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通信暗号化規格変更により、一部ブラウザーや携帯機器から閲覧ができなくなる可能性があります

月探査情報ステーションでは暗号化通信(HTTPS)を導入していますが、このたび、その通信規格をより安全なものとするため、古い規格のサポートを停止することといたしました。そのため、一部ブラウザーや携帯機器からの閲覧ができなくなる可能性があります。

■暗号化通信の規格変更について

月探査情報ステーションをはじめ、暗号化通信(HTTPS。ブラウザーでは鍵のマークや「安全な通信です」といった表示があります)を導入することは、閲覧のプライバシーを保つことや、個人情報の保護などを行う観点から一般的になりつつあります。月探査情報ステーションでも2017年5月からサイトの通信全体を暗号化で保護しています

暗号化通信を実施するためには、通信内容を暗号化するための規格に沿う必要があります。現在よく使われている暗号化通信の手法はTLS (Transport Layer Security)と呼ばれるもので、バージョンにより、TLSバージョン1.0 (TLSv1.0)、TLSバージョン1.1 (TLSv1.1)、TLSバージョン1.2 (TLSv1.2)、TLSバージョン1.3(TLSv1.3)の4種類があります。なお、TLSv1.3はこの8月20日に正式に承認されたばかりで、現在のところはこれを除いた3つが公式には使われていることになります。

これらのバージョンのうち、TLSv1.0はすでに外部からの攻撃に対して脆弱であることが判明しており、月探査情報ステーションでは使用しておりません。現在、月探査情報ステーションでは、暗号化通信の規格のうち、TLSv1.1とTLSv1.2を有効としております。

ところが、TLSv1.1についても脆弱性が発見されており、これを利用した通信は、第三者の悪意ある攻撃によって内容が漏れてしまう可能性があります。
このため、大手ウェブサイトの多くではTLSv1.1の使用も取りやめ、TLSv1.2に移行する動きを進めています。
今回の月探査情報ステーションの設定変更も、このような動きに沿ったものです。

■変更期日

9月10日(月)正午 (予定)
※変更がありましたらこのページ、あるいは公式ツイッターなどでお知らせいたします。

■影響を受ける環境・ブラウザー

以下の環境が影響を受け、閲覧できない可能性がでてきます。ご自身の環境が当てはまっていないかどうかをご確認ください。
また、以下ご利用している環境やブラウザーのバージョンがご不明の場合は、お手数ですがブラウザーや携帯端末のヘルプなどをご利用の上、バージョンをご確認ください。

  • Google Chrome (グーグル・クローム)
    バージョン32以下
    ※現行最新のGoogle Chromeのバージョンは68です。
  • Mozilla Firefox (ファイアーフォックス)
    バージョン26以下、ESR(長期サポート版)の場合はESR24以下
    ※現行最新のFirefoxのバージョンは61(ESRの場合60)です。
  • Microsoft Edge (マイクロソフト・エッジ)
    影響を受けません。
  • Internet Explorer (インターネットエクスプローラー)
    バージョン10以下
    ※現行最新のInternet Explorerのバージョンは11です。
  • Android標準ブラウザー (アンドロイド)
    Android 4以下
    ※Android 5.0以上は影響を受けません。現行最新のAndroidのバージョンは9です。
  • iOS
    5以下
    ※現行最新のiOSは11です。
  • Safari (サファリ)
    Mac OS X 10.8 “Mountain Lion”以下
    ※現行最新のmacOSは10.13 “High Sierra”です。

基本的に、最新のブラウザー、あるいは携帯端末であればここ3〜4年のうちにリリースされたシステムをご利用であれば影響は受けません。かなり古いシステム、あるいは何らかの理由で最新バージョンにアップデートしていない(できない)システムやブラウザーが対象となります。

■どのようにすればよい?

まず、ご自身がご利用のブラウザーやシステムのバージョン、種類をご確認ください。

その上で、もし上記のリスト(例えば、お使いのブラウザーがGoogle Chromeの30であったなど)に入っている場合、ブラウザーのアップデートをご検討ください。
なお、ブラウザーには頻繁にそれ自身の脆弱性が発見されており、それを修正するため、定期的に新しいバージョンがリリースされています。また、新しいブラウザーではページ閲覧などに欠かせない新しい技術の導入なども行われます。そのため、今回の問題に対応するだけでなく、そういった他の脆弱性から守る意味でも、最新バージョンのブラウザーをご利用されることを強くお勧めいたします

また、WindowsやmacOSについては、最新の修正プログラムを適用するようにしてください。基本システム(OS)に含まれているブラウザーは、最新の修正プログラムの中で脆弱性を含めた修正が行われています。

携帯端末の場合、Android 4以下やiOS 5以下をご利用の場合には、最新のシステムへ買い換えることをお勧めいたします。ただ、Android標準ブラウザーを使用せず、他のブラウザー、例えばGoogle ChromeやFirefoxを利用する手もあります。
(なお、Google ChromeはAndroid 4.1.1以降をサポートしています。Firefoxも現行バージョンはAndroid 4.1以降の対応となっています。)

 

ご利用の皆様にはお手数をおかけいたしますが、プライバシー及びセキュリティ維持の観点から、ご協力・ご了承をいただきますよう、お願いいたします。

2018年8月22日(水)|Categories: お知らせ|

嫦娥4号のローバー・着陸機デザインが公表、命名コンテストも開始

この冬にも打ち上げが予定されている中国の月探査機「嫦娥4号」のローバーと着陸機のデザインが発表されました。国家国防科技工業局月探査・宇宙事業センターが15日に公表したものです。人民日報の日本語版、英語版が伝えています。

嫦娥4号のローバーデザイン

2018年8月15日に発表された、嫦娥4号のローバーのデザイン。出典: 新華社

 

嫦娥4号のローバーデザイン

2018年8月15日に発表された、嫦娥4号の着陸機のデザイン。出典: 新華社

 

嫦娥4号は中国が開発を行っている月着陸機・ローバーで、今回の記事によると打ち上げが2018年12月になるとのことです(これも重要な情報ではあります)。
嫦娥シリーズは、1・2号が周回機、3・4号が着陸機+ローバー、5・6号がサンプルリターン機となっており、1・2・3号はすでに打ち上げられています。3号は現在も月面で運用中です。
また、嫦娥シリーズの通例として、奇数版(1・3・5号)は運用を達成するための「安全運用」に力点が置かれる一方、偶数番号(2・4・6号)は、一度奇数版で実証が済んでいるため、より挑戦的なミッションに向かう傾向があります。今回も、嫦娥4号は史上初の「月の裏側への着陸」という挑戦を目指すとしています。もちろん成功すれば世界初となります。

同センター主任で、中国の月探査事業の総指揮である劉継忠氏によれば、表側の着陸ではなく、裏側に着陸するということは、直接通信ができない中での着陸を行うという意味で「プロジェクト技術及び宇宙科学の二重の飛躍・革新だ」と述べています。単に着陸するだけではなく、より困難な条件の中での着陸ということを意味しているのでしょう。
なお、ローバーのデザイン(おそらく技術的な面も含めて)は、嫦娥3号のローバー「玉兎」(ぎょくと)をほぼ引き継いだ形になるとのことです。

なお、上で「月の裏側とは直接通信できない」と書きましたが、この点についておさらいしておきましょう。月は地球に常に表側しかみせていません。これは、月が「自転していないから」ではなく、「月の公転と自転が(ほぼ)同じ周期だから」です。月が地球を1回回る間に、月は自分自身が1回回ります。この関係で、月は表側を常に私たちに見せており、裏側を見ることは探査機以外できないのです。
では、嫦娥4号はどうやって通信するのでしょうか? 実はすでに5月、そのための通信衛星が打ち上げられています。衛星は「鵲橋」(じゃっきょう)と名付けられていますが、これは七夕の伝説で、織姫と彦星が出会う際に天の川に橋をかける鳥「カササギ」を意味しています。
鵲橋は月と地球の重力が釣り合う点(ラグランジュ点、L2)にとどまって、地球と月の裏側との通信を中継します。

なお同じ8月15日、嫦娥4号の月面ローバー命名キャンペーンもスタートしました。
この命名キャンペーンは5段階に分かれており、まず最初はエントリーから始まるそうです。これが9月5日までで、その後は命名に対する投票を経て、最終的に10月上旬頃に名前を決定・発表するという手はずになっているようです。
同センターでは、このような命名キャンペーンにより、中国の人たち、とりわけ若い世代の関心を高め、中国の月探査や航空宇宙技術についての関心を体外的に表すと共に、より科学に親しんでもらおという意図もあるようです。

なお、本キャンペーンですが、「国際的」となっているものの、エントリーサイトは中国語のみですので、中国語が理解できていないとちょっと難しそうです。

2018年8月20日(月)|Categories: 嫦娥4号|

火星探査機インサイト、火星への旅のちょうど半分が経過

5月に打ち上げられた火星探査機「インサイト」が、火星への旅のちょうど半分の行程に達しました。

インサイトは、火星の内部構造を調べることを目的とした探査機です。内部構造を調べる目的が火星に打ち上げられるのははじめてです。この目的のため、地震計や熱流量計といった、火星内部の情報を捉えるための装置を搭載しています。

インサイトの公式ツイッター(一人称でのつぶやきです。最近のアメリカの探査機は一人称でのつぶやきが多くなっていますね)によると、現在インサイトは3億マイル(約4億8000万キロ)の旅のちょうど半ばにおり、飛行速度は時速6200マイル(時速約1万キロ、秒速換算で約2.75キロ)とのことです。

インサイトの火星への到着は今年11月26日が予定されています。

2018年8月6日(月)|Categories: インサイト|

ニューホライズンズ探査チーム、望遠鏡による目的地「ウルティマ・トューレ」の観測に成功

惑星探査機ニューホライズンズのチームが、望遠鏡による目的地「ウルティマ・トゥーレ」の観測に成功しました。
ニューホライズンズは、2015年7月(今から3年前)に史上はじめて冥王星の探査に成功したあと、次の目的地として、カイパーベルト天体(海王星よりも遠いところにある大きな天体。エッジワース・カイパーベルト天体、あるいは太陽系外縁天体ともいわれる)「ウルティマ・トゥーレ」(Ultima Thule: 仮符号は2014 MU69)の観測に成功しました。
もちろん、カイパーベルト天体の探査も史上初となります。

ウルティマ・トゥーレ(2014 MU69)に最接近して観測を行うニューホライズンズの想像図

カイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ(2014 MU69)」に最接近して観測を行うニューホライズンズの想像図。この想像図では、先の観測によって示された、この天体が2つからなる可能性を考慮し、2つの天体の脇を飛行する形でイラストが描かれている。(Image: NASA/JHUAPL/SwRI)

今回は「掩蔽」(えんぺい)と呼ばれる現象を観測しました。掩蔽とは、ある天体の前を目的の天体が通過する(目的の天体が別の天体により隠される)現象です。掩蔽を利用すると、その天体の隠され方を詳細に観測することによって、目的の天体の大きさや形を知ることができるため、非常に貴重な機会なのです。

今回ニューホライズンズのチームは、地上(地球)から望遠鏡を使って観測を行いました。チームは南アメリカのコロンビアとアフリカのセネガルで観測を行ったとのことです。
サウスウェスト研究所に所属するニューホライズンズの共同研究者(Co-Investigator)、マーク・ビュイエ氏は、観測データが大量に得られて「これからやることがたくさんある」とのことです。現地は天気が悪く苦労したようですが「何とかなった」とのことで、「多くの苦労をした観測チームの面々に感謝したい」と述べています。

今後観測データの解析が進めば、このウルティマ・トゥーレの大きさや表面の様子がわかると思います。さらにこの天体はどうやら2つに分かれているらしいということで、この点についてもわかるかも知れません。
ニューホライズンズのウルティマ・トゥーレへの最接近は、来年(2019年)の1月1日が予定されています。正月早々ではありますが、史上初のカイパーベルト天体の素性が明かされることに期待したいですね。

2018年8月5日(日)|Categories: ニューホライズンズ|

【一部修正】日本の小型月探査機「スリム」は月の「神酒(みき)の海」着陸へ、打ち上げは2021年度

スリム探査機の構造

2018年8月現在のスリム探査機の構造
出典: 第43回宇宙開発利用部会資料『小型月着陸実証機(SLIM)の計画見直しについて』

2018年8月2日に開催された文部科学省 第43回宇宙開発利用部会にて、JAXA宇宙科学研究所が開発を進める小型月着陸実証機「スリム(SLIM: Smart Lander for Investigating Moon)」の計画見直しが報告されました。

宇宙科学研究所の國中均所長と坂井真一郎「スリム」プロジェクトマネージャーの説明によりますと、スリムは打ち上げ予定を2020年度から2021年度へ延期し、2016年に事故により運用を停止した「ASTRO-H(ひとみ)」後継機であるX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」の相乗りとなり、H-IIAロケットで打ち上げる予定となりました。月での着陸地点は、月内部のマントルが露出している部分の可能性をもつ地域、「神酒(みき)の海」となります。

スリム着陸地点の「神酒の海」

スリム着陸地点として選定された「神酒の海」。地図上では、着陸地点は南緯13.5度、東経25.2度と表示されている。ベース画像はNASAのルナー・リコネサンス・オービターの画像を使用。

スリムは、本体のみで200キログラム程度の小型軽量の探査機で月への精密な着陸技術の実証を行うプロジェクトで、目標地点に100メートル以内の誤差で着陸することを目指しています。航法カメラの画像によって自ら判断しながら目標へ接近、障害物を見つけて回避しながら降りる技術を確立しようというものです。

スリム探査機は当初イプシロンロケットで打ち上げる予定でしたが、スリムがプロジェクトへ移行した2016年4月にX線天文衛星ASTRO-H(ひとみ)の機能に異常が起き、衛星を失うこととなりました。この事態を受けてスリム探査機においても開発の確実化を目指した再検討を行ったところ、探査機の質量が増加しイプシロンロケットでは打ち上げが難しくなるとのリスクが発生しました。

そこで、スリムとXRISMとをH-IIAロケットで相乗り打ち上げを行う検討を行ったというものです。XRISMは2020年の打ち上げを目指していましたが、主要なミッション機器である軟X線分光装置(SXS)検出器モジュールのNASAからの引き渡しが2019年1月予定から2019年10月に延期となりました。そのため、打ち上げは2021年度にずれ込む見通しです。

ロケット変更に伴い、スリムの探査機の構成を増強することができるようになりました。メインエンジンは1本から2本へ増強、補助スラスタも8本から12本となります。また、オプション扱いの予定であった分光カメラを組み込み予定とし、この分光カメラの機能の空間分解能を上げる予定です。分光カメラの性能が向上することで、月の表面の物質の組成をより推定しやすくなるだけでなく、表面の砂の粒径(粒の大きさ)が観測できる可能性があるといいます。この情報は、「月がどのように進化したか」を調べる手がかりとなります。

スリムの着陸予定地点はおおむね斜度15度以下となっていますが、探査機が思わぬ転倒をしてしまうことがないよう、着陸方式は最終的に寝た姿勢となる方式が採用されました。エンジンを噴射しながら降下し、着陸してから転がるというもので、「2段階着陸方式」と呼ばれています。目標が急斜面であっても着陸できる方式とされています。

スリム探査機の着陸方式

スリム探査機の着陸方式
出典:第43回宇宙開発利用部会資料『小型月着陸実証機(SLIM)の計画見直しについて』

さらに、H-IIAの打ち上げ能力に余裕があった場合には、分離する「小型プローブ」を追加で搭載することを検討しています。小型分離プローブは、スリム本体の着陸後のミッションを外から観測したり、着陸する状況を撮影する、小型プローブ自身の通信装置で地球と直接通信を行う、といった役割を持つことが考えられています。

探査機の増強により、スリムの質量は元のおよそ600キログラム(うち、推薬を除く本体部分は約130キログラム)から、全体でおよそ730キログラム(本体は約200キログラム)となりました。元の計画ではイプシロンロケットのキックステージ開発費を含めて総開発費は180.5億円でしたが、H-IIA相乗りとなったことで総開発費は148億円に抑えられています。

スリムの新しい計画では、着陸目標地点が選定されました。月探査機「かぐや」の成果から、月内部にあったマントル物質が月の表面に露出している可能性があると考えられるカンラン石の多い地域をピックアップ、地形や着陸の安全性を考慮して選定されたものです。着陸地点となる南緯13.3度、東経25.2度の地域は「神酒の海」と呼ばれています。月の「海」とは、かつて月にあった火山活動によって玄武岩質マグマが噴出した場所と考えられており、「神酒」とはギリシャ神話の神々の飲み物「ネクター」に由来します。ラテン語の地名をカナで書くと「マレ・ネクタリス」といいます。

スリム計画は、探査機の基本設計を確定する作業を進めており、2018年9月ごろには設計審査が終わる予定です。

取材・文・写真: 秋山文野

【2018年8月3日午後11時追加】内容に一部誤りがあったため、記事を一部修正しました。失礼しました。
(誤) スリムは2020年の打ち上げを目指していましたが、主要なミッション機器である…
(正) XRISMは2020年の打ち上げを目指していましたが、主要なミッション機器である

2018年8月3日(金)|Categories: スリム|