月には空気がありません。ですから、地球で使うエネルギーの中で、石油や石炭、まきなどのように、空気を使うものは経済的ではありません。なぜなら、石油や石炭を燃やすために、地球から酸素などを持っていかなければいけないからです。
酸素を使わずにエネルギーを取り出すことができるものとしては、
- 原子力(核分裂)
- 核融合
- 太陽エネルギー
が考えられます。
太陽エネルギーは、月面でもっとも有望と思われるエネルギー源です。14日間の月の昼の間に、太陽光は休みなく降り注ぎますし、地球のように大気や雲などでじゃまされることもありません。
太陽エネルギーを利用する方法としては、太陽電池を使って光を電気に変える方法と、太陽熱そのものを利用する方法の2つがあります。熱を利用する方法について、少しご説明しましょう。
宇宙開発事業団(当時)では、「ガラスの海」と呼ばれる、熱を蓄える仕組みについて検討をしたことがあります。ガラスのようなものの中に太陽光を導いて、その中に熱を蓄えておきます。その周りを熱が伝わりにくいもので覆ってしまえば、ちょうど魔法瓶みたいにして、熱を蓄えておくことができます。
ガラスのようなものを月面で作るためには、岩石を(やはり太陽光で)溶かしたり、テルミット(アルミニウムの粉と酸化鉄を混ぜたもの。高温で燃える)を燃やして、その熱で岩石を溶かすことなどが考えられています。また、断熱材としては、月の表面を覆っている砂(レゴリス)を使うことができます。実際、レゴリスは非常に優秀な断熱材です。
月の岩石を溶かしたブロックを月面に並べておいて、そこに月の昼間の間、太陽光を導いて熱を溜めます。月の夜になると、月の表面の温度はマイナス100度以下になりますが、ガラスの部分はそれほど冷えません。その温度差を利用して、発電を行うこともできます。 このようなガラスブロックをいっぱい月面に並べれば、月の夜の間でも電力を作ることができます。これを「ガラスの海」と呼んでいます。
ガラスの海構想を利用した発電システムの想像図。地下に埋められたガラスのユニットと、
そのユニットからエネルギー(熱)を取り出すための設備がある。
(イラスト: 宇宙開発事業団)
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太陽エネルギー以外では、まず原子力という可能性があります。確かに、原子力発電で発生できるエネルギーは膨大ですが、地球から月面まで原子力発電システムを輸送するコストが莫大であるという問題があります。また、月は地球に比べてウランに乏しいという問題もありますので、将来的なエネルギーとしては、原子力はむしろ望み薄といえるでしょう。
核融合は、月面に広く存在している「ヘリウム3」という元素を使うものが有望といわれています。しかし、核融合はまだ技術が確立していませんので、実現するのはかなり先の話になるでしょう。
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