは地球が太陽の周りを回転することを「地球の公転」、月が地球の周りを回転することを「月の公転」とします。
地球と月は楕円軌道を動いており、中心の天体に近いところでは速く、遠いところでは遅く運動しますが、軌道の長さを公転周期で割った平均軌道速度はそれぞれ

  • 地球の平均軌道速度: 秒速29.8キロメートル
  • 月の平均軌道速度: 秒速1.01キロメートル

です。
また太陽が銀河系の中心の周りを回転することを「太陽の公転」ということにしますと、その速さは秒速220キロメートルです。


■参考資料

  • 理科年表(2001年版) (国立天文台編、丸善)
クレーターから伸びる光条には、円形のものや非対称なものがありますが、どうしてこのように形が違うのですか?2016-12-31T13:44:46+09:00

月面を観察してみると、クレーターから出てくる光条は、ひときわ目を引くものです。この光条は、クレーターができたときに、地下の物質が飛ばされてできたものです。長いものになると、例えばティコクレーターの光条は、月の半径の4分の1近くまで達するほど長いものです。
この光条にも、たとえばかなり規則正しく放射状になっているものや、特定の方向へ飛び出しているようにみえる形のものなど、様々です。

最初にぴんと来る考え方としては、ぶつかってきた天体が斜め(非常に低角度)に侵入してきた場合です。この場合、天体がぶつかってきた方向に破片が集中して飛び散り、対象形でない光条の放射パターンができ上がるとも考えられます。
しかし、実験室内で衝突の模擬実験をいろいろと繰り返した結果、かなりの低角度(15度以下)でぶつからない限り、そのような非対称の放射パターンはできないということがわかっています。天体が衝突するときには、あまり低角度で衝突することはないので、このような原因で、全ての非対象な光条を持つクレーターの成因とすることはできそうにありません。

さて、クレーターができる過程は、非常に素早いものです。ぶつかってから物質が飛びって光条ができるまで、せいぜい数分から数十分くらいしかかかりません。そのような衝突の最中では、ほんのちょっとした原因で、飛び散る物質の方向が変わるということは十分に考えられます。例えば、衝突直前に天体が破片に分かれたり、衝突した場所の地質が複雑であったりすれば、そのような影響を受けて、物質の飛び散る方向が変わることは十分にあり得ます。
また、衝突後に、他のクレーターからの破片が覆ったりすることによって、本来放射状に飛び散っていた光条が被われて、特定の方向にしか光条が伸びていないようにみえるということも考えられます。

このように、いろいろな要因、それに月面での様々な変化が重なり合って、いま私たちがみるような光条ができ上がっていると考えられるのです。

月の誕生について、巨大衝突説(ジャイアントインパクト説)は本当に正しいのでしょうか?その根拠はどのようなものなのでしょうか?2016-12-31T12:57:17+09:00

ご承知のことと思いますが、月の起源説には、以下の3つがあります。

  • 捕獲説…月は地球に捕獲されたという説
  • 分裂説…月は、地球から飛び出してできたという説。
  • 双子集積説…月は地球の回りで、地球と同時にできたという説。

しかし、これらの説にもいろいろと問題点があります。

まず捕獲説では、地球に何らかの天体が飛んできて、それを捕獲するということは確率的にもきわめてあり得ないことです。また、月の物質は地球の物質とよく似ています(いろいろな元素の同位体比が地球のものと極めて近いのです)が、それを説明できません。
分裂説では、月ができた当時には地球の自転が相当に早くなければ、地球から月が「飛び出す」ということはあり得ません。そのように自転を速くする機構も、またそのような速い自転を現在のように遅い自転にまで減速させる機構も、考えつくのは困難なことです。
双子集積説では、地球と月の運動を説明できないという問題があります。
地球と月は互いに公転していますので、その回転の運動量(各運動量)と呼ばれる量を持っています。地球と月の角運動量はかなり大きいのですが、たとえば小さな天体が集積してできたとすると、そういった小さな天体はランダムにぶつかってきますから、角運動量は相殺されて少ない値になってしまうという問題があります。同時集積では、角運動量が現在のような値になることが説明できないのです。

こういったことから、それらの説に代わる新しい月の形成の考え方が必要になってきました。そして、その説は上で述べた問題点を、すべて説明できなければなりません。

4つ目の説、そして現在最も有力とされている「巨大衝突説」は、46億年前、できかけの地球(原始地球)に、火星くらいの大きさの天体(巨大微惑星)が衝突し、その飛び散った物質が急速に集積して、月ができたというものです。

まず、もともとの物質が地球ですから、地球と同じような物質でできているという点は問題ありません。
さらに、月の物質に見られる「揮発性元素が少ない」「月の岩石は地球のマントル物質と類似している」という特徴も、衝突によって地球のマントルが剥がされて、それが月の物質を基本的に形作ったということで説明ができます。
巨大衝突説では、分裂説のようなことを考える必要がありません。また、上の角運動量の問題については、巨大衝突によってその天体から角運動量がもたらされたと考えれば、地球と月の大きな角運動量も問題なく説明されます。

問題は、例えばそのような巨大衝突が起こった後、月の集積のようなことが起きるかどうかですが、これも最近になって、東京工業大学の井田茂氏や国立天文台の小久保英一郎氏によるシミュレーション計算により、巨大衝突後、月が非常に急速に形成される(早ければ1ヶ月程度で集積ができる)ことが証明されました。

今のところ、月の特徴を全てよく説明できるという意味で、巨大衝突説が月の起源として最も有力とされています。しかし、そのような衝突の後が月や地球に(地形として)残っているわけでもありませんし、月の組成にしても、アポロが持ち帰った岩は月の本の、ほんのごくわずかな部分に過ぎません。
その他にも、例えば月のコアの大きさなどが巨大衝突説が正しいかどうかを決める有力な手がかりになります。もし月がマントルのような物質からできた(=巨大衝突により月ができた)とすれば、月を作った材料は鉄などの金属が少ないことになります。
こういった物質は、巨大衝突が起きたときには既に地球のコアとして地球内部に入っていたはずですから。そこで、もしコアの大きさが小さければ、巨大衝突説に有利ということになります。日本の月探査「かぐや」計画をはじめとする世界の月探査計画で、月全体の組成が明らかになれば、月がどのようにしてできたか…月の起源にかなり迫ることができるはずです。


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クレーターはなぜできるのですか?クレーターはどのくらいあるのですか?今も増えているのですか?どのくらいの大きさなんですか?2016-12-31T12:56:06+09:00

月のクレーターの多くは、隕石衝突によってできたものと考えられています。隕石は月面におよそ秒速10キロメートル以上という高速で衝突します。発生する高温・高圧の衝撃波によって月面が掘削され、クレーターとなります。
また、地上にある火山の火口、カルデラと同じように、火山爆発によってできたものもあるとされています。

衝突するもののサイズによって、できるクレーターの大きさも様々です。
アポロによって採集された岩石の表面には、直径数マイクロメートル[注]という、顕微鏡でなくては見えないほど小さいものもあります。また、月面で最大の衝突盆地である南極ーエイトケン盆地 (South Pole-Aitken) の直径は2250キロメートルです。
小さいものまで含めれば個数は「数限りなく」ということになりますが、月面で名前が付けられてカタログ化されているクレーターだけ数えますと、1595個ということになります(2011年3月現在)
(名前がついているクレーターを数えたものですが、実際には近くにあるクレーターに、Crater A, Crater B, …という名前をつけることがありますので、実際に名前がついているクレーターはもっと多いことになります。)

クレーターは現在も増え続けています。月震のデータによれば、隕石の衝突は約7年間の間に1743個あったとのことです。これは、表側の一部の地域で記録されたデータであり、このほかにも分類が不可能とされているデータも多数あります。
ですから実際には、これよりはるかに多くの隕石の衝突が起きているはずです。そして、そのたびに月のどこかで新しくクレーターができていることでしょう。

[注]1マイクロメートル=100万分の1メートル=1000分の1ミリメートル


■関連Q&A

  • ティコクレーターなどに見られる「光条」はどのような現象ででき、また何が光って見えているのでしょうか?
  • 月のクレーターはどのようにしてできたのですか?
コペルニクスやメシエAなどの月のクレーターはどのくらいの重さの隕石が落ちて出来たのですか?2016-12-31T13:38:21+09:00

クレーターの大きさは、どのような原因で決まっているのでしょうか?
例えば、あなたが砂場にいて、地面にボールをぶつけたとします。弱く投げてぶつけたときと、強く叩きつけるようにしてぶつけたら、当然強く投げた方が、大きな穴(クレーター)ができます。
また、同じ速度でぶつけても、ピンポン玉と鉄の玉ならば、これまた当然、鉄の玉の方がより大きな穴があきます。

結論からいうと、クレーターの大きさは、ぶつかるものの大きさと速度に大きく関係してきます。つまり、その物体が持つ「運動エネルギー」が大きいほど、大きなクレーターになるということになります。従って、大きさと速度、どちらかが決まらないと、ぶつかったものの大きさは推定しにくいということになります。

さて、ではクレーターにぶつかるものの大きさは、どのようにして決めているのでしょうか?
クレーターがどのようにしてできるか、という研究は、アメリカや日本でも盛んに行われています。実験室で、高速(秒速数キロメートル)の弾丸を標的(この場合、岩石やアルミ板などです)にぶつける実験も、日本やアメリカで精力的に行われています。アメリカでは、地上で行った核実験でできたクレーターを調べるようなことも行われているそうです。
このような様々な実験を通じて、クレーターを作ったエネルギーと、そのクレーター大きさには、かなりシンプルな関係があることがわかりました。式で書きますと、クレーターの半径をR、クレーターを作ったエネルギーをWとして、

10^9*R (キロメートル) = W [エルグ]

となります。
では、この式をもとにして、クレーターの大きさとそれを作った隕石、あるいは小惑星の半径を計算してみることにしましょう。まず、ぶつかるときの速度を決めなければなりませんが、仮にこれを秒速10キロメートルとします。また、ぶつかった物質の密度を1立方センチメートルあたり3グラムと考えます(普通の岩石の値が、大体そのくらいです)。
衝突した天体が球形であると仮定しますと、近似的には、クレーターの半径の約20分の1が、ぶつかった天体の半径と考えることができます。
あとはクレーターの半径がわかれば、上の式から計算することができます。例えば、コペルニクスは半径47キロメートルですから、衝突した天体の半径は約2.5キロメートルと推定できます。また、メシエAはさしわたし13×11キロメートルという比較的小さなクレーターです。半径を6キロメートルとしますと、半径約300メートル(小さめの小惑星くらいの大きさ)の天体が衝突してできたと推定できます。


■参考資料

  • 水谷 仁著、クレーターの科学(東大出版会、1983)
私たちでも、月の石を買うことはできるでしょうか?2016-12-31T13:27:57+09:00

まず、アポロが持ち帰った月の石は、個人が手に入れることは非常に難しいと考えられます。研究者が研究目的のために少量を入手するということは可能ですが、そのためにはその目的や利用方法を細かく書く必要があります。研究目的以外では入手することは難しいと思います。

次に、アポロが持ち帰ったものだけではなくて、月から飛んできた隕石ということになりますと、これは商業ルートで売買されているものもありますので、手に入れることができる可能性があります。
「月から飛んできた隕石」というとビックリされるかも知れませんが、隕石の中には、月の表面の石と組成が極めて似ている(はっきりいえば一緒)ものがあります。これは、月の表面に隕石がぶつかったために、弾き飛ばされて地球まで飛んできたものと考えられています。
こういった隕石は、時折フェアなどで売られていますので、一般の方でも入手することができるはずです。ただ、貴重なものだけに一般には値段が高く、1グラム数百万円もすることがあるそうです。


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上弦の月は、弦の部分が上に来るためといわれていますが、実際には中国において、「上中下」は月の旬を、弦は半月で、上弦の月は月の始め頃に見られる半円形の月の形だという説があるようです。本当はどうなのでしょう?2016-12-31T13:25:57+09:00

上弦の月、下弦の月の見分け方として、しばしば登場するのが、月の明暗境界の(弓に模した場合の弦の)部分が、西の空に沈むときに、地平線に対して上にあるか、下にあるかという判断です。
しかしながら、これは後世に便宜的に導入された一種の覚え方で、もともとの意味とは全く違います。

かつては月を基準とした太陰暦という暦を使っていました。その当時は、たとえば3月3日というのは、月が新月から数えて三日目であり、かならず西空には三日月が見えていました。十五夜というのはまさに15日目であり、満月が東から上ってきます。ですから、月そのものが暦の「月」の起源になっています。
さて、こういった暦では、その月の前半を上、半ばを中、後半を下と言っていました。現代で言う上旬、中旬、下旬ですね。また、ちょうど上旬に当たる7日頃と、満月を過ぎた下旬に当たる21日頃には、月の形が半月形になり、いわゆる弓を張ったような形という意味で「弦」と呼ばれることになります。(といっても、弦という言葉はかなり古くから、それだけで半月を意味しますので、弓が先なのか、月が先なのかわかりませんが…)

いずれにしろ、これらの二つが結びついて、上弦の月、下弦の月と命名されたと考えられています。



上弦の月(撮影: 白尾元理)
Copyright (c) 1999 Motomaro Shirao, all rights reserved.
この写真は白尾元理様のご好意により、掲載させていただいております。
写真をクリックするとより大きな写真がご覧頂けます(サイズ: 229KB)

月が赤みがかってみえることがあるのですがこれはどうしてですか? また、赤い月は不吉なことの前兆、ということを聞いたことがありますが、本当なのでしょうか?2016-12-31T13:25:00+09:00

月が赤く見えることがあるのは、大きく分けて2つの場合になります。

  1. 月が出たばかり、あるいは月が沈む直前で、地面に近いところに月がある場合。
  2. 大気中にちりや水蒸気などがある場合。

1.は、ちょうど夕焼けや朝焼けと同じような原理です。地表に近いところに月があると、月からの光は、大気を長い時間通ります。その間に、青い光が散乱され、残った赤い光だけが見える、ということになります。
2.ですが、山火事や火山の噴火などによって大気中にちりが増える、あるいは水蒸気などが多くなると、同じように月の光が散乱されて、赤い光だけが私たちの目に届くことがあります。

こういう理由ですので、特に不吉なことの前兆である、ということはありません。


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月の石は、何で出来てるんですか?2016-12-31T13:37:34+09:00

月の石といっても、なにか特別なものでできているというわけではありません。地球で見かける岩石と、実際のところよく似ています。

月は、大きく海と高地(それぞれ、月の黒っぽい部分と白っぽい部分で代表されます)の2つに分けることができます。
このうち、海を構成しているのは、主に玄武岩と呼ばれている岩石です。この玄武岩は火山岩の一種で、地球でもハワイをはじめ、富士山や三原山などの溶岩がこれにあたります。実際、月の海の岩石は、こういった火山から出てきた溶岩とよく似ています。

いっぽう、高地に多い白っぽい岩は、斜長岩(しゃちょうがん)と呼ばれています。これは、岩石に斜長石と呼ばれる、白い鉱物が大量に含まれていることからその名があります。斜長石自体はそれほど珍しい鉱物ではないのですが、それが多く集まった斜長岩となると、地球上ではそれほど多い地域では見つかりません。
地球上では太古の時代、20~30億年前に多く噴出した火山岩として見つかり、アフリカなどに分布しています。

さて次に、月の石が「何でできているか」について、元素の面からお答えします。月の岩石に最も多く含まれている元素としては、ケイ素と酸素があげられます。ケイ素は半導体にも使われていますし、石英や水晶は二酸化ケイ素(ケイ素と酸素が結合したもの)です。月の海の岩石は、半分以上がこの二酸化ケイ素で占められています。
この二酸化ケイ素は地球上の岩石の主成分でもありますから、ここでも月の岩石は地球の岩石とそれほど大きく違わないことがわかります。
その他には、アルミニウム、マグネシウム、鉄、カルシウム、マンガンなどが、比較的多く(数パーセント~十数パーセントの割合で)含まれているのが一般的です。
その他にも、月の海の岩石には、チタンを多く(20パーセント弱)含むものなども見つかっています。


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月の謎として、よく「月と地球の角運動量が大きい」ということがいわれますが、これは具体的にはどのような意味なのでしょうか?2017-10-07T16:31:43+09:00

まず、角運動量というものがどのようなものかということから入りましょう。
すべての回転している物体はエネルギーを持っています。これは、回転している歯車などが周りのものを動かしていくことからもわかると思います。
このような、回転しているもののエネルギーを表す量として、「角運動量」というものが定義されています。これは、次のような値です。

物体の質量×回転の速度×その物体の半径

例えば月を考えます(いまは、簡単のために月も地球も点とします)。月は地球から38万キロ離れていますので、物体の半径が38万キロ、月の質量が物体の質量、そして回転の速度は、地球の周りを回る速度、すなわち「月の公転速度」となります。
もう1つ、たいていの場合には、衛星が持つ角運動量と、惑星の自転の角運動量を合算して考えます。例えば地球の場合には、「地球ー月系の角運動量」という言い方をします。

さて、では問題の「地球型惑星の角運動量」にまいりましょう。
地球型惑星としては、水星、金星、地球、火星があります。
このうち、衛星を持っているのは地球と火星だけですが、火星の衛星は2つとも、本体(火星)に比べれば圧倒的に小さく、角運動量は無視してもいいほどです。それに比べると、地球の衛星(月)は、地球に比べても大きく(地球半径の4分の1)、遠く(38万キロも離れている)を比較的速いスピード(約29日で1周)で回っているので、大きな角運動量を持っています。

次に、自転を考えます。火星と地球はほぼ同じ自転速度ですが、火星は地球の3分の1ほどの大きさですので、角運動量は非常に小さくなります。一方、金星は地球とほぼ同じ大きさですが、自転周期が243日と非常にゆっくりであるため、自転の角運動量はきわめて小さなものです。水星も自転周期は58日と、地球に比べてはるかに遅い上に、地球と比べても大きさが3分の1以下ときわめて小さいため、地球の角運動量は他の地球型惑星に比べて際だって大きいのです。

特に、月という大きな衛星が遠くをそれなりのスピードで回っているということが、この「地球ー月系の角運動量問題」でいちばんのミソということになります。
ここで気をつけることは、「地球の公転と月の自転の角運動量がやりとりされている」ということです。この2つを一体として考えて、力学的な面ではじめて正しい考え方になります。

また、「月と地球の角運動量が大きい」という場合には、その惑星の単位質量あたりで考える必要があります。例えば、木星は高速で自転しており(約10時間)、質量も巨大ですから、大変大きな角運動量を持っていることになります。その点で考えると、地球と月の角運動量は並外れて大きいことになります。


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アポロ11号で撮影された月から見た地球の写真はどこで見られますか?2023-07-10T10:02:39+09:00

NASA(米国航空宇宙局)では、インターネット上の多くのサイトで画像を公開しています。ただ、あまりに多い上に、英語ということもあってなかなかたどり着きにくいことも確かです。
ここでは、アポロ11号をはじめ、アポロ計画で得られた写真などを閲覧したりダウンロードできるサイトをご紹介します。

NASA Image Exchange (NIX)
http://nix.nasa.gov
Image Exchange、つまり、画像の交換ということですが、ここでは、アポロ計画をはじめ、これまでのNASAのさまざまなミッションに関係する写真を閲覧、そしてダウンロードすることが可能です。
必ずしも写真の数は多くありませんが、割と有名な写真が揃っていることから、まずアクセスするにはちょうどよいかもしれません。
Great Images of NASA (GRIN)
http://grin.hq.nasa.gov
ここもNASA画像を収集、公開しているサイトですが、上記のNIX同様に、アポロの画像などを得ることが可能です。「Browse By Subject」(探査項目でみる)を選び、Apolloを選択すれば、アポロ画像をみることは可能です。あまり数は多くありませんが、高解像度の画像などもあります。
Apollo Gallery (NASA Human Space Flight)
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/apollo/
NASAの有人飛行技術部の中にあるイメージギャラリーです。かなりの量のアポロ画像があり、それぞれのミッションをクリックして選択していくことで、かなり簡単に画像をみることができます。膨大な量の画像があり、ややみていくのは大変かもしれませんが、1次資料としては非常に有益なギャラリーだといえるでしょう。
また、画像だけではなく、映像もみることができます。
NSSDC Photo Gallery
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/
NASAで月・惑星探査をはじめとする宇宙探査の情報を収集、管理している、国立宇宙科学データセンター(NSSDC)の中にある画像ギャラリーです。
全体として画像の数は少ないのですが、このページの中にはEarth and Moonというページがあり、歴史的に有名なアポロ8号の「地球の出」の画像や、ガリレオ探査機が撮影した地球と月の両方が一緒に収まっている画像などをみることができます。
Apollo Image Gallery
http://www.apolloarchive.com/apollo_gallery.html
Project Apollo Archive(アポロ・アーカイブ・プロジェクト)が運営している、アポロ画像や映像のアーカイブサイトです。
ここでは、もともとジョンソン宇宙センターに紙で収められていたアポロの画像をスキャンするなどしてデジタル化し、公開しています。
ミッションごとに膨大な量の画像が収められており、検索によって調べることもできます。ただ、あまりに膨大なのと、キーワードが限られる(写真記述が短い)ため、例えば別のサイトで写真番号を記録しておき、ここで写真番号を手がかりにして高解像度画像を得る、という使い方もあります。
NASA Images
http://www.nasaimages.org
Internet Archive(インターネットアーカイブ財団)が運営する、NASAの画像・映像のアーカイブです。
ここは特に映像資料が充実していることが特徴です。また、画像・映像の出所などがわかるので、いつ、どこでどのようにして撮影されたものかという情報が得やすいという特徴があります。
ただ、こちらも情報が非常に膨大なので、予め写真番号などを調べておき、検索をかけて高解像度の画像を得る、という使い方がベストでしょう。

さて、「アポロ11号からみた地球の写真」ということですが、ここではApollo Gallery(3つめ)から入手した写真を、入手元と共にご覧いただけるようにしましょう。


アポロ11号が撮影した地球の出(アースライズ)
Photo by NASA, Photo No. AS11-44-6551
出典: Apollo Archive
クリックすると高解像度の画像を表示できます


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1999年7月、8月の満月は何日ですか? 月の出の時間はいつですか?2023-07-10T10:02:39+09:00

以下は、1999年7月以降の、満月の日とその月の出、南中、入りの時間です。
なお、月の出の時刻は東京での時刻です。また、月齢は正午月齢です。

日にち 月の出 南中 月の入り
7月28日 18時40分 23時54分 5時10分 (*1)
8月27日 18時37分 0時17分 6時2分 (*2)
9月25日 17時46分 23時47分 5時56分 (*1)
10月25日 17時32分 0時12分 7時1分 (*2)
11月23日 16時48分 23時50分 6時58分 (*1)
12月23日 17時16分 0時36分 7時55分 (*2)

(*1)入りは翌日。
(*2)南中、入りは翌日。


■参考ページ

  • 理科年表1999年版(国立天文台編、丸善)
月の開発から特定の国や企業だけが利益をあげることは許されるのでしょうか。2016-12-31T13:03:51+09:00

月に限らず、天体について探査や資源開発を行う場合に必ず守らなければならない国際条約として「宇宙条約」があります。この条約に加盟している国は、条約に定められているやり方で、探査や開発をしなければなりません。 また、この宇宙条約に基づいて、天体の探査や開発についてより詳しく定めた条約として、「月協定」(月その他の天体における国家活動を律する協定)があります。

宇宙条約の第2条では、月をはじめ天体がいかなる国家によっても領有の対象にならないことが規定されています。また、宇宙条約の第6条には、非政府団体(会社など)に関しても国と同じような制限が課せられることが書かれています。
また、月協定の第11条にも同様の規定があります。

では、開発をどのように行えばよいか、という点については、同じく月協定第11条第5項に 「この協定の締約国は、月の天然資源の開発が実行可能となったときには適当な手続を含め、月の天然資源の開発を律する国際的レジームを設立することをここに約束する。この規定は、この協定の第18条に従って実施されるものとする。」となっています(「レジーム」というのは法律用語のようですが「枠組み」と捉えておけばよいと思います)。
つまり、具体的に月の資源などを採掘することが可能になった場合、新たに何らかの国際的な枠組みを作って、その中で議論しましょう、ということです。それまでは、勝手にどこかの国や会社が、月の資源を持っていってはいけないということになっています。

しかし、ここには大きな問題点があります。まず、月協定を批准している国はまだ少ないこと。また、枠組みをどのように進めていくかについての議論が、まだ全くなされていないという点も問題になりつつあります。
現実問題として、例えば月の土地を「売る」といった会社も出始めていますし、小惑星探査を民間で行うという動きなどもあります。近いうちに、例えば月資源や小惑星の資源を地球で売ろう、という企業が現れてもおかしくはありません。

条約や協定はあくまでも道義的なものですので、必ずそれを守らなければならないという強制力は必ずしもありませんが、今のところ、技術力を持っている国がそれほどないことや、相互監視メカニズム(例えば、どこかの国が暴走したとしても、それを監視し、状況によっては制止するような仕組み)は、アメリカや旧ソ連などの宇宙機関などによって確立されているようにみえますので、今すぐにどこかの国が月を植民地にしてしまったり、民間会社が勝手に月の資源を開発し始める、ということはないと思われます。

ただ、たとえば南極の例などをみてみますと、1920〜1930年代にかけて、当時のナチス・ドイツが、南極の一部を領有しようとしたという経緯もあります。当時はまだ南極条約のような枠組みがしっかりと確立されていなかったため、その隙をついてナチス・ドイツが南極を植民地にしようとしたわけです。
南極については、現在でもアルゼンチンなどが一部地域の領有権を主張していますが、この点は南極の地下資源とも絡むといわれています。
また、最近の月探査では、インドや中国は、月の「ヘリウム3」をはじめ、資源探索を念頭に置いているようにみえます。いったんどこかの国、あるいは民間が月面などでこういった資源開発を行ったとしても、止める手段は具体的には存在していません。
従って、将来、それも近い将来(10年くらいのレベル)では、国レベル、あるいは民間企業による資源探索などについての枠組みを定める必要があるでしょう。

その意味では、上記の「月の天然資源の開発が実行可能となったときには(中略)国際的レジームを設立する」時期がもはや来ていると思われます。
そのためには、まずこういった問題に対処できるよう、民間などによる月開発をも含める形で月協定などの見直しを進めること、そして、資源利用のための国際的な枠組みを早めに構築することが必要でしょう。


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月の表面の物質は地球のものと微妙に違うようですが、月の反射光も、我々が目にする光などと異なる波長を持っているのでしょうか? 違うとすればどのように異なっているのでしょうか? また、人工的に月光を作り出すことは可能ですか?2016-12-31T13:22:19+09:00

人間が目で感じる光は、様々な波長の光が合わさったものです。しかしバランスが違うためにいろいろな色に見えます。
例えば、きれいな水は青い光(0.4マイクロメートル[注])、植物の葉は緑色の光(0.55マイクロメートル[注])を多く反射するために、それぞれ青・緑色に見えます。

ところが月の表面には水や植物はなく、火山活動で噴出した岩や、地殻と呼ばれる斜長岩の大陸だけが見られます。これらは富士山やハワイの火山に見られるような、黒から灰色をしています。なぜ灰色に見えるかというと、その反射光は水や植物のように特定の波長で多く反射するということがないためです。
つまり人の目が感じる月の反射光は、いろいろな波長の光がバランス良く含まれており、「特徴のないことが特徴」といえます。

月の反射光は波長が分かっているため、同じような波長の光を混ぜることによって、人工的に作り出すことは可能と考えられます。

[注]1マイクロメートル=100万分の1メートル=1000分の1ミリメートル

今度タイに旅行に行くのですが、日本とタイとで月の形が変わって見えることがあるのでしょうか?2016-12-31T13:14:33+09:00

月齢は基本的に太陽、月、地球の位置関係のみによって決まり、地球上の場所にはよりません。
したがって、日本でもタイでも、あるいは他の土地でも同じ時間であれば月の形は同じです。
ただし、月の出、月の入りの時間は場所によって異なりますから、同時にあらゆる場所から同じ形の月が見える、というわけにはいきません。


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ティコクレーターなどに見られる「光条」はどのような現象ででき、また何が光って見えているのでしょうか?2016-12-31T13:05:49+09:00

ティコ(Tycho)クレーターやコペルニクス(Copernicus)クレーターなど、月面のクレーターの中には、クレーターのまわりに放射状に広がる、白い模様が見られることがあります。これは「光条」(英語ではレイ: ray)と呼ばれています。
いかにも、何かがぶつかって飛び散ったような模様になっていますが、やはりこの光条は、クレーターができたときに、飛び散った物質によってできたと考えられています。

このクレーターができるとき、どんなことが起っているのでしょうか?もう少し詳しくみていくことにします。
月面に天体がぶつかって、クレーターができます。このとき、月面にあった物質は吹き飛ばされて、遠くへ飛ばされます。
当然、重い破片ほどクレーターの近くに落ち、軽いものほど遠くへと飛ばされていきます。飛ばされる飛散物のことをイジェクタ(ejecta)といいますが、このイジェクタは遠くへ飛ぶものほど高速で飛んでいきますので、まるでカーテンのようになってクレーターから四方八方へ飛んでいきます。
このとき、浅いところにあったものほど遠くへ飛ばされていきます。これは、飛び出すときに、深いところのものほど急角度で飛ばされるためです。浅いところにあった物質は低い角度で飛び出していき、その分遠くまで飛ばされます。

光条が白っぽくみえる原因としては、クレーターができた時期が比較的新しくて、そのために光を強く反射して見えているためではないかと思われます。
光条は、例えば他のクレーターからの破片が上に積もったり、宇宙線による風化作用などを受けて、次第に暗くなってきて、消えていきます。つまり、光条がみえるクレーターというのは、かなり新しい時代(といっても、数千万年前とか数億年前)にできたものと考えられるのです。
また、光条を作っている物質自体が明るいために、光条が白く輝いてみえるのだという説もあります。

このようにいろいろな説があり、光条がどのようなものでできているのか、またなぜ明るいのか、具体的なことはよくわかっていないのが現状です。



クレメンタインが撮影した画像をもとに作成した月面のモザイク画像。
いくつか光条が極めて明確なクレーターが写っている。
写真下の方にある光条がはっきりしたクレーターがティコクレーター。
出典: NSSDC Photo Gallery, Photo: NASA/USGS
クリックすると大きな写真が表示されます。


地上から撮影されたティコクレーター(画面中央)。
特に右側に非常にはっきりとした光条が延びていることがわかる。
出典: Wikipedia [en], Photo: Joe Huber, This work is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.
クリックすると大きな写真が表示されます(1.6MB)。


ハッブル宇宙望遠鏡により撮影されたコペルニクスクレーター(右上)。
左側にある、やはり光条が非常に目立つクレーターはケプラークレーター。
出典: NSSDC Photo Gallery, Photo No.: STScI-PRC99-14, Photo: John Caldwell (York University, Ontario), Alex Storrs (STScI), and NASA
クリックすると大きな写真が表示されます(2.9MB)。
また、原図(TIFF画像)は ここ をクリックすると表示またはダウンロードされます(3.7MB)。


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月が蒼くみえるときがあるようですが、なぜそのようにみえるのでしょう?2016-12-31T13:08:07+09:00

まず、月がいろいろな色で見えるというのは、地球の大気の影響が大きいと思われます。
たとえば、赤く見えたり、緑色にみえたりすることもありますが、この場合には、地球大気や大気中のチリなど月からの光を屈折させたり散乱させます。青い光の方が赤い光よりもより散乱の影響を受けやすいため、赤い光が選択的に我々にみえていることが多いようです。

また、月の位置(高さ)も色に関係する場合があります。たとえば、月が低い位置にあると赤く見え、高い位置にあると青く見えます。これは、ちょうど夕焼けや朝焼けなどと同じように、大気を長く通る光は散乱されて、赤い光ほど選択的に通りやすくなるということが原因です。
また、観測者の間では、夏よりも冬の月の方がより青く見えるそうです。これはおそらく、冬の方が大気が澄んでいて、チリなどによる青い光の散乱が少ないことが影響しているのかも知れません。

もう1つ、英語でブルームーン(Blue Moon)といいますと、同じ月の間に2度、満月の日がある場合、その2回目の満月をいうそうです。
月の満月から満月までの周期は29.5日ですから、暦月の間に2度の満月が来ることはかなり珍しい現象です。従って、Blue Moonは本来の意味から派生して、「非常に珍しいこと」、「長い間」という意味も持ちます。
1999年3月は、確かに満月が2回ありました(但し、理科年表で見ますと、東京での3月31日の正午月齢は13.3日ですので、厳密には満月ではないことになります。東京での満月は4月1日になります)。
この”Blue Moon”については、20世紀の間に41回起きています。しかし、1年間に2度、Blue Moonが起きたのは、1915、1961、1999年(今年)の3回しかありません。
さらに、Blue Moonの日に月食が重なることもあります。これは、20世紀では1904年3月31日、1915年1月31日、1982年12月30日、そして1999年1月31日になります。


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月の見かけの大きさはいつも一緒なのですか?2016-12-31T13:16:52+09:00

満月が昇って沈むまでの間で、特に月が地平線に近いときに、月がとても大きく見えることがありますが、これは目の錯覚です。

一方で、月は楕円軌道を描いているので、月の公転に伴って見かけの大きさも約27.3日周期で変化します。この変化の度合いはかなり大きく、最大で約25パーセントにもなります。
同様に太陽の見かけの大きさも1年周期で変化しますが、この変化の度合いは最大でも数パーセント程度です。日食は月が太陽を隠す現象ですが、月と太陽の見かけの大きさがこのように少し変化するため、皆既日食になったり金環食になったりします。


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夜中に大きなオレンジ色の満月が肉眼で見える速さで沈む様子に驚きました。何かわかることがありましたら教えて下さい。2016-12-31T13:19:25+09:00

月の高度が低く、地平線に近いときには人間の目は地上の山や建物などと月を無意識に比較して錯覚を起こし、天空高くに月があるときよりも大きく見えるといわれています。
月の沈む動きも、同じように地平線のそばでは動かない地上の対象物と比較できるので、普段月を見上げているときよりもずっと速く動いているように感じられるのです。

また、山吹色に見えたということについてですが、これは夕日が赤く見えるのと同じ現象だと思われます。
光は空気分子にぶつかると四方八方に散乱します。この散乱の度合いは光の波長によって異なり、波長の長い(赤に近い)光はあまり散乱されずに大気を通過しますが、波長の短い(紫や青に近い)光ほど大きく散乱します。
月が空高くにあり、光が通過する大気の層が薄い時には青みがかった銀色に見えますが、低い高度では目に届くまでの大気層の距離が長くなります。このときは散乱される回数も増えるので、青っぽい光は弱まってしまい、月の色が赤や山吹色っぽく見えるのです。

なお、人間は一般に、角度については意外と認識が弱いと言われています。
例えば、スキーのジャンプ台を下から見上げてご覧になった経験はおありでしょうか? 実は、スキーのジャンプ台の傾斜はせいぜい30度くらいしかありません。
月が60度の角度にあり、そこから15分で沈んでしまったとすると、計算上は地球が90分で自転してしまう(月が昇ってから沈むまで、上空を通過するのに45分しかかからない)ことになります。今回の場合もおそらく、地上の風景などと比較して、高い角度にみえてしまったのだと思われます。


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秋の月はなぜきれいなのですか?2016-12-30T15:21:45+09:00

秋の月がきれいな理由は、単に心理的な問題だけではなく、いくつかの科学的にみて正当な理由があります。

1つめは、秋の空気が比較的乾いている、もう少し具体的にいうと、空気中の水蒸気量が少ないということです。これによって、大気がぼやけたりすることがあまりないため、くっきりとした月が見えます。逆に夏は水蒸気量が多いため、どうしても少しぼんやりとした月になってしまうことが多いようです。

また、月の高さの問題もあります。月の通り道の関係で、実は月が見える高さは季節によって異なります。冬の月は空高く、夏の月は割と低い位置にあります。
月が低い位置にある場合、地表付近のちりや明かりなどにじゃまされて、きれいにみることができません。また大気によって光が吸収されるため(減光といいます)、低い月はどうしても暗くなってしまいます。
では、高い位置にあれば見やすいかというとそういうわけでもありません。確かに大気の影響は少なく、くっきりとした月にはなるのですが、「見る」という行為からすると、高い位置にある月は見上げるのに結構大変です。そもそも冬の寒い時期に、外で長時間月を眺めるのはかなりつらいことでもあります。

こうしてみると、適度な高さにある春と秋の月が見やすいということになりますが、春はよく「おぼろ月夜」といわれるように、空気中のちりや花粉などが多い季節でもあります(黄砂なども春に多いですね)。そのため、年間でいちばんきれいな月が見える季節は、実は秋という結論になるわけです。

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19世紀のはじめ頃、イギリスに月光協会という組織があったそうですが、これはどのような組織なのでしょう? 月の神秘と何か関係があるのでしょうか?2016-12-30T14:42:18+09:00

まず、月光協会とは次のような団体だったそうです。

… … … … … … … … …

「月光協会」、あるいは「月奇人協会」と呼ばれるこの団体は、英語ではThe Lunar Society of Birmingham (または単にLunar Society)といいます。この名の通り、イギリス・バーミンガムで設立された、科学者たちの団体です。
月光協会が設立されたのは1766年です。もともとは、月光サークル(Lunar Circle)として、1765年頃から集まりを繰り返していたようですが、最初に月光協会としての集まりを開いたのは、1775年ということだそうです。ちなみに、この最初の(正式な)会合は、1776年の12月31日だったそうです。
「月光協会」という名称は、会合を満月に最も近い日曜日、または月曜日を催したことに基づきます。満月の前後に会を開いたのは、夜も明るいために帰るのに支障がないからだということだそうです。また、会員たちが世間から奇人と思われていたということもあるそうです。

メンバーは14人でしたが、当時の一流の科学者、技術者が揃っていました。例えば、

エラスムス・ダーウィン (Erasmus Darwin)

進化論で有名なチャールス・ダーウィンの祖父で、医師

ジョセフ・プリーストリー (Joseph Priestry)

酸素の発見など、気体に関する重要な研究を行った科学者

ジョシア・ウェッジウッド (Josiah Wedgewood)

有名な陶芸家。現在でも「ウェッジウッド」の名前は残っています。

ジェームス・ワット (James Watt)

蒸気機関の発明者として有名。

このほかにも、キア(James Keir: 化学工業の開拓者)、エッジワース(Richard Edgeworth: 馬車の緩衝装置の発明者)など、科学、技術、そして産業界や教育界などから集まった一流のメンバーが加入し、多くの業績を産み出しました。
たとえば、工業用の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム。当時のソーダ工業は、染料や薬品などさまざまな化学工業のベースになることから、注目されていました)の製法や、陸運、水運などでの新技術の開拓、蒸気機関や紡績機械の改良、さらには教育方法の改革にまで及びました。

しかし、月光協会のメンバーはこういった業績を何らかの形で本にまとめたりすることはありませんでした。また、協会の活動自体も、1790年頃には下火になりはじめ、1800年頃以降ほとんど活動を停止していたものと考えられます。(下のサイトによりますと、活動の停止は1809年ということになります。)

当時のイギリスは産業革命の真っ只中にありました。特に、イギリスきっての工業都市、バーミンガムには、当時の最新技術と最新テクノロジーが結集し、こういった一流の研究成果を生み出す素地は十分にあったのだと思います。
また、当時は現在ほど科学や技術が細分化されていなかったため、科学者や技術者が互いの技術や理論、成果を持ち寄って、その中からさらに新しい成果を生み出していくということが、ごく自然に行われていたのだと思います。
現在は事情はずいぶん変わってきているかもしれませんが、こういった異業種の科学者や技術者の集団が、新たな成果を生むという方法は、現在「IT革命」、あるいは「第2の産業革命」と呼ばれるこの現代でも、大いに参考になるのではないかと思います。

なお、現在でも、この月光協会の精神を受け継いだ「新・月光協会」と呼べる団体が、同じバーミンガムで活動を続けているようです。

… … … … … … … … …

このように、月光協会自体は月の不思議な力でできたわけではないようですが、昔から月はいろいろと人に影響を与えてきたようです。
例えば、満月の夜には犯罪が多くなるとよく言われていますし、人が誕生するのも満月が多いと言われます。しかしこのような月と人の関係は、まだまだよくわかっていないことが多く、定説はないのが現状です。


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■参考資料

  • 世界大百科事典、平凡社
月にも溶岩洞窟があるとききましたが、それはどのくらいあるのでしょうか?また、地球の溶岩洞窟とどのように異なっているのでしょうか?2016-12-30T14:41:50+09:00

月のウサギ模様を示す暗い領域を海と呼びますが、この地域すべてが玄武岩という黒い溶岩の平原で、そこに溶岩洞窟は無数に存在すると考えられています。溶岩洞窟が崩壊すると曲がりくねった溝として写真上に現れますが、その地形は実にありふれたものです。
かつては、月の流水地形(Moon River…そんな映画もありました)として議論されたこともありました。

地球の溶岩洞窟は、例えば富士山麓の氷穴・風穴が有名ですが、それら溶岩洞窟の成因は月も地球も同じです。粘性が小さく、さらさらした溶岩の固まっていない部分が外殻を残して流れ去り、その流路が溶岩洞窟として発見されます。
唯一異なるとすれば、月の溶岩洞窟は天井が崩れないと写真上で見つからないので、新鮮なものが見あたらない、ということでしょう。

2008年、日本の月探査衛星「かぐや」が、月面のマリウス丘という場所で縦穴を発見しました。ここはこのような洞窟の一部が崩れ落ちて穴が開いた場所と考えられており、将来月面に居住する際に有利に使えるのではないかと思われています。

人類初の宇宙飛行士はガガーリンと言われてますが、その以前にも別の宇宙飛行士が宇宙に飛び、地上に着陸する計画があったとのことです。詳しい話を教えて下さい。2016-12-30T14:45:08+09:00

ガガーリンが人類初の宇宙飛行士となったのは1961年でした。この当時、ソ連とアメリカは激しい宇宙開発競争の真っ直中にありました。そのため様々なことが極秘裏に行われ、そこから多くの噂が出てきているのです。

当時でもガガーリンの打ち上げ直後から「彼は第2、第3の宇宙飛行士だ」という噂が出ました。有名な航空機設計家、セルゲイ・V・イリューシンの息子でセルゲイ・イリューシンが既に宇宙を飛んだのだが、着陸に失敗し中国領内に墜落して中国に拘束されていたというものです。
イリューシンの他にジェナルディ・ミハイロフが飛んでいるという話もあります。これらは、当時の宇宙開発が国家間の激しい競争であったことを物語るエピソードと言えるでしょう。

この件については現在のところこれ以上の情報は見つかっておりません。もし何らかの情報をご存じの方は お知らせ 下さい。

小学生の時から不思議だったのですが、なぜ自分が移動すると月もついてきている様に見えるのですか?2016-12-30T14:37:38+09:00

歩いても月がついてくるように感じる。昔からよく言われていることですね。これは本当に月がついてくるのではなく、実は錯覚の一種なのです。

歩いたり、乗り物に乗ったりして移動すると、回りの景色はだんだん変わっていきます。前の方、遠くにあったものは次第に近づき、通り過ぎてまた後ろの方に遠ざかってゆきます。このときに注意してみてみると、近くにあるものに比べて、遠くにある山などは少しずつしか動いていないように見えませんか?
このように、遠くにあるものは自分が動いてもあまり距離や見える方向が変わらないのです。

月は地球からおよそ38万キロメートル離れています。これはわたしたちが歩いたり、乗り物に乗って移動する距離に対してものすごく大きな距離です。
このため、どんなに動いても月との距離も、見える向きもほとんど変わりません。回りの近くの景色が動いて見えるのに、月が同じ場所に見える。このことが月がついてくるように感じられるのです。

特に、月は夜空の中で大きく、また明るい非常に目立つ存在ですから、余計にずっと同じ場所に見えるのが気になるのではないでしょうか。

冬の月はなぜ高度が高いのですか?2016-12-30T14:34:37+09:00

確かに冬の月は空の高いところに見える気がしますね。
太陽が季節によって高度が変わることはよく知られています。夏の太陽は空高く上り、冬の太陽は低くなります。つまり月は太陽と逆ということになります。これはなぜでしょうか。

太陽の一年の動きを天球の上に描いてゆくと、天球を一周する一本の線になります。これを黄道と呼びます(「おうどう」、または「こうどう」と読みます)。実際には地球が太陽の周りを一年に一周しているのですが、地球から太陽の動きを見ていくとこのようになるのです。
さて、黄道をよく見てみると、天の赤道をまたいで北へ行ったり、南へ行ったりしています。これは地球の自転の軸が傾いているからです。黄道が赤道の北にあるとき、これは季節でいうと夏にあたります。この時太陽は空高く昇ります。一番北へ行くときが夏至(6月21日ごろ)です。一方、冬の時は黄道は天の南にあり、太陽の高度は低くなります。最も低くなるのは冬至(12月21日ごろ)です。

さて、話を月に戻しましょう。月にも太陽の黄道と同じように、天球上での動きを描くことができます。これを白道(「はくどう」と読みます)といい、黄道とだいたい同じところを通っています。
ところが月は約27日で白道を巡っていくため、太陽に比べてたいへん早く天球の中を南北に行ったり来たりします。
ここで満月が太陽に対してどこにあるかを考えてみましょう。満月は地球をはさんで太陽の反対側にあります。つまり、冬の頃の満月は夏の太陽とだいたい同じ場所にあることになり、夏の太陽と同じように空の高いところまで上ることになるのです。

2001年1月16日の月は満月だったかどうか教えて下さい。2016-12-30T14:33:24+09:00

満月とは月齢15の月をさします。ご質問の2001年1月16日の月齢は21でしたので、満月ではありませんでした。

なお、ご参考までに、海上保安庁水路部広報測地課の「天文・測地情報&水路観測所のページ」をご紹介します。このページでは日本各地の日月出没時刻と月齢を計算するサービスがあります。
天文・測地情報&水路観測所のページ

ちなみに、月齢20前後の、夜もふけてから昇ってくる月は更待月(ふけまちづき)と呼ばれます。月齢が20を超えると、月の出は午後10時を過ぎてきます。
ちょっと夜更かしが必要ですが、夜型の多い現代人にとっては比較的親しみ易い月といえるでしょう。

かつてオニールという新聞記者が、望遠鏡で月を観測中に見たといわれる、「オニール橋」という地形について教えて下さい。2016-12-30T14:30:18+09:00

オニール橋事件を振り返ってみます。
1953年7月、ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙の科学部長であったJ.J.オニール氏は、月面の「危難の海」の西側に人工的に作られた橋のようなものを発見したと発表しました。

この橋は二つの峰をまたぐような形で、20キロメートルにもおよび、日没時には観測できましたが、日の出の時には見えなかった、ということです。
同年8月、英国天文学協会の月研究部長だったH.P.ウィルキンス氏らも同じ構造を確認したと発表しました。しかし、その後この構造は観測できなくなり、見間違いだったのではないかという批判が起こりました。ウィルキンス氏はその批判に抗議し、月研究部長を辞任したそうです。
当時、オニール橋はかなりの話題を呼び、一部UFO研究家などからは巨大なUFOが一時的に着陸していたのではという推測もされたそうです。

その後に打ち上げられた月探査機ルナー・オービターや、クレメンタインなどの月探査機でも、特に人工物のような構造が見つかったという報告はありません。

アマチュア天文観測家の間では、現在でもオニール橋付近はしばしばターゲットとして撮影されることがあるようですが、橋のような構造は見えないそうです。おそらく、光の角度によって月の地形の陰が橋のように見えたのでしょう。


■関連ページ

  • オニール橋付近の写真 (「月世界への招待」内)
    上記のページは、東田守生様のご協力により作成されました。ありがとうございました。

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三日月の日でも、月を眺めるとぼんやりと円く見えることがあります。なぜでしょうか?2016-12-30T14:59:12+09:00

夕方の三日月をみると、光が当たっていない部分が確かにぼんやりと見えることがありますね。これは「地球照」(ちきゅうしょう)という現象です。つまり、地球に照らされて光っているのです。
太陽の光が一度地球に達し、地球からの照り返しを月の影の部分をほんのりと浮かび上がらせているのです。

特に地球照は、月が細いときに目立ちます。
これは、月の明るい部分が少なくて地球照の暗い部分が目立つだけでなく、実際に地球照の部分も明るいのです。
月が地球から見ると細く見える場合は、月は地球から太陽の方向にあります。すなわち、月から見ると地球はほぼ満月に近い形に見えるのです。そのために、地球からの太陽光の照り返しの量も多く、地球照が明るく見えるのです。

かつては地球照で光っている部分は、月でも地球でもない別な世界であると考えられたこともあります。
日が沈んで暮れなずむ西の地平線近くに夕暮れのオレンジ色のグラディエーションと、金色に輝く鎌のように細く輝く三日月、その影にほんのりと浮かび上がる地球照を見たら、だれでも別世界と思うかもしれません。

昼間でも月が見えるのはどうしてなのですか?2016-12-30T15:02:09+09:00

月はとても明るく輝く天体です。
なにしろ、地球からの平均距離は38万キロメートルと、他の惑星とは比べものにならないほど近い距離にあります。満月の時には、なんとか新聞が読めるほどです。
それほど明るく輝いていますので、昼であっても空の明るさに打ち勝って、見えることがあるのです。

昼の間、地上では太陽の光によって空一面が真っ白になってしまいます。太陽の光が地球の大気に含まれる水蒸気やちりなどにあたって散乱するからです。
この散乱の光が通常は星や月の光を打ち消してしまいます。ですが、空気の澄んだ高い山や、飛行機から見ると、その散乱光がとても少なくなって、深くて暗い青空になります。
そうすると打ち消されていた弱い光も見えるようになります。明るいときの金星なども肉眼で見ることが出来るほどです。ですから、金星よりも明るい月は、空の明るさに打ち勝って見えることが多いのです。

日本の火星探査機「のぞみ」が月に近づいたそうですが、そのときになにか新しい発見はありましたか?2016-12-30T15:00:53+09:00

全く新たな発見というものは、ありません。というのは、大気現象のある火星と異なり、月の表面はアポロの時代から大きくは変化していないからです。
月の撮像の主目的は、カメラの能力の確認にあります。特に、衛星の回転を利用して広範囲を撮像する方法がうまくいくか、CCD(カメラに搭載されている撮像素子。光を受けてそれを画像データへと変換する役割を果たす)が宇宙において劣化していないか、明るい地域、暗い地域が撮像可能かといった点が重要です。

ただ、のぞみの月の画像の1つ、月の裏側全面を一度に視野におさめた写真というのは、これまでに、あまり撮像されていませんでした。
ジョルダーノ・ブルーノという新しいクレーターがあるのですが、その放出物が非常に明るく、遠方まで散らばっているのがカメラでもよく確認できました。


1998年12月18日16時35分(日本時間。第2回の月スイングバイ時)に、
「のぞみ」により撮影された月の裏側の写真。距離は月面から2800キロ。空間分解能は1.3キロ。
赤い矢印が、ジョルダーノ・ブルーノ・クレーター。
(クリックするとより大きな写真を表示できます)


1998年12月17日11時2分(日本時間。第2回の月スイングバイ時)に、
「のぞみ」により撮影された月の裏側の写真。距離は月から20万キロ。
(クリックするとより大きな写真を表示できます)


1998年12月18日10時3分(日本時間。第2回の月スイングバイの約6時間前)に、
「のぞみ」により撮影された月の裏側の写真。距離は月から44580万キロ。
(クリックするとより大きな写真を表示できます)


1998年12月18日16時20分(日本時間。第2回の月スイングバイ中)に、
「のぞみ」により撮影された月の裏側の写真。距離は月面から4483キロ。
画面中に暗く写っているのはモスクワの海。
(クリックするとより大きな写真を表示できます)


「のぞみ」により撮影された月の裏側の写真のモザイク画像。
1998年12月18日16時39分(日本時間)に撮影された2枚、
16時40分(同)撮影の9枚の画像、合計11枚の画像をつなぎ合わせたもの。
(クリックするとより大きな写真を表示できます)


「のぞみ」により撮影された月の裏側のツィオルコフスキークレーターの画像。
12月18日16時40分(日本時間)に撮影。
(クリックするとより大きな写真を表示できます)

いずれの写真も、出典は http://www.stp.isas.jaxa.jp/nozomi/MIC/1219_j.html  。
Copyright: ISAS/JAXA。


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人類が月に降り立って40年も経ちましたが、まだ月に住めないのはなぜですか?2016-12-30T15:05:56+09:00

アポロ11号が月に降り立ったのが1969年。それ以来、宇宙開発の技術は著しい進歩を遂げてきました。かつてのSFでは、21世紀になれば月面基地ができ、普通の(訓練を受けていない)人間でも月旅行ができる、などといわれてきました。

しかし現実問題としては、まだ月に住むどころか、人間を月に送ることができるロケットすら、私たちは持っていません。もちろん、かつてはサターンV型ロケットのような、人間を月に送ることができるロケットを持っていたのですが、今はないのです。また、スペースシャトルは地球の周り(高さ300キロ程度)を飛ぶことを目的としていますので、月まで行くことはできません。

なぜ私たちはまだ月に住めないのでしょうか。まず、技術的な面ですが、月に住むという点からいえば、月の昼間だけに限定すれば、現在の技術で月に居住することはおそらく可能だと考えられます。
いま国際宇宙ステーション(ISS)の建設が進んでいますが、宇宙ステーションで使われている居住施設の技術は、そのまま月面での滞在施設の建設技術として使うことができます。宇宙ステーションの環境と月面の環境は、重力などを除いてそう大きく変わりませんので、その技術の延長線上で、月面基地を構築することがおそらく可能でしょう。

ただ、問題は長期的な滞在を目指す場合です。特に、月の夜を克服する技術が非常に困難です。これは、

  • 月の夜の間のエネルギーの確保(太陽光がないため、太陽エネルギーが使えない)
  • 長期滞在のための、空気および水など、人間が生きていくための必須物質の確保

などがあります。
こういった問題を克服するために、世界中で研究が進められています。国際宇宙ステーションの長期滞在などもそのための一環ですので、今後早いうちに解決のめどが立つのではないでしょうか。
月面まで人間を輸送する手段については、各国で将来を見越した開発が行われています。
アメリカでは「コンステレーション計画」の一環として「オライオン」という宇宙船を開発していましたが、この計画は2010年に中止されてしまいました。ただ、将来的に宇宙船を開発していく予定です。中国やインドも有人月探査を進めようとしています。

ただ、これまでそのようなロケット・宇宙船を開発してこなかった理由としては、経済的、政治的な問題が大きいと思います。経済的な面からいえば、超大型の有人ロケットを開発するのに費用がかかること、また打ち上げなどにも費用がかかることが大きな問題です。また、超大型のロケットは月に人を送るためだけにしか使えないため、通常の人工衛星などの打ち上げに使うにはコストがかかりすぎるということもあります。
政治的な問題は、国が月に人間を送ることを決断するかどうかということです。巨額の費用が見込まれる計画を国として進めるかどうかという問題が大きいのです。

いずれにしても、技術的な問題は、国際宇宙ステーション計画の延長線上で少しずつ解決されていくと思われます。また、経済的な問題も、技術の進展でコストが下がってくれば解決する見通しが出てくるでしょう。いずれは月に人が戻り、数日、あるいは数ヶ月滞在するということになると思います。


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アポロ計画のとき、日本はなぜ、月に人を送らなかったのですか?2016-12-30T15:06:58+09:00

アポロ11号で、人類がはじめて月に降り立ったのは、1969年7月21日(日本時間)です。特に若い人は、当時の世界や日本の宇宙開発状況をご存じないという人も多いと思いますので、ここであらましを述べておくことにしましょう。

1960年代の宇宙開発は、当時政治的、軍事的に対立していた、アメリカと旧ソ連(いまのロシアやウクライナ、カザフスタンなどを含めた社会主義の連邦国家)との間の競争でした。
どちらが軍事力がより強大であるか、また技術が進んでいるか、ということを争っていたわけで、それを端的に示すことができる宇宙開発が必然的に競争となったわけです。
例えば、世界ではじめて宇宙空間を飛行した人間は、旧ソ連のユーリ・ガガーリンです(1961年4月12日)。もちろん、アメリカも旧ソ連が有人宇宙開発を進めていることは知っていましたから、必死になって準備を進めていたのですが、わずかの差で追い抜かれたのです。アメリカ人ではじめて宇宙空間に出たのはアラン・シェパード宇宙飛行士ですが、それはガガーリンの初の宇宙飛行からわずか1ヶ月弱あとの1961年5月5日、しかも、弾道飛行という形でした(地球を周回していない)。いかにアメリカと旧ソ連が激しい競争を繰り広げていたかがわかります。

1960年代は、アメリカや旧ソ連諸国以外でも宇宙開発は進められていました。しかし、この2カ国のレベルに比べると圧倒的にその進み方は遅かったといえるでしょう。
1962年にはイギリスがアメリカのロケットではじめての人工衛星「エーリアル1号」を打ち上げています。1965年11月26日にはフランスがディアマンロケットを使ってはじめて人工衛星の打ち上げに成功、これで、フランスは世界で3番目の、独自開発のロケットを使って人工衛星の打ち上げに成功した国になりました。
逆にいいますと、1969年時点では、独自ロケットによる人工衛星の打ち上げに成功していたのは、アメリカ、旧ソ連、フランスの3カ国だけだったという状況なのです。

では、当時の日本はどうだったのでしょうか。
日本の宇宙開発のスタートは、1955年、「ロケットの父」といわれる糸川英夫博士が、ペンシルロケットの発射実験に成功したところから始まります。しかし、ロケットが徐々に大型化したとはいっても、開発は順調に進んだわけではありません。
特にこの時期(1960年代後半)には、日本のロケット開発は苦難の時期を迎えていました。当時開発中のラムダロケットは4回にわたる失敗(4回目の失敗は1969年9月22日)で、まだ日本は人間を宇宙に送るどころか、人工衛星を宇宙へ送り出すことすらできない状態にあったのが、1969年7月の状況だったのです。
なお、日本が最初に自国開発のロケットで人工衛星「おおすみ」を打ち上げることに成功したのは、その翌年の1970年2月11日。これにより日本は、世界で4番目に人工衛星を(自分の国の技術で)打ち上げることができた国となったのです。

一方で、アメリカからの技術導入によって、より大型のロケットを打ち上げようという動きも一方では起きていました。特に大型のロケットで商用衛星を打ち上げようという気運が高まり、この流れは最終的に「宇宙開発事業団」(NASDA)という国の機関へとつながっていきます。
しかし、このNASDAが設立されたのが1969年10月1日です。そして、このNASDAが最初にN-Iロケットを打ち上げたのはさらに後、1975年でした。

つまり、1969年当時の日本は、ロケット作り、そして宇宙へ向かう苦闘の時代にあり、アメリカや旧ソ連のはるかあとを追いかける存在だったのです。月どころか宇宙空間が遠いという時代でした。
日本が月にまで届く衛星を打ち上げたのは1990年、宇宙科学研究所が打ち上げた「ひてん」でした。
アポロ11号の月着陸から40年近く経って、2003年には、日本で2つあった宇宙機関(宇宙科学研究所とNASDA)は1つの宇宙機関「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)として統合されました。JAXAは2007年、月探査衛星「かぐや」を日本独自のロケットH-IIAで打ち上げました。日本の技術も、ようやくここまで進んできたのです。


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なぜ、月は南の空を通るのですか?2016-12-30T15:09:18+09:00

ちょっと意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、月は南の空を通っていきます。
なぜそうなるかというと、月の運動も、太陽の運動と同じように、地球の自転が原因で起きているからです。同じものが原因である以上、月の運動も太陽のように、南の空を通っていくことになるのです。

この運動は、ちょうど太陽の運動と逆の形になり、太陽の高さが高い夏の月は、低い位置に見えます。逆に、太陽の高さが低い冬の月は南の空の高いところに輝きます。

最近では、無料のも含めて様々な天文シミュレーションソフトがありますので、ある場所の月の動きを、日付などを決めて自由に追いかけることもできるようになりました。ですが、もしお時間があれば、例えば毎日同じ時間に、月がどの方角のどのくらいの高さにあるか、調べてみるというのも面白い自由研究になると思います。


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■参考資料

  • 白尾元理著、「月のきほん」、誠文堂新光社、2006年
月面の土壌を用いて農業を行うとして、地球から運ばねばならない元素にはどのようなものがあるでしょうか?2016-12-30T15:13:55+09:00

月面で穀物や野菜などの作物を栽培するためには、作物の生育に適した環境を持った栽培設備が必要になります。
この設備では、植物の生育に必要な光、二酸化炭素、水、栄養分を適切に供給し、内部の空気環境の温度や湿度を制御し、光の昼夜のサイクルを制御してやらねばなりません。

作物の栽培には一般に次のようなものが必要です。

物質

水, 二酸化炭素(CO2), 養分(チッ素, リン, カリウム, カルシウム, マグネシウム, ケイ素, イオウ, 鉄, マンガン, ホウ素, 銅, 亜鉛, モリブデン, 塩素)

環境

光 (光量、明暗サイクル),温度,圧力(チッ素が必要)

これらの物質は、地球から運ぶことになるでしょう。水以外の物質は必要となる量が少ないので、当面は月面で生産するより地球から運ぶ方が経済的だと思われます。水は他の物質に比べ桁違いの量が必要となるので、再生処理して再使用し必要量を減らす工夫がいります。それでもまだ多くの水が必要になるでしょう。この水も今のところ地球から運ぶしかありません。月での農業で最大の課題は水の確保となるでしょう。また、人の吐き出す二酸化炭素や廃棄物から発生する二酸化炭素を利用することが考えられますが、この二酸化炭素は生命維持システムで水や酸素として再利用する可能性も考えられています。

植物の栽培には必ずしも土を必要としません。地球の土のように少し手を加えるだけで作物の栽培に適した土になるのと違い、月の土壌を作物の栽培に適した状態にするにはかなりコストがかかります。養分の管理、水の回収再利用など栽培システムを適切に制御できるという観点からは、土を使わない栽培方法の方がよりメリットがあるといえます。
その他に考慮しておく問題として、月の低重力(地球に比べ6分の1)と放射線の問題があります。低重力で作物がどのように生育するかについての十分なデータはまだありません。栽培装置としては無重量の場合よりは技術的にずっと楽になります。
強い電離放射線は、短期的影響と長期的(遺伝的)影響が考えられますが、これもまだ十分にわかっていません。電離放射線を防ぎながら太陽の光をうまく利用する方法を考えるのも、月面の農業の課題のひとつです。

スーパームーンとはなんですか? なぜ起こるのですか?2021-05-26T20:37:07+09:00

スーパームーン (supermoon) とは、地球に特に近づいたときの満月、あるいは新月のことをいいます。地球からよくみえることから、通常は満月のときにスーパームーンと呼ばれることが多いようです。

月は地球の周りを回っていますが、この軌道は円ではありません。楕円形をしているため、地球から遠ざかるときと地球に近づくときとでは距離に差が出ます。
月と地球の間の平均距離は約38万5000キロメートルですが、楕円形の軌道のもっとも端の地点では、地球からの距離は約40万5000キロメートルとなります。逆に、軌道で地球からもっとも近い地点では、地球からの距離は約36万3000キロメートルとなります。
さらに、月と地球の軌道の関係で、これよりもう少し近づく場合もあります。例えば2011年3月19日には、35万6577万キロまで近づきました。

この、地球にもっとも近いところに月がやってきたときに、たまたま地球と太陽との位置が満月、あるいは新月に相当する配置になった場合に、スーパームーンと呼ばれます。満月であれば太陽と月の間に地球が入り、新月であれば太陽と地球の間に月が入ります。
通常の満月に比べて地球に近い場所に月があるため、月は当然のことながらやや大きくみえます。2011年3月19日の満月では、通常の満月に比べて15パーセントほど大きくみえ、明るさも(地球に近いことから)20パーセントほど明るくみえました。

このスーパームーンという言葉は、元々は占星術師のリチャード・ノールが1979年に言い出した言葉であり、学術的なものではありません。また、学術的な定義もありません。
なお、よく満月のときに天変地異が起こり、さらにはスーパームーンのときにはその確率が上がるという噂が立つことがありますが、通常の満月がスーパームーンになるときにも、地球に及ぼされる潮汐力の差はほんのわずかであり、こういった噂には科学的な根拠はありません。


■ 参考資料


月が時折、緑色にみえたりするのですが、なぜですか?2021-05-26T20:37:29+09:00

月が緑色、あるいは燃えるような赤色など、異常な色で見えることがあります。これは、大気の影響と考えてください。
火山の噴火や山火事などで、大気中に大量のちりなどが放出されることがあります。そうしますと、大気中を通ってくる月からの光が散乱されて、緑色や燃えるような赤色といった、変わった色で見えることがあります。1883年のインドネシア・クラカトア火山の噴火の時などや、最近では1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山の噴火などのときに、そのような色で月が見えたという報告があります。


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月までの軌道について、「アポロ」は3日、「かぐや」は約1ヶ月。同じ楕円軌道なのに何がちがうのでしょうか?2016-04-30T19:19:44+09:00

「かぐや」は、以前の計画では月に直接向かうことになっていました。その際には、月までは約5日間で行くことになっていました。
しかし、トラブルなどに備え、地球軌道上で衛星の機能の確認などを行うことにしました。そのため、一見すると非常に時間がかかっているようにみえることになってしまったのです。


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「かぐや」の月探査で、アポロ計画で使用した月面作業車、星条旗の画像が映し出される可能性はあるのでしょうか?2016-04-30T19:18:29+09:00

残念ながら、月面車や星条旗がみえる可能性はきわめて低いものと思われます。

「かぐや」に搭載されている月面カメラの解像度は、だいたい1ピクセルあたり10メートルを少し上回るくらいです。つまり、10メートルより若干小さいものが見分けられるという性能を持っています。
一方、アポロの月面車は長さが3.1メートル。星条旗はせいぜい1メートルもないでしょう。従って、これらが明確に写真に写るということはまずないと思われます。

唯一可能性があるとしますと、例えば月面の朝や夕方のように、太陽光が低い角度から照らしている場合です。このようなときには影が長く映るため、何か長い影をたなびかせているものがみえるかも知れませんが、それが月面車や旗なのかまで識別することは難しいと思われます。

最終的に、「かぐや」探査では、アポロの物体を直接映し出す、ということはできませんでした。しかし、アポロ15号の着陸船の噴射跡を発見することはでき、アポロ以来はじめて、またアポロ宇宙船以外でははじめて、アポロ宇宙船の着陸跡を捉えることに成功しています。
さらに、2009年に打ち上げられたアメリカの探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」は、「かぐや」を上回る、最大解像度50センチというカメラを搭載しており、アポロ着陸地点を撮影し、過去のアポロ探査機の跡などを次々と捉えています。


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アメリカやヨーロッパ、日本といった宇宙先進国が、月に戻って月開発などをしようとしていないのはなぜですか?2016-04-30T19:17:21+09:00

月の資源は確かに魅力的ではあります。しかし、現時点では以下のような理由によって、開発をしようという国はまだ現れていません。

月に資源が豊富かということについて科学者の間でも議論がある
月には確かに、様々な資源があるといわれています。しかし、アポロ計画などによって、月そのものは、金属分が少ない、ということが分かってきました。
月の海には、チタンや鉄などが比較的豊富な場所が存在します。しかし、それらは、地球のように鉱脈になっているわけではありません。海全体にわたって、広く分布しています。そのため、商業的な採掘には向かないのです。

資源を地球まで運ぶためにお金がかかりすぎる
月で資源を採掘したとしても、それを地球に持ってくるためには大変な費用がかかります。また、地球近くの宇宙空間で利用するとしても、今の規模の宇宙ステーションや宇宙船を造るあれば、地球から資材を持っていったほうが安く、早く完成させることができます。

資源採掘のための法的な枠組みが未完成である
宇宙開発に関して基本的な事項を定めた国際条約に、「宇宙条約」があります。ここでは、将来的に月や他の惑星の資源を開発するときの約束事にも触れています。しかしこの条約の中では、基本的には、将来そのようなことが可能になったときに考える、とされています。
法的な枠組みが定まっていないので、企業や国が、月の採掘を具体的に考えるための前提が整っていないといえます。

科学者の中では、宇宙で資源を得る場所として、むしろ地球近傍小惑星(NEA: Near Earth Asteroid)を考えている人が多いようにみえます。
ただ、将来的に月面基地などができたら、月の資源を利用して構築することになるはずです。そのときまでには、上記の技術的、経済的、法的な課題を解決していかなければならないでしょう。

日本の月探査「かぐや」では、長期的には、月にどのような資源があるか、といったことに関しても、重要なデータを提供することになります。また、各国が打ち上げている探査機、特にインドや中国は、将来的に月の資源(特にヘリウム3)の開発を狙っているともいわれています。
このような月に関するデータの蓄積を、将来に向けて少しずつでも進めていくことは、将来月の資源を開発するためにも役に立つことになります。


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月は昔、太陽みたいに燃えていたのでしょうか?2016-04-30T19:00:13+09:00

「太陽みたいに」燃えていたか、というと、月は燃えてはいなかったということになります。太陽は、水素などをエネルギーにして輝いていますが、月は、太陽の光を受けて輝いています。これは月ができたときからずっとそうなっています。
しかし、月ができた頃には、月の表面は熱いマグマで覆われていたと考えられています。その頃はきっと、月は熱く「燃えていた」ように見えたかも知れません。もちろん、太陽の温度よりはずっと低いですが。

月に大きな隕石が衝突して、月の軌道が変わったり、そのために月が地球にぶつかったりする可能性はあるのでしょうか?2016-04-30T19:15:38+09:00

月の軌道が変わるような大きな衝突が起きるためには、相当大きな天体がぶつからなければいけません。少なくとも、ちょっとした大きさの隕石や小惑星がぶつかったくらいでは、月の軌道は変わりませんので、どうぞご安心(?)下さい。

非常に大きな天体が月に衝突する可能性としては、

  • 他の惑星などが軌道を外れ、月に衝突する。
  • 非常に大きな小惑星が月にぶつかる。
  • 太陽系外などから飛んできた非常に大きな天体が、月にぶつかる。

という可能性が考えられます。
まず、惑星が軌道を外れるという可能性ですが、惑星の公転は非常に安定した運動ですので、何らかの理由で軌道を外れる、というようなことはまず起こらないと考えてよいでしょう。
小さな小惑星が軌道を外れて、地球や月にぶつかる、という可能性は、小さいながらもあります。しかし、小さな小惑星では月や地球の軌道を変えることはできません。また、大きな小惑星は、小惑星帯と呼ばれているところで、安定して太陽の周りを回っていますので、これらがやはり軌道を外れて月に向かってくる、ということはまず起こりません。

そうすると、太陽系外から非常に大きな天体が飛んでくる、という可能性だけが残ります。しかし、過去に他の惑星や衛星などに残されている衝突の痕跡などから推定すると、そのような天体が飛び込んでくる確率は極めて低いもので、まずあり得ないといってもよいものだと考えられます。
仮に太陽系外からそういう大きな天体が飛び込んできたとしても、地球の軌道に達するまでに、木星や土星といった、はるかに大きな惑星の引力の影響を受けて、それらの衛星になったり、弾き飛ばされたり、軌道を変えられたりしてしまいます。従って、地球あたりまで達して、さらに月にぶつかるとなると、ものすごく確率が低い話になります。

また、そのような大きな天体が衝突すると、月自体も無傷ではいられないでしょう。破片のような形になってしまえば、その破片が地球に向かうだけでなくて、宇宙空間にばらまかれることも考えられます。

結論としては、

  • 月に隕石がぶつかって軌道が変わるということはない。
  • 月に大きな天体がぶつかって、軌道が変わるということは、確率は極めて低いことである。

ということになります。

月面の地名で日本に関係したものはありますか?2023-07-10T10:02:39+09:00

いきなりですが、どのくらいあると思いますか? たくさんあると思いますか? それともほとんどないと思いますか?

下の表に、日本人に関係した月面の地名の一覧を並べます。アルファベット順になっています。名前にリンクが張ってある方は、この下にさらに詳しいプロフィールを書いてあります。緯度の”N”は北緯、”S”は南緯、経度の”E”は東経、”W”は西経です。

地名 元になった人名 プロフィール 緯度 経度 地形、クレーター直径
Asada 麻田剛立 医者、天文学者
(江戸時代)
7.3N 49.9E クレーター (12km)
Hatanaka 畑中武夫 天文学者 29.7N 121.5W クレーター (26km)
Hirayama 平山清次
平山信
天文学者 6.1S 93.5E クレーター (132km)
Kimura 木村栄 位置天文学者 57.1S 118.4E クレーター (28km)
Murakami 村上春太郎 天文学者 23.3S 140.5W クレーター (45km)
Nagaoka 長岡半太郎 物理学者 19.4N 154.0E クレーター (46km)
Naonobu 安島直円 数学者 4.6S 57.8E クレーター (34km)
Nishina 仁科芳雄 物理学者 44.6S 170.4W クレーター (65km)
Onizuka エリソン・オニヅカ 宇宙飛行士 36.2S 148.9W クレーター (29km)
Osama (下をご覧ください)
Reiko (れいこ) 日本の女性名 18.6N 27.7E 谷 (2km)
Taizo (たいぞう) 日本の男性名 16.6N 19.2E 谷 (6km)
Yamamoto 山本一清 天文学者 58.1N 160.9E クレーター (76km)
Yoshi (よし) 日本の男性名 24.6N 11.0E クレーター (1km)

出典: R. Greeley and R. Baston, The NASA atlas of the solar system (1997)
プロフィールについての出典: 中山茂編、天文学人名辞典、恒星社、1983


麻田剛立 (あさだ ごうりゅう: 1734 – 1799)
天文学者、数学者。天文を小さい頃から独学で学び、併せて医学にも長けていた。医者を本業としながら天文学を研究し、麻田流天学と呼ばれる学派を築いた。三男の立達(りゅうたつ)もまた優れた天文観測者。

畑中武夫 (はたなか たけお: 1914 – 1963)
物理学者、電波天文学者。戦後すぐに電波天文学の先駆的な研究を行った。特に、電波を使った太陽表面の観測で著しい業績をあげている。

平山清次 (ひらやま きよつぐ: 1874 – 1943)
天体力学、古暦の研究で有名。小惑星のうち、極めて互いに距離が近い一群の小惑星を発見した。これらの小惑星グループは、現在では「平山族」「ヒラヤマ・ファミリー」と呼ばれている。また、「一般天文学」などの教科書も著した。

平山信 (ひらやま しん: 1868 – 1945)
東京天文台(現・国立天文台)第2代台長。太陽の理論的な研究、小惑星の観測や発見(Tokio, Nipponia)、軌道決定、日食観測、恒星天文学に多大な業績を残した。

木村栄 (きむら ひさし: 1870 – 1943)
天文学者。位置天文学の分野において、「Z項」(地軸の変動成分のうち、極の運動とは独立に変化している成分。地球内部の変動に関係していると考えられている)の発見という不朽の業績を残している。水沢国際緯度観測所(現・自然科学研究機構国立天文台 地球回転研究系水沢観測センター)初代所長。

村上春太郎 (むらかみ はるたろう: 1872 – 1947)
天文学者、物理学者。同志社理科学校、第七高等学校で教鞭をとる一方で、天文学の普及に努め、「物理学原論」「天文と気象」などの本を著した。退官後は月の運行についての研究に没頭し、「月の摂動の理論」2巻を著した。

長岡半太郎 (ながおか はんたろう: 1865 – 1950)
日本の近代物理学の基礎を築き、多くの学者を育てた物理学者。貴族院議員も務めた。地磁気や重力の測定などを通して、天文学や位置天文学などの領域にも足跡を残している。とくに、原子核モデルについての研究は有名である。

安島直円 (あじま なおのぶ: 1732 – 1798)
和算学者。和算の創始者、関孝和から数えて第4代目の宗統(和算の最高師範)。中国の宣教師から伝えられた天文理論を取り入れて、日食や月食の計算法を編み出したことで知られる。その他にも暦法の計算方法の進歩に貢献した。

仁科芳雄 (にしな よしお: 1890 – 1951)
理論物理学者。原子の構造や量子力学の研究で大きな業績を残した。原子核や宇宙線の研究では、朝永信一郎などの後進を育てた。後年、理化学研究所の所長に就任し、戦後の日本の科学界、さらには日本の国際社会への復帰に大きな役割を果たした。

エリソン・オニヅカ (Ellison Shoji Onizuka: 1946 – 1986)
ハワイ生まれの日系人宇宙飛行士。空軍のテストパイロットを経て、1978年に宇宙飛行士になる。1985年には、宇宙飛行を行ったはじめてのアジア系アメリカ人となる。1986年のスペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故により殉職。

山本一清 (やまもと いっせい: 1889 – 1959)
天文学者、測地学者。水沢緯度観測所で観測を続け、その後花山天文台長に主任。1920(大正9)年には東亜天文学会を結成し、会を主宰した。個人で山本天文台を創設するなど、生涯を通じて天文学の普及、啓発に大きく貢献した。

経歴をみておわかりの通り、月面に名を残した人々は、ほとんどが月を研究していた天文学者、物理学者、数学者などであることがわかります。
ところで、上の名前の中に「泰造」(泰三?大造?)や「玲子」(礼子?麗子?)といった一般的な人名がありましたが、月には日本に限らず、各国の一般的な人名がついた地名があります。例えば、日本人にもなじみのある名前でいえば、フランス人の女性の名前でジュリアンヌ(Julienne)、ロシア人の男性の名前でイワン(Ivan)などがあります。

以上をもとに、もう1つよくある質問として「日本人の名前がついたクレーターはいくつあるか」に回答しておきましょう。ヒラヤマクレーターは2人の日本人の名前がついています。また、エリソン・オニヅカ宇宙飛行士は日系米国人で日本人ではありません。従って、アサダ、ハタナカ、ヒラヤマ、キムラ、ムラカミ、ナガオカ、アジマ、ニシナ、ヤマモト、そしてヨシの10個となります。


追記 (2002.05.08)
日本人の名前がもとになったクレーター名として、”Osama”(王様?)という名前が本などで挙げられていることがありますが、これは実際には、アラブ人の名前「オサマ」(あるいは「ウサマ」)です。


■謝辞

この場を借りてお礼申し上げます。



「かぐや」地形カメラが捉えたナガオカクレーター
出典: かぐや画像ギャラリー、(c) JAXA/SELENE
画像をクリックするとより大きな画像を表示します(サイズ: 3.4MB)


「かぐや」地形カメラが捉えたキムラクレーター
出典: かぐや画像ギャラリー、(c) JAXA/SELENE
画像をクリックするとより大きな画像を表示します(サイズ: 5.3MB)


「かぐや」地形カメラが捉えたニシナクレーター
出典: かぐや画像ギャラリー、(c) JAXA/SELENE
画像をクリックするとより大きな画像を表示します(サイズ: 10.5MB)


「かぐや」地形カメラが捉えたヤマモトクレーター
出典: かぐや画像ギャラリー、(c) JAXA/SELENE
画像をクリックするとより大きな画像を表示します(サイズ: 1.7MB)


「かぐや」地形カメラが捉えたアサダクレーター
出典: かぐや画像ギャラリー、(c) JAXA/SELENE
画像をクリックするとより大きな画像を表示します(サイズ: 3.5MB)

月の地名で「海」や「沼」などと名前がつけられていますが、海も沼もないのに不思議です。なぜこんな名前がついたのですか?2016-04-29T13:14:57+09:00

確かに、水もないのに、月の上には「海」がいっぱいあります。また、「沼」がつく地名もあります。月の真ん中あたりの少し下、「晴れの海」の東側には「腐敗の沼」(Palus Putredinis)という地名があります。また、海や沼だけでなく、「入江」や「湖」といった、水にちなんだ地名が多く存在します。

この由来は、望遠鏡での観測が始まった頃にさかのぼります。
最初に月を望遠鏡で眺めたのは、ご存じの通り、イタリアの科学者、ガリレオ・ガリレイです。1609年、彼は自作の望遠鏡を月に向け、月の表面の模様をスケッチしました。これまでの肉眼による観測と違って、月の表面には様々な模様があることがわかってきました。
これ以降、何人もの観測者によって月の観測が行われ、地図も作られるようになりました。
1645年には、ラングレン(Langren)によって初めて、月の表面の模様に名前がつけられました。1647年にはポーランドのヘベリウス(Hevelius)によって、月の山脈に、地球の山脈の名前がつけられました。今でも、月には「アルプス山脈」「コルディレラ山脈」など、地球の山脈と同じ名前がつけられている山脈があります。
さて、月の地名について最初に体系的にまとめたのは、イタリア・ボローニャの天文学者・理論家・哲学者のリッチオリ(Riccioli)です。彼はそれまでの命名法を捨て去り、その代わりにクレーターや模様、山脈などに体系的に名前を割り振ることを提案しました。1651年のことです。

このときに、リッチオリは、月の表面の暗い部分を「海」と思って、海の地名をつけてしまったのです。また、暗い部分でも小さいところには、沼、あるいは湖の地名を与えてしまいました。これが、現在でも引き継がれているのです。
当時は望遠鏡の性能も低く、肉眼観測がメインでした。また、実際に月には地球と同じように、海や陸があるという考え方もごく当たり前でした。リッチオリが、月の表面のくらい部分に水がたまっていると考えたのも、当時としては無理のないことだったのでしょう。


■回答協力

国立天文台広報普及室(現 天文情報センター普及室)


■関連Q&A


■参考資料

  • 野本陽代著「ふたたび月へ」 丸善ライブラリー(1996)
  • Antonin Rukl, Astronomy Atlas of the Moon, Kalmbach Books, 1990
諸外国の月探査計画について教えて下さい。2016-04-29T13:12:59+09:00

いま計画されている月探査計画につきましては、「月・惑星へ」コーナーの「月探査」にて詳しく解説されていますので、そちらをご覧下さい。


■関連Q&A

月経などのほかに、月のリズムと関係しているできごとというのはあるのでしょうか?2016-04-29T13:07:15+09:00

月のリズム、という部分を、月の潮汐、という形に置き換えると、生物の活動をはじめ、いろいろなことが月の潮汐リズムと関係していることがわかってきています。

動物
動物の行動リズムの中には、月の満ち欠けの周期と関係が深いものがあります。
有名なものにはサンゴがあります。サンゴ(サンゴは植物のようにみえますが、立派な動物です)は、満月や新月などの大潮の日に産卵を行うことが知られています。そのほかにも、カニの中には、大潮の夜に、卵からかえったばかりの幼生を海に帰す行動をとるものがあることが知られています。

これらの行動は、大潮の日が潮位の差が激しくなり、潮流が強くなるため、産まれた卵や幼生などがより遠くまで運ばれる(つまり、より生き延びる確率が高くなる)ことを利用していると考えられます。
では、どのようにしてこれらの生物が月の満ち欠けを知るようになったのか、ということについては、現在でもよくわかっていません。大潮の時期を知ることができた種だけがより生き延びる確率が高かったため現代まで生き延びている、という考え方もありますが、そうするとではそもそもどうやって知ったのか、という根本的な疑問が残ってしまいます。
この不思議がわかれば、動物と月との関係に新たな知識が開かれるかも知れません。

地震・火山活動
従来から、地震や火山活動は、満月や新月などの時期が多いといわれていました。最近になって、それを裏付けるような研究が発表されました。
2010年1月28日、防災科学研究所は、2004年に発生したスマトラ島沖の巨大地震の前後に発生した地震を調べた結果、月や太陽の引力がこれらの地震の発生に強く関与している可能性が高いことを見つけ出したと発表しました。
同研究所の田中佐千子研究員が発表された論文によると、地震が集中していた時間帯は地球潮汐が最大になる時間帯に集中していたということです。
気をつけなければいけないのは、潮汐の力によって地震が引き起こされるのではない、ということです。地震自体のエネルギーは、地球潮汐の力の1000分の1以下に過ぎません。しかし、地球潮汐の力が、十分にひずみがたまっている地殻に「最後の一押し」として作用する可能性は十分にあります。
また、統計で気をつけなければならないのは、地震と満月・新月との関係を論じる記事の中には、意図的に満月や新月の日に発生した地震しか掲載していないものもあるということです。上記のように科学的にしっかりと考察された論文ではなく、ただ満月や新月の日に起きた地震だけを並べて「満月や新月の日には地震が多い」といっても説得力はありません。統計的にみれば毎日世界中のどこかでは地震が起きているわけで、特に満月や新月の日に集中して起きているわけではありません。
いずれにしても、今回の防災科学技術研究所の研究は、将来的な地震予知などにつながる貴重な成果であることは確かです。

人間活動
人間の活動に月のリズムが深く関わっている、という説は、昔からいろいろと唱えられてきました。
よくいわれるのが、人間の活動が月の周期、特に潮汐周期と深く関係があるという説です。例えば、新月や満月の時期に犯罪が増加したりするという説があります。確かに、満月や新月の時期と合わせて犯罪数が増加しているようにみえるのですが、この点については調査方法や分類、あるいは「たまたまそのようにみえるデータだけを出してきたのではないか」という批判もあり、あまり根拠がないものといえるでしょう。
また、「人間の出産が満月や新月の時期に多い」という根強い説もあります。これは、上で述べたような動物の産卵と関係していわれるのかも知れませんが、これについても沖縄やアメリカ・カリフォルニア州などで行われた大規模な調査により、そのような関係がないことが明らかにされています。
そもそも、潮汐力が人間の体に与える直接的な力は本当にごくわずかなもので、例えば、私たち自身を地球が引っ張っている重力などに比べてもまったく小さな力です。ですから、潮汐力が私たちの体のリズムを支配しているとか、ましてや犯罪などの精神的な面をコントロールしているということはきわめて考えにくいことといってよいでしょう。

かつて、「満月の日に犯罪が多い」という理由の中には、満月の日は外が明るいため、外出する人が多い、あるいは夜遅くまで外出している人が多い、ということがあったと考えられます。そのような人が犯罪に襲われたりする確率は、当然外出している人が多い満月の日に大きくなるはずです。
そのような意味では、月のリズムが人間の行動を支配しているという点はあるかも知れませんが、それは合理的な理由があっての話であって、超自然的な意味で「人が月のリズムに支配されている」ということは(少なくともいまのところわかっている限りでは)ありません。


■関連ページ


■参考資料

  • Newtonムック「月世界への旅」、株式会社ニュートンプレス、2009
  • と学会著(山本弘、志水一夫、皆神龍太郎)、トンデモ超常現象99の真相、洋泉社、1997
  • A.L.リーバー著、藤原正彦、藤原美子訳、増補・月の魔力、東京書籍、1996
「月経」というように、月と我々の体のリズムは結びついているようにみえます。これは本当なのでしょうか? 他の動物などでも同じようなリズムを持っているのでしょうか?2023-07-10T10:02:39+09:00

まず月経ですが、これは、女性の子宮内膜から、一定の周期(通常は約28日)で出血がみられる現象をいいます。
この28日という周期は、月の満ち欠けの周期(約29.5日)に極めて近いものです。そこで、古代から、この月経の周期は月に深く関係していると考えられてきました(「月」経という名前自体がそのことを物語っています)。

しかし、実際に29.5日で規則正しく月経周期を持つ人というのは少ないようです。日本の女性の場合、平均すると月経の周期は30.4日で、しかも多くの人の周期は25~36日となっています。
確かに、月の満ち欠けの周期に近いことは近いですが、月経の周期には個人差もありますので、月経周期が月によって支配されているとは言えません。
参考までに、人類に近い、霊長類の月経周期がどのようになっているか、表でみてみましょう(世界大百科事典(平凡社)より抜粋し引用)。

動物 月経周期(日)
リスザル 24~25
マーモセット 14~17
ニホンザル 27~28
カニクイザル 26~38
アカゲザル 28
ブタオザル 32
ボンネット 30
ヒヒ 32.3
テナガザル 29.8
オランウータン 29~32
チンパンジー 34~35
ゴリラ 30~39
ヒト 28

霊長類の月経周期が比較的似通っているという点は興味深いですね。
しかし、似通っているとはいっても、月の満ち欠けの周期と比べるとずれがあります。人間に遺伝学的にも近いとされているチンパンジーでも、月経周期は34〜35日と、人間とはかなり違っています。
なお、月経周期がなぜ、月の満ち欠けに近い周期になっているのか、その理由は分かっていません。


■参考資料

  • 世界大百科事典(平凡社)
月の地名はどのようにして決まっているのですか? 自分の名前をつけることができますか?2016-04-29T13:02:00+09:00

月に限らず、天体の地形に名前をつけているのは、国際天文学連合(IAU: International Astronomical Union)です。
ここには、下部組織として惑星システム命名ワーキンググループ(WGPSN: Working Group for Planetary System Nomenclature)という組織があります。このワーキンググループは、月や惑星の表面に新しい地形や特徴物が発見されれば、IAUに対し、適切な名前を提案する役割を持っています。
このWGPSNが提案した名前は、最終的にはIAUによって承認されなければいけません。

さて、こういった月や惑星についての命名方法は、慣例という形でまとめられています。その文書(下の関連ページ参照)を元にして、月の地名について考えてみましょう。

まず、新しい名前をつけるためには、月の表面に新しい地形や特徴物が発見される必要があります。
新しい地形が発見されますと、まずそれがどのような分類に属するか(例えば、クレーターなのか、山脈なのか、あるいは別のものなのか)、また特徴的な地形については、IAUのタスクグループにより命名されます。
その後、解像度が高い画像が送られてきたら、観測者や研究者、あるいは一般の人であっても、名前についてコメントをすることはできます。そのコメントは IAU内のタスクグループを通じてWGPSNへ送られ、議論が行われます。この段階でWGPSNで承認されれば、この名前が「仮の地名」として使われることになります。
そしてこの地名は、最終的にIAU総会により承認が得られれば、正式な地名となります。

では、地名として名前をつける場合には、どのような制限があるのでしょうか? 先ほどの命名についての文書から、いくつかの条件を抜き出してみましょう。

  • 政治的、宗教的、あるいは軍事的に意味をもつような名前を採用してはならない(但し、19世紀以前の有名な政治家を除く)。
  • 命名される人物は、国際的にも評価されている人物でなければならない。命名の対象者は、少なくとも亡くなってから3年は経過している必要がある。
  • 命名される地形は100メートル以上のものである必要がある(天体の大きさにもよりますが、月の場合にはまずこの規則は通用するでしょう)。

また、月にはいろいろな地形がありますが、それらの名前はどのような人々の名前をつけているのでしょうか? これにも規約があります。

クレーター
大きなクレーターは、既に亡くなっている科学者、学者、芸術家の名前から取られる。また、小さなクレーターは、一般的に使われる名前(ファーストネーム)が使われる。なお、谷や断裂は、近くにあるクレーターの名前をとる。

湖、海、沼、池(平原地形)
ラテン語の天気、あるいは抽象的なものをあらわした言葉からとる。

地球の山脈の名前、または近くにあるクレーターからとる。

近くにある山脈の名前からとる。

峡谷
近くにある地形につけられた名前からとる。

以上からおわかりかと思いますが、あなたが学者や芸術家で、月についての大きな貢献をしたら、あなたの名前が月のクレーターに残される可能性はあります。
但し、名前がつくのは没後ということになりますから、クレーターに名前がついているのをみて喜ぶ、ということはできないでしょう。


■関連ページ
※以下のページはすべて英語です。

最新の月の探査計画はどこで調べることができますか?2023-07-10T10:02:39+09:00

私たちが月に限らず、太陽系の探査計画についての情報を得たいときに、まず最初にアクセスするのが、アメリカ、NASAの国立宇宙科学データセンター(NSSDC)のウェブサイトです。
このウェブサイトの中に、太陽系の各天体への探査計画についての情報が掲載されたページがあり、その中に、月探査のページもあります。

http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/planets/moonpage.html
(英語)

このページは、過去から未来の月探査についての情報を網羅しており、探査計画について調べるときにはたいへん参考になります。

アメリカ以外の国・組織の場合、なかなかまとまった情報がなかったり、英語で公開していないというケースが多いようです。
そのような中で、中国の場合は人民網日本語版(人民日報の日本語版)の月探査に関するページが役立ちます。

http://j.people.com.cn/95952/100426/index.html

 

これから行われる月探査計画の最新情報を日本語で知るためには、月探査情報ステーションの「月探査機」をご覧いただくのがよろしいかと思います。現在世界で計画されている月探査計画の一覧、及び最新情報が日本語で掲載されています。
また、このページから将来の各探査計画へのリンクも貼られていますので、より深く知りたい方は、そのリンクを参照して、各探査計画のページ(ほとんどは英語ですが)を調べてみるのがよいと思います。

将来打ち上げられる探査機の最新動向については、適宜月探査情報ステーションブログで追いかけています。月探査のカテゴリーでは、月探査全体について動向を一度に把握できますので、便利かと思います。


■関連Q&A

月の写真などを手に入れたいと思いますが、どのようにすれば入手できますか?2023-07-10T10:02:39+09:00

ここでは、ウェブ経由で写真をダウロードしてご覧になれるサイトをご紹介します。また、ご紹介しているページは、主に探査機が撮影した月の写真をご覧いただけるサイトです。
特に断り書きがない限り、すべてサイトは英語です。

NASA’s Planetary Photojournal
http://photojournal.nasa.gov
NASAが運営する、月・惑星探査により得られた画像を公開しているサイト。ここでご覧いただける月の写真は、最近打ち上げられた月探査機(クレメンタイン、ガリレオなど)が撮影した月の画像です。カラーのものも多いですし、一風変わった、画像処理後の月のイメージなどもあります。
NASA Image eXchange (NIX)
http://nix.nasa.gov
NASAが運営する写真アーカイブです。NASAの各センターにある写真を横断的に検索するためのシステムです。
アポロなどが撮影した月の写真も数多く公開されています。最初の画面ではキーワード検索を行う形になっていますので、例えば”Moon”や”Apollo”といったキーワード(もちろん英語です)で検索すると、いろいろな画像をみることができます。
NASA Images
http://www.nasaimages.org
NASAに関する写真を一堂に集めた、民間非営利団体「インターネットアーカイブス」が運営するサイト。この中にはNASAのアポロ計画などをはじめとする月探査計画で撮影された写真が数多く収められています。また、ほぼすべての画像について、高解像度の画像をダウンロードすることも可能です。検索機能やお気に入りの画像などをネット上にストックしておける機能なども充実しています。
JSC Digital Image Collection
http://images.jsc.nasa.gov
NASAジョンソン宇宙センター(JSC)の画像アーカイブ。ジョンソン宇宙センターはアポロ時代から宇宙探査の司令センターとして機能してきましたが、そこにある膨大な写真をデジタル形式で閲覧することができます。残念ながら写真の最高解像度は640×480と低いのですが、写真番号を手がかりに、別サイトでより高解像度の写真を探す、といったときには便利でしょう。
Solarviews.com: Moon Image
http://www.solarviews.com/cap/moon/
おなじみのアポロ計画の月写真が中心です。説明もついていますし、解像度もかなり高いので、加工して使うのもいいかもしれません。説明を頼りにして、適当な画像を選ぶとよいと思います。
Astronomy Picture of the Day
http://apod.nasa.gov
よく”APOD”と略称される、有名な天体・探査写真の公開サイト。月に限らず、探査機が撮影した写真や、天体写真などを、毎日日替わりで公開しています。新しい写真もあれば、歴史的な日を振り返る意味で過去の写真が載ることもあります。また、Pictureとなっていますが、最近は動画が掲載されることもあります。
Apollo Image Gallery
http://www.apolloarchive.com/apollo_gallery.html
アポロアーカイブというサイトの中にある、文字通り、アポロ計画の写真をデジタル形式で公開しているサイトです。全部ではありませんがかなり多数の写真が、元の写真からスキャンされて公開されています。一部に関しては高解像度の写真も閲覧・ダウンロードすることができます。
ESA Multimedia Gallery
http://www.esa.int/esa-mmg/mmghome.pl
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の画像・動画ライブラリです。ここでは、ヨーロッパの月探査機「スマート1」が撮影した月の画像などをみることができます。検索の際、トピックで”Solar System”(太陽系)、サブトピックで”Moon”と選択することによって、月の画像・動画をみることができます。
中国・嫦娥計画の月探査写真公開サイト (中国語)
http://moon.bao.ac.cn
中国語のみのサイトではありますが、閲覧は可能です。メニューで「中国探月数据配布」(日本語で表記しています)では、嫦娥2号などで撮影された画像をみることができます。また、ウェブでみられる月の地図もあります。

なお、写真をダウンロードしたりご覧になる場合には、各サイトでのご利用条件をお守りになってご利用ください。
また、日本の探査機「かぐや」については、以下の関連Q&Aのリンクからお進み下さい。


■関連Q&A

月から物を持ち帰ってきたときに、病原体などに汚染されているという可能性はあるのでしょうか?2016-04-29T12:46:33+09:00

もちろん、私たちは宇宙の全てを知っているわけではありません。ですから、宇宙のどこかに微生物がいて、それが月にも降ってきている…という可能性は、ものすごく低い確率であっても、0ではありません。
そこで、アポロ計画においては、月に存在しているかもしれない微生物を地球に持ち込まないために、厳密な手続きが踏まれました。月から送られてきたサンプルを扱う施設に入るためには、服を着替え、シャワーを浴び、裸のまま紫外線を浴びなければなりませんでした。

アポロ11号(はじめて月に着陸した宇宙船)が月からサンプルを持ち帰ったとき、サンプルは真空にした装置の中に置かれ、実験や解析は、窒素を満たした装置の中で行われました。サンプルをねずみや鳥などに食べさせて、異状がないかどうか確かめることも行われました。
もっとも、当時の科学者も、月に微生物がいると考えていなかった人が多かったようです。その後、サンプルには危険性がないことが分かって、アポロ14号以降は、真空中でサンプルを扱うこともなくなりました。
結局、アポロ宇宙船が地球に帰還したときに、宇宙飛行士が病原体に汚染されていたり、持って帰ってきた岩石から未知の病原体が検出された、ということはありませんでした。

ただ、より身近で、もっと気をつけなければならない可能性は、地球の微生物により月を汚染してしまう可能性です。

こんな例があります。アポロに先立って打ち上げられたアメリカの無人月探査機、サーベイヤー3号の部品を、すぐ近くに着陸したアポロ12号の宇宙飛行士が回収しました。
この回収した部品を調べたところ、その中のテレビカメラの中に、微生物がいることが発見されたのです。はじめは月に微生物がいるといわれましたが、結局、この微生物は地球上で普通に見かけられる「連鎖球菌」と呼ばれるものの一種であることがわかり、地球起源であることが確認されました。


サーベイヤー3号の部品を回収する、アポロ12号のアラン・ビーン宇宙飛行士。
写真の後ろには、アポロ12号着陸船がみえる。
(Photo by NASA, AS-12-48-7135)
(写真をクリックするとより大きな画像が表示されます。サイズ: 158KB)

しかし、このことが示す可能性は重要です。つまり、月のように、真空と強い放射線と低重力という環境の中でも、微生物は「立派に」生き延びることがわかったのです。実際、サーベイヤー3号の着陸からアポロ12号による回収まで、この微生物は2年6ヶ月にわたって、月面上で生きていたわけです。
もし、他のアポロ着陸船や宇宙飛行士たちの宇宙服が、地球の微生物で「汚染」されていて、それが月で今も生きているとすれば…。あるいは、月にたどりついた地球の微生物が、月に降り注ぐ強烈な放射線で突然変異を起こして、人間や動植物に害を及ぼす微生物に変わってしまう可能性も、否定できません。

宇宙に地球の生物を持ち込んで、月や惑星の環境を汚染しないこと、また、宇宙から地球へ生物を持ち込まないようにすることを「宇宙検疫」といいます。宇宙ステーションや月・惑星探査が活発になるこれからの時代に向けて、宇宙検疫の重要性はますます増えているといえます。

国連や各国の宇宙機関などで現在、宇宙検疫のための基準作りや検討が進んでいます。特に、地球の生物が宇宙環境にどのくらい適応できるのかについて調べたり、宇宙船を殺菌するための技術を検討することは重要です。また、持ち帰ってきたサンプルをいかに安全に保管するかについても研究が必要です。


■謝辞

本稿の執筆にあたっては、東京工業大学大学院生命理工研究科の小池惇平博士に、資料のご提供をはじめ多大なご協力をいただきました。この場を借りましてお礼申し上げます。


■関連ページ


■参考資料

  • 小池惇平、地球外環境と微生物、「遊・星・人」, Vol.3, No.3, 1994
  • 小池惇平、アンドロメダ病原体が襲って来る−今、なぜ宇宙検疫の国際基準が必要か?−、CELSS JOURNAL、vol.8,No.1別冊、1995
  • 河島伸樹、小池惇平、図解・火星探検、PHP研究所、1997
もし私たちが月に行ったとして、月でしてはいけないことというのはあるのでしょうか?2016-04-29T12:43:29+09:00

月に行ったときに守らなければいけないことは、宇宙条約及び月協定に書かれていることになります。ですから、次のようなことはしてはならないことになります。

  • 月を軍事目的で利用すること。例えば、月に軍事基地を作ったり、ミサイルの発射基地を作ったり、月に(軍用で)地球の監視基地を作ったりすることはできません。
  • 上に近いことですが、月を含む宇宙空間に、核兵器などの「大量破壊兵器」を設置することも、宇宙条約で禁止されています。
  • 月などで軍事演習を行うことも、やはりできません。
  • 月を勝手に自分の国の領地として宣言すること。例えば月の一部分を日本の領土だとして、他の国からの人間をそこに立ち入らせない、といったことは許されません。
  • 月の資源は全人類の共有財産ですから、そこから勝手に資源を取ってきたり、国や個人、会社などが利用してしまうことはできません。
    ただし、どのように利用すればよいかについては、月協定の第11条にあるように、月の資源が利用できるような技術ができたときに、改めて考えることになっています。
  • 月は全人類の共有財産ですから、勝手に月の一部を自分の国の領地にしたり、個人や会社などで占有することもできません。ですから、例えば月を宅地として売り出すことも、できないわけです。

また、明確に禁止されていないのですが、条約から読み取れることとしては、次のようなことがあります。

  • 非政府機関(例えば、個人や会社など)が月などで活動をする場合には、あらかじめ関係当事国の許可をもらうことが必要です。ですから、何人かが集まって勝手に月にロケットを打ち上げる、というわけにはいきません。
  • 月面の基地や月面の探査機などは、条約に加盟しているすべての国が平等に利用できるものです。例えば日本が作った月面基地をアメリカ人に使わせない、ということはできません。

ただ、月協定は締結した国に対して有効ですので、条約に加盟していない国が、例えば月の一部を領地だと宣言してしまったり、資源を(勝手に)取って帰るということがあっても、今の枠組みでは防げないということになります。
なお、月協定は1984年7月11日に発効しています。批准している国はオーストラリア、メキシコなど13ヶ国、署名している国が4カ国です(2010年8月現在)。日本は批准していません。


■関連Q&A


■参考資料

  • 宇宙開発データブック(宇宙開発事業団編集、(財)日本宇宙フォーラム発行)
「かぐや」にはどのくらいの人が関わっているのですか?2016-04-29T12:38:17+09:00

「かぐや」の開発は、大学や研究所、会社などから研究者や技術者が加わって「ワーキンググループ」と呼ばれる組織を作って、その中で開発を進めていました。ワーキンググループとは、一言でいえば「ゆるやかな集まり」といってよいと思いますが、月の研究をしていたり、衛星の開発をしている人などが、「かぐや」開発のために集まっていたとお考え頂ければよいと思います。

ワーキンググループの中には、さらに各機器ごと、あるいは重要なテーマ(例えば、軌道やデータ処理など)ごとにさらに個別のワーキンググループが作られて、その中で議論や開発が進められていました。

ワーキンググループの人数はほぼ300人ほどです。もちろん、みな所属も立場もバラバラですから、この人たちが1つの場所に集まって開発をしているわけではありません。年2回くらい、全体会議を行っていました。

また、実際に装置を作ったり、衛星の開発を行う人、事務的な仕事を行う人なども含めますと、ほぼ1000人くらいの人たちが、「かぐや」のために働いていたといってよいでしょう。


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月を探査するときに、守らなければいけない国際条約などはあるのでしょうか?2016-12-31T14:51:27+09:00

まず、すべての宇宙開発、宇宙探査の前提となる条約として、通称「宇宙条約」といわれている国際条約があります。 宇宙条約の正式名称は「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」という、大変に長いものです。この条約は、宇宙開発や探査についての基本となるもので、すべての条約加盟国は、これに沿って探査や開発をしなければいけないことになっています。この条約には、日本も1967年10月10日付けで批准しており、その基本的な内容は、次のようなものです。

  • 月などの天体は、どのような国家の領土、占拠地ともならない。
  • 月などの天体を、軍事的な目的で利用してはならない。

この宇宙条約に基づき、月や惑星などを探査する際の基本原則を定めた条約が、月協定(月その他の天体における国家活動を律する協定)です。
この協定は、月や他の天体における活動について、より詳細に定めたものです。例えば、

  • 月などに基地を設置する場合には、国連の事務総長にその旨を連絡しなければならない。
  • 月の資源は人類の共有財産である。
  • 非政府団体(企業や団体など)が月などにおいて活動をする場合には、管轄国が責任をもって監督を行う。

月協定は1984年7月11日に発効しています。現在のところ、批准している国は、オーストラリア、メキシコなど13ヶ国、署名している国が4カ国です(2010年8月現在)。日本は批准していません。


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■参考資料

  • 宇宙開発データブック(宇宙開発事業団編集、(財)日本宇宙フォーラム発行)
「かぐや」の撮影した月の写真や映像などは我々が見ることができますか?2023-07-10T10:02:39+09:00

「かぐや」が撮影した写真や映像などは、2009年11月から一般公開されています。また、それ以前からも、いくつかの写真は一般の人が見ることができるようになっています。
以下、いくつかご覧いただけるサイトをご紹介します。

かぐや画像ギャラリー
http://www.kaguya.jaxa.jp/gallery/index_j.html
「かぐや」搭載の観測機器が撮影した写真やデータなどの一部を、一般の方にみやすい形で提供しているサイト。月面の写真としては、観測機器(左側の「観測ミッション」)の中から、TC(地形カメラ)、MI(マルチバンドイメージャ)を選ぶとよい。

かぐや3Dムーンナビ
http://wms.selene.darts.isas.jaxa.jp/3dmoon/
「かぐや」が撮影したデータや画像、映像などを、3D表示によって閲覧できるサービス。
このサービスを受けるためには、上記サイトより、NASA WorldWindの特別版をダウンロードし、コンピュータにインストールする必要がある。利用条件などは上記ページの「利用マニュアル」を参照のこと。現時点で、Windows, MacOS X, Linux, Solarisなど、Javaが利用できる環境ではたいてい動作する。

グーグルアース (Google Earth)
http://earth.google.co.jp/intl/ja/moon/
グーグルアースは、地球上のさまざまな地点をみることができる有名なアプリケーションだが、この中に月面のモードがある。このモードでは、「かぐや」の画像が基本画像(背景の画像)として用いられている。
「月モード」にするためには、グーグルアース上部の「天体」のアイコン(土星型のアイコン)をクリックして「月」を選ぶ。

JAXAデジタルアーカイブス
http://jda.jaxa.jp
JAXAが所有する膨大な写真や映像などを公開しているサイト。フォトアーカイブスでは、「かぐや」が撮影した画像や、「かぐや」搭載のハイビジョンカメラの映像から切り出された静止画、「かぐや」開発時の映像などを見ることができる。また、ビデオアーカイブスでは、「かぐや」搭載のハイビジョンカメラが撮影した映像を見ることができる。
「かぐや」写真・映像については、フォトアーカイブス、ビデオアーカイブスとも、「ジャンル」は「人工衛星・探査機」、「カテゴリー」は「月・惑星探査」、「ミッション」は『月周回衛星「かぐや(SELENE)」』を選択する。
あるいは、下の一覧からであれば、「人工衛星・探査機」→「月・惑星探査」を選び、「ミッションの選択」で上記と同様、『月周回衛星「かぐや(SELENE)」』を選択する。

ユーチューブ「JAXAチャンネル」
http://www.youtube.com/user/jaxachannel
JAXAがユーチューブ(YouTube)上に開設している、JAXA映像公開用のチャンネル。
「かぐや」搭載のハイビジョンカメラで撮影された映像を公開している。閲覧のためには、「再生リスト」から「月周回衛星かぐや」を選択する。一部映像についてはハイビジョン画質(1080p)での再生も可能。

月探査情報ステーション「かぐや」ギャラリー
https://moonstation.jp/ja/history/Kaguya/gallery/

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  • かぐや (月探査情報ステーション)
  • かぐや (「かぐや」プロジェクトチームウェブサイト)
「かぐや」はアポロ宇宙船などと比べても大きいのですか?2016-04-29T12:32:21+09:00

「かぐや」は、周回衛星(本体)、リレー衛星、VRAD(ブイラド)衛星からなります。サイズはそれぞれ以下の通りです。

周回衛星
重量:約2トン(周回観測軌道投入時)
大きさ:2.1メートル×2.1メートル×4.8メートル

リレー衛星、VRAD衛星
大きさ:1メートル×1メートル×0.65メートル
重量:それぞれ約54kg

これに対してアポロ宇宙船は、司令船、機械船、月着陸船からなっていて、司令船と機械船が結合したものは母船と呼ばれます。それぞれ大きさは次のようになっています。

司令船
重量: 約6トン
大きさ(円錐形): 底部直径3.9メートル
高さ3.2メートル

機械船
重量: 約25トン (重さは厳密には、各宇宙船の目的によって異なります。)
大きさ: 直径3.9メートル
長さ7.4メートル

月着陸船
重量: 約15〜16トン
大きさ: 長さ(高さ)約7メートル
着陸脚間距離: 9.5メートル
居住容積: 4.5立方メートル

アポロ宇宙船は「かぐや」に比べると桁違いに大きいのです。
ちなみに、最近のアメリカによる月探査機ルナープロスペクターは、円筒形で高さ1.3メートル、直径1.4メートル、重量295キログラムでした。
また同じくアメリカの月探査機クレメンタインの大きさは、直径1.14メートル、高さ1.74メートルで、打ち上げ重量は462キログラムでした。


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「かぐや」のイラストや写真をみると、外観が真っ黒です。これは、ほかの衛星や昔のイラストと、どこが違っているのですか?2016-04-29T12:36:22+09:00

普通、衛星のイラストや写真をみると、衛星の表面は金色の布のようなもので覆われています。これは、衛星がMLI(多層断熱材)と呼ばれているもので覆われているためです。
宇宙空間には空気がありません。そのためそのため、そのままでは日の当たるところでは直射日光で温められることになり、一方日光の当たらないところは放射冷却によって極端に熱を奪われてしまいます。
これらの温度環境から衛星に搭載される機器類をを守るため、衛星の表面はMLIと呼ばれる薄い膜素材で覆うのです。

さて「かぐや」が黒い理由ですが、実はこのMLIの表面が黒いからなのです。では、なぜ「かぐや」はこのMLIを使うのでしょうか?
その答えは、「かぐや」の観測性能を上げるためです。「かぐや」は月そのものを観測するけでなく、月の周り宇宙空間の環境を調べる装置や、月から地球を観測する装置など、数多くの装置を搭載しています。このような装置がお互いに正確な観測を行えるようにするためには、衛星の内部から漏れ出してしまう電磁場をなるべく小さくしなければなりません。

「かぐや」が使う黒いMLIは、通常使われる金色のMLIに比べて、衛星の内部から発生してしまう電磁場を外に漏らさないようにする効果が優れています。そのため、「かぐや」にはこの黒いMLIが使われることになり、全体が「真っ黒」にみえるようになっているのです。


「かぐや」の新しい(実際に打ち上げられた形に近い)イラスト


「かぐや」の1990年代後半当時のイラスト。
全体が金色のMLIで覆われているのが当時の想像図。


2007年6月、種子島宇宙センターで報道公開された「かぐや」。
確かに全体が黒いMLIで覆われている。
写真をクリックするとより大きな写真をご覧いただけます。
出典: JAXAデジタルアーカイブス, Photo: JAXA

 

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  • かぐや (月探査情報ステーション)
  • かぐや (「かぐや」プロジェクトチームウェブサイト)
ルナーAでは月の写真を撮る予定だったのですか?2016-04-29T12:26:36+09:00

はい。ルナーAにはカメラが積まれていて、月の写真を撮ることが計画されていました。
ルナーAの母船には、LIC(Lunar Imaging Camera: エルアイシー、またはリック)と呼ばれるカメラが搭載される予定でした。LICは、ルナーAの母船に積まれています。母船は、月の回りを回りながら、 LICで写真を撮影したり、ペネトレータから送られてくるデータを地球へ中継することになっていました。

このLICは、月の上空、高さ200キロメートルから月の表面の写真を撮ることになっていました。このカメラの分解能(2つの離れた物体を見分ける能力)は最高で約20メートルです(つまり、最高の条件下では、20メートル離れた2つの物体をみ分けることができるというわけです)。
カメラ自体はモノクロですので、残念ながらカラーの月の写真は得られないことになっていました。また、ルナーAの軌道の制約から、撮影される画像は赤道付近(南緯・北緯約20度の範囲内)に限られることになっていました。それでもLICを使って、月の表面の地形を調べたり、写真を利用して衛星の軌道を推定する実験などが行われる予定でした。


■謝辞
この回答の作成にあたっては、宇宙科学研究所・惑星研究系(現・JAXA宇宙科学研究所固体惑星研究系)の横田康弘さんのご協力を頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。


月の上空を飛行するルナーA母船(想像イラスト)。
(イラスト: 宇宙科学研究所)
写真をクリックするとより大きな絵をご覧頂けます(サイズ: 78KB)


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ルナーAで開発された地震計は、地球で使っているものと同じですか?2016-04-29T12:24:04+09:00

ルナーAのペネトレーターに搭載される予定であった地震計は、宇宙用に開発された小型軽量で、たいへん感度の高い地震計です。
月は地球と違って、人工的なノイズが全くないですし、地球の地震計に記録されるようなノイズ(例えば、波が浜辺に打ち寄せるときの振動など)もたいへん少ないため、地震計の感度を上げることができます。かつて、アポロが月に地震計を持っていったときにも、当時世界最高の地震計よりも10倍ほど感度が高い地震計を持っていきました。

地震計の感度と一口にいっても、周波数によってその感度が違ってきます。ルナーA計画のために開発された地震計では、月の地震(月震)で最も多いと思われる波の周波数(0.5ヘルツ)付近の感度が特に高くなるように設計されています。いま一般的に用いられている高感度地震計に比べても、これは10〜100倍程度感度が高いものです。

ただ、宇宙用といっても、地球で使っている地震計と基本的な仕組みは同じものです。


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ルナーAではペネトレーターに地震計を積んで月に向かう予定だったそうですが、ペネトレーターは月面にものすごい勢いでぶつかると聞きました。それでも地震計は壊れないのですか?2016-04-29T12:18:47+09:00

ルナーA計画では、ペネトレーターは、母船から切り離されると方向を変え、月表面に自由落下していく予定になっていました。
減速用のモーター(小型ロケット)も姿勢制御機構も持っていませんので、そのまままさに自由落下します。そして、月の表面に秒速300メートル(時速1080キロメートル)というすさまじい速度で激突します。このときの衝撃は、瞬間的ですが実に1万Gという、とてつもないものです。

普通ですと、そのような速度でぶつかれば探査機は当然壊れてしまうはずです。しかもペネトレーターには、測定機器の中でも振動にもっとも弱い、地震計を積んでいます。このようなとてつもない衝撃が受けても、中の地震計などの計測機器はちゃんと動作するのです。
これは、ペネトレーターがちょうど1つの「かたまり」のようになっているからです。ペネトレーターの中には、地震計や電子回路、電池がぎっしりと詰まっていますが、そのすき間にはさらに、エポキシ樹脂を流し込んで、中はすき間なく固められています。そのため、ペネトレーター全体がかたまりとなって突入します。中にすき間がありませんから、衝撃で中で機械が動いたりして、壊れることもないというわけです。

もちろん、地震計や熱流量計といった観測機器なども、衝撃に耐えるように実験や理論計算を繰り返して作ってあります。
また、ペネトレーターの先頭は滑らかな形状をしていますが(これをオジャイブ型といいます)、これも貫入のときの衝撃がなるべく少ない形を選んだものです。ペネトレーターの外側(構体) も、軽くて強いCFRP(炭素繊維で強化したプラスチック)でできています。

こういった工夫で、ペネトレーターは月にぶつかるときの強烈な衝撃に耐えられるようになっているのです。



月面に突入するペネトレータ(想像図)(イラスト: JAXA宇宙科学研究所)
イラストをクリックするとより大きな絵をご覧頂けます(サイズ: 82KB)


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ルナーA計画では「ペネトレーター」というものを使う予定だったそうですが、これはどのようなものなのですか?2016-04-29T12:09:49+09:00

ペネトレーターは、槍型をした探査機器です。大きさは高さが約80センチメートル、直径が16センチメートルほどのものです。
このペネトレーターの語源は、英語のpenetrate(突き刺さる、突き進む)から来ています。これは、この槍型の観測機が、月に文字どおり「突き刺さる」ことから名付けられた名前です。

アポロ計画などでは、月に着陸機がゆっくりと降りていきました。このように、天体の表面に降りていくときになるべく衝撃がないように降りることを「軟着陸」といいます。
しかし、このようなやり方ですと、減速するためのロケットも必要ですし、制御するための複雑な仕組みなども必要になります。そのために着陸機が重くなってしまい、観測装置などを運ぶことが難しくなってしまいます。

では、小さなロケットで観測機器を月の表面に持っていくためにはどうしたらよいでしょうか? そのためには、軟着陸ではなく、月の表面に探査機を「落とす」ようにすればよいわけです(硬着陸、ハードランディングともいいます)。
ペネトレーターは月の表面にまさに激突して、地面の中にもぐりこみます。槍型の本体の中には地震計と熱流量計を積み、これによって月の内部に起こる地震(月震)を観測します。その伝わり方を調べて、月の内部がどのようになっているかを知ろうというのが、ルナーA計画の目的なのでした。



ペネトレーター。下に写っているのはA4サイズの紙ですので、
どのくらいのサイズかがおわかり頂けるかと思います。
(写真: JAXA宇宙科学研究所)
写真をクリックするとより大きな絵をご覧頂けます(サイズ: 35KB)


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はじめて月に行った日本の探査機は何ですか?2016-04-29T12:06:35+09:00

はじめて月に向かった日本の探査機は、1990年1月24日に文部省宇宙科学研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)が打ち上げた「ひてん」(第13号科学衛星MUSES-A、打上げにはM-3SII-5ロケットを使用)です。
「ひてん」では次の8つの実験が計画されました。

  1. 月の重力を利用した「スイングバイ」という軌道変更技術の習得。特に月に繰り返し接近して加速し減速する二重スイングバイを行う。
    (第1回は1990年3月19日に、第2回は1990年7月10日に成功し、二重スイングバイ達成)
  2. 月周回軌道に孫衛星「はごろも」を投入する (1990年3月19日に成功)
  3. スピン安定型衛星としては世界で初めての光学航法装置を用いた軌道決定実験
  4. 新しい衛星搭載用計算機の機能確認と「パケットテレメトリ」という新しいデータ送信技術、データ処理の実験
  5. ドイツのミュンヘン工科大学と共同で微小宇宙塵の観測
  6. 新開発のインジウム・リン太陽電池を「はごろも」に使用
  7. X帯通信系を日本で初めて搭載
  8. 地球からの高度をおよそ120キロまで降下させ、地球上層大気との摩擦により減速させるエアロブレーキ実験を世界で初めて行う
    (第1回は1991年3月19日に高度125キロでの実験成功、第2回目は1991年3月30日に高度120キロでの実験成功)

なんだか難しそうですが、「ひてん」は、将来の月・惑星探査に必要な軌道を変更したり、衛星をコントロールする技術や、データを送るのに効率のよい技術等を学び、実際に使えるかどうか試験するための工学実験衛星だったのです。
例えば、スイングバイは地球から遠く離れた惑星探査には欠かせない、燃料を節約する技術であり、全部で8回行われました。またエアロブレーキ実験は世界で初めてということで海外からも注目されました。

これらの実験を無事に行い、その後さらに追加実験として、

  • 2つのラグランジュ点 (L4、L5) 周辺での宇宙塵の観測
  • 燃料消費が最も少ないとされるホーマン軌道を使った「ひてん」の月周回軌道への投入
  • 月面への衝突

を行いました。
1993年4月11日に衝突したときの発光現象は、シドニー郊外にあるアングロ・オーストラリアン天文台でとらえられました。秒速2.5キロで衝突した「ひてん」は、今も東経55.3度、南緯34.0度、ウサギの耳(カニのハサミ)の先端よりやや南にあるステビヌス・クレーター付近に転がっているはずです。

ひてん
重量: 185キログラム(ヒドラジン燃料42キログラムを含む)
高さ: 79センチメートル
直径: 1.4メートル (円筒形)

はごろも
重量: 12キログラム (内蔵の減速用固体ロケットKM-L 5キログラムを含む)
高さ: 36.5センチメートル
対辺寸法: 40センチメートル (26面体)



ひてん (出典: JAXAデジタルアーカイブス, 写真: JAXA)
クリックするとより大きな画像をご覧いただけます。


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LUNAR-Aはなんと読めばいいのでしょうか?2016-04-29T12:05:09+09:00

LUNAR-Aは「ルナーエー」と発音して下さい。

SELENEはなんと読めばいいのですか?2016-12-31T14:51:13+09:00

SELENEは「セレーネ」と読んで下さい。

旧ソ連ではなぜ、有人月探査をしなかったのですか?2016-04-29T11:42:52+09:00

冷戦時代、アメリカと旧ソ連は宇宙開発競争をしていました。旧ソ連も有人月探査を考えて計画を進めていたようです。
実際、最初に月に到達したのは旧ソ連のルナ2号ですし、ルナ3号では初めて月の裏側を撮影、ルナ9号では軟着陸を成功させています。
また、1968年のゾンド5号・6号では生物をのせたカプセルを月に向かって打ち上げ、地球での回収に成功しています。

旧ソ連では、実際にはアメリカに対抗し、有人ロケットの開発を進めていました。その先頭に立って指揮をしていたのが、当時の旧ソ連きってのロケット技術者、コロリョフ(コロレフと書かれている本もあります)でした。
旧ソ連では、ソユーズ宇宙船を使って人間を月に送り込むという計画を立てており、1960年にはその計画が承認されました。そのために開発されるロケットは、地球低軌道に60〜80トンもの重量の宇宙船を送り込むことができるほど強力なもので、このロケットはN-1と名付けられました。

コロリョフを中心として、旧ソ連ではこのN-1ロケットの開発が進められます。それと並行して、宇宙飛行士による宇宙飛行が次々に行われ、着実に有人飛行の経験が積み上げられていきました。
しかし、開発の遅れ、政府からの圧力などの様々な要素が加わり、さらに、開発を指揮していたコロリョフ自身が、過労から体をこわし、1966年にこの世を去ります。
このあと、旧ソ連はロケットや宇宙船開発などで次第にアメリカに遅れをとるようになっていきます。そして、1969年2月、ようやく完成したN-1ロケットの初打ち上げが行われましたが、ロケットは発射直後に大爆発、打ち上げは失敗に終わりました。
その半年後、アポロ11号が月面へと着陸、人類がはじめて月に降り立つことになるのです。

旧ソ連の有人月探査は、こうしてアメリカとの競争に敗れるという形で終了しましたが、この間に蓄積された有人宇宙技術は、現在でもロシアの宇宙開発に活かされています。
また、ロシアが行ってきた無人月探査「ルナ計画」は、無人ながら月面のサンプルを持ち帰るなど、多くの成果を挙げています。


■参考資料

月に水が見つかったという報道をみたのですが、それはどのようにして見つかったのですか?降りて測ったのですか?2023-07-10T10:02:40+09:00

1994年1月25日に打ち上げられた米国のクレメンタイン探査機は、レーダーを月面に向けて発射し、その反射波を地上で受信して、電波の強度や偏波の程度から月面の構造・物性を探る観測実験を行いました。
その結果、1994年4月9日から10日にかけての観測で、南極を中心とする緯度2.5度の範囲で、偏波の強度が急に強くなることが観測されました。考えられる原因として最も可能性が高いのは、水の氷のような気化しやすい物質が氷結していることです。

極地域は太陽高度が低いため、クレーターの壁の陰になって太陽の光が永久に当たらない場所(永久陰)があります。このような場所に、かつて月に衝突した彗星からもたらされた氷が蒸発せずに残っているのではないか、と推測されました。
ただし、このレーダー観測は、存在する物質の量、表面の状態、測定の感度等が結果に影響するので、氷の存在を確定的にするものではありませんでした。また、同じ様に永久陰のある、月の北極周辺の観測では氷の存在するような反射波はありませんでした。

その後、1998年1月6日、ルナープロスペクター探査機がNASAによって打ち上げられました。この探査機は水の氷を探すための中性子分光器を搭載していました。
中性子分光器は、直接水の氷を見つけることはできませんが、次のような原理で間接的に水の存在を推定します。
宇宙線が物質に当たったときに飛び出す高速の中性子は、水素原子にぶつかったときにだけ減速されます。氷の中には水素原子が含まれるので、速度の遅い中性子を検出することで、氷の存在量を推定できます。月面に常に吹き付ける太陽風も水素原子でできていますが、もしも水が十分に存在すれば、太陽風による水素原子の量よりも水分子に含まれる水素原子の量のほうがずっと多いはずです。

1998年3月5日、月の両極付近に氷が存在する可能性が高いと発表されました。
それによると、氷が存在すると考えられている地域は、北極で広さ10000~50000平方キロメートル、南極で5000~20000平方キロメートルに及んでおり、クレーターの土の中に0.3~1パーセントの割合で氷が含まれるとすると、氷の総推定量は1000万トン~3億トンと予想されました。
さらに観測と分析を続けたNASAは、1998年9月、この予想を大きく上回る総推定量60億トンの氷が存在すると発表しました。

その後、ルナープロスペクターは1999年7月31日に南極に衝突しました。衝突によって水蒸気の煙が上がるのではないか、と期待された計画でしたが、水蒸気は検出されませんでした。

月に氷があるかどうかという問題を解決するには、探査機を着陸させて表面を掘り、直接月の水(氷)の量を測定することが必要ですが、着陸探査は技術的にもかなり高度なものです。
そこで計画されたのが、「月面に物体を衝突させ、そこから舞い上がったチリの成分を観測することで、内部にある水の量を推定する」という作戦でした。まさにこのような計画のために作られた探査機が、エルクロス(LCROSS)です。

2009年6月19日に打ち上げられたエルクロス探査機では、同年10月9日、月の南極地域にあるカベウスクレーターに衝突ました。巻き上がるちりの内容を調べた結果、月面の土(レゴリス)の中には、5パーセントもの氷が含まれているという、驚くべき結果が判明しました。これらの水は、ルナープロスペクターで予想された通り、彗星からもたらされた、という推測が現実味を帯びてきました。
月面における氷の存在がかなり確実になってきたいま、今度は着陸探査で(ちょうど火星で「フェニックス」探査機が行ったように)、実際に掘削して氷の存在を確認するような探査が行われると、より確実に氷の存在、そして量がはっきりとわかることでしょう。


■関連Q&A


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旧ソ連の月探査はあまり知られていませんが、どのようなことをやったのですか?2016-04-29T11:37:08+09:00

旧ソ連の行った月探査としては「ルナ計画」(24回)と5機からなる「ゾンド計画」があります。
アメリカの有人月探査アポロ計画が有名なため、あまり注目されませんが、初の月面への探査機衝突、初の月フライバイ、初の月の裏側撮影、初の軟着陸、初の月周回、初の地球への帰還を果たした月周回機など、旧ソ連も多くの月探査をアメリカに先駆けて成功させています。また、有人ではありませんが、無人月面車による探査や、無人探査機によるサンプル・リターンも行われました。


■参考ページ

ルナープロスペクターというのはどのような意味なのでしょうか?2023-07-10T10:02:40+09:00

ルナープロスペクター (Lunar Prospector) は、1998年1月6日に打ち上げられた、アメリカ・NASAの月探査機です。
高さ1.3メートル、直径1.4メートルの円筒形の胴体に長さ2.4メートルの3本のマストがついた、小型で簡単な構造になっており、重さは燃料を満タンにしたときでも295キログラム(普通の乗用車の4分の1の重さ)です。

プロスペクターとは、探鉱者という意味で、月の表面全体について鉱物資源の存在や分布を探査し、月の構造や進化を知ることを目的としていました。
鉱物資源といっても金や銀を探すわけではありません。人間が月面で活動するときに必要な水や、将来宇宙基地を建設するのに使える鉱物、エネルギー資源となる水素、ヘリウムなどが調査の対象です。

ルナープロスペクターには次の観測機器が搭載されていました。

● 中性子スペクトロメーター
月の表面にある水素・ヘリウムの存在を検出します。水分子には水素が含まれるので、中性子スペクトロメーターは氷が存在するかどうかも調べることができます。今回の探査で、月の南極と北極には氷があると報告されました。

● ガンマ線スペクトロメーター
月の表面の元素組成(月面基地建設に利用できるアルミニウム・チタンや、放射性元素であるカリウム・トリウム)や、分布を調べます。

● アルファ粒子スペクトロメーター
月の地下から放出される、ラドンやポロニウムなどの放射性のガスが放出するアルファ粒子を検出します。

● 磁力計
地球磁場、太陽風による磁場、及び非常に弱いながらあるといわれている月の磁場を計測します。

● 電子反射計
月面の磁気異常を計測します。

その他に、衛星の運動のドップラー効果を測ることで、月の重力場についても詳しく調べました。

ルナープロスペクターは1999年7月31日に、月の南極に氷があるかどうかを確かめるため、月面に衝突し、その使命を終えました。
探査機が衝突したときにあがる水蒸気が地球から観測できるのではと考えられていましたが、分析の結果、今回の衝突では残念ながら水蒸気は観測されませんでした。しかし、

  • 氷のある地域に当たらなかった
  • 水分子が鉱物に取り込まれてしまっているため、水分子が観測されるには衝突のエネルギーが足りなかった
  • 望遠鏡の視野が狭かったので観測できなかった
  • 水蒸気の動きが速すぎてとらえられなかった
  • クレーター壁などにさえぎられて見えなかった

といった説もあり、ルナープロスペクターの衝突の結果だけでは、月に実際に水があるかどうかについて、結論を出すことができませんでした。

最終的に月に水が存在することをほぼ確実に確かめたのは、2009年に打ち上げられた探査機「エルクロス」ということになりました。
こちらは、事前にルナー・リコネサンス・オービターの観測により、水が多そうな地域を割り出しておき、その領域に衝突することで、月面に水(氷)が存在することを確実に裏付けることに成功しました。


ルナープロスペクター探査機 (想像図: NASA)
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今、クレメンタインはどうなっているのでしょうか?2016-04-29T11:30:28+09:00

アメリカ国防総省やアメリカ航空宇宙局(NASA)などが協力して、1994年1月に打ち上げられた月探査機クレメンタインは、約2ヶ月にわたって月の周りを回り、100万枚を超える写真を撮ったり、月の起伏などについてのデータを集めたりしました。

さて、クレメンタインには月の観測を終えた後、今度は小惑星ジオグラフォス(Geographos)に向かう予定が組まれていたのです。予定では、同じ年の8月31日に、ジオグラフォスへフライバイを行うことになっていました。
しかし、1994年5月7日、月からジオグラフォスに向かおうとしているときに、搭載コンピュータに不具合が発生してしまいました。このため、探査機に積まれていた噴射装置(スラスター)が動作しっぱなしになってしまい、全ての燃料を使い切ってしまったのです。

この不具合のために、クレメンタイン探査機はジオグラフォスに行くことができなくなってしまいました。それだけではなくて、スラスターの暴走によって衛星は毎分80回転という異常なスピードで回転するようになってしまいました。
探査機が制御できなくなったため、探査計画はこの時点で中止されました。現在、クレメンタイン探査機は、地球を回る軌道を回り続けていると思われます。しかし、今どこにいるのかは全くわかりません。まさに、クレメンタインは”lost and gone forever“(永遠に失われた)となったわけです。


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クレメンタインという探査機の名前の由来について教えて下さい。2016-04-29T11:28:37+09:00

「クレメンタイン」と聞いて、何かぴんと来た方はおいででないでしょうか。そうです。この「クレメンタイン」は有名な西部劇の映画から名前をとっています。

1946年に公開された、「荒野の決闘」(英語題名: My Darling Clementine)という西部劇の傑作があります。
ジョン・フォード監督の手になるこの映画は、OK牧場の決闘を軸に、伝説の保安官ワイアット・アープと、鉱夫の娘クレメンタインとの淡い恋を描いた映画です。この映画のテーマ「愛しのクレメンタイン」(英語題名は映画と同じ)も大ヒットしました。この曲自体は、1884年に作られたアメリカの民謡です。
その1番は、こんな歌詞です。


In a cavern, in a canyon,
Excavating for a mine,
Dwelt a miner, forty-niner,
And his daughter Clementine.

Oh my darling, oh my darling,
Oh my darling Clementine
You are lost and gone forever,
Dreadful sorry, Clementine.
(注)原曲は11番まであります。

—————————————–

(翻訳)
洞窟に、谷の奥に、
金の鉱脈を求めて掘り続ける
1849年の金鉱掘りが
その娘、クレメンタインと一緒に住んでいた。

おお、愛しの、おお、愛しの
おお、愛しのクレメンタイン
君はもうここにはいない、ずっと遠くへ行ってしまった
すごく悲しいよ、クレメンタイン

—————————————–

歌詞中に出てくる”Forty-niner”とは、カリフォルニアに金鉱が発見されたため、金鉱発見を目指して「一山当てよう」と西海岸へと流れ込んできた金鉱探しの人々を差します。当時は未開の新天地カリフォルニアに夢を求めてやってきた人々が、1849年に大挙して西海岸に押し寄せた “Forty-niner” (直訳すれば「49年の人」)なのです。
このように大量に押しかけた金鉱掘りの人たちが、カリフォルニア州の基礎を築いただけでなく、現在のカリフォルニア州の産業を興す元ともなりました。
サンフランシスコに拠点を置くアメリカンフットボールのチームは「サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ」です。
なお、曲のメロディーは「雪山賛歌」と同じです。


さて、ではなぜクレメンタインなのでしょうか?
クレメンタイン探査機には、分光カメラという装置が搭載されています。このカメラは、可視光線から赤外線まで、いろいろな波長の光を撮影することができるようになっています。
岩石がどのように光を吸収するかを測ることによって、それがどのような鉱物でできているかを知ることができます。つまり、この分光カメラは、月の表面がどのような物質でできているかを調べるための装置です。
つまり、この装置は鉱脈を探して歩く鉱夫のような役目を果たしていることになります。この意味から、鉱夫に関係の深い「クレメンタイン」の名前が探査機につけられたのです。

また、探査機自体も、月の探査が終わってしまえば、”lost and gone forever”、つまり、地球に戻ってくることなく永遠に太陽系空間をさまようことになります。その意味からも、さすらいながら金脈を求め続ける鉱夫になじみの深いクレメンタインこそ、この探査機にふさわしい名前ではないでしょうか。

偶然だとは思いますが、クレメンタインが打ち上げられたまさに同じ年(1994年)に、OK牧場の決闘を取り上げた映画「ワイアット・アープ」が公開されています。

クレメンタインという探査機が月に行ったそうですが、これはどのような探査機なのでしょうか?2016-04-29T11:44:43+09:00

クレメンタインは、アメリカ国防総省(DoD)、アメリカ航空宇宙局(NASA)、弾道研究所(BMDO)などが共同開発した、月探査機です。
クレメンタインは、1994年1月25日に、カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から打ち上げられました。2月21日に月を回る軌道に入った後、約2ヶ月にわたって月の表面を詳しく調べました。

クレメンタインは、いろいろな点でこれまでの月探査機と大きく異なっています。
まず、NASAだけではなく、国防総省などがからんでいるのが大きな違いです。もともとのクレメンタイン探査機の目的は、SDI(戦略防衛構想)計画で培われた部品の小型化の技術がどこまで確かなのかを、月探査機という形で実証することにありました。

また、これまでの探査機に比べて、非常に小さい点も特筆すべきでしょう。
クレメンタインは、重さが227キログラムしかありません。アポロなどのように数十トンもある探査機は例外として、これまでの月・惑星探査機が1トン近くあるような大型のものばかりであったことを考えると、異例ともいえる大きさです。
これらは、SDIの技術によって小型化が進んだ機械を搭載することにより、達成されたものです。

クレメンタインには、可視光から赤外線までを撮影できるカメラと、レーザ光を発射して月の起伏を測定する装置(レーザ高度計)が搭載されました。また、軌道を測定して月の重力場を測る実験や、クレメンタインから発射した電波を地球で受信して、その周波数の振れ具合を調べて月の表面がどのようになっているかを調べる実験なども行われました。この電波の実験から、月の表面に氷があるらしいことがわかってきています。



クレメンタイン探査機 (イラスト: NASA)
絵をクリックすると大きいイラストがご覧になれます。


クレメンタイン探査機が撮影した、ガガーリン・クレーター付近の写真。
疑似的にカラー合成をしています。
(写真: NASA、米国地質調査所)


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アポロ計画はなぜ17号で打ち切られてしまったのですか? もっと先の計画はなかったのでしょうか?2016-04-29T11:24:43+09:00

当初、「アポロ計画」は20号まで計画されていました。これは、人類を月へ送り込むという目的のためには、どれだけアポロを打ち上げれば達成できるかわからなかったからです。

1969年、アポロ11号でその目的が達成されてからは、NASAは国民の無関心や、月に人間を送り込むなど無駄遣いであるという反対意見にさらされることになりました。
1970年1月、当時のNASA・ペイン長官は、アポロ20号の打上げ中止を決定しました。有人宇宙ステーションを打ち上げる「アポロ実用衛星計画(後のスカイラブ計画)」のために、アポロ20号までに必要な分以外の製造を中止されていたサターン5ロケットが必要だったのです。
さらにこの時点で、アポロ18号、19号の打上げは「アポロ実用衛星計画」の打上げが終了する1974年まで延期されました。

1970年4月にはアポロ13号の事故があり、国民の関心は集まったものの、NASAの中にもこれ以上人命を危険にさらすのかという意見が出始め、大統領顧問団の一部は当時のニクソン大統領に月ミッションの即時中止を迫りました。
予算を審議する夏の議会では、インフレ問題やベトナム戦争など、国家としてより重要な優先事項があるのに、巨大プロジェクトを遂行するのは非良心的であると批判を浴び、7月末にNASA予算は僅差で議会を通過したものの、その翌日NASA長官は辞任しました。

宇宙予算削減が計画全体与えた影響は大きく、8月末、さらに予算削減を突きつけられたロウNASA長官代行(辞任したペインの後継者)は、ついに18号・19号のミッション中止を決めました。

当初計画されていた、アポロ12号以降の着陸地は次のような場所でした。

11号着陸直後のアポロ着陸予定地点

  • 12号: あらしの大洋
  • 13号: フラマウロ丘陵
  • 14号: ケンソリヌス
  • 15号: リットル峡谷
  • 16号: ティコ・クレーター
  • 17号: マリウスの谷
  • 18号: シュレーターの谷
  • 19号: ヒギヌス谷
  • 20号: コペルニクス・クレーター
アポロで降りる場所というのはどのようにして決められたのですか?2016-04-29T11:23:23+09:00

アポロ計画では、11号から17号まで(途中、失敗した13号を除き) 6機の探査機が着陸しましたが、その着陸点の選定は、以下のような検討のもとに行われました。

アポロ11号の着陸地: 静かの海 (北緯0度38分50秒、東経23度30分17秒)

はじめて月に着陸するのですから、とにかく安全、確実に降りられるよう、着陸地決定には2年以上がかけられました。候補地としてあげられた30カ所から、ルナーオービターとサーベイヤーの画像をもとに次のような基準で選ばれました。

  • クレーターや障害物となる岩が少なくなめらかであること
  • 大きな丘、高い崖、深いクレーターがなく、接近しやすいこと。これらがあると、月着陸船の着陸レーダーが高度を誤認する原因となる
  • 探査機の推進材の消費量が最も少ないこと
  • もし、着陸が出来なかった場合、月軌道へ自由に戻れること
  • 接近航路と着陸地の傾斜が2度以下であること

念入りに選ばれた着陸地でしたが、実際の着陸箇所は接近してみると予想より険しく、飛行士が危険を避けて着陸したのは予定地点より8キロメートルも離れた場所でした。

アポロ12号の着陸地: 嵐の大洋

1967年4月20日に、南緯2度56分、西経23度20分の地点に着陸したサーベイヤ3号のなるべく近くに高精度で着陸することが第1の目的でした。12号はこのサーベイヤ3号から535メートルだけしか離れていないところにめでたく着陸しました。アポロ11号が着陸したのと同じ「海」でも、違う場所では溶岩の組成が違うかどうか調べる科学的な目標もありました。

アポロ14号の着陸地: フラマウロ丘陵

アポロ13号からは、探査の目的は純粋に科学的なものだけになりました。残念ながら、事故が起こって着陸できなかった13号に代わって、14号は13号で予定されていた着陸地に降りました。
2回の着陸で2種類の海の試料が得られたので、今度は高地に着陸することが求められました。フラマウロ丘陵は、高地というよりは「海より高い丘陵地」ですが、着陸の安全性を考えて、平らで比較的着陸しやすいこの場所が選ばれました。
地質学的には、「雨の海」の物質と同じと思われる「フラマウロ層」という基準となる試料をとってくることという目標がありました。また、着陸地点のすぐそばには直径約340メートルという大きな「コーン・クレーター」がありました。クレーターが大きいほど、その縁にはより深い部分から岩が放出されています。飛行士達は「クレーター登山」をし、クレーターの縁の岩石を採集しました。

アポロ15号の着陸地: ハドリー峡谷・アペニン山脈

アポロ計画でもっとも北の着陸地点です。
15号からはローバー(月面車)が使われ、広範囲の探査が可能になりました。
アペニン山脈は高さが5キロメートルもあり、雨の海の岸辺に位置しています。また、そのそばには、深さ300メートルのハドレー峡谷が切り開かれ、大変「風光明媚」な場所でもあります。
アポロ15号の着陸船の船長は「景色の良い場所に行きたかった」そうですが、科学的にも、高地と海の部分の境にあたり、両方の試料が採集できるという利点がありました。
また、ハドリー峡谷の壁面に露出している、様々な地層を観察でき、そのそばの試料も採集しました。

アポロ16号の着陸地: デカルト高地

アポロ16号はアポロ着陸地点中最も南で、唯一、月の「本当の高地」の真ん中に着陸しました。
高地は月の古い近くが表面に出ており、クレーターが多数あります。
このデカルト高地では、写真から見ると、火山によってできた地形のようにみられました。ここでは高地を形成する2種類の地層の両方を採集でき、もし火山だとすると、高地形成の歴史を解き明かす溶岩が見つかるはずでした。
しかし、試料を研究した結果、火山岩はなく、予想はまちがいだったということがはっきりしました。

アポロ17号の着陸地: タウロス・リットル峡谷

最後の探査となった17号の着陸地点は、一度にできるだけ多くのことを実現する多目的な探査が計画されました。
この着陸地点のそばには、非常に黒っぽい色をした地層がありました。黒っぽいということは、最も新しい火山の噴出物であると考えられていたので、火山活動がいつまで続いていたかを知ることができると思われました。写真で見ても、いかにも小さいクレーターから黒っぽい物質が吹き出したように見えたのです。
また、16号までに発見できなかった46億年の年代を持つ、「真の月創世期の岩石」を発見することも、アポロ17号に残された重要な課題でした。
選ばれた地点には、明らかに高地から転がり落ちたとわかる岩塊がありました。ここで採集された石は、期待通り、月が出来た46億年前のものでした。
しかし、黒っぽい試料のほうの年代は、また予想を裏切り37億年と非常に古いものでした。

アポロ1号というのはあったのですか?2023-07-10T10:02:40+09:00

アポロ計画で唯一、アメリカの有人ロケットで初めての爆発事故をおこしたのがアポロ1号です。

アポロ1号は1967年2月21日に打ち上げられる予定で、1月27日(金)午後1時に、バージル・グリソム、エドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィーの3人の飛行士は飛行前試験のためアポロ司令船(コマンドモジュール)に乗り込みました。
試験を開始してすぐに、グリソム飛行士は「酸っぱいにおい」がするという異常に気がつきました。また船内に満たされる酸素流量が高すぎるという警告音が繰り返し鳴りました。さらに宇宙船と外部との通信機器が不調でした。職員達は何度も中断して調査しましたが、結局原因が見つからないまま問題はないと判断され、試験は続けられました。

通信の問題が解決され、午後6時31分にカウントダウンを再開する準備ができたとき、また酸素流量が異常に高くなりました。その4秒後、インターフォンからチャフィー飛行士の声がしました。「火事だ!」さらに2秒後、今度はホワイト飛行士が叫びました。「コックピットで火災発生!」
緊急時には最低で90秒で脱出できることになっていましたが、宇宙船内部からロックを解除するには飛行士は無理な姿勢をとらなくてはならなかったため、実際には短時間で脱出は不可能でした。
職員達は、火事が広がりつつある中でなんとかして飛行士を助けようとハッチを開けましたが、遅すぎました。
さらに3分後に消防隊と医師が到着しました。医師の診断によれば着ていた宇宙服のおかげで3人は焼かれずにすみましたが、出火から4分後には一酸化炭素中毒で亡くなっていました。職員の中では煙を吸った27人が手当をうけ、2人が入院しました。

2月3日、NASAは事故調査を開始しました。現場の徹底的な調査と当時の現象を再現した結果、グリソム飛行士の座席の足下にある電線の束付近で出火したとわかりました。電線の絶縁体が裂けてむきだしになっており、船内に満たされていた純粋酸素が、電気の火花で引火して燃えだしたのです。
事故調査と司令船の再建の間、NASAのすべての有人打上げは延期となりました。

1967年春、NASAはグリソム、ホワイト、チャーフィによるミッションをアポロ1号とし、1967年22月に計画されたサターン5型ロケットの打ち上げをアポロ4号とすると発表しました。従って、アポロ2号、3号と称されるミッションはありません。
アポロ1号の事故はアメリカの人々に衝撃をもたらし、アポロ計画を中止するべきだという世論がしばらくの間おこりました。

注: この文章は以下のサイト(スミソニアン航空宇宙博物館)の情報(英文)をもとに作成しています。
“Apollo 1 Summary of Events”
http://www.nasm.si.edu/collections/imagery/apollo/AS01/a01sum.htm



火災後のアポロ1号司令船 (写真: NASA)
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アポロ計画と同じ頃に、サーベイヤー計画というものがあったそうですが、これはどのような計画ですか?2016-04-29T11:17:10+09:00

サーベイヤー計画は、アポロ計画での有人軟着陸に必要な技術とデータを取得するための無人月探査計画です。1966年5月〜1968年1月の間に、テスト用の1号機を含め7機が打ち上げられました。2号は着陸に失敗し、4号は着陸寸前に通信途絶しましたが、その他は無事に軟着陸に成功しました。また4機は月の厳しい夜の環境にも耐えることができました。

探査機は打上げ時重量が1トン、高さ3.3メートル、直径4.5メートルで、3本足の上に測定機器を載せ、3平方メートルの太陽電池パネルとアンテナを4本持っていました。軟着陸は3.5メートル上空でエンジンを切ってから自由落下するという方法がとられました。

1、3、5、6号機はアポロの着陸候補地であった月の赤道付近の海に降り、どこが着陸に最適であるか各地点のデータをとりました。7号は科学調査のため、ティコ・クレータのそばの高地に降りました。

軟着陸技術を取得のほかに、アポロ宇宙船を設計するために必要な科学的情報が次のように観測されました。

● テレビカメラによる観測
1ミリメートルの解像度で86000枚以上の写真が撮影されました。この写真によって探査機の近くの月面の様子、クレーターや岩の個数、分布、大きさがわかりました。写真は表面土壌の特性、磁気特性、表面物質の組成調査にも使われました。

● 表面の特性
表面の特性については、着陸ギアに載っているひずみ計測器や、3号、7号に搭載された表面サンプラーで測定が行われました。また土壌の侵食の様子を観察し、土壌の特性を決定するため、バーニアエンジンとジェットが着陸後に操作され、その様子がテレビカメラで観察されました。

● 月面の温度と温度特性
表面温度や温度特性を計測する機器はどの探査機にも搭載されていませんでした。しかし、太陽電池パネルに付属した放射温度センサーによってデータが得られました。

● 月面の磁気特性
5、6、7号機は、磁気特性と土壌の組成を測るために着陸脚に磁石がついていました。磁石に土壌が付着した状態をカメラで観察し、地球で同様の実験を行った場合と比較することで組成が推定できました。

● アルファ線散乱化学分析
5、6、7号機にはアルファ線散乱装置が搭載されており、6つのサンプルが分析されました。これは初めての月面物質の化学分析です。



サーベイヤー探査機 (写真: NASA)
写真をクリックするとより大きい写真がご覧になれます。(サイズ: 105KB)


サーベイヤ探査機が撮影したティコクレーター付近のパノラマ (写真: NASA)
写真をクリックするとより大きい写真がご覧になれます。(サイズ: 235KB)


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アポロで月に行った人は何人いるのでしょうか?2016-04-29T11:13:24+09:00

アポロ有人探査機のうち、月周回軌道に乗ったものは8号、10号、11号、12号、14号、15号、16号、17号です。それぞれ3人の宇宙飛行士が乗っていました。また、着陸が行われたのは11号以降で、それぞれ2名の飛行士が月面に降り立ちました。
従って、月面には合計12人の宇宙飛行士たちが到達したことになります。すべてアメリカ人です。

それぞれのアポロに搭乗した飛行士の方々は次の通りです。(敬称略)

アポロ8号
フランク・ボーマン (Frank Borman)
ジェームズ・ラベル (James A. Lovell, Jr.)
ウィリアム・アンダーズ (William A. Anders)

アポロ10号
トーマス・スタッフォード (Thomas P. Stafford)
ジョン・ヤング (John W. Young)
ユージン・サーナン (Eugene A. Cernan)

アポロ11号
ニール・アームストロング (Neil A. Armstrong) (着陸)
マイケル・コリンズ (Michael Collins)
エドウィン・オルドリン (Edwin E. Aldrin, Jr.) (着陸)

アポロ12号
チャールズ・コンラッド (Charles Conrad, Jr.) (着陸)
リチャード・ゴードン (Richard F. Gordon, Jr.)
アラン・ビーン (Alan L. Bean) (着陸)

アポロ14号
アラン・シェパード (Alan B. Shepard, Jr.) (着陸)
スチュアート・ルーサ (Stuart A. Roosa)
エドガー・ミッチェル (Edgar D. Mitchell) (着陸)

アポロ15号
デビッド・スコット (David R. Scott) (着陸)
アルフレッド・ウォーデン (Alfred M. Worden)
ジェームズ・アーウィン (James B. Irwin) (着陸)

アポロ16号
ジョン・ヤング (John W. Young) (着陸)
トーマス・マッティングリー (Thomas K. Mattingly II)
チャールズ・デューク (Charles M. Duke, Jr.) (着陸)

アポロ17号
ユージン・サーナン (Eugene A. Cernan) (着陸)
ロナルド・エバンズ (Ronald B. Evans)
ハリソン・シュミット (Harrison H. Schmitt) (着陸)


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月では朝焼けや夕焼けは見えますか?2016-04-29T11:09:21+09:00

まず、どうして地球では朝焼けや夕焼けが起こるのでしょうか。
太陽の光(可視光線)は虹などで見られるように紫から赤まで様々な色の光が含まれています。紫色の光の方が波長が短く、青、緑、黄、橙、赤の順で波長は長くなります。
一方、地球には大気があり、光は空気分子にぶつかると四方八方に散乱します。この散乱の度合いは光の波長によって異なります。

波長の長い(赤に近い)光はあまり散乱されずに大気を通過しますが、波長の短い(紫や青に近い)光ほど大きく散乱します。昼間、太陽は空高くにあるときには、大気の層を通過してくる途中で散乱された青い光が目に届くため、空は青く見えます。
ところが、太陽が明け方や夕方に傾いてくると、光は昼間とは違って大気層の低いところを斜めに通過するので、目に届くまでの大気層の距離が長くなります。
通過する間にぶつかる空気分子の数が多くなるり、散乱される回数も増えるので、青い光は目に届く前に弱まってしまいますが、散乱されにくい赤や黄色の光は残って強調され、朝焼けや夕焼けになるのです。

さて、月面は真空の世界です。厳密に言えば、月面に着陸したアポロなどの測定によると、昼間には1立方センチメートルあたり約2億個から成る大気がありますが、これは地球の大気に比べると1000億分の1以下という薄さです。
というわけで、太陽光は散乱されず、青い空や、朝焼けや夕焼けを見ることはできません。

月で水が見つかったということですが、この水があればどのくらいの人が生活できるのでしょうか?2023-07-20T11:48:38+09:00

1998年1月に打ち上げられたルナープロスペクターは、月面にある水素の量を見積もることができる、中性子分光器という装置を搭載していました。水は水素と酸素でできていますから、水素の量を見積もることで、ある程度水の量を知ることができるはずだ、という考え方です。

1998年3月5日、ルナー・プロスペクターが月の南極と北極に大量の水素を発見し、月の両極付近に氷が存在する可能性が高いと発表されました。
それによると、氷が存在すると考えられている地域は、北極で広さ10000~50000平方キロメートル、南極で5000~20000平方キロメートルに及んでおり、クレーターの土の中に0.3~1パーセントの割合で氷が含まれるとすると、氷の総推定量は1000万トン~3億トンと予想されました。
さらに観測と分析を続けたNASAは、1998年9月、この予想を大きく上回る総推定量60億トンの氷が月に存在すると発表しました。

NASAによれば、この60億トンの氷で4万人が100年間暮らせるそうです。
もしも本当にこんなにたくさんの水が月にあるとすれば、将来月面で人間が活動するときにも利用できますし、分解すれば液体酸素・液体水素というロケットの燃料も作り出せます。

しかし、ルナープロスペクターの探査は、あくまで上空からの探査であり、月に実際にどのくらい水が存在するかは、直接確かめる必要があります。
実際にどのくらい水が存在するのか、という点に関し、2009年に打ち上げられたアメリカの探査機「エルクロス」が、月面に激突して、その上記の中の水分子を観測するという手法での探査を実施しました。
その結果、衝突したカベウスクレーター領域には、重量比で5.6パーセント(誤差は上下に2.9パーセント)という、高い比率で氷が含まれていることが明らかになりました。
このような高い比率での水の存在はこれまでの予想を大幅に覆すもので、月面には予想以上に多くの水が存在するのではないか、という期待を抱かせるものとなりました。

ただ、このような大量の水がそもそも月面全体に存在するのか、また、極地域(カベウスクレーターは月の南半球の高緯度地域にあります)全体にまんべんなく存在するものなのか、ということは今後より詳しく調べる必要はあります。
ただ、エルクロス探査により、月に存在する水を利用できるという可能性はさらに大きくなったといえるでしょう。今後は水の取り出し方、輸送方法なども含め、月面基地へ向けての水の利用方法の検討を進める必要があります。


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[PDF] 論文: Detection of water in the LCROSS ejecta plume (Science, 2010/10/22)
エルクロス探査の探査主任、アンソニー、コラプリート氏が筆頭著者の論文。エルクロスの噴煙から推定した月のレゴリス内の水の量の推定を述べたもの。英語。

  • [PDF] 論文: Diviner Lunar Radiometer Observations of Cold Traps in the Moon’s South Polar Region (Science, 2010/10/22)
    LROに搭載された「月放射測定実験」(Diviner)という装置により、月の南極地域に、氷が存在しそうな領域がどのくらいあるかどうかについて調べた論文。英語。
  • 月に住むとしたら、どのような場所が理想的でしょうか?2016-04-29T11:03:12+09:00

    月で一番安全に住みたい人には次の場所がおすすめです。
    月には溶岩が流れた跡に形成されたと思われる洞窟があることがわかっています。そこの中に住めば,月面の放射線の影響や昼夜の温度差,かなり地下深いところに見つけた洞窟であればある程度の大きさの隕石さえも防ぐことができるでしょう。月には地震(月震)も少ないので、非常に安全な場所といえると思われます。

    次に月から天体観測をしたい人には,月の裏側,あるいは月の極地方がおすすめです。
    月の裏であれば地球からの電波の影響を避けることができますので地球上ではできない電波による精密な天体観測が可能です。
    月には大気もなく,広大な地面が広がっていて,重力も地球の6分の1ですので,とても大きな望遠鏡を作ることが可能になります。また月の極地方の永久影の地域では,常に夜で温度が一定のため,ここでも精密な測定ができるといわれています。
    また、永久影の地域の脇には、いつも日光が当たっている「永遠の昼」領域があります。ここに太陽電池のパネルを設けておけば、常に太陽エネルギーを得ることができるというメリットがあります。

    月の極に氷があったとすれば,その起源などを調べることで太陽系について様々なことがわかってきます。月の氷を調べたい人にとっては,極地方は非常に魅力的でしょう。

    最後に,月の表側については,地球との交信が簡単にできることが利点として挙げられるでしょう。このため,例えば月面旅行が現実になった場合は,月の表側に月面ホテルなどができることでしょう。そして月から地球へテレビ電話などで話す事が可能になっていることと思います。

    月にはどのような資源がありますか?2016-04-29T10:44:17+09:00

    月にはいろいろな資源があります。それらを、順番にご紹介していくことにしましょう。

    アルミニウム
    アルミニウムは、地球でもよく使われる金属です。飛行機の機体からアルミ箔まで、様々な使われ方をされています。
    月でのアルミニウムの使われ方としては、金属としての性質を活かして、建設材料や、ロケットなどの輸送機に使うことが考えられます。また、アルミニウムは酸素と化合しやすいので、この性質を利用して、ロケットの燃料として使うこともできます。
    アルミニウムは、月の高地にたくさんある「斜長石」という鉱物に大量に含まれています。場所によっては、斜長石を90パーセント以上含む岩石がある場所も、月の高地にはあるそうです。
    月でアルミニウムを取り出す方法として、炭素や塩素と化合させてアルミニウムを取り出す方法が検討されています。最初に炭素や塩素などを地球から運ぶ必要はありますが、これらはリサイクルして使うことができます。

    酸素
    酸素はもちろん、人間が呼吸するときにも必要ですし、水素と化合させれば水を作ることができます。ロケットの燃料(酸化剤)や燃料電池の燃料にもなりますし、将来、人間が月面に基地を作ったときには、酸素は必要不可欠の物質になります。
    月には大気がありませんから、酸素は気体の形では存在しません。そこで、取り出すとすると、岩石か水から取り出さなければなりません。岩石の中には、酸素と化合した酸化鉱物があります。とくに、イルメナイトという、チタンと酸素が結びついた鉱物は、月にも比較的豊富に存在します。
    イルメナイトから酸素を取り出すためには、水素や炭素を加えて熱するという方法が一般的です。この方法を使うと、比較的低い温度(900度くらい)で酸素を取り出すことができます。

    水素
    水素は、ロケットの燃料になりますし、水を作るための材料にもなります。また逆に、酸素のところでも述べましたが、イルメナイトから酸素とチタンを取り出すために使うこともできます。
    水素は、太陽から吹きつける太陽風に含まれており、月の砂(レゴリス)にそれらが吸着されています。しかしその量はごくわずかなので、大量のレゴリスを処理する必要があります。例えば、1トンの水素を取り出すためには、0.7平方キロの範囲にあるレゴリスを処理しなければいけないという計算結果もあります。
    ヘリウム3と同様、レゴリスを加熱することによって、水素を得ることができます。

    チタン
    チタンはアルミニウムと同じように、構造物(月面基地や資源採掘のための道具)、ロケットなどの輸送機器を作るために使うことができます。

    チタンを含んでいるイルメナイト(酸素の項を参照)は、月の表側、海の部分に存在する、玄武岩という黒っぽい岩石に含まれています。例えば、アポロ11号が着陸した静かの海の岩石には、イルメナイトが15~20パーセントも含まれていたという報告があります。ただ、月の海の岩石が必ずしも、これだけ大量のイルメナイトを含んでいるわけではないため、資源として採掘する場合には、イルメナイトがどこに含まれているかを調べる必要があります。
    このためには、ガンマ線分光計などを使って、月の元素の分布を明らかにしてやるのがもっとも確実な方法です。

    鉄が資源として役に立つことはいうまでもありません。構造物としては鉄は理想的です。月面基地を作るときにも、鉄を素材として作れば、頑丈な建物をつくることができるでしょう。
    鉄は月の岩石の中にも含まれていますし、ときには、鉱物の中に鉄が粒として含まれていることもあります。ただ、これらから純度の高い鉄を取り出すのは難しい作業になります。
    鉄を取り出す鉱物として期待されているのは、チタンと同じ、イルメナイトです。イルメナイトから酸素とチタンを取り出すときに、副産物として鉄も作り出すことができます。

    ヘリウム3
    ヘリウム3(ヘリウム・スリー)は、月の砂にごくわずかに含まれている気体で、核融合発電でエネルギーを産み出せるのではないかと期待されています。

    人間が月面に滞在するときに、水は欠かすことができません。生活にも生命維持にも、あるいは工業利用でも、水は不可欠です。また、水を酸素と水素に分解すれば、呼吸のための酸素や燃料としての水素・酸素を取り出すこともできます。

    レゴリス (月表面の砂)
    レゴリスは、それ自身が金属や水素などを取り出すための資源の素材として重要ですし、レゴリス自身も資源となります。レゴリス自体を焼き固めてレンガやガラスブロックを作れば、太陽熱を蓄積するための材料や建設資材として使うことができます。
    レゴリスは、事実上月のどこにでもありますから、資源としてもっとも得やすいものといえるでしょう。資源として利用するためには、レゴリスを輸送したり、ふるいにかけたりするための装置をどのように造るかが重要になります。

    その他にも、資源として月に豊富に存在するものとしては、ケイ素があります。ケイ素は半導体の材料などに使うことができます。その他にも、月に豊富な元素としては、マグネシウムやカルシウムなどもあります。
    また、月では、希土類元素を多量に含むKREEP(クリープ)と呼ばれる岩石が見つかっています。Kはカリウム、REEは希土類元素(Rare Earth Elements)、Pはリンの略です。これらを比較的多く含む鉱物です。また、ウランやトリウムなども比較的多く含まれています。KREEPは高地に存在し、資源としてみると量はごくわずかですが、その組成から、月の起源などを探る上でも注目されています。


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    月のエネルギー源として、ヘリウム3というものを聞いたことがありますが、これはどのようなもので、どのようにして使うのでしょうか?2016-04-29T11:01:37+09:00

    ヘリウム3(「ヘリウム・さん」あるいは「ヘリウム・スリー」と呼ぶことが多いようです)は、ヘリウムという元素の中で、ちょっとだけ中身が違うもの(同位体元素)です。

    ヘリウムは、元素の中では水素に次いで軽いもので、原子番号は2番でこれまた水素の次です。地球上にはあまりありませんが、例えば風船の中に入っていたり、吸うと声が変わるガスとして、皆さんにもなじみがあるかと思います。

    ヘリウムは地球にはあまりないですが、太陽の中にはたくさんあります。そもそも、ヘリウムというのはギリシャ神話の太陽神「ヘリオス」にちなんで名付けられています。このヘリウムは、太陽の中で水素が核融合反応を起こしてできたものです。
    核融合反応とはなんでしょうか? 太陽は地球の33万倍もの体積を持っている、巨大なガスの球です。これだけ大きなものになると、中心の圧力はたいへん大きなものになります。また、それだけの物質が上にあるため、中心部ではものすごい重力エネルギーも生まれます。
    太陽の中心は1500万度という温度になるといわれていますので、高温・高圧の中で、水素の原子がくっついてヘリウムになるという反応が起きます。このときに膨大なエネルギーが生まれて、それによって太陽が輝いているのです。

    さて、この太陽の中の核融合反応で、ヘリウム3ができます。このヘリウム3は、太陽風(太陽から流れてくる粒子の流れ)に乗って、月へ届きます。月には大気がありませんので、ヘリウム3は月の表面の砂(レゴリス)に吸着されます。
    月ができてから45億年の間に、太陽からのヘリウム3は月の表面の砂にずっと吸着され続けてきたと考えられています。


    さて、ヘリウム3それ自体も、核融合反応の材料になります。ヘリウム3と、水素の一種である重水素がくっつく(核融合する)と、ヘリウム4(普通のヘリウム)と陽子になります。このときに飛び出す陽子が膨大なエネルギーを発生させます。


    ヘリウム3の核融合
    (イラスト出典: 「宇宙開発、21世紀の将来像」、宇宙開発事業団、1992)

    このような核融合を、人間の手で行う研究は、日本をはじめ、世界中で進められています。
    核融合は、原子力(核分裂)に比べて発生できるエネルギーが大きく、また放射能が少ないという特徴があります。

    月に豊富にあるヘリウム3を使えば、どのくらいのエネルギーが得られるのでしょうか?
    月にあるヘリウム3の総量は、まだ正確に見積もられていませんが、全体で2万トン〜60万トンとされています。
    計算では、月の砂に吸着されているヘリウム3をすべて使えば、現在の世界で使われている電力の数千年分のエネルギーが得られるとされています。また、日本全体の1年間の消費電力をまかなうためには、数トンのヘリウム3があればよいといわれています。
    ヘリウム3の核融合は他にも利点があります。陽子の運動としてエネルギーを取り出せばよいので、効率がよいのです。放射性廃棄物や、二次的に出る放射線の量も少なく、その意味ではヘリウム3は「理想の核融合燃料」です。

    ヘリウム3を含むのは、月の砂の中に含まれている鉱物「イルメナイト」です。月の砂には、イルメナイトが約10パーセントほど含まれています。イルメナイトは、粒子の大きさが8〜125マイクロメートルととても細かいため、太陽から月表面に降り注ぐ太陽風に含まれる微粒子を吸収しやすい性質を持っています。
    ヘリウム3は、月の砂を600度以上に加熱すれば得られます。しかし、ヘリウム3は月の砂に均等にごくわずかずつ含まれているだけですので、そのためには膨大な砂を処理しなければなりません。
    仮に、ヘリウム3を10トン取り出そうとすると、月の砂は100万トンも必要になってしまいます。日本の年間消費電力をまかなうために、月の砂を毎日3000トン近くも処理しなければなりません。
    また、いま研究されている核融合に比べて、ヘリウム3の核融合は、必要な温度が高く、技術的にもたいへん難しいとされています。ですから、実用化できるのはもっとずっと先のことになると思います。

    このようにヘリウム3によるエネルギーを使えるのは、まだまだ先の話ではあります。しかし私たちが将来月に進出して、月面基地を作る頃になれば、あるいはヘリウム3による核融合発電で、快適な月の生活を送れるようになっているかも知れません。


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    月面基地はいつ頃できるのでしょう?2016-04-29T10:52:03+09:00

    技術的な点からいえば、私たちは既に月面基地を作れるだけの能力を持っているといってもよいでしょう。
    アメリカ・ロシア・日本やヨーロッパなどが今作ろうとしている国際宇宙ステーション (ISS)は、何ヶ月以上にもわたって人間が宇宙に滞在するための施設です。月面基地でも人間が滞在しますが、それは最初は、月の昼間だけ(14日間)になると思われます。そうなると、滞在するという点からいえば、月の方が宇宙ステーションよりも条件は緩いということになります。

    問題は月と地球を往復するための手段ですが、これもアポロで既に実現していますから、当時の技術を「復活」させることができれば、問題ないことになります。
    あとは、月面という環境をどう克服するかという問題が残っていますが、これも宇宙ステーションで経験を積んでいけば、解決不可能という問題ではありません。

    つまり、技術的には月面基地は今すぐにでも作れるといってもよいでしょう。問題は、経済的、政治的なものといってもよいでしょう。
    アメリカのNASAなどでは、火星への有人飛行計画を計画していますが、それに先立って月面に基地をつくって、火星への前線基地にしようという計画がありました。NASAの火星飛行計画は2030年代半ばとされていますから、その頃には月面基地がないといけないことになります。
    月探査に熱心な中国も、その究極の目標は月面基地です。現在のところ、中国の月面基地は2030年代に完成するのではないかと予想されています。

    日本の多くの技術者も、2020年頃には最初の月面基地を作りたいと考えています。最初の月面基地は、上でも述べたように、月の昼間だけ宇宙飛行士が滞在するような基地になるのではないかと思います。
    日本では、内閣府の宇宙戦略本部の下に位置づけられている月探査懇話会が、月探査に関する将来計画を発表していますが、その際の究極の目標は、2020年代以降に、月面に人が滞在できるような場所を設ける、ということです。また、JAXAが発表している長期ビジョン「JAXA2025」でも、2025年頃には日本独自の月面基地を設置するという構想を出しています。

    ただ、これらの構想は、一時的に人が滞在する基地にとどまっています。常に人がいるような月面基地ができるのはもっと先、おそらくは2040~2050年頃になってしまうのではないでしょうか。


    将来の月面基地想像図(イラスト: JAXA)
    イラストをクリックするとより大きな絵をご覧頂けます

    月ではどのようなエネルギーを使うのでしょうか?2016-04-29T10:50:34+09:00

    月には空気がありません。ですから、地球で使うエネルギーの中で、石油や石炭、まきなどのように、空気を使うものは経済的ではありません。なぜなら、石油や石炭を燃やすために、地球から酸素などを持っていかなければいけないからです。

    酸素を使わずにエネルギーを取り出すことができるものとしては、

    • 原子力(核分裂)
    • 核融合
    • 太陽エネルギー

    が考えられます。

    太陽エネルギーは、月面でもっとも有望と思われるエネルギー源です。14日間の月の昼の間に、太陽光は休みなく降り注ぎますし、地球のように大気や雲などでじゃまされることもありません。
    太陽エネルギーを利用する方法としては、太陽電池を使って光を電気に変える方法と、太陽熱そのものを利用する方法の2つがあります。熱を利用する方法について、少しご説明しましょう。

    宇宙開発事業団(当時)では、「ガラスの海」と呼ばれる、熱を蓄える仕組みについて検討をしたことがあります。ガラスのようなものの中に太陽光を導いて、その中に熱を蓄えておきます。その周りを熱が伝わりにくいもので覆ってしまえば、ちょうど魔法瓶みたいにして、熱を蓄えておくことができます。
    ガラスのようなものを月面で作るためには、岩石を(やはり太陽光で)溶かしたり、テルミット(アルミニウムの粉と酸化鉄を混ぜたもの。高温で燃える)を燃やして、その熱で岩石を溶かすことなどが考えられています。また、断熱材としては、月の表面を覆っている砂(レゴリス)を使うことができます。実際、レゴリスは非常に優秀な断熱材です。

    月の岩石を溶かしたブロックを月面に並べておいて、そこに月の昼間の間、太陽光を導いて熱を溜めます。月の夜になると、月の表面の温度はマイナス100度以下になりますが、ガラスの部分はそれほど冷えません。その温度差を利用して、発電を行うこともできます。 このようなガラスブロックをいっぱい月面に並べれば、月の夜の間でも電力を作ることができます。これを「ガラスの海」と呼んでいます。


    ガラスの海構想を利用した発電システムの想像図。地下に埋められたガラスのユニットと、
    そのユニットからエネルギー(熱)を取り出すための設備がある。
    (イラスト: 宇宙開発事業団)
    イラストをクリックするとより大きな絵が表示されます(サイズ: 500KB)

    太陽エネルギー以外では、まず原子力という可能性があります。確かに、原子力発電で発生できるエネルギーは膨大ですが、地球から月面まで原子力発電システムを輸送するコストが莫大であるという問題があります。また、月は地球に比べてウランに乏しいという問題もありますので、将来的なエネルギーとしては、原子力はむしろ望み薄といえるでしょう。

    核融合は、月面に広く存在している「ヘリウム3」という元素を使うものが有望といわれています。しかし、核融合はまだ技術が確立していませんので、実現するのはかなり先の話になるでしょう。


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    地球で一般的に使われている材料で、月で使えないものはありますか?2016-04-29T10:47:45+09:00

    地球でいろいろなもの(建物とか、乗り物とか)を作るための材料には、たとえば金属とか、コンクリート、石、木、プラスチックなど、いろいろなものがあります。これらが果たして月で使えるかどうか、考えてみましょう。

    まず、金属は問題ありません。むしろ、鉄などは地球のように、水によってさびたりすることもありませんから、かなり長持ちすると思われます。アルミや鉄などは月の表面にある土(レゴリス)から取ることができますので、月でも豊富に手に入ります。

    コンクリートはどうでしょうか? コンクリートはセメントと砂利や砂(骨材=こつざいと言います)と水を混ぜて作られます。このうち,砂利や砂は月面上にある石や砂を使うことができます。セメントはどうでしょう。セメントの主成分は二酸化アルミニウム (Al2O3)、二酸化ケイ素(Si02)、石灰(Ca0)などです。これらは月の砂の中に含まれています。最後に水ですが,これだけは月にはあまりないので,地球から運ぶかあるいは水素だけを地球から持っていき、月の砂の中に含まれる酸素を使って水を作ることが必要でしょう。
    このようにして作ったコンクリートは、大気のない月面に降り注ぐ放射線を防ぐ材料(遮蔽材=しゃへいざい)としてもすぐれた性質を持っています。ただ、コンクリートだけだと引っ張り力に弱いため,地球上のように鉄筋を入れ,空気漏れを起こすひび割れが生じないような工夫が必要です。
    また、月面の材料で、セラミック、あるいはコンクリートのようなものを作ることもできます。月の表面にある土(レゴリス)を使って、それを焼き固めれば、固い物質を作ることもできます。これをブロックのように積み重ねれば、建物を造ったりすることもできます。

    石ももちろん、月面では建物などを造るのに使えるでしょう。

    木やプラスチックはどうでしょうか? 実は、こういった材料は、月面では長い間はもたないと考えられています。
    月には宇宙線が降り注いでいますし、かなり激しい温度差もあります。こういった環境には、木やプラスチックのように、生物と同じようなもの(有機物)でできた材料はたいへん弱いのです。特にプラスチックは宇宙線などの影響を受けてすぐに変質してしまいます。宇宙線にあたると、有機物は分解されてしまいますから、木や紙などは変質してしまうことでしょう。
    また、月は真空です。このため、プラスチックの中からガスが抜け出てしまい(脱ガスといいます)、さらにプラスチックは弱くなってしまいます。

    結局、月で建物などを造るのに使える材料としては、金属、土を焼き固めたコンクリート(セラミック)、石などになるでしょう。地球上で使われているセメントやコンクリート、木、プラスチックなどを使うのは難しいと思われます。


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    月で住むときに最大の問題になりそうなのはどのような点でしょうか?2016-04-29T10:39:28+09:00

    人間が月に住むときに最大の問題となりそうな点を考えるために,まず月に住むためにはどんなところに住んだら良いかということから考えてみましょう。

    まず月には大気がないため,宇宙からの放射線がそのまま降り注いできます。
    これは人が暮らすためには非常に有害なものとなります。また月の赤道のあたりでは、温度は月の昼間で約120度までも上昇し,逆に夜は約マイナス170度までも下がります。この放射線と昼間の暑さ,夜の寒さを避けるために,月では地下に住むことによってその影響を防ぐことが提案されています。
    建物を造るための材料は,月の砂の中に鉄,アルミニウム,ケイ素が含まれていますので,これらをうまく取り出すことによって利用することができます。

    月には空気がありませんから、呼吸ができるようにしなければなりません。地球上では、人は大気の中にある酸素を呼吸しながら生活しています。月には大気がないために酸素を作り出す必要があります。酸素は酸化鉄などの酸化物の形で月の砂の中に大量に含まれています。これを利用して酸素を作り出すことが考えられています。

    住むところを作り、呼吸できるようになったら次は何が必要でしょうか? エネルギーは太陽の光から得ることができますので,おそらく次は人が生活するのに必要な水と食べ物が必要になるでしょう。

    人が体を維持していくのに必要な水は約3リットルと言われています。その他に体を洗ったりするためにもまた水が必要になります。
    月の極地方には氷があるといわれていますが,その含有量は数パーセントと非常に低く,この氷を溶かして水を取り出すことは非常に難しいと思われます。
    そのため,水だけは地球上から運ぶか,または水素だけを地球上から運んで月の砂に大量に含まれている酸素と化合させて水を作り出すことが必要になるでしょう。
    食べ物については、人が住める環境であれば、温室のような設備を使って、野菜など栽培はできると思われます。ただ牛や豚などの育成は大変かもしれません。いずれにしても月面基地で完全に食料を自給するには長い時間がかかるでしょうから、当分の間は,食料の多くは地球から運ぶことになると思われます。

    このように見てくると,やはり月での暮らしではまず水が不足していると思われます。


    将来の月面基地の想像図。月面基地や天文台、輸送装置などがみえる。
    (イラスト: 宇宙開発事業団)

    月の空はどのようになっていますか?2016-04-28T14:45:29+09:00

    地球は大気の層に覆われていて、太陽の光は地上に届く間に空気の分子にぶつかって散乱されます。
    太陽の光(可視光線)は虹などで見られるように紫から赤まで様々な色の光が含まれています。紫色の光の方が波長が短く、青、緑、黄、橙、赤の順で波長は長くなります。

    散乱の度合いは光の波長によって異なり、波長の長い(赤に近い)光はあまり散乱されずに大気を通過しますが、波長の短い(紫や青に近い)光ほど大きく散乱します。昼間、太陽は空高くにあるときには、大気の層を通過してくる途中で散乱された青い光が目に届くため、空は青く見えます。

    さて、月面は真空の世界で大気はありません。
    厳密に言えば、月面に着陸したアポロなどの測定によると、昼間には1立方センチメートルあたり約2億個からなる大気がありますが、これは地球の大気に比べると1000億分の1以下という薄さです。
    というわけで、太陽光は散乱されず、空は宇宙空間の漆黒の闇です。太陽が出ている昼間でも星が見えます。

    月で見える星や星座は地球と一緒ですか?2016-04-28T14:44:06+09:00

    恒星(星座を形づくっている星々)はたいへん遠くにありますので、地球と月の間の距離程度の移動では見える位置が大きく異なることはありません。月から見た星座の形は地球からと同じように見えます。


    月面での天体観測。月でもきっと、地球と似た夜空が見られるでしょう。
    イラスト: 宇宙開発事業団 (現: JAXA)


    回答協力: 国立天文台広報普及室(現 天文情報センター普及室)

    月の緯度・経度はどのようにして決めているのですか?2016-04-28T14:43:09+09:00

    このご質問の項目は現在調査中です。
    調査が完了し次第、掲載いたします。

    月にいると宇宙線がたくさん降ってきそうですが、どのくらいの量になるのでしょうか?2023-07-10T10:02:40+09:00

    宇宙線というのは、宇宙空間や太陽から降ってくる、高いエネルギーを持った粒子(陽子やヘリウムの原子核など)です。
    地球では、宇宙線は地球の磁場や大気に遮られるため、地上まで届くことはほとんどありませんが、月では大気がないため、宇宙線がたくさん飛び込んできます。

    今のところ、宇宙線が体に悪い影響を及ぼしたという報告はありません。しかし、宇宙線が人間の体の中に入ると、ちょうど放射線を浴びたような形になり、遺伝子などに悪い影響を与えることが心配されます。
    そのため、宇宙船が月の周りでどのくらいの量飛んでいるかを調べることは、将来、人間が長期にわたって月の表面で生活するために欠かせないデータです。

    宇宙線など、いわゆる放射線が人間に与える影響を表わす単位として、Sv(シーベルト)というものがあります。これは、放射線がどのくらい人間に吸収されるかを、放射線の種類ごとに表わした上で、それを合計したものと考えて下さい。
    まず、日常生活を送る上でどのくらいの放射線を浴びているかをみてみることにします。

    地上で受ける放射線 0.35mSv/年
    岩石から受ける放射線 0.40mSv/年
    食物から受ける放射線 0.35mSv/年
    空気中のラドンなどから   1.3mSv/年

    (mSvはミリシーベルト。1000mSv=1Sv)

    では、宇宙における平均的な放射線の量ですが、

    地球周辺の軌道
    (スペースシャトルが飛ぶような高さ=300キロくらい)
      45〜360mSv/年
    100〜500mSv/年
    火星   70〜300mSv/年

    月の表面で1年間に受ける宇宙線(放射線)の量は、地上の300〜1400倍にも達することがわかります。
    こう聞くとたいへん恐ろしいように感じますが、NASAが定めている安全性のガイドラインでは、一生に浴びる放射線の量が4Sv (4000mSv)を超えないようにすることになっています。これを単純に当てはめますと、人生を80年とすれば、1年間に50mSv以上の放射線を浴びないようにすれば大丈夫ということになります。
    この量は、月面では1ヶ月〜半年くらい、何も対策をせずに宇宙線(放射線)を浴び続ける場合になります。

    大量の宇宙線(放射線)が人体に有害なことは間違いありませんので、何らかの対策をとる必要があります。次のような対策が考えられています。

    ○ 滞在期間を短くする
    長くいればいただけ宇宙線を浴びることになりますから、滞在期間をなるべく短くするように、宇宙飛行士の滞在スケジュールを上手に組むことが必要です。

    ○ 太陽フレアの時期の飛行を避ける
    太陽フレアとは、太陽活動が盛んな時期に、太陽の表面で起こる爆発現象のことです。これが起こると、大量の粒子(通常の100〜10000倍)が降り注ぐことになります。時間は数分から長くても数日と短いのですが、量がものすごいため、影響が大きいことになります。
    太陽活動が盛んな時期にはなるべく宇宙飛行を避け、もしそれができないようであれば、フレアが発生したらなるべく早く、宇宙線からの遮蔽が効いた部屋(あとで触れますが、月の表面なら地下深く)へ逃れるようにすることも対策になるでしょう。

    ○ 遮蔽材を使う
    宇宙線(放射線)をさえぎる物質のことを、「遮蔽材」(しゃへいざい)といいます。このような物質を使えば、宇宙船から身を守ることができます。
    この遮蔽材としてもっとも手軽で効果的なものは、月の砂です。月の砂を5メートルの厚さで積み重ねれば、地球の大気とほぼ同じ程度の遮蔽効果が期待できます。
    ですから、月面基地などは地下に作るか、上に砂をかなりの程度盛り上げるようにすれば、宇宙線の影響をかなりの程度防ぐことができます。また、このような厚い砂の防護壁は、隕石などからも身を守る効果があります。
    砂を盛り上げることができない場合には、なるべく厚くて密度が高い遮蔽材を設けることが必要です。宇宙船などでは、例えば人間がいる場所(居住区)の周りに、貨物や食料、燃料などを配置して、それを遮蔽材として使うようにすることができます。

    今のところ、人間に対して宇宙線がどのような影響を与えるか、といったことについては、十分なデータがありません。また、月の周辺の宇宙線がどのくらいあるかということについても、詳しいデータはあまり得られていません。
    「かぐや」では、このような月の環境を調べるための装置として、プラズマ観測機器や粒子線計測器などが搭載されました。また、ルナー・リコネサンス・オービターでは、放射線影響測定用宇宙望遠鏡という装置が搭載されています。この中には、人体の組織を模したプラスチック片が搭載されており、放射線の影響をより詳細に調べることができるようになっています。
    今後、人間が長い間月面に滞在するようになるためには、宇宙線の人間への影響を詳細に調べることが必要になるでしょう。


    ■参考資料

    • 「宇宙開発、21世紀の将来像」宇宙開発事業団(1993)

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    月は空気がないということですが、呼吸をするための酸素は地球から持っていく必要があるのでしょうか?2016-04-28T14:40:47+09:00

    確かに、月には空気がありません。ですから、酸素もありません…といいたいところですが、実は月にも酸素はあります。ですから、地球から酸素を持っていかなくても、月面で酸素を作り出すこともできます。
    ただ、地球のように酸素が(空気のような)気体の形になっているのではなく、別の物質と結びついているので、呼吸ができるようにするためには、月の表面にある岩や水から、どうにかして酸素を取り出す必要があります。

    月の表面にある物質から酸素を取り出す方法として、現在は次のようなものが考えられています。

    (1) 月表面の土(レゴリス)から取り出す
    月表面の土(レゴリス)の土の中には、「酸化物」と呼ばれる物質がたくさん入っています。酸化物というのは、金属などと酸素が結びついたものです。たとえば、鉄と酸素が結びつけば「酸化鉄」(いわゆる「さび」)になります。
    こういった酸化物に水素を反応させますと、金属は分離されて、酸素は水素と結びついて水になります。今度はその水を電気分解すれば、水素と酸素にわかれます。水素は再び酸化物との反応に使い、酸素は呼吸などに使うことができます。もちろん、金属もこの段階で取り出せますので、月で資源採掘をしながら、ついでに酸素も生産することができるわけです。

    (2) 月の表面の氷から取り出す
    クレメンタインルナープロスペクター、さらにはエルクロス探査機による調査で、月の表面にかなりの量の水があることがわかってきました。この水を電気分解すれば、水は酸素と水素に分かれます。この酸素を利用します。
    水素は(1)で述べたような、月面での資源採掘に使ってもよいですし、ロケットの燃料などとしても使えます。
    電気分解に使うための電気は、月面に降り注ぐ太陽光から得ることができます。

    この2つの方法を使えば、月面でも酸素を作り出すことができるようになるでしょう。
    ただ、酸素を作り出すためには、月面にそのための設備を作らなければなりません。月面基地が小さくて、滞在期間が短いうちは、地球から酸素を持っていって、月面で使うことになるでしょう。
    月面基地が大きくなり、資源採掘などが始まれば、月で酸素を作って、それを使うことになるでしょう。


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    月面を動くときに、どのようにして自分たちの位置を決めたらよいのでしょうか?2016-04-28T14:38:52+09:00

    自分の位置を決めるのは、月面であろうと地球上であろうと重要です。このためにはいろいろな方法があり、また、月探査の段階によって変わってくると思われます。

    1. 地上や衛星からの同定
    この方法には、地上、あるいは上空を周回する衛星から、直接月面の人工物(着陸船やローバーなど)を撮影する方法、また、あらかじめ撮影した地上の様子(地図、あるいは写真)を元に、周辺の様子などから位置を決める方法があります。
    その際にまず大まかな位置を決めるのは、着陸船やローバーが発する電波の方向などです。これによりまずどの方向から電波がやってきているのかを知ることができます。そのあと、実際に探査機などで写真を撮影し、正確な位置を決めていきます。

    現在の段階で用いられているのはこの手法で、手法としては、基本的にアポロの時代とあまり変わりません。しかし、観測精度が飛躍的に上がっているため、位置をより正確に決めることができます。例えば、現在月を周回しているルナー・リコネサンス・オービターは、最高で50センチメートルという精度で写真を撮影することができます。そのため、上空から直接着陸船やローバーを撮影し、位置を同定することもできます。
    このような高精度の撮影ができない場合には、地上からの観測、衛星からの観測を組み合わせることになります。

    2. 地上固定点からの位置測定
    地上の様子が高い精度で地図として表すことができたあとは、その地図をたよりに位置を同定することができます。
    このケースが想定されるのは、着陸船とローバーの組み合わせです。着陸船は動かないので、位置を高い精度で決定できます。1.の方法でこの着陸船の位置を高い精度で決めておけば、あとは動き回るローバーの位置を決めることになります。
    これには、ローバーから発する電波を使い、電波の到達時間などから位置を決める方法、レーザー光線などを着陸船から発射する(あるいはローバーから着陸船に向かって発射する)ことで、その到達時間などから位置と方向を決める方法があります。
    また、ローバーにジャイロを搭載し、ローバーの動きをずっと記録していくことで、いまローバーがどの位置にいるかを知るという方法もあります。
    ローバーについては、特にこれらの手法を組み合わせることで、位置を決めていくことになるでしょう。また、1.で述べたような衛星からの同定も組み合わせることが可能です。

    3. 測地衛星を用いる方法
    月探査が進み、実際に月に人が長期にわたって定常的に滞在する、そして、月の広い範囲にわたって行動するようになってきた段階では、さらに進んだ方法が必要になります。その手法としてもっとも有力なのが、測地衛星を用いるやり方です。
    測地衛星は、私たちがカーナビや携帯電話などで位置を決める際に使う衛星で、アメリカが打ち上げているものであればGPS、ヨーロッパであれば「ガリレオ」などがあります。精密な原子時計を積んだ衛星を何基も上空に打ち上げて、衛星を4つ以上視界にとらえ、その電波を受信しながら電波の到達時間を計算することで、位置を極めて正確に決めることができます。現在のGPSの精度では数十センチメートルの精度での位置決定が可能です。
    このような測地衛星を月の周りに打ち上げることで、月面のどこでも高精度で位置を知ることができるようになります。将来はこのような「月面インフラ」が活躍し、月の上どこでも人間が動きやすくなることでしょう。

    いずれにしても、このような位置を決めるためには、まず月の地図が整備されていることが必要で、そのためにも周回衛星のデータを使って、月の形を決めたり、地形をより精密に測定することが必要です。「かぐや」やルナー・リコネサンス・オービターなどのデータがこのために用いられることになるでしょう。


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    月面ローバーって何ですか?2016-04-28T14:37:02+09:00

    月面ローバーというのは、月面を動き回るための車のことです。
    月に行ったら、なるべく広い範囲にわたって、いろいろなことを調べたいと、誰しも思うはずです。しかし、例えば着陸機を降ろしただけでは、その周辺数メートルだけを調べられるのがせいぜいです。
    宇宙飛行士が歩いて回るのはどうでしょうか。しかし、数十キログラムもある装備を背負って、宇宙線や強烈な太陽光線が降り注ぐ月面を何時間も歩いて調べまわるのは危険も伴いますし、効率的ではありません。
    そこで、月面をより素早く動き回ることができるよう、自動車のように手軽に使える乗り物があると便利です。これが、ローバーと呼ばれるものです。

    最初にローバーが登場したのは、旧ソ連が打ち上げた、ルナ17号という探査機です。この探査機は1970年11月15日に打ち上げられました。ルナ17号には、ルノホート(Lunokhod)とよばれるローバーが積まれていました。
    ルノホートは6輪の車輪で動きました。この車輪は、それぞれが独立に動くようになっていて、月面で砂などに車輪を取られても、残りの車輪で動けるように工夫されていました。4つのテレビカメラや、土壌計測装置、その他X線蛍光スペクトロメータなど、様々な観測装置を搭載していました。


    ルノホート1号 (Photo by NASA)
    写真をクリックするとより大きな写真を表示できます。(サイズ: 37KB)

    同じ頃、アメリカのアポロ計画でもローバーが登場しました。
    ローバーはアポロ15号(1971年7月26日打ち上げ)から使われるようになりました。こちらは宇宙飛行士が乗れるほど大型のもので、これにより宇宙飛行士の行動範囲を飛躍的に広げました。例えば、アポロ14号では、宇宙飛行士の行動範囲はせいぜい1.5キロメートル程度でしたが、ローバーが導入されたアポロ15号では、行動範囲が約4キロメートルの範囲内にまで広がりました。
    ローバーは2人乗りで、長さ3.1メートル、幅1.83メートル。4つの車輪にそれぞれ4分の1馬力の電気モーターがついていて、最高時速は13キロメートルでした。電力は蓄電池で供給されていました。
    ローバー自体の重さは209キログラムで、軽く作られていました。このローバーには最大で、490キログラムの重さの荷物を載せることができました。


    アポロ15号のローバー (Photo by NASA, AS15-86-11603)
    写真をクリックするとより大きな写真を表示できます。(サイズ: 61KB)

    ローバーには、月面の広い範囲を動き回ることができるという利点があります。また、たくさんの測定機器やサンプルを載せて一度に移動させることができますので、限られた滞在時間の中で、効率良く探査を行うことができるようになります。
    一方で、ローバーには難しい問題もあります。特に、無人のローバーとなりますと、いろいろと問題が出てきます。
    まず、操縦の問題です。地球と月の間は、光でも往復2秒かかります。月から送られた画像を見て、それをもとにローバーを操作していると、数秒の遅れが生じることになります。急に目の前に障害物が出てきたとき、とっさに避ける操作をしなければならないのに、数秒も遅れてしまうと大変なことになるかも知れません。そのためには、自分で障害物を検知して、避ける能力が必要になります(これを「自律制御」といいます)。
    車輪についても、ゴムは厳しい月面の環境では使えませんので、金属などを使うことになります。
    その他にも、砂や岩石と車輪との関係や、障害物を検知してどう進んでいくかなど、ローバーには様々な技術を結集していく必要があります。

    日本でも、無人のローバーについては様々な研究が行われています。宇宙航空研究開発機構 (JAXA)では、将来の月面探査に向けて、月面ローバーの試作を進めています。下に示した写真は、重さ350キログラムの大型のローバー試作機ですが、その他にも、小型のローバーの開発が進められています。
    また、いろいろな大学などでの開発も進んでいます。


    ローバー(月面車)走行研究モデル (Photo: JAXA)
    出典: JAXAデジタルアーカイブス (P-019-05680)
    写真をクリックするとより大きな写真を表示できます。(サイズ: 49KB)

    ところで、ローバーは日本語に訳すると「月面探査車」「月面車」と呼ばれることがありますが、最近では火星に着陸したマーズ・パスファインダーマーズ・エクスプロレーション・ローバーなどでもローバーが活躍していますので、「火星面車」ではなく、そのまま「ローバー」と呼ぶことが多くなりました。
    また、ローバーは英語のつづりでは “rover” と書きます。この “rove” には、「うろつく」「さまよう」という意味があり、その意味では月面を動き回るものにはぴったりの表現ということになります。


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    月面を動くために、ローバー以外の手段はありますか?2016-04-28T14:34:58+09:00

    月面を動くために、今のところいちばん有効な道具はローバーです。しかし、ローバーだけが表面を動く道具ではありません。

    いろいろな移動道具が考えられていますが、そのうち1つが、小型のロケットを組み込んだ移動装置です。これは、月面を離陸し、比較的低空を飛行して、月面の別の場所へと移動することができる装置です。
    移動距離は、ローバーよりは長く取ることができ、月面を自由に移動できるためには欠かせない道具になるとみられています。また、乗員も数人以上、将来的には十数人〜数十人にできるかも知れません。いわば、「月面バス」としての用途が期待されます。
    ただ、実用化のためには、効率のよいロケットエンジン、誘導技術、人を乗せて安全に動くことができるための各種技術の開発などが必要です。

    また、小型であることを重視するという観点であれば、もう1つ別の方法があります。車輪やクローラー(無限軌道。いわゆる「キャタピラー」®)を使って表面を移動するのではなく、自分の回転で飛び上がって移動する、という仕組みです。
    この仕組みを使ったのが、「はやぶさ」に搭載された超小型ローバー「ミネルバ」です。
    ミネルバは、内部に回転させるための装置を備え、自分自身の力でジャンプして、小惑星表面を跳ねるという仕組みで動くことになっていました。
    このような仕組みの移動装置を、「跳ねる」という意味の英語から「ホッパー」と呼びます(いわゆる「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ホップ」です)。
    ホッパーは仕組みが単純で、故障も少なく、また小型化することが可能です。さらにジャンプする距離が工夫できれば、比較的長い距離を移動させることもできます。
    一方、ホップするためには重力が小さい方が有利です。「はやぶさ」の場合、着陸した小惑星イトカワの重力は地球の10万分の1でした。一方、月は地球の6分の1。地球より小さいとはいえ、イトカワよりははるかに大きな重力です。それだけ、ホップさせる装置も大がかりになりますので、月で実現させるには、効率よいホップのための装置の開発、搭載していく装置(あるいはシステム全体)の小型化などが必要でしょう。
    また、人間を乗せるほど大型化するというのはおそらく非常に困難でしょう。従って、ホッパーの用途は、例えばローバーに乗せておき、ローバーでは探査が困難な場所(深いクレーターの中や、谷の下など)に放り込んで補助的な探査を行う、というようなことになるでしょう。

    もっと遠い将来、月面に人が定住するようになり、大きなコミュニティができてくれば、例えば月面鉄道(鉄のレールの上ではなく、リニアモーターカーのような移動手段になる可能性もあります)のような、より大規模な輸送手段も開発されてくるでしょう。
    今のところはまだまだSFの中の話に過ぎませんが、いつの日かそういったものを目にする時代が来る、そういう期待をしていきましょう。


    ■注

    「キャタピラー」は、日本ではキャタピラージャパン社の登録商標です。また、Catapillar はアメリカ・キャタピラー社の登録商標です。

    月面ローバーはどのくらいのスピードが出るのですか?2016-04-28T14:28:30+09:00

    アポロのローバーの速度ですが、平均速度として、大体時速5マイル(約8キロメートル)という数字が出ています。参考資料の数値では、アポロ15号で5.7マイル(約9.2キロメートル)、16号では4.8マイル(約7.7キロメートル)、17号では5.0マイル(約8.1キロメートル)となっています。
    なお、英語版ウィキペディアのページでは、最高スピードとして8マイル(約13キロメートル)という数値が示されているほか、アポロ17号でローバーを操縦したジーン・サーナン宇宙飛行士が、11.2マイル(約18キロメートル)という「未公認」最高速度記録を達成したという記事があります。

    一方、旧ソ連が打ち上げたローバーは、もっとゆっくり動くものでした。ロシアが打ち上げたローバー、ルノホートについては、ルナ17号と同時に月に到達したルノホート1について、最高速度が時速0.1キロメートル(100メートル)ということです。
    システムの違いもありますが、無人であるか(地球から遠隔操縦するのか)、有人であるか(運転手=宇宙飛行士がその場で判断できるのか)という違いも、この速度の差に表れていると考えられます。

    なお、火星ローバーと比較しますと、その差はさらに顕著です。
    1996年に打ち上げられ、翌年に火星に到着したマーズ・パスファインダーの場合、搭載されていた小型ローバー、ソジャーナの速度は最高で時速79フィート(24メートル)というものでした。なお、別の資料では秒速1センチ(時速で36メートル)というデータもありますが、いずれにしても大体時速30メートル前後であるということは確かです。
    2004年に火星に到着したマーズ・エクスプロレーション・ローバーの最高速度は、秒速5センチとなっており、時速に換算すると180メートルとなります。なお、実際には障害物検知などを行うため、速度はもっと遅くなり、実際の速度としては秒速1センチ(時速36メートル)となっています。


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    月面から「地球の出」をみることはできますか?2023-07-10T10:02:40+09:00

    「地球の出」とは、月の地平線から、地球が上ってくるようにみえる現象をいいます。

    月の自転周期と公転周期は同じなので、月はいつも同じ面を地球に向けています。
    これは逆にとらえると、月の表側のある地点に立って地球を見た場合、いつも同じ場所に地球が浮かんでいるように見えることになります。月の表側の真ん中付近ではいつも頭の真上に地球は見えますし、月の南極や北極、裏に近い端の方では月の水平線上に見えるでしょう。
    このため、南極や北極を飛行している宇宙船から、月の地平線上に地球が出てくる「地球の出」や、逆に地球が地平線の下に消えていく「地球の入り」をみることができます。

    「地球の出」として有名な画像は、アポロ8号で撮影された地球の出の映像です。荒涼とした月の上に地球が浮かんでいる映像は、地球の存在を象徴するものとして、「20世紀を代表する写真の1枚」にも選ばれています。
    そして、日本の月周回衛星「かぐや」は、地球の出の写真を撮影するだけではなく、ハイビジョン映像によって、この「地球の出」の映像を撮影することができました。

    ここで気をつけたいのは、月面にいるときには、「地球の出」をみることができない、ということです。上でも述べたように、月面では地球は常にほぼ同じ位置にみえます。従って、上空を飛行する宇宙船から撮影する場合でのみ、「地球の出」がみえるということになります。


    下は、アポロ8号が撮影した、「地球の出」の写真です。撮影日は1968年12月29日、月周回軌道投入のあとに撮影されたものです。このとき、アポロ8号宇宙船は月面から175キロの高さを飛行しており、月の地平線までの距離は約680キロです。


    写真をクリックするとより大きな画像を表示できます(サイズ: 1.6MB)。
    (Photo by NASA, Source: GRIN (Great Images in NASA))


    以下は、2007年11月13日に公開された、「かぐや」撮影のハイビジョンカメラの映像から切り出した静止画です。
    いずれも写真をクリックするとより大きな写真を表示できます。(Photo: JAXA/NHK)

    上は、2007年11月7日(日本時間)に撮影された、「地球の出」の映像です。月の北極付近を飛行している際に撮影され、地球はアラビア半島などがみえています。
    その動画は以下からご覧いただけます(映像: JAXA/NHK, 出典: YouTube JAXAチャンネル)。

    また、2008年9月30日には、満地球の出の撮影にも成功しています
    (映像: JAXA/NHK, 出典: YouTube JAXAチャンネル)。


    こちらは「地球の入り」の写真です。地球は画面では上が南側になっています。オーストラリア大陸が中央左、右下にはアジア大陸がみえます。
    映像は下からご覧いただけます。
    (映像: JAXA/NHK, 出典:YouTube JAXAチャンネル)


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    望遠鏡で月をみるとどのくらい細かく見えるのですか?探査機の画像と比べてどうでしょうか?2023-07-20T11:49:38+09:00

    望遠鏡の場合と、探査機の場合、2つに分けて考えてみることにしましょう。

     

    望遠鏡の場合

    望遠鏡で見分けることができる2つの物体の最小の角距離を「分解能」といいます。分解能は対物鏡の口径と観測波長だけで決まり、対物鏡の口径に反比例します。ただし地上の可視光望遠鏡では、大気の影響によって像が広がるため、1秒を下回る角分解能を実現することは困難です。
    ※1秒は1度の3600分の1です。

    地上の望遠鏡と分解能、月を見たときにどのくらいの大きさのものまでみられるか例を示します。
    口径6センチメートル 1.93秒角(約4キロメートル)
    口径50センチメートル 1.5秒角(約3キロメートル)
    口径1メートル 1秒角(約2キロメートル)
    口径105センチメートル

    [シュミット望遠鏡(木曽観測所)]

    0.75秒角(約1.4キロメートル)
    口径8.2メートル

    [すばる望遠鏡]
    0.2秒角〜0.3秒角(約400メートル)
    地球軌道にあるハッブル宇宙望遠鏡は大気の影響を受けないので、0.05秒角(月面を見る場合は90メートル)までの分解能があります。1999年4月に、このハッブル宇宙望遠鏡を使って月が観測されました。
    このときはコペルニクスクレーター付近を分解能約180メートルで、さらに拡大画像では約90メートル程度でとらえています。
    参考 http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/1999/14/index.html

    探査機の場合

    では、探査機ではどのくらいの分解能の画像が得られているのでしょうか。
    探査機では、高度が低ければ低いほど月の表面は細かくみることができます。
    1963年のソ連のルナ3号による月の裏側撮影以来、さまざまな探査機による月画像が得られてきました。
    これまでに数多くの探査機により、月表面の写真が撮影されてきました。

    ○ ルナーオービター (アメリカ)
    ルナーオービター1号〜5号は、1966年8月から1967年8月にかけて3ヶ月毎に打ち上げられました。
    1号〜3号では、月の赤道のあたりにあるアポロの着陸候補地点を10〜20メートルの分解能で撮影しました。4号は近月点高度2700キロメートルの極軌道に投入され、月の表側全体を60〜100メートルの分解能で撮影し、近月点高度100〜200キロメートルの極軌道に入った5号は、表側の一部を10〜40メートルで、裏側も150〜300メートルの分解能で撮影しました。

    ルナーオービターが撮影した画像の分解能

    1号〜3号 10〜20メートル 赤道付近
    4号 60〜100メートル 月の表側全体
    5号 10〜40メートル
    150〜300メートル
    表側の一部
    月の裏側
    ○ アポロ月周回船 (アメリカ)
    アポロ15・16・17号では月周回船に、精密な地図を作るための「メトリックカメラ」と、高分解能のステレオ写真をとるための「パノラミックカメラ」が搭載されていました。3機は赤道付近の上空高度約110キロメートルをほぼ円軌道で周回し、メトリックカメラでは分解能10〜20メートル、パノラミックカメラでは探査機の真下での分解能が2メートルという写真が得られました。

    ○ クレメンタイン (アメリカ)
    1994年1月に打ち上げられたクレメンタインは、月の全表面を撮影した最初の探査機となりました。
    クレメンタインは、高度400〜2940キロメートル、周期5時間の軌道で71日間観測を行いました。その間に撮った画像はなんと約100万枚です。クレメンタインが搭載していた4つのカメラの分解能はそれぞれ以下の通りです。

    クレメンタインのカメラの分解能

    カメラの種類 近月点(425キロメートル) 極上空(1275キロメートル)
    UVVIS(紫外・可視光) 115メートル 306メートル
    NIR(近赤外) 178メートル 475メートル
    HIRES(高分解能) 30メートル 90メートル
    LWIR(長波長赤外線) 65メートル 195メートル
    ○ スマート1 (ヨーロッパ)
    2003年にヨーロッパ宇宙機関が打ち上げた月探査機、スマート1には、高精度月小型カメラ(AMIE)と呼ばれるカメラが搭載されていました。このカメラの解像度は平均約80メートル、近月点付近では30メートルにも達し、クレメンタインよりも詳細な画像を得ることができました。

    ○ かぐや (日本)
    「かぐや」は、合計で3種類の科学カメラと、ハイビジョンカメラを搭載していました。科学カメラは、地形を主に撮影する地形カメラ、分光装置を使って鉱物の組成などを調べるマルチバンドイメージャ、そして線状に分光データを取得するスペクトルプロファイラの3種類です。
    地形データを得るためのカメラとしては地形カメラおよびマルチバンドイメージャが主に使われました。地形カメラの解像度は最良のときで約8メートル、マルチバンドイメージャは20メートルと、これまでの探査機に比べても格段に高い解像度を実現しました。

    ○ 嫦娥 (中国)
    「かぐや」と同時期、2007年に打ち上げられた中国の月探査機「嫦娥1号」は、周回高度が200キロメートルと高かったこともあり、カメラの解像度はおよそ120メートルほどであるといわれています。なお、2010年に打ち上げ予定の「嫦娥2号」では、軌道高度が100キロとなり、またカメラも改良されることから、数メートル、場合によっては1メートルという解像度になると推測されています。

    ○ チャンドラヤーン1 (インド)
    2008年にインドが打ち上げた月探査機、チャンドラヤーンは、地形マッピングステレオカメラ、及び月面鉱物マッピング装置という、2つのカメラ関連装置を搭載していました。地形マッピングステレオカメラの解像度は約5メートル、月面鉱物マッピング装置は約70メートルの解像度でデータを取得しました。なお、月面鉱物マッピング装置は、アメリカが開発したものです。

    ○ ルナー・リコネサンス・オービター (アメリカ)
    この探査機は、その名が「月面偵察機」となることからもわかるように、月面を高精度で撮影することを狙っています。探査機のカメラは、最高で1メートルという、これまでにない解像度を誇ります。ただこの解像度では月面全体を撮影することはできず、そのためには解像度100メートルの広角カメラが使われます。


    ■関連項目


    世界中どこでも、見える月の模様は一緒なのでしょうか?2021-05-26T20:45:41+09:00

    月の明るい夜、歩いていると月がどこまでも追いかけてくるようにみえる…という経験は、どんな方でも一度はおありではないでしょうか。
    ずっと遠くまで歩いていったら、月の違った面が見えるのではないか…そう考える人も多いかも知れません。海外旅行などへ行って、ホテルの窓から月を眺めていると、いつもと違うように見えるという人もいます。
    しかし、月の表面の模様や形が、地球上の別の場所からみたからといって変わるということはありません。

    まず、月は地球に必ず同じ面を向けています。
    夜空にある月は一見大きそうにみえますが、地球と月との距離は38万キロメートルもあります。地球の半径は約6400キロメートルです。仮に、地球を人間の顔の大きさ(直径20センチメートル)としますと、月は12メートル近くも離れたところにあることになります。
    仮に、12メートル近く離れたところに人を向かい合わせに立たせてみましょう。自分が動かない限り、その人の背中などが見えたりすることはないはずですね。
    月も同じように、地球上を動いたくらいでは、見える模様が変わったりすることはありません。世界中どこでも、月の表側を見ることになります。


    ■ 関連Q&A


    我々が月の裏側を(地球にいて)見ることができますか?2021-05-26T20:45:21+09:00

    月は、いつも表側を地球に向けています。
    これは、地球に対する公転周期と自転周期がほぼ等しいためですが、厳密に測ると、月の公転の速度は一様ではありません。これに対し、自転速度の方はかなり一定です。そのために、このずれによって6.29度の振幅で見かけ上東西に振れることになり、東西の縁の付近の見え方もそれだけ異なってきます。
    また、月の赤道面と白道面(地球から見る月の公転軌道面)も黄道面(太陽に対する地球の公転軌道面)に対してそれぞれ傾いているので、月は南北方向にも6.68度の振幅で振れて見えます。
    さらに、月は地球に近い天体なので、月を地平線上で見るときと、天頂付近で見るときとでは東西方向の見え方に特に違いがでます。

    このような3つの理由で、月はいつも正しく同じ面を地球に向けているわけではなく、秤動(ひょうどう)しているといいます。これは見かけだけのもので光学的秤動と呼びます。月の全表面のうち、地球から見ることができるのは59パーセントで、残りは地球からは見えません。


    なぜ、月はいつも同じ面を地球に見せているのですか?2021-05-26T20:43:22+09:00

    月自身が回転する、月の自転周期と、月が地球の周りを回る公転周期がほぼ等しく、約27.32日だからです。

    太陽系内の天体は、軌道運動力学的にいくつかの規則性を持っています。例えば、一つの天体の公転周期と自転周期が簡単な整数比(例えば1対1,あるいは3対2)で表される場合を尽数(じんすう)関係にあるとといいます。その他にも、2個以上の天体の公転周期が簡単な整数比で表される場合にも尽数関係にあるといいます。
    このような関係にある天体は、特に木星や土星の衛星によくみられます。
    月の場合には、地球の周りを回る地球−月系の公転周期と自転周期の比は1対1の尽数関係になっています。

    なぜこのように自転と公転の周期が同じになったのかについては、まだ科学的にはっきりとした説は出ていません。ただ、多くの科学者は、次のように考えています。
    月は、質量の分布が実は少し偏っています。つまり、質量の中心と形の中心はずれているのです。そのため、地球の引力によって、その重い面が引っ張られ、その引力によって、自転の速度が次第に遅くなっていきました。
    そして、最終的に、地球に同じ面を向けるような形、つまり自転と公転が一致するところまで自転の速度が落ちたのではないかと考えられています。


    どうして、中秋の名月と満月の日付が違うのですか?2021-05-26T20:44:11+09:00

    中秋の名月は、別名「十五夜」というように、旧暦で8月15日の夜になります。このことからわかるように、「中秋の名月」の日は、旧暦に基づいて決まってしまいます。
    まず、新月や満月ということについて考えてみましょう。新月や満月というのはそれぞれ、「月が地球と太陽のちょうど間に来た瞬間」、「月が地球からみて太陽の反対側に来た瞬間」をそれぞれ意味します。つまり、いずれもある時刻のことを指しているという点に注意して下さい。

    さて、旧暦の1ヶ月は、月の満ち欠けの周期ですから、平均すると29.4日となっています。しかし、暦は1日単位で数えますから、「.4日」ということはありません。従って、旧暦の1ヶ月は29日か30日ということになります。つまり、新月から満月になるための時間は、29.4の半分、つまり14.7日ということになります。

    上の図をみて下さい。矢印は新月から満月の間の期間、すなわち14.7日です。新月の時刻が仮に旧暦ついたちの昼間ですと、図のように、満月になるのは旧暦の16日になってしまいます。
    さらに、実際には月の運動は一定ではありません。月は地球のまわりを回っていますが、この軌道が完全な円ではないのです。満月が近づいたときに地球から遠くなっていると、月の運動は遅くなり、満月になるのに時間がかかってしまいます。逆に地球に近いところを月が回っていると、月の運動は速くなります。そのため、満月になるまでの時間が短くなります。
    以上のような理由から、満月と暦の上での「中秋の名月」に1〜2日のずれが生じることがあるのです。


    ■関連Q&A


    月は地球から少しずつ離れているということですが、逆に、昔はもっと地球に近かったのでしょうか?月の見え方は今とは変わっていたのでしょうか?2021-05-26T20:41:31+09:00

    現在、月は地球から、年に約3センチメートル程度の速さで離れつつあります。
    ということは、これを元に戻していくと、過去は月はもっと地球に近いところにいたのではないか、という想像ができます。

    ただ、月が離れていく速度が昔から一定だったのか、ということについては、実際のところよくわかっていません。
    月が地球から離れていく大きな原因は、地球と月の間の潮汐力により、地球の自転が遅くなることが原因です(この質問も参照して下さい)。ところが、この潮汐の動きに大きな影響を与えるのは、海の水の流れです。
    地球の自転にブレーキをかけていくのは、海水の運動、特に、海底との摩擦や、海流が大陸とぶつかることによる影響です。しかし、大陸はずっと今の位置にいたわけではありません。大陸は少しずつ移動していますし、それによって潮汐の影響なども少しずつ変わってきます。

    この影響を計算に入れた上で、かつて地球の自転がどのくらい遅くなっていたのか、ちょうど時計の針を逆回しにするような計算を行ったのが、宇宙科学研究所の安部正真さんです。
    計算の結果、やはり地球は、かつてもう少し今より近い位置にあったと考えられます。例えば、10億年前であれば今より約10パーセント近く、距離が短かったという結果が出ています。20億年前であれば約16パーセント、30億年前ですとおよそ30パーセント短かったという計算結果になっています。
    また、計算の結果では、月が地球に非常に近かったのは43億年以前、という結果も出ています。これは、地球と月ができたのがおおよそ45億年前、という仮説ともほぼ一致する結果といえるでしょう。

    ここで気になるのは、「では、その頃の月は大きく見えたのか」かと思います。
    1〜2億年前は、今の地球―月の距離とほとんど差がありませんので、月の大きさは今みえているものとほとんど代わりがありません。では10億年前はどうでしょう。今と10パーセント近く距離が違うということであれば、月と地球の平均距離はおよそ34億キロということになります。
    ところが、実は現在の月でさえ、距離は一定していないのです。現在の月までの距離は、平均すると大体地球から384400キロということになっていますが、月は地球から遠ざかるときは約40万キロ、近づくときは36万キロまで近づきます。この場合、見かけの大きさも10パーセントくらい違ってきます。
    写真などで見ると明らかに大きさが違いますので、時折、地球に近いときの満月が「今年いちばんの大きな満月」などと紹介されることがありますが、実際夜空で満月を眺めたとき、その大きさをはっきりと実感できるかどうかは、微妙なものがあります。
    30億年前、もし30パーセントも近いということになりますと、その距離は平均して27万キロくらいです。こうなると、夜空の月は今よりも少しくらい大きく見えてもいいかと思います。ただ、残念ながらそのような月を眺めた人は、人類としてはアポロ宇宙飛行士くらいだと思いますが…。


    謝辞
    本原稿の執筆にあたっては、安部正真さんから資料のご提供をはじめ、ご助言などをいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。


    ■関連Q&A


    ■参考資料

    • 安部正真、水谷仁 地球史における1日の長さの変化 月刊地球 vol.64, No. 8 (1994)

    月は地球から少しずつ離れているということですが、このまま永遠に離れてしまうのですか?2021-05-26T20:41:51+09:00

    月は地球の自転のエネルギーをもらって少しずつ地球から離れていきますが、これは地球の自転速度が月の公転速度より速い場合に起こります。現在より月の軌道が40パーセントほど大きくなるところまでくると、地球の自転速度は月の公転速度と同じになり、そこで月が地球から離れていくのも止まるであろうと考えられています。
    そのときの月の公転周期は約70パーセントほど長くなっていていて、ひと月の長さが50日(現在の1日の長さの単位で)程度です。この時の地球の一日の長さがひと月の長さと同じになっているので、現在の一日の長さに比べると非常に長くなります。ただし、このようなことが起きるのは何十億年(あるいは100億年以上)も先の話です。


    ■関連Q&A


    初めての月探査SFはどのような作品ですか?2023-07-10T10:02:40+09:00

    「月に行く」ということを小説として表したのだとすれば、おそらく世界ではじめての「月に行く小説」は「竹取物語」といってかまわないでしょう。

    一方、科学的考察を含めた内容で「月に行く」ということを描写した文学作品となると、1634年に発刊された、ヨハネス・ケプラーの「夢」(ソムニウム)が最初となるでしょう。
    ケプラーは、惑星の運動を記述した「ケプラーの法則」で有名であり、天体の運動について、現在の科学につながる基礎を残した偉大な天文学者です。
    一方で、自分自身の天文学への信念や発見などをわかりやすく一般の人たちに伝えるということも行っていたのです。「夢」もその流れの中で書かれたものですが、残念ながらケプラーが生きているうちには発刊されず、死後、遺族が出版したのです。
    「夢」の中では、主人公は精霊に祈りを捧げることで月旅行へと旅立ちます。月についての描写は、現在の私たちの月の知識とはかなり離れており、空気が存在したり人が住んでいたり、ということはありますが、月の満ち欠けや運動については、ケプラーの天文学の知識が大いに活かされています。
    「夢」は、日本語訳が2009年の世界天文年に合わせて復刊されています。

    さて、月への行き方について、「祈る」といったような非科学的な方法ではなく、科学的な考察に基づいた形で書かれた小説としては、フランスの小説家ジュール・ベルヌによる「月世界旅行」になるでしょう。この作品は1865年に書かれました。
    この「月世界旅行」では、主人公(3人のアメリカ人男性)は月に行くための巨大な大砲を建設し、それを垂直に打ち上げることで月を目指します。
    もちろん、現在ではこのような方式ではなく、ロケットを使用します。しかし、大砲の大きさを逆にすると、現代のサターンV型ロケットとほぼ同じになるという点は驚くべきことです。また、大砲の設置場所がアメリカ・フロリダ半島であったり(アポロ宇宙船は、同じフロリダ半島にあるケネディ宇宙センターから打ち上げられました)、乗員がアポロと同じ3人であったり、最後には太平洋に落下して帰還する、という点など、まるでアポロの宇宙計画を100年以上前に先取りしたかのような点もみられます。

    もっとも、この「月世界旅行」は予言の書ではなく、当時最先端の天文、科学、技術の知識を総動員し、さらにベルヌ得意のエンターテイメント性を盛り込んだ、科学小説、まさにSFだったわけです。
    当時(19世紀中頃)は、科学技術、特に機械技術の発達がめざましい時代でした。また、天文分野では、技術の発達に助けられ、精密な月面地図が作成されるなど、大きな進展を迎えた時代でした。ベルヌはこういった内容を余すところなく作品に盛り込んでいます。
    一方、作品の舞台を、当時新興国として大きな勢いをつけ、また国土が広く、舞台設定上の自由度が高いアメリカに設定したというのは、当時のヨーロッパからみて「新興の国が古い慣習に縛られず新しいことを成し遂げる」というベルヌの思いを受け止めたものといえましょう。

    なお、現在の月面の地名の命名規約では、月の地名は科学者の名前をつけることになっています。しかし、そのルールが決まる前、旧ソ連のルナ3号がはじめて月の裏側の写真を撮影した際に発見したいくつかのクレーターの1つに、「ジュール・ベルヌ」という名前がつけられています。
    これは、アポロやルナ探査機よりも100年以上前に、月の裏側の世界を描いた作家に対して敬意を表したものです。


    強烈な光と煙を発し、月に向かう砲弾を発射する大砲。「月世界旅行」1872年初版本の挿絵より。
    (出典: Wikipedia ※ウィキペディア・コモンズの下でライセンス)


    なお、この「月世界旅行」は1902年にジョルジュ・メリエス監督により映画化されました。当時の映画は、既に著作権が切れているため、インターネットで視聴できます。こちらは、世界初のSF映画といってよいでしょう。

    出典: The Baker Street Bakery
    音楽及びナレーション部分はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとで公開され­ています
    (CC BY-NC-SA)。


    ■ 参考資料

    • ケプラーの夢 (ヨハネス・ケプラー著、渡辺正雄・榎本恵美子訳、講談社学術文庫、講談社)
    • 詳注版 月世界旅行 (ジュール・ヴェルヌ著、W.J.ミラー注、高山宏訳、ちくま文庫)
    • 月世界へ行く (ジュール・ヴェルヌ著、江口清訳、創元SF文庫、東京創元社)
    • ニュートン別冊・月世界への旅 (ニュートンムック、ニュートンプレス)
    月の高地はなぜ白っぽいのですか?2016-04-07T07:30:35+09:00

    月の表側全域の地図は、1645年、オランダのラングレヌスによってはじめて作られましたが、そこで彼は大きな暗い地域を「海」、明るい地域を「陸」と名付けています。「陸」は現在では「高地」と呼ばれる方が一般的です。

    月が誕生した初期には表面の数百キロメートルは溶融して巨大なマグマの海が出来ていました。マグマの海が冷えるにつれて、いろいろな鉱物が結晶していきますが、軽くて白っぽい斜長石の結晶は表面に浮かび、重くて黒っぽい輝石やかんらん石の結晶はマグマの海の底に沈みました。月の高地はこのようにしてできた斜長石の地殻だと考えられています。

    斜長石はカルシウムとアルミニウムに富む鉱物で、海を作っている玄武岩と違って、鉄やチタンには乏しくなっています。
    また、高地の岩石は海と異なり、月が形成された後にも続いた隕石の激しい衝突によって原形がわからないほど破砕され混合されています。


    ■関連Q&A

    日本では、月は「竹取物語」や「金色夜叉」さらには「セーラームーン」まで、いろいろな文学作品に登場していますが、他の国ではどうですか?2016-04-06T06:15:18+09:00

    このご質問の項目は現在調査中です。
    調査が完了し次第、掲載いたします。

    中秋の名月を「仲秋の名月」と書いているところもありますが、この「中秋」と「仲秋」、どちらが正しいのでしょうか?2021-05-26T20:47:07+09:00

    まず、その両方がどういう意味を持っているか、調べてみましょう。

    三省堂の新国語中辞典を開きますと、この2つの言葉は次のように解説されています。

    仲秋…《秋の三ヶ月(七・八・九)の中の意》陰暦八月の別称。なかのあき。
    中秋…陰暦八月十五日。「–の名月」

    中秋の名月は、陰暦(旧暦)で8月15日、つまり秋の真ん中の日の月のことを指します。従って、陰暦8月15日を示す「中秋」という言葉の方がふさわしいことになります。

    仲秋という言葉は、旧暦で8月を示す言葉の1つです。もともと旧暦の月の呼び方の中に、季節の真ん中の月(春なら2月、夏なら5月、秋なら9月、冬なら11月)に「仲」をつけて呼ぶ言葉があります。例えば、「仲春」といえば2月、「仲夏」といえば5月となります。もちろん、「仲冬」という言い方もあり、これは11月を指します。
    「名月」という言葉を「満月」と解釈すれば、「仲秋の名月」でも間違いとはいえなくなりますが、もともとの「8月15日の月」という言葉からすると、「仲秋の名月」よりは、「中秋の名月」の方がより正しい、ということがいえると思います。

    もっとも、この「仲秋」と「中秋」は、長い歴史の中でだんだん区別されずに使われてきているようにもみえます。「広辞苑」第4版をみてみますと、「中秋」と「仲秋」は同じ言葉として扱われています。


    ■参考資料

    • 三省堂新国語中辞典、三省堂編修所編、1967
    • 広辞苑第四版、新村出編、岩波書店、1991

    満月はいつもあるのに、中秋の名月だけがなぜ有名なのですか?2021-05-26T20:43:50+09:00

    月の満ち欠けによって暦を作っていた太陰暦(旧暦)では、7、8、9月を秋としていていました。その真ん中の8月15日を中秋といいます。
    月の観賞は中国から伝えられた行事で、日本では9世紀末ころから宮中で月見の宴が行われていました。秋は空が澄み渡り、月の高度もほどよく眺められる良い季節なので、月を楽しむ習慣が継続しているのでしょう。

    この中秋の名月の習慣は、現在ではおだんごとすすきを供えて月を愛でるのが一般的ですが、地方によっては、豆やいもなどをお供えしたり、早く採れたイネ(早稲)を供えるなど、農作物の収穫と関連した行事が行われています。これが、もともとの中秋の名月の行事であったと考えられています。
    特に、月ははるか昔から、農作の守護神として世界的に崇められる傾向がありました。このようなことから、中秋の名月は農作物の実りに感謝するという意味もこめられていたのかも知れません。


    回答作成協力: 国立天文台広報普及室(現 天文情報センター普及室)


    ■参考資料
    谷川健一(著者代表) 「日本民俗文化大系[普及版]第二巻 太陽と月 = 古代人の宇宙観と死生観 =」、小学館(1994)
    上記の題名のリンクをクリックすると「月の本」のコーナーにある紹介欄にジャンプします。


    中秋の名月に食べ物をお供えしますが、どのような食べ物をお供えするのですか?また、なぜお供えするのですか?2021-05-26T20:36:15+09:00

    お月見のときにお供えするものとしては、まず「月見だんご」があります。旧暦の8月15日の夜(中秋の名月)と、同じく旧暦の9月の十三夜のお月見に供える団子のことをいいます。
    お供えする数も、十五夜のときには15個、十三夜のときには13個と決まっている地域もあります。また、そうでない場所もあります。

    この旧暦の9月の十三夜のときには、枝豆を供えるという風習があります。そのためこの十三夜を「豆名月」と呼ぶこともあります。栗を供えることもあり、「栗名月」と呼ばれることもあります。

    また、中秋の名月に里芋を供えるという習慣も一般的です。里芋は、この時期は収穫期の始めにあたりますが、この出はじめの芋を煮る、あるいは蒸してお供えします。この里芋を供える風習は、少なくとも室町時代にまで遡るものです。
    これに関連して、秋によく行われる芋煮会が、月見の行事と関係しているという説もあります。
    中秋の名月に芋を飾ることから、この名月を「芋名月」と呼ぶこともあります。

    さらに、お月見の風物詩としてよく出てくるのが、すすきです。これも、中秋の名月でお供えすることが一般に行われています。

    さて、このようにいろいろな食べ物をお供えして月を愛でるのはなぜでしょうか。
    秋はちょうど、いろいろな作物が収穫の時期を迎えます。上で述べた、枝豆、里芋、そして団子の材料となるお米なども、秋が収穫のシーズンです。
    月は、ほぼ30日で満ち欠けを繰り返します。夜空で規則的な満ち欠けをする月は、古来から、カレンダーとして重宝されてきました。
    農耕ではカレンダーが重要となります。種まきや収穫の時期をいつにするか、といったときに、昔から、月の満ち欠け、あるいは月の満ち欠けを基準とした暦を頼りにしてきました。そういった、農耕に役立ってきた月に感謝の意を込めて、収穫された作物をお供えして感謝の意を表した、ということがそもそものお供え物の意味だったのではないでしょうか。


    この項目の執筆にあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。

    百分の一科事典・月
    スタジオ・ニッポニカ編 小学館文庫(1998)

    この本の情報につきましては、「月の本」のコーナーでもご覧いただけます(題名のリンクをクリックすると、説明をご覧いただけます)。


    ■関連項目
    栗名月とはなんですか?


    西洋では、月は「狂った」「気が触れた」という意味を持つと聞きましたが、これはどういうことですか?2016-04-06T06:16:54+09:00

    実際にそうなのかどうか、ということを確かめるには、辞書をみるのがいちばんです。
    まず、月にまつわる言葉として、“lunatic”という言葉を辞書で引いてみて下さい。そうすると

    精神に異常をきたしている、狂っている、愚かな、狂気の

    といったかなりすさまじい意味が並んでいます。
    なぜなのでしょうか。今度は語源を調べるため、英和辞典ではなく、あえて英語の辞書を使いましょう。語源については定評のあるオックスフォード英語辞典(OED: Oxford English Dictionary)で、“lunatic”という言葉を引いてみると、次のような意味だとされています。

    Lunatic: from late Latin lunaticus, from Latin luna “moon”
    (from the belief that changes of the moon cause intermittent insanity)

    問題は上記の( )の中です。この部分を訳しますと、「月の変化が断続的な精神異常をもたらす」という意味になります。

    なぜ、月の変化が精神の異常や狂気と結びつけられて考えられるようになったのでしょうか。いちばん有力な説としては、月の満ち欠けが、人間の性格を表しているということから来ているというものがあります。
    月は満月になって、だんだんやせ細って最後にはなくなってしまいます。このように、人間の性格も時には満月のように丸々としているかと思えば、細い月のように変わる。特に、常に丸く変わらない太陽からすると、形を変えていく月というのが、その時々で変える(あるいは変わったようにみえる)人間の性格というのを表している、と昔の人は考えたのでしょう。

    また、別の意味として、夜に輝く月という存在が、人間の心の奥底を照らしているということから、人間の裏に隠された狂気のような性格、ということを月が表している(太陽のような「表」の姿と、月の「裏」の姿)と考えられた可能性もあります。
    いずれにしても、このような言葉が成り立つようになったのは中世のヨーロッパで、「月の光を浴びると気が狂う」というようなことが信じられてきました。狼男の伝説なども、このあたりが起源になっているといえるでしょう。

    同じように、月を語源として「狂気」を意味する言葉には、”lunacy”という言葉があります。lunaticとよく似た意味合いで使われますが、lunacyは名詞です。
    また、moonという言葉そのものにも、実はちょっと変わった意味があります。moonを動詞で使うと、俗語として「バカにする」といった意味になるのだそうです。このあたりにも、lunaticなどの言葉の影響があるのかも知れません。


    ■ 謝辞
    本回答の執筆に当たって、lunaticの語源等については、会津大学の金子恵美子先生のご協力を頂きました。ありがとうございました。

    月が地球から離れていくのはなぜですか?詳しく教えて下さい。2021-05-26T20:41:10+09:00

    このことを知るためには、まず「角運動量」という量を理解することが必要になります。
    回転している物体は必ず勢い(あるいは運動量)を持ちます。例えば、振り回したヨーヨーはぶつかると痛い思いをします。これは回転している物体が速度を持っているからです。
    角運動量は、[速度]×[回転する物体の半径]×[その物体の重さ]という形で表されます。回転する速度が速い、物体の半径が大きい、あるいは重さが重い、という条件があれば、角運動量が大きくなります。
    また、重要な法則として「角運動量の保存則」というのが存在します。これは、「外界から何か力が働かない限り、同じ力学系に属する物体の角運動量は保存される」というものです。これを表す端的な例としては、フィギュアスケートの回転があります。フィギュアスケートの選手が、手を次第に縮めながら回転させていくと、回転する速度が速くなってきます。これは、角運動量保存の法則が働いていて、手を縮めることで半径が減ったため、速度が上がったということになります。

    以上をとりあえず理解した上で、地球と月の話にいきましょう。
    まず、地球と月は、力学的には1つの物体として見なすことができます。これは、月が地球の周りを回っているからです。
    もう少し正確にいいますと、地球の自転と月の公転の角運動量の合計が保存される、ということになります。
    さて、地球と月の間には引力があり、そのために潮汐という力が働きます。潮汐力は、潮の満ち引きを起こす力でおなじみだと思いますが、この力により、地球は月の方向に向けて引っ張られることになります。特に、地球には海があり、海面が月の方向に引っ張られることによって、潮の満ち引きという現象が発生します。
    そのため、地球と月との関係は、図のように、月の方向に向けて海面が引っ張られるという形になるはずです。


    クリックすると大きな図が表示されます(サイズ: 73KB)

    しかし、実際にはそうはならず、下の図のように、ややずれた方向に海面の盛り上がりが向かうことになります。これは、地球が自転しているため、引っ張られた部分が自転の勢いで少し回ってしまうことが大きな理由です。


    クリックすると大きな図が表示されます(サイズ: 127KB)

    このように、ふくらみが月と地球にいちばん近いところから少し離れてしまっているため、この海(地球)のふくらみの部分から、月に向けて引っ張られることになります。このため、地球の自転が月に引っ張られて、ブレーキがかかることになります。
    地球の自転が遅くなる原因はほかにもあります。地球は東回りに自転していますが、海水が自転により海底と摩擦を起こすため、地球の自転に影響を与えるという問題があります。また、海水は地球よりも遅れて動くため、地球からみると自転と逆の方向へ動くようになります。つまり、海の西側の部分に海水がぶつかるようになります。実際、大きな海の西側を流れている海流(たとえば、太平洋の西側を流れている黒潮や、大西洋の西側を流れているメキシコ湾流)などは、非常に強い海流として有名です。この現象を西岸強化といいますが、この大陸と海水がぶつかる摩擦も、地球の自転を遅らせることになります。

    このような理由により、地球の自転は少しずつ遅れてきています。
    さて、地球の自転のスピードが遅れるということは、地球の自転が持つ角運動量が少なくなってきていることを意味します。ところが、先ほど述べたとおり、地球の自転の角運動量と月の公転の角運動量の合計は保存されます(変わらないということです)。地球の自転の角運動量が減れば、月の公転の角運動量が増えます。
    月の公転の角運動量が増加するとどのようなことが起きるでしょうか。月の質量は増えませんから、半径が増加していくことになるのです。従って、月は地球から少しずつ遠去かっていくことになります。


    ■関連Q&A


    なぜ、「つき」というのですか?2016-04-06T06:18:15+09:00

    どんな質問でもそうですが、簡単な質問ほど答えは難しく、また、それと決まった答えがなかなかないものです。月をなぜ「つき」というかについても、まだいろいろな説があるということをまず、頭に置いておいてください。

    さて、なぜ「つき」というかにつきましては、次のような説があります。

    • 「次」(つぎ)から来ているという説。太陽の「次」、つまり太陽(最も明るい天体)を一番め、月をその次の二番めとしたことから、「つき」と呼ばれたという説です。
    • 同じく「次」だが、日神(太陽の神)の次に月神(月の神)が生まれたので、「つき」と呼ばれているという説。『日本書紀』の中では、まず日神(イザナギノミコト)が生まれ、その次に月神(イザナミノミコト)が生まれています。
    • 「尽きる」から来たという説。月には満ち欠けがあります。満月から次第に月の明るさは小さくなり、新月になれば月はまったく見えません。明るさが「尽きる」ことから、「つき」と呼ばれるようになったという説です。

    ■参考資料

    月には磁場はありますか?2021-05-26T20:42:10+09:00

    アポロ計画では、月に地球のような磁場があるかどうかが調べられました。もし月にも地球のような磁場があるとしたら、月にも、地球のように磁場を産み出すような内部活動があることになります。それはすなわち、月が今でも活動的な天体であることを証明することにつながります。

    アポロ計画で行われた磁場探査の結果、月には地球のように、全球で磁場が存在しているということはありませんでした。ただ、測定の結果、月の海の地域に「残留磁場」と呼ばれる磁場が存在していることがわかりました。
    残留磁場とはなんでしょうか? 通常、月の海を構成しているような岩石(玄武岩など)の中には、鉄など、磁化しやすい物質が含まれています。こういった物質が、まわりの磁場の影響を受けて磁化され(つまり「磁石となって」)、その結果、岩石全体が弱いながら磁力を持つという現象です。まわりに磁場がなくなってしまっても、この磁場は(ちょうど永久磁石のように)保たれ続けます。
    つまり、月の海に弱いながらも磁場があるということは、月はかつて磁場を持っていたが、それがなくなってしまったということを意味しています。

    さらに不思議なことがあります。月の海の中には、局所的に、磁場が異常に強い地域があるのです。
    例えば、表側にあるライナー・ガンマ(Reiner Gamma)地域がその代表です。アポロによる探査で既に、この地域が異常に強い磁場を持つことがわかっていました。1998〜1999年に行われたルナー・プロスペクター探査機による探査では、上空からの磁場測定で45ナノテスラ(nT)という磁場が観測されました。
    地球磁場の強さが大体24000〜60000nTですから、この磁場は非常に弱いものなのですが、それでも月の他の部分でほとんど磁場が観測されないという点から考えますと、この数値はかなり強い残留磁場がこの地域存在するということを示しています。
    また、さらに強い磁場を持つ領域が月の各所に点在していることも、ルナー・プロスペクタの探査により明らかになりました。それらの中には、300nTを超える、異常な強さを持っている地域もあります。

    強い磁場がある地域には、いくつかの共通点があることがわかってきました。
    1つは、そのような地域(特に裏側にある地域)は、月の海、それも比較的新しい時期にできた月の海(危難の海、雨の海など)のちょうど真裏にあるということです。
    もう1つは、こういう強い残留磁場が観測される場所の多くに、白っぽい模様と黒っぽい模様で構成される、渦巻状の構造が観測されています。
    これらの特徴が、異常に強い局所的な磁場の原因と、何らかの関係を持っているはずです。しかし、現在のところ、その原因はまだ明らかになっていません。
    彗星の衝突や、太陽からの磁気嵐などといった外因説、月内部の火山活動や、内部から出てくるガスなどの影響による内因説があります。最近では、特に月の海の裏側に多いことに注目して、月の海をつくった大きな衝突が、月の裏側にまで影響を及ぼし、それが今に残る強い残留磁場を作ったという説が有力ですが、はっきりしたことはまだわかっていません。

    ルナー・プロスペクターのデータは現在も解析が進められています。また、日本の「かぐや」でも、搭載された磁力計が月の周囲をまわりながら磁場をくまなく測定しました。現在解析が行われており、こういった探査により、月の磁場の謎が解ける日も近いかも知れません。


    「かぐや」搭載の地形カメラが捉えた、ライナー・ガンマ地域
    (クリックすると大きな画像をご覧いただけます)
    出典: かぐや画像ギャラリー 地形カメラデータ, Copyright (c) JAXA/SELENE


    日本では月の模様は「うさぎ」ですが、他の国ではどのようにいわれているのでしょうか?2016-04-06T06:20:39+09:00

    ※ビジュアル版はこちら

    世界各地で、月についてはいろいろな模様に見立てられています。

    日本ではご存じの通り、「ウサギが餅つきをしている」ように見えると言われていますが、このように月にうさぎの模様をみるのは、日本だけではなく、アジア全体にわたる風習です。中国やインドなどもそうですし、さらにヨーロッパや、アメリカ大陸のアメリカインディアンの中にもそのような風習があるということです。
    この「うさぎ」は、発祥の地はインドの伝説で、それが中国へ、さらには日本へと伝わってきたという話です。

    中国ではまた、「ガマガエル」や「大きなカニ」「カツラ(桂)の木」を月に見立てる風習もあるようです。よくいわれる「月桂」という言葉は、このカツラの木の伝説から生まれています。
    カニはヨーロッパ、特に南ヨーロッパで見立てられています。
    東ヨーロッパや北アメリカでは、月の模様は「横(場所によっては右上)を見つめる女性」といわれます。
    アラビア半島ではライオン、南アメリカではワニに見立てられることもあります。
    「水を汲む女性」という伝承も、世界各地で見受けられます。
    またノルウェーでは男の子と女の子が2人でバケツを運んでいるように想像し、満月には丘に登って水をくみ、月が欠けると丘を下り、この水が地球に降ってきて雨になるという伝説があるようです。
    さらには、「本を読むおばあさん」などというのもあります。

    世界各地にいろいろな見立てがある理由としては、その地域に伝わる月の神話、特に月のでき方の神話、伝承と深い関係があるようです。
    また、うさぎの見立てがインドから中国、日本へと伝わってきたように、文化の伝達に従って物語も伝わっていくということもあると思われます。


    このQ&Aのビジュアル版へ


    ■参考資料

    • ふたたび月へ (野本陽代著、丸善ライブラリー)
    • 月のきほん (白尾元理著、誠文堂新交社)
    • 百分の一科事典・月 (スタジオ・ニッポニカ編、小学館文庫)
    月の重力は、なぜ地球の重力の6分の1なのですか?2021-05-26T20:42:43+09:00

    まず結論から言ってしまいますと、理由は、「月の大きさが地球の4分の1で、重さが約100分の1だから」ということになります。月の重さが軽いため、月が引っ張る引力(つまり、月の重力)が小さい、ということが、最も簡単な結論になります。
    しかし、これではあまりにも簡単過ぎますので、せっかくですので計算してみることにしましょう。
    高校の物理で習う内容も入っていますので、やや難しいですが、チャレンジしてみてください。

    まず必要になるのは、ニュートンの第2法則です。これは、「物体が受ける力は、物体の重さと加速度をかけたものになる」というものです。言葉で書くと難しそうですが、いま、力の大きさをF、重さをm、加速度をaとしますと、式としては簡単で、

    F=m×a

    となります。1キログラムの重さのものを、毎秒1メートルずつ加速する加速度で加速してやるための力は、1ニュートン (1N)といいます。
    もう1つは、「万有引力の法則」です。これも言葉で書くと難しいのですが、「物体同士が受ける力は、互いの質量に比例し、距離の2乗に反比例する」というものです。これも式で書きますと、質量mと質量Mという、2つの物体が距離Rだけ離れていたとき、互いに働く引力の強さFは、

    F=G×M×m÷R÷R

    となります。
    Gというのは、「万有引力定数」という、決まった数です。

    さて、月の「重力」と私たちはよく言っていますが、これは、月と私たちの間に働く引力ということになります。私たちが地球の表面で、地球に引っ張られているように、月の表面にある物体も、月の引力を受けて引っ張られています。この引っ張られている力は万有引力にあたります。
    仮に、ある物体を月に持って行ったとして、そこに働く引力は、

    月の引力=G×(月の質量)×(物体の質量)÷(月の半径)÷(月の半径)

    となります。同じ物体を地球に持って行った場合、地球上での引力は、

    地球の引力=G×(地球の質量)×(物体の質量)÷(地球の半径)÷(地球の半径)

    さて、上で2つの式が出てきましたが、両者の比をとってみることにします。

      月の引力G×(月の質量)×(物体の質量)÷(月の半径)÷(月の半径)
    —————- = ———————————————————————
    地球の引力G×(地球の質量)×(物体の質量)÷(地球の半径)÷(地球の半径)

    式をみてみると、Gと「物体の質量」は、分母と分子で同じですから打ち消しあい

      月の引力(月の質量)÷(月の半径)÷(月の半径)
    —————- = ——————————————————-
    地球の引力(地球の質量)÷(地球の半径)÷(地球の半径)

    となります。
    さて、「理科年表」などの資料を見てみますと、月の質量は地球の0.0123倍となっています。また、地球の半径は6378キロメートル、月の半径は1738キロメートルとなっています。

    これを、上の式にあてはめてみます。

      月の引力0.0123÷1738÷1738
    —————- = —————————-=0.16594…
    地球の引力1÷6378÷6378

    ほぼ、0.16倍ということになります。6分の1は0.1666….となりますので、大体、6分の1と考えてよい値です。

    高校で習う物理の内容ですので、やや難しいかと思いますが、ぜひチャレンジしてみてください。また、「理科年表」を参考にして、他の惑星と比べてみるのも面白いと思います。


    月の裏側はどうなっているのですか?2016-04-07T07:26:29+09:00

    月の裏側は地球から見えないため、探査機を使わなければ、どのようになっているかを知ることができませんでした。1960年代になって、アメリカや旧ソ連の月探査機が次々と月に送り込まれ、裏側の写真が撮影されるようになりました。
    月の裏側の探査は旧ソ連が熱心で、そのため、月の裏側の地名には「モスクワ海」や「コロレフ」「ツィオルコフスキー」といった、旧ソ連・ロシアにちなむ名前が目立ちます。

    さて、こういった探査でわかってきた月の裏側ですが、月の表側と比べてもっとも大きな特徴は「海が少ない」ということです。
    月の表側は、わたしたちがよく見ているように、黒っぽい海の部分がいっぱいあります。しかし、月の裏側にはあまり海がありません。実際、表側では海が約30パーセントの面積を占めているのに、裏側では海の面積は、2パーセントしかありません。
    海が少ないということは、白っぽい「高地」の部分が多いということで、実際、月の裏側はたいへん白っぽく見えます。


    ガリレオ探査機が撮影した月の裏側の写真 (Photo by NASA)
    (クリックするとより大きなサイズの写真を表示できます)

    月の裏側は起伏が大きいことが、最近の探査によってわかってきました。月でもっとも深いところは、裏側にある「南極-エイトケン盆地」というところです。この盆地は、直径が2500キロメートルもある、非常に巨大な盆地です。
    「かぐや」の探査により、この中にあるアントニアーディクレーターというところが月でもっとも深いところだということがわかりました。ここは深さが(月の平均半径を基準にして)9.02キロメートルほどあります。
    逆にもっとも高いところは、同じく「かぐや」の探査により、ディリクレ・ジャクソン盆地の南側にある場所だということが判明しました。この高さは(同じく月の平均半径を基準にして)10.75キロメートルもあります。
    ちなみにこの場所は、先ほどの南極-エイトケン盆地の北端から、もう少し北に行ったところにありますので、月では、最高点と最低点が、裏側、それもかなり近いところに同居していることになります。

    月の裏側は地殻の厚さが厚いことも特徴です。クレメンタインの探査では、月の裏側の地殻は、表側に比べてやや厚い(平均68キロメートル。表側の地殻の厚さは約60キロメートル)ことがわかってきています。
    このことは、「かぐや」の探査でも確かめられています。上で述べた月の最高点付近の近くの熱さは実に100キロを超え、110キロ近くにも達していることが明らかになりました。

    月の裏側の地形でもっとも目立つものとしては、東側にあるオリエンタル盆地(Mare Orientale: 東の海)が挙げられます。
    この盆地は直径が約300キロメートルほどですが、その周囲に3重に取り巻いたリングが見えます。これは明らかに、オリエンタル盆地が衝突によってできた巨大なクレーターであることを意味しています。

    オリエンタル盆地は、月の歴史の中では比較的新しい時代にできたと考えられています。いっぽう、クレメンタインによる探査では、オリエンタル盆地の下の地殻は、厚さがわずか4キロメートルくらいしかないことがわかっています。
    また、「かぐや」の探査により、オリエンタル盆地以外にも、地殻の厚さが10キロ以下の場所があることがわかってきました。このような場所は大きなクレーター(海)などに多いようです。
    この厚さは、月の近くとしては極めて薄いため、オリエンタル盆地をはじめ、このような海がどのようにしてできて、現在までにどのようなことが起こったのか、今後の研究によってその謎が明らかにされることが期待されます。


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    月には地震がありますか?2023-07-10T10:02:41+09:00

    あります。月にも地震が起こります。

    アポロ計画では、月に地震計を持っていって、地震の観測を行いました。その結果、月にも地震があることがわかり、「月震」と名づけられました。英語ではmoonquakeといいます(地震を英語でいうとearthquakeなので、ちょっとした「しゃれ」です)。
    月に起きる地震は、大きく分けて4種類になります。

    深発月震

    月の深いところ(主に深さ800~1100キロメートル)で起こる地震です。規模はマグニチュードでいうと1~2と、地球の地震に比べるとごく小さいものですが、数はもっとも多く起こっています。29.5日周期で起こることなどから、地球と月の引力(潮汐力)に関係して起きると考えられています。

    浅発月震

    月の比較的浅いところ(300キロメートル付近)で起きていると考えられている月震です。しかし、アポロの7年間にわたる観測でもたった28例しか見つかっていないため、実体は不明です。規模は比較的大きいものです(最大でマグニチュード3~4にも達します)。

    隕石の衝突

    厳密にいうと月の(内部に起因する)地震とはいえないかも知れませんが、アポロの月震計には多数の隕石の衝突と思われるデータが記録されています。衝突した物体の重さは、500グラム~50キログラム程度と見積もられています。

    熱月震

    これも地震というには少し小さすぎるのですが、アポロの月震計に記録されていたものです。月面にある岩が、昼と夜の間の温度差に耐えかねて割れるときの音が記録されているものです。地震としてはごくごく小さいものです。

    人工月震

    アポロ計画の中では、人工的に月に地震を起こして、その波形を観測するということも試みられました。たとえば、アポロ13号は、それ自体は月に到達することはありませんでしたが、不要になったロケットを月面に衝突させ、その振動を月震計で観測するということが行われました。これは実際、アポロ13号が唯一「月面上で」行ったミッションといえるでしょう。その他にも、火薬などを使って月震を起こすことも行われました。

    なお、それぞれの月震の数は、次の通りです。

    人工月震 9
    深発月震 3145
    隕石の衝突 179
    浅発月震 28
    分類できないもの 7633
    合計 12558

    (出典: Nakamura,1982)


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    月の中心部はどのようになっているのでしょう?2023-07-10T10:02:41+09:00

    月も、おそらく地球のように成層構造をしていると思われます。これは、月のような大きな天体は、できたときにいったん溶けたと思われますので、そのときに重いものは下へ、軽いものは上へと動いて、結果的に物質が分かれてしまうと考えられるからです。
    アポロ計画では、月で起きる地震(月震)を使って、月の中がどうなっているかを調べました。地震波がどのように伝わるかによって、月の中の物質がどのようなものなのかを推定しようとしたのです。
    その解析の結果、月の中心部には半分溶けた金属の核(コア)が存在すると推定されました。しかし、月震はたいへん小さく、また、地震を観測した地点が表側に限られているなど、観測に不利な条件が多数あったことから、実際にそのようなコアがあるかどうか、またあるとしてどのくらいの直径なのかは、よくわかっていません。

    1994年に打ち上げられたアメリカの探査機クレメンタインは、月のまわりを回って探査を続けました。このときの探査機の軌道を詳しく調べて、月の重力がどのようになっているかを図りました。その結果から、月の地殻の厚さを推定することができました。

    1998年、アメリカの探査機ルナープロスペクターが打ち上げられました。この衛星の軌道を解析した結果、月の中心部には金属でできた(少なくとも、重い物質でできた)コアがあることはほぼ間違いないようです。コアの大きさは半径200~500キロメートルくらいで、おそらくは半径300キロメートルくらいのコアがあるものと思われます。

    また、2011年1月には、アメリカの研究者が、アポロ計画で取得された月震データを再解析することにより、月には外核と内核が存在し、その半径は内核が240キロメートルほどで、外核の半径は330キロほどと推定しています。
    また、外核の外側には一部溶けた部分があるという分析も行っており、非常に注目されます。

    しかし、このような測定は、間接的に中身を推定しているだけですので、直接調べるためには、実際に月震をより精密に測定し、月の中身を正確に調べることが必要になります。
    このような探査は、かつて日本の月探査機、ルナーAで計画されていました。ルナーAでは、地震計を搭載したペネトレーターと呼ばれる探査機を2機月面に激突させ、月の地震を調べ、そのデータから月の中がどうなっているかを調べる計画でしたが、開発の遅延などから2007年に計画は中止されました。
    このペネトレーターを、ロシアが2013〜2014年頃に計画しているルナグローブ計画に搭載し、月内部を直接探査しようということも構想されています。


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    月のクレーターはどのようにしてできたのですか?2016-04-07T07:36:51+09:00

    月面を望遠鏡で眺めると、大小の小さな穴がたくさん開いているのがみえます。これを「クレーター」と呼びます。

    クレーターは、昔からどのようにしてできるのか、議論の的になってきました。特に、隕石などがぶつかってできたという説と、火山の爆発でできたという説が、有力であるとされてきました。確かに、ものがぶつかればおわんのような穴ができますし、火山の火口も、月のクレーターにそっくりな形をしています。

    しかし、アポロ計画で持ち帰られた月の石を詳しく調べたところ、顕微鏡でなければみえないような、非常に小さなクレーターが、月の石にたくさん残されていることがわかりました。これらが火山の爆発によりできることはあり得ません。

    現在では、月にあるほとんどのクレーターは、隕石、あるいは小さな天体が、非常に速いスピード(秒速数~数十キロメートル)でぶつかってできたと考えられています。
    このようなスピードでものがぶつかると、ぶつかった場所から「衝撃波」と呼ばれる波が発生します。この波は、ぶつかった場所を中心として四方八方に均等に広がっていきます。この衝撃波によって物質が吹き飛ばされ、あのクレーターの穴ができます。

    飛び散った物質は周囲にばらまかれます。できてからまだそれほど時間が経っていないクレーターでは、クレーターの周りに飛び散った物質がみえるものもあります。

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    月には火山がありますか?2016-04-07T07:36:21+09:00

    月は大きく分けて黒っぽい海と呼ばれる低くて平らな地域と、高地と呼ばれる白っぽく、でこぼこした地域があります。
    このうち、海の方は非常に大きな衝突でできたクレーターの後を、火成活動によってできた溶岩が埋めたものですが、地球の富士山などのような火「山」の形はしていません。月の溶岩は一般に地球に比べてさらさらしているため、溶岩が噴出しても山にはなりにくいと考えられます。
    また、月の地形が全体に(地球に比べて)のっぺりとした形をしているのも、このような溶岩の性質が影響していると考えられます(この点については、月には水がないため、水による風化作用がないことも大きな違いとして挙げられます)。

    しかし、火山らしい火山もないわけではありません。
    例えば、「海のドーム」とよばれる、滑らかな表面をもつ緩やかな凸の地形があります。マリウスの丘などが代表例です。
    上から見た形は円形または楕円形で、直径3~17キロメートル、高さは数百メートル以下です。斜面は膨らんでいて、斜度は約2~3度のものが多く、主に赤道付近に群をなして分布しています。
    これらの大きさ、形は地球のアイスランド型盾状火山に似ており、玄武岩質の低粘性の溶岩流によってできたと推定されます。

    また、「高地のドーム」とよばれる海や高地よりも白っぽい色のドームが、高地の縁にみられます。これらは海のドームよりは急峻で、傾斜は15~30度あります。
    他に、粉砕されたマグマが空中に放り出されて降り積もった「スコリア丘」(スコリアとは、玄武岩が多孔質になった「黒い軽石」のことです)もあります。ただし、月の重力は地球の6分の1しか無く、また、大気の抵抗がないために、同じ初速度で放り出されたスコリアは地球上の6倍も遠くに飛ばされることになります。このため、地球のスコリア丘よりも平らで、わかりにくい形です。

    ちなみに、現在でも溶岩を噴出しているような活火山はありません。


    「かぐや」が撮影したマリウスの丘付近の写真
    (クリックするとより大きな写真を表示できます)
    出典: 「かぐや」画像ギャラリー

    月の自転と公転の周期は同じだと聞いたのですが、それはどういう意味ですか?何か理由があるのですか?2016-04-07T07:34:05+09:00

    月は、自らの自転周期と、地球のまわりを回る公転周期が同じです。
    月が地球に対していつも同じ表側を向けているのはこのためです。よく、「月は自転していないからいつも同じ側を向けているのだ」という人がいますが、これは間違っています。試しに、何でもいいので丸い物体(ボールとか)に印をつけ、その物体が回らないように、自分のまわりを一周させてみると、その間違いがよくわかります。途中で印をつけた部分がみえなくなることがわかるでしょう。
    物体も回ってるからこそ、いつも同じ側が見えるのです。

    似たような関係は、太陽系の天体によくみられます。典型的なのが、木星のガリレオ衛星(イオ、エウロパ、カリスト、ガニメデ)です。これらの天体もまた公転周期と自転周期が1対1になっています。
    土星の衛星でも、タイタンをはじめ、テチス、ミマス、エンセラダス、ディオネなど多くの衛星が、公転周期と自転周期が同じという関係になっています。

    このよう公転周期と自転周期が一致するという現象は、潮汐力の結果と考えられています。
    例えば月の場合、地球の重力によって月はわずかながら変形します(月が引っ張られてやや楕円形になる)。この力は潮の満ち引きを起こす力と同じであって、そのため潮汐力と呼ばれています。
    西洋なしのように変形した月が公転周期よりも早く自転していると、地球重力は自転にブレーキをかけるように働きます。逆に月が公転周期よりも遅く自転していると、地球重力は自転に加速をかけるように働きます。
    このような力の作用により、最終的に公転と自転が同じ周期を持つ状態に必ず落ち着きます。

    木星や土星の衛星についても、同じような理由で、自転と公転の周期が同じになる発生していると考えられます。
    このように、自転と公転の周期、あるいは他の天体との自転や公転の周期が、簡単な整数比で表されるような関係を、「尽数関係」(じんすうかんけい)といいます。月の場合には「自転周期と公転周期が1対1の尽数関係にある」といういい方になります。
    ただ、尽数関係そのものについてはまだよくわかっていない部分もあります。
    例えば、木星の衛星については、イオ、エウロパ、ガニメデは、公転周期が1対2対4という尽数関係にあります。つまり、ガニメデが1回木星のまわりを公転する間に、エウロパは2回、イオは4回公転します。なぜそのようになるのかは、いまだによくわかっていません。

    月にはなぜ海と高地があるのですか?2016-04-07T07:28:54+09:00

    月には平らで黒っぽい海と、クレーターが多く白っぽい高地があります。このうち、海は月の全表面積の17パーセントを占めており、特に月の表側に多く分布しています。

    現在のところ、月の高地と海は次のようにしてできたと考えられています。
    月が誕生した初期には表面の数百キロメートルは溶けてて巨大なマグマの海ができていました。
    このマグマの海が冷えるにつれて、いろいろな鉱物が結晶していきますが、軽くて白っぽい斜長石の結晶は表面に浮かび、重くて黒っぽい輝石やかんらん石の結晶はマグマの海の底に沈みました。月の高地はこのようにして出来た斜長石の地殻で、その後隕石の衝突を受け、多数のクレーターができました。

    誕生から5.5億年ほど経った今から40億年ほど前に、直径数十キロメートルの巨大な隕石が月に衝突し、直径数百キロメートルから千数百キロメートルという巨大な盆地ができました。
    さらにその数千~数億年後には、表面から数百キロメートルの部分でカリウム、ウランなどの放射性元素の崩壊熱によって岩石の一部が溶け、玄武岩質マグマができました。これが上昇して衝突盆地を埋め、海となったのです。

    月の起源にはいろいろな説がありますが、どのように違うのですか?2016-04-07T07:27:22+09:00

    月の起源については過去いろいろな説が唱えられてきました。代表的な4つの説をまず簡単に解説します。

    1. 捕獲説
      月は地球とは全く別なところで誕生し、その後地球に捉えられたという考え方です。地球と月との違いは説明できますが、理論的には、宇宙をさまよっている天体を地球が捉えるということはきわめて難しく、あり得ないといってもいいことです。
    2. 分裂説
      月は地球から飛び出してできたという説です。確かに月の物質は、地球内部のマントルの物質と比較的似ています。しかし、固い地球から月が分裂するためには、地球の自転速度が相当速くなくてはなりません。
    3. 双子集積説
      月は地球の周りで独立に作られたという考え方です。月と地球が似たような物質からできている点をはじめとして、月と地球の特徴をよく説明できます。しかし、この説では月の運動の特徴(月と地球の角運動量)を説明することができません。
    4. 巨大衝突説
      最近になって、これらの説では説明できなかった事柄を説明できる理論として、巨大衝突説がにわかに注目を浴びてきました。これは、地球が誕生した直後、地球に火星くらいの大きさの巨大な天体が衝突し、その両方の天体から物質が飛び散り、月を作るもととなったという説です。

    次に,これらの説についてもう少し詳しく説明します。
    これまで多くの科学者が月の様々な性質について研究を行ってきました。アメリカのアポロ探査機が持ち帰った月の岩石は、月の研究を進める上で非常に重要な役割を果たしています。その結果、月と月を形作る物質は、いくつかの重要な特徴を持っていることがわかってきました。いくつか代表的なものを挙げると、

    1. 月と地球の酸素同位体組成はほとんど同じ。
      同じ元素でも少しだけ質量が異なる同位体の比率は、物質の起源を調べる上で重要な手がかりになります。酸素の同位体は月と地球でほとんど同じ値を持つことがわかっています。
    2. 月の親鉄元素の存在度は地球のマントルとよく似ている。
      鉄やニッケルなどの元素は互いによく似た性質を持つので、物質科学の上ではひとまとめにして親鉄元素と呼ばれています。この親鉄元素の存在度のパターンも、月と地球のマントルでよく似ているといわれています。
    3. 月には大きな核はない。
      地球の場合、中心に鉄を主成分とする大きな核があります。しかし、月にはそのような核はないか、あってもかなり小さいとされています。
    4. 月には揮発性元素が少ない。
      ナトリウムやカリウムなどの元素は熱するとガスになって逃げ出しやすいため、揮発性元素と呼ばれています。月の場合、地球や太陽系全体と比べてこの揮発性元素が非常に少ないといわれています。
    5. 初期の月にはマグマオーシャンがあった。
      月を見たとき白っぽく見える部分を高地といいます。この高地は主に斜長石を主成分とする岩石でできていますが、このような岩石は、昔、月の大部分がマグマの海、マグマオーシャンで覆われていて、それが固まるときにできたと思われています。
    6. 初期の地球-月系は大きな角運動量を持っていた。
      現在の地球と月の自転と公転の様子を元にして、昔の状態を推定すると、45億年前の地球は自転周期4時間という非常に速い速度で回転していたということがわかりました。現在一般に信じられている、小さな天体がたくさん集まってできたという地球の起源説では、このような速い自転は説明するのが困難です。

    月の起源を考える場合、当然これらの特徴が全てきちんと説明されなければなりません。
    (a)や(b)は、月と地球が同じような物質からできたということを意味しており、捕獲説では説明できません。しかし一方、(c)や(d)は月と地球の間には違いもある、ということで双子集積説にも問題があります。
    また、(d)や(e)は初期の月が非常に高温になったことを示しているため、この点でも捕獲説や双子集積説は不利です。通常、天体は主につぎつぎ落下する隕石によって加熱されると考えられていますが、月程度の大きさの天体ではそれほど温度は上がらないと計算されています。
    分裂説は物質的には月の特徴をうまく説明できますが、地球から物質を引き剥がすには(f)で求められた自転速度よりもさらに大きな速度が必要とされています。

    このようにおのおのの説を採点していくと、現状でもっとも有力なのが、巨大衝突説(ジャイアントインパクト説とも呼ばれます)なのです。
    巨大衝突によって引き剥がされた地球のマントル物質が月の原料になったと考えると、(a)、(b)、(c)の特徴をうまく説明できます。衝突によって物質は高温になりますから、(d)や(e)も大丈夫です。また、この衝突によって地球の自転が加速されたと考えれば、(f)も説明できます。

    しかし、この巨大衝突説もよいことづくめではありません。
    コンピュータで衝突の様子をシミュレートしてみると、実際に飛び散って月を作るのは地球からの物質ではなく、衝突してきた方の天体の物質の方が多いという結果が出てしまいました。
    これではもともとの地球のマントルから月を作ろうという前提が崩れてしまいます。また、実は最近の研究では先に挙げた(a)から(f)の特徴自体にもいくつか問題があるのではないか、との指摘もなされています。
    残念ながら、巨大衝突説も有力ではあるが100点満点ではなく、月の起源を確証を持って説明できる理論はまだない、というのが今のところの結論ということになります。

    月はもっとも身近な天体ですが、その性質についてはまだまだわからないことが多く残っています。
    今後の月探査によってさらに詳しく月の特徴を調べることができれば、月の起源論で本当に説明しなければならないのは何か、ということについてより正確なデータを得ることが可能になります。その上でより真実に迫った月の起源論を考えることができるようになるでしょう。

    なお、月の起源に関する参考文献としては次のような本や論文があります。ご参考になさって下さい。

    [1] W. K. Hartmann, R. J. Phillips and C. J. Taylor
    “Origin of the Moon.”
    (Lunar and Planetary institute, Houston, 1986)

    [2] Shigeru Ida, Robin M. Canup and Glen R. Stewart
    “Lunar accretion from an impact-generated disk”
    NATURE 25, 1997


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    月はいつ頃できたのですか? 地球と同じ頃ですか?2016-04-07T07:22:57+09:00

    いま、月のでき方の説明としていちばん有力とされている「巨大衝突説」によりますと、月は、地球がある程度できてきた頃に、地球に巨大な天体がぶつかり、その破片が集まってできたと考えられています。
    つまり、地球ができてからしばらくして、月ができたわけです。

    隕石などの分析によって、地球は今から46億年前くらいにできたことがわかっています。また、月の最古の石もほぼ46億年前にできたことが、月の石の分析からわかっています。
    したがって、地球ができたのとほぼ同じ時期に、月ができたといってよいということになります。そしてその年代はほぼ46億年前ということになります。


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    月の最大のなぞは何ですか?2016-04-07T07:24:18+09:00

    科学のテーマに最大も最小もない、っていったら、この質問が終わってしまいますね。ですから、科学者の印象として、どのような問題が重要だと思うかを考えてみましょう。

    月を研究している科学者たちは、みんな自分たちのテーマが重要だと思っています。たとえば、月の石を研究している人は、どのようにしてその石ができてきたのかが知りたいでしょう。
    ですが、彼らが共通して知りたいとと思っていることがあります。それは「月がどのようにしてできたのか」です。

    もちろん、月ができなければ、研究の対象がないわけですから、「月がどのようにしてできたのか」は本当に重要な問題です。しかし、それ以外にも重要な点はあります。
    まず、月の誕生が、地球の誕生と密接に関わっていることが、最近になってわかってきました。最近月のでき方として有力とされている「巨大衝突説」は、月と地球が密接な関係にあることを改めて示しているといえます。

    地球がどのようにしてできたのかを知るためには、月がどのようにしてできたかも調べなければなりません。月の誕生は、そのくらい重要な問題なのです。
    アポロから「かぐや」、そしてその先の月探査へと続く、人類の月探査の歴史も、その究極の疑問を解き明かすための試みである、といえるでしょう。

    月に関してはどのくらいのことがわかっているのでしょうか?2016-04-07T07:23:23+09:00

    1960年代から1970年代はじめにかけて、アポロ計画によって宇宙飛行士が月に降り立ちました。彼らは月の石を集め、月の表面を科学的に探査しました。そして、月に関するたくさんの科学的な知識を、我々人類が手にすることになったのです。
    回収された月の石の分析や、コンピュータ・シミュレーションなどによって、月がどのようにしてできてきたのか、また、月がどのような歴史をたどって今に至っているのかが、ある程度わかってきてはいます。そして、「巨大衝突説」と言われる説が、月の成因としてかなり有力であることが、わかってきました。

    しかし、私たちが月について知っていることは、まだほんのわずかな点に過ぎません。たとえば、宇宙飛行士たちが回収した月の石にしても、表側の数ヶ所の地点からでしかありません。地球のように、高い山の上から砂漠まで調べられ尽くされているような環境とは大違いです。

    月の歴史について有力とされている説についても、年代など細かい部分にはまだあいまいなところも多いですし、巨大衝突説をはじめとして、いま提唱されているさまざまな説にしても、仮説の段階を抜け出せていないのが現状です。
    結局、限られたサンプルからの情報をもとに、それを月全体の情報と考えて、仮説を立てているのが現状です。

    したがって、私たち人類は、月に関しては大まかなことがわかっては来ているものの、細かなことについてはまだ、ほとんど知らないというのが現状ではないでしょうか。今後の探査によって、さらに細かい部分がわかってくると、私たちの知らなかった月の姿や、月の歴史を明らかにすることができるはずです。


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    月はどのようにしてできたのですか?2016-04-07T07:22:23+09:00

    月の起源については過去いろいろな説が唱えられてきました。現在においてもこの問題に関して完全な回答はまだありません。代表的な4つの説を簡単に解説します。

    1. 捕獲説

    月は地球とは全く別なところで誕生し、その後地球に捉えられたという考え方です。地球と月との違いは説明できますが、理論的には、宇宙をさまよっている天体を地球が捉えるということはきわめて難しく、あり得ないといってもいいことです。

    2. 分裂説

    月は地球から飛び出してできたという説です。確かに月の物質は、地球内部のマントルの物質と比較的似ています。しかし、固い地球から月が分裂するためには、地球の自転速度が相当速くなくてはなりません。

    3. 双子集積説

    月は地球の周りで独立に作られたという考え方です。月と地球が似たような物質からできている点をはじめとして、月と地球の特徴をよく説明できます。しかし、この説では月の運動の特徴(月と地球の角運動量)を説明することができません。

    4. 巨大衝突説

    最近になって、これらの説では説明できなかった事柄を説明できる理論として、巨大衝突説がにわかに注目を浴びてきました。これは、地球が誕生した直後、地球に火星くらいの大きさの巨大な天体が衝突し、その両方の天体から物質が飛び散り、月を作るもととなったという説です。

    いずれの仮説も一長一短があり、どれが正しいのかは今後の研究を待たなければなりません。特に、月形成の仮説を検証する新たな観測結果が待ち望まれています。
    今後の日本と世界の月探査計画によって、この月の起源の問題に回答が得られることが期待されます。


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    月は地球から毎年3センチずつ遠去かっているという話ですが、人間や地球にも影響があるのでしょうか?何か対策は考えられているのでしょうか?2016-04-30T19:08:50+09:00

    確かに、地球と月との潮汐摩擦の影響で、月は現在、地球から年に3センチくらいずつ遠くなっています。
    月が地球から離れていくことによって、例えば1日の長さが変化したり、地軸の傾きなどが変わるといった影響が考えられます。そうなれば、気候などにも影響が及ぶかも知れません。1日の長さが変化すれば、私たち人類を含めた生物にも大きな影響が及ぶことになるでしょう。

    但し、実際に目に見える影響が出るのは、100万年後、1000万年後というレベルでの話です。変化は極めてゆっくりとしたものですので、生物は巧みに適応して、乗り切っていくことができると思われます。
    また、今のところ対策はありません。遠い将来、月にロケットをつけるなど、私たちが思いもつかないような技術を使えば、あるいは遠くなっていくのを止めることができるかも知れませんが、経済的な問題なども考え合わせると、やはり「自然のままに任せよう」ということになるのではないでしょうか。


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    月のクレーターの数を数えると何がわかるのですか?2016-12-30T15:08:03+09:00

    クレータの数を数え上げると月のいろいろな性質がわかるといわれていますが、たとえば、クレータの数を数えあげ、その個数密度(一定の広さの地域にどれくらいの数のクレーターがあるか)を調べると、 そのクレータの存在する地域が形成された年代が推定できます。この手法を「クレーターカウンティング」といいます。
    「カウンティング」とは英語で「数を数える」という意味で、その通り、ある地域のクレーターの数を数え、その地域にどれくらいクレーターが密集しているかを調べることになります。

    クレータは過去の隕石の落下によってできました。これまでいろいろな人が、降ってきた隕石の数が時代とともに変化していると仮定して、クレーターの存在する個数密度を時間の関数としてモデル化しています。
    一般的に、その土地が古くからできていて、それ以来何も変わっていないとすれば、できたクレーターは消えず、一方的に増えるだけですから、密度は高くなります。従ってクレーターの数を数え上げるとそのモデルから、そのクレーターの存在する地域が形成された年代が推定できるのです。
    ただし、これらのモデルは、仮定が多く、また小さなクレーターについては適用できないと言われています。今後探査を通して、より詳細な年代とクレータ密度の関係 の調査が必要でしょう。

    なお、詳細については、以下の本を参照されると良いでしょう。

    Melosh, H.J., Impact Cratering, Oxford University Press, New York, 1989


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    月探査衛星「かぐや」のデータを使い、クレーターを数えることによって、その土地の年代を明らかにした具体的な例です。

    月の内部はどのような構造になっているのでしょう? 地球と似ていますか?2015-12-26T15:34:18+09:00

    月の内部構造は、地球の場合と同じ方法で調べることができます。
    そのうちもっとも有効なのは、月の地震波(月の地震を月震といいます)の伝播を調べる方法です。そこで、アポロ計画では月に月震計が設置され、月震の観測が行われました。
    これらの月震データから、月内部には、地球ほどはっきりとはしないものの、いくつかの層構造が存在することがわかりました。

    表層から深さ60キロメートルまでの層が、月の地殻です。ただし、60キロメートルという地殻の厚さは、地震計の置かれた場所(月の表側の海)の厚さを表すものであって、これが月の地殻の代表的な厚さを表すものではありません。
    実際、その他の観測(重力分布等)から、地殻の厚さが場所によって変化していることが推定されています。特に、月の裏側では地殻の厚さが100キロメートル以上もあると考えられている一方、最近の「かぐや」などの観測で、東の海(オリエンタル盆地)では厚さが4キロメートル程度という場所もみつかっています。

    深さ60〜300キロメートルの層は、月の上部マントルといわれ、地球の上部マントルに似た組成を持っていると考えられています。
    深さ300〜800キロメートルの層は、月の中部マントルといわれ、月をつくった始原物質であると考えれています。

    深さ800キロメートル以深の内部構造はよくわかっていません。深さ1300〜1500キロメートルより浅い層は、月の下部マントルで部分的にせよ溶融状態にあると考えられています。それより深い層(すなわち半径400〜200キロメートル)は、核があると考えられています。

    最後に、地球との違いをみていきましょう。
    地球の表面は厚さ10~30キロメートルくらいの、岩石でできた地殻に覆われています。その下はマントルと呼ばれる、岩石質の厚い層になります。その下は、液体の金属(鉄やニッケル)などでできた外核と呼ばれる部分、その下は同じく金属ですが、固体でできている内核になります。
    なお、よく「地球の中心はマグマですか?」という質問を受けますが、地球の中心は内核ですので、マグマ(これは、火山などから噴出する、溶けた岩石の総称になります)ではなく、金属でできていることになります。


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    月の表面はどうなっているのでしょう?砂に覆われているのですか?温度はどのくらい?2016-04-07T07:32:23+09:00

    月の表面はレゴリスというきめ細かい(直径10~1000マイクロメートル[注] 程度の) 粒子や岩の破片に覆われています。これは隕石衝突によってできたもので、月の海や高地を構成する岩石鉱物の破砕片、衝突の際に融けたガラス・火山活動によるガラスや溶結土とよばれるものからなっています。

    月には大気がなく、真空に近い環境に直接さらされているので、表面の温度は月の赤道付近で昼間は摂氏120度、夜は摂氏-170度まで変化する過酷な環境です。また、現在は磁場がない(非常に弱い)ので、宇宙からの高速粒子や太陽風、放射線の影響を直接受けています。

    [注] 1マイクロメートル=100万分の1メートル=1000分の1ミリメートル

    月に人工の建造物が発見されたという話を聞いたことがありますが、本当ですか?2016-04-29T13:09:48+09:00

    今のところ、世界で月の表面を研究している人の中で、月の表面に人工物をみつけたという報告をした人はいません。

    確かに、インターネットや書籍、テレビ番組などで、月に人工の建物らしいものを見つけたとか、煙が上がっているとか、あまりにも幾何学的な(人工的に作られたとしか思えないような)地表の模様などが見えている、といった話を聞いた方も多いかと思います。
    しかし、たいていの場合にはそれは、撮影したときの光線の具合でそのようにみえたり、直線状の地形だったりすることでほとんど説明がつきます。断層などは直線状の地形になりますし、クレーターは本当に驚くくらいきれいな円形になります。一見するとまるで人工的に穴を掘ったようですが、地球上でクレーターを作る実験をしても、やはりきれいな円形になります。
    そのようなわけで、明らかに人間が作ったと認められるような地形は、(アポロやルナ、「かぐや」といった探査機が作ったクレーターなど以外は)月には存在しない、というのが、ほとんど全ての科学者の一致した姿勢です。


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    アポロ計画と同じ頃に、ルナーオービター計画というものがあったそうですが、これはどのような計画ですか?2016-04-29T11:22:04+09:00

    1964年初頭に始まったこの計画では5機の無人周回衛星を使って月を調査しました。
    衛星は打ち上げ時重量が約390キログラム、直径は約1.5メートル、長さは2メートルでした。主な目的は、アポロ計画の有人着陸に適したなめらかで水平な地域を探すことで、次のような探査が行われました。

    写真撮影
    アポロ計画とサーベイヤ計画の探査機が着陸するのに適した場所を探し、月についての科学的理解を深めるため様々な場所の地理的情報、地質的情報を詳しく得る。

    月の重力場の測定
    月の重力場の情報を改善するため、正確な軌道情報を提供する。

    月環境の分析
    その他の月の環境として、微小隕石の量と放射線を測定する。

    最初の3回のミッションで、20の着陸候補地が低傾斜角、低高度から撮影されました。写真を分析したところ、着陸地を探すというルナーオービター計画の目的はほとんど達成されました。8つの着陸候補地が選ばれ、これらのうち5カ所は確認のため更に写真が撮影されました。

    5機のルナーオービターによって月面の99パーセントが解像度60メートル以上で撮影されました。この解像度は地球から観測した場合の10倍です。
    写真は全部で1654枚撮られました。そのうち840枚はアポロ計画のために22カ所の低緯度地域を撮影したもので、残る814枚のうち703枚は月の表側、105枚は月の裏側、6枚は地球の写真です。



    ルナーオービター探査機の写真 (写真: NASA)
    写真をクリックするとより大きい写真がご覧になれます。


    ルナーオービター2号が撮影した嵐の大洋のマリウス丘付近 (写真: NASA)
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    ■参考資料

    月の海はなぜ黒っぽいのですか?2016-04-07T07:41:50+09:00

    月の表側全域の地図は、1645年、オランダのラングレヌスによってはじめて作られましたが、そこで彼は大きな暗い地域を「海」、明るい地域を「陸」と名付けています。「陸」は現在では「高地」と呼ばれる方が一般的です。
    海は月の全表面積の17パーセントを占めており、特に月の表側に多く分布しています。

    現在のところ、月の海は次のようにしてできたと考えられています。
    月が誕生した初期には表面から深さ数百キロメートルに及ぶ領域は溶けており、巨大なマグマの海ができていたと考えられています。このマグマの海が冷えるにつれて、いろいろな鉱物が結晶していきますが、軽くて白っぽい斜長石の結晶は表面に浮かび、重くて黒っぽい輝石やかんらん石の結晶はマグマの海の底に沈みました。
    誕生から5.5億年ほど経った今から40億年ほど前に、直径数十キロメートルの巨大な隕石が月に衝突し、直径数百キロメートルから千数百キロメートルという巨大な盆地ができました。
    さらに数千~数億年後には、表面から数百キロメートル部分でカリウム、ウランなどの放射性元素の崩壊熱によって岩石の一部が溶け、玄武岩質マグマができました。これが上昇して衝突盆地を埋め、海となったのです。

    月の玄武岩は、主に鉄に富む輝石とチタン鉄鉱という鉱物からできています。これらの褐色~黒色の鉱物に富むために、月の海は黒っぽく見えます。海でもよく見ますと黒っぽさに濃淡があり、場所によって組成に幅があります。


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    月までの距離はどのようにして測るのですか?2016-11-14T18:11:25+09:00

    一般に月や惑星などの距離を求めるには、天体の位置と動きを正確に測定して、公転軌道を求めて決定します。
    惑星が何日で太陽を一周するか、月が地球を何日で一周するかを正確に測れば、ケプラーの法則から、それぞれの公転軌道の半径、すなわち重心間の距離がわかります。

    月の場合には、これに加えて「レーザー測距」という方法で、より正確に距離が測定されています。
    これは、アメリカのアポロや旧ソ連のルノホートが月面に設置した鏡に向けて、 地球上の観測所からレーザー光を発射して、鏡で反射して観測所に戻ってくるまでの時間を正確に測ることによって、2点間の距離がわかります。 月までの距離は、以上の方法を組み合わせて正確に測定されました。


    アポロ14号で設置された、月面でレーザー光を反射するための鏡。
    (Photo by NASA, AS-14-67-9386)
    写真をクリックすると大きな写真がご覧頂けます。(サイズ: 94KB)


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