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NASA、将来のエウロパ着陸機に向けて科学者から搭載機器アイディアを募集

木星の衛星エウロパには、地下に海が存在する可能性が高く、そこに生命がいる可能性が指摘されており、探査の候補地として人気が高まっています。アメリカは周回探査機「エウロパ・クリッパー」を、ヨーロッパは日本と共同の周回探査機「ジュース」を、それぞれ2020年代に送り込む計画ですが、NASAはすでにその先を考えているようです。
NASAはこのほど、科学者のコミュニティに対し、将来的にエウロパに着陸探査を行う際に搭載する科学機器のアイディアを募集すると発表しました。NASA自身が現時点でエウロパへ着陸探査を行う計画はありませんが、将来的にそのような計画が検討、あるいは決定された場合には、今回の検討が役立つことになるでしょう。

探査機ガリレオが撮影したエウロパの全景

探査機ガリレオが撮影したエウロパの全景 (Photo: NASA)

今回の提案募集は、NASAが行う科学探査についての検討やデータの収集などを行っている月惑星研究所(LPI: Lunar and Planetary Institute)が募集する形になっています。詳細はこのページをご覧いただくとして(かなりびっちり書かれていますが)、2段階の選抜を経て聞きを募集することになるようです。
LPIでは第1段階で10程度の科学機器提案を採択し、12ヶ月(1年)の間に総額150万ドル(日本円で約1億6600万円)をかけて、それらの機器についての実現可能性などを検討します。最終的にそれらの中から実際のミッション(あればですが)へつながる機器を検討する予定です。

なお、機器については以下のような科学的な目的を満たすもの、という条件がついています。

  • エウロパにおける生命の探索
  • 着陸機を利用した「その場観測」による、エウロパにおける生命存在の可能性の調査
  • 着陸機で実現可能なスケールでの、エウロパの表面及び地下に関する調査

NASAがエウロパへの着陸機にまるで興味がない、というわけではなく、実は2016年には議会からの要請という形で、エウロパへの着陸ミッションについての検討を行っています。21人のメンバーがこの検討を実施し、報告書を今年2月7日に提出しています。
また、先日(3月)に開催された月・惑星科学会議(LPSC: Lunar and Planetary Science Conference)では、恒例の「NASAミーティング」(NASAの月・惑星探査の上層部が直接科学者と対話するミーティング)において、エウロパ着陸機の科学検討チームの検討内容について説明しています。同じ説明を、宇宙生物科学会議(Astrobiology Science Coference: AbSciCon)でも行っています。
LPSCは編集長もよく出向くので、NASAミーティングに出席できていればその内容を確認できたのですが…。

いずれにしても、今回の検討内容は、こういったこれまでの検討内容を基盤とし、より発展させたものとなるようです。そして、現在2020年代(の前半)に打ち上げが検討されている「エウロパ・クリッパー」のあとに打ち上げることを狙っているようです。

NASAの科学ミッション部門の副部門長のトーマス・ザーブチェン氏は、エウロパ着陸探査の重要性について述べた上で、科学コミュニティに対し「今回の検討提案(AO: Announcement of Opportunity)に対して反応を示してほしい。NASAとしてはこの検討の背後には非常にたくさんの検討課題があることを認識しているからだ。」と述べています。確かにエウロパへの着陸ははじめてのことになりますから、提案は非常に重要ですし、検討に値するものになるでしょう。

今回の提案は、純粋にエウロパ・クリッパー後の探査に向けた検討と捉えることもできますが、ひょっとしたらそれ以上のものがあるかもしれません。トランプ政権がNASAに対し、火星以遠の有人探査を将来課題とし、NASAがそれに取り組む組織になるような構想を持っているということも以前触れました。
ひょっとすると今回の動きも、そういった政権側の意向を捉えた「リップサービス」なのかもしれません。勘ぐり過ぎといえばそうかもしれませんが…。

2017年5月18日(木)|Categories: エウロパ・クリッパー|

月探査情報ステーションがより安全・快適に – 常時SSL (AOSSL) に対応しました

近年、特にコンピューターネットワークの世界では、セキュリティ(安全)が最も重要な課題になっているといってよいでしょう。とりわけ、スマートフォンなどのモバイル機器の普及により、手軽にインターネットの世界にアクセスできるようになった一方で、情報が盗み見されたり盗み取られたりする危険性もより多くなったといえます。

例えば、無線LANのアクセスポイントを偽造し、そこに接続した人の通信内容を盗みとったり、場合によっては個人情報を奪い取り、悪用するといったことが現実に起きています。
そのようなことを防ぐためには、サーバーと端末の間の通信をすべて暗号化し、第三者がみても全くわからないようにしてしまうのが最もよい防御策です。そのような通信方法をSSL (Secure Socket Layer) といいます。
皆さんがインターネットで買い物をしたり、個人情報を入力したりする際に、ブラウザーのアドレス欄に鍵や「保護された通信」といった文字、さらにはその鍵の発行者の名前が出てきたりするのをご覧になった方も多いでしょう。このような通信は暗号化されているという点で安心なだけではなく、サーバーが実在の組織により運営されていることが第三者によって証明されているため、個人情報などの入力を安心して行えるというわけです。

ここ1〜2年は、こういった個人情報などの入力が必要なショッピングやソーシャルネットワークのウェブサイトなどだけでなく、一般的なサイトにおいても、通信の秘密を守るためにSSLを導入するところが増えています。
月探査情報ステーションにおいても、本日よりSSLにより通信が暗号化されました。この月探査情報ステーションの通信暗号化導入は、常に全サイトの通信が暗号化されるという意味で、AOSSL(Always On SSL)と呼ばれるものです。

■通信暗号化導入のメリット – 安全性と快適性が高まります

通信暗号化導入により、月探査情報ステーションのウェブサイト閲覧に以下のメリットがもたらされます。

  1.  安全な通信
    月探査情報ステーションには必ずしも秘密を要するような内容はありませんが、それでも他人にどのようなサイトを閲覧しているのかを知られるというのはプライバシーの観点からすれば望ましくないことです。月探査情報ステーションのウェブサーバーと皆さんの端末・ブラウザーの間の通信は完全に暗号化されていますので、どのような内容を閲覧しているのかを第三者が知ることができなくなります。例えば無線LANの通信を傍受して解析したとしても、通信内容は意味のない文字列でしかありませんので、みなさんがご覧になっている内容は保護されます。
  2.  サーバー実在性の証明
    暗号化は、月探査情報ステーションのサーバー (https://moonstation.jp) が確かに存在するものであるということを、第三者機関が証明することではじめて成り立ちます(その証明書がサーバーに導入されてはじめて通信暗号化が実現されます)。すなわち、月探査情報ステーションが存在し、安全であるという前提のもとで暗号化が実施されます。ほかに仮に同じ名前のウェブサーバーが存在したとしても、それが月探査情報ステーションではないということをすぐに確認することができます。
  3.  入力内容の保護
    皆様が閲覧する情報と同様、皆様が入力された内容も保護されます。例えば月探査情報ステーションの検索欄に入力した文字や、お問い合わせページで入力した内容などもすべて保護され、第三者が見ることができません。これまで通信内容が傍受される恐れがあったため入力しにくかった個人情報なども安心して入力できます。
  4.  高速な通信
    今回のSSL導入にあたり、SSL通信では新たな通信規格「http/2」が使用できます。http/2はウェブの通信における新しい規格で、従来通信速度の高速化を妨げてきた数多くの要因を見直し、現代のウェブに即した高速な通信を行えるものです。これによって、以前にも増してより高速な通信で、快適なページ閲覧を行うことが可能になると期待されます。
  5.  検索順位の向上
    これは必ずしもユーザー側のメリットとばかりはいいにくいかもしれませんが、グーグルの検索において検索順位の向上が期待されます。グーグルは現在、SSL化を積極的に推奨しており、SSL化されたサイトの検索順位を上げる傾向にあります。従来検索順位が低かった月探査情報ステーションのページがあった場合、それがより上位に登場し、皆様により多くご覧いただけるようになる可能性が高まります。

■通信暗号化…ユーザーの皆様がすること(特にありません)

通信暗号化(SSL化)に伴って、URLは以下のように変更となります。トップページのアドレスを例に示します。

(旧) http://moonstation.jp
(新) https://moonstation.jp

このように、従来から使われてきた「 http:// 」に代わり、新たに「 https:// 」が使用されます。
なお、従来のURLからのアクセスは自動的に https:// に転送されます。また、ブラウザーのアドレス欄に「moonstation.jp」と入力しても、自動的に https:// で接続されますので、皆様の側では特に意識して https:// をつける必要はありません。もちろん、つけていただいても構いません。これまで通りにアクセスしていただければ月探査情報ステーションのページを閲覧することができます

各ページのアドレスも同様に http:// から https:// へと変わりますが、これも自動的に転送されるため、特にユーザーの皆様が意識する必要はありません。
ただ、リンクなどをされていらっしゃる方は、できましたらリンク先のアドレスを https:// に変更していただけますと助かります。

■通信暗号化の一部例外

なお、今回の通信暗号化導入に際しても、現時点では一部例外も生じております。その例を挙げます。

  1.  旧サイトのコンテンツをリンクしている場合
    例えば、「月の科学」のトップページ (https://moonstation.jp/discover/science/index)は、一応SSL化されてはいるのですが、ブラウザーでは「SSL化が不十分です」「このページのSSL化には問題があります」と表示されるかと思います。これは実は、ページ内の画像が http:// にて旧サイトにリンクされているため、ページのすべてがSSL化されていないためです。
    このようなページは、月探査情報ステーションにいくつか存在します。今後コンテンツは旧サイトから徐々にではありますが完全に移行されていきますので、その過程で解決していきますが、しばらくの間は上記のような理由により、不完全なSSL化とみなされる場合があります。
  2.  旧サイトページそのもの
    現在でも旧サイトのページは数多く残っています。例えば、「今日の月」 (https://moonstation.jp/ja/today) は現時点でも旧サイトのコンテンツとなっており、このページが http:// を多用しているため、現時点でも上記の「不完全・不十分なSSL」とみなされてしまいます。
    こちらも、新サイトへの移行が進むにつれ解消されますが、しばらくの間はご辛抱、ご了承のほどお願いいたします。

なお、今回の通信暗号化導入に伴って、サイトが閲覧できなくなる、といったことはないと思われます。ごくまれに大変古いブラウザーを使用されている場合などは、古い規格の暗号化技術と現在の暗号化技術が合致しないため警告が出る、ないしは閲覧ができない場合があるかと思いますが、現在公開されている各種ブラウザーであればまず問題なく閲覧できます。

ただし、こちらが予想していないところで問題が発生する可能性があります。もし閲覧に支障が生じた場合などは、月探査情報ステーションの「お問い合わせ」からご連絡をいただきますよう、お願いいたします。

2017年5月12日(金)|Categories: お知らせ|

中国の月開発トップ、葉培建氏の名前が小惑星に命名される

先日中国の小惑星探査、というか小惑星資源開発の話を本ブログで取り上げましたが、その際に名前が出てきた中国の月・惑星探査、というよりは月探査のトップ、葉培建氏の名前が小惑星に命名されました。人民網日本語版、新華社通信日本語版などが報じています。

この小惑星は、北京の紫金山天文台で発見されたもので、小惑星番号は456677番、この番号も数字並びからみて、中国流に「縁起がよさそうな」番号にみえます。
小惑星は発見者が命名権限を持ちます。紫金山天文台は中国科学院が運営しており、葉培建氏も中国科学院メンバーですから、命名に問題はないといえるでしょう。紫金山天文台からの命名推薦により、今年1月12日、国際天文学連合(IAU)が正式に承認しました。

命名理由は、各紙が「中国の宇宙開発や月・惑星探査に対する長年の貢献」としていますが、これは命名理由として当然かつ十分でしょう。
なお、1月12日付のIAU小天体センター(Minor Planet Center)の回報には、456677番として「Yepeijian」という小惑星が掲載されており、仮符号が2007 RM119となっています。

もちろん、小惑星の命名はごく普通にいろいろなところで(日本でも)行われ、そのたびにニュースになるものですから、特に何かがあるわけではないはずですが、こと先日の小惑星(資源)探査の記事を読んだあとですと、中国として小惑星探査を狙っているのだというアピールの一環だ、というのは勘ぐり過ぎでしょうか?

2017年5月11日(木)|Categories: 月・惑星探査一般|

中国は小惑星資源開発を10年以内に実施可能 – 人民網日本語版より

ここのところ、小惑星資源開発の動きが各国で加速しているようにみえます。連休中に掲載した記事では、アメリカだけでなく、中東諸国も小惑星資源開発に興味を示していることが書かれています。
中国も実は以前から小惑星資源開発に興味を持っていたようです。これまではあまり動きがみえませんでしたが、今回人民網日本語版の記事で、「10年以内」という具体的な数字が出てきました。

この記事によると、この「10年以内」という数字を出してきているのは、中国の宇宙開発のトップである葉培建・中国科学院会員です。彼の発言を引用すると、「小惑星の資源開発は、未来の宇宙事業の発展方向の一つとなる。中国が本気で取り組めば、10年以内には模範的なプロジェクトを展開できる。大規模な開発を実現するには、約50年の時間が必要だ」とのことです。

上記発言は注目すべきポイントが3つあります。まず、葉氏のような中国の宇宙開発の重鎮が、小惑星の資源開発を中国の将来の宇宙開発の方向性の1つと規定したことです。中国の国家的な体質、あるいは宇宙開発の形態から考えて、このような発言があれば、今後中国の宇宙開発が小惑星探査、そして小惑星資源開発に力を入れていく可能性が大いに高まったといえるでしょう。
2つ目は「10年」という時間です。ここで、発言の中に「本気で取り組めば」という、いわば注釈がついている点に注目する必要があります。
中国も実際、小惑星探査の計画はあるようですが、現時点で2020年打ち上げを公言している火星探査と比べて、まだ打ち上げ日時や目的となる小惑星を規定できていない小惑星探査は、はっきりいって遅れていると考えるべきでしょう。その意味で今回の葉氏の発言は、「小惑星探査により力を入れるべき」というはっぱともいえます。
発言した場所が小惑星探査に関する検討会の席上だったということで、これに呼応するように、新宇宙探査弁皇室の黄江川氏が、「2021〜2025年中に小惑星探査を実施する予定」と応じたことは、おそらく2020年代後半(実際には上記の数字が多少遅れることを見越す必要があります)に中国が小惑星探査に挑むことを示唆しているものといえましょう。
3つ目は「50年」です。いまから50年というと今世紀後半ということになります。かなり先のようにも思えますが、それに向けて今から準備しておけ、という指示のようにもとれます。
月探査で深宇宙開発の基礎を積み、火星探査で経験を積みつつ、小惑星探査…小惑星資源探査で実利を取る。中国の宇宙開発のルートがみえてきたような気がします。

小惑星資源開発の方向性やその方法については比較的これまでいわれていたことに近く、葉氏はむしろ、海外(とりわけアメリカ)の状況を紹介・解釈しながら、中国に小惑星資源探査の必要性を迫っているようにも感じられます。
記事の中に、「小惑星を月周回軌道もしくはラグランジュ点で捕捉する可能性がある」という一文がありますが、これはNASAが検討している(がまもなくキャンセルになりそうな)小惑星捕獲計画「アーム」の内容に極めて近いものです。中国はNASAのアームについての検討をベースに、小惑星サンプルリターンなどを行う探査を考えているのかも知れません。

このあたり、より具体的な発言内容や検討内容を知りたいところではあります。
この記事から読み取れることとしては、中国も小惑星資源探査に前向きであるということが確実だということです。アメリカ、ルクセンブルク、中東諸国(おそらくはアラブ首長国連邦=UAE)に続き、中国が小惑星資源探査へ手を上げていることになります。
このような状況の中では日本も小惑星資源探査について何らかの形でアクションを起こしていかなければならないと、編集長としては考えています。

2017年5月9日(火)|Categories: 小惑星探査 (ブログ)|

カッシーニの土星の輪と本体通過時の写真をつなぎあわせた映像

土星探査機カッシーニが現在行っている最後のミッション「グランドフィナーレ」で、先日4月26日、はじめて土星本体永久の間を通過するというミッションが行われました。その際にカッシーニが撮影した画像をつなぎあわせた映像が公開されました。
探査機がミッションを行っている約1時間の間に撮影された画像をつなぎあわせ、映像としたものです。まずはアニメーションGIFの形でご覧下さい。

カッシーニが撮影した土星大気の画像をつなぎあわせたもの

カッシーニ「グランドフィナーレ」第1回の土星本体と輪の間の通過の際に撮影した画像をつなぎあわせ、映像としたもの(アニメーションGIF方式)。(Photo: NASA/JPL-Caltech)

写真は土星本体と輪の間を通過している間に撮影した、土星大気のクローズアップ画像ですので、この映像は土星大気のクローズアップ映像ということになります。写真で非常に印象的であった「黒い穴」、つまり土星の極地域にある六角形の黒い大気の渦の様子もよくわかります。

もう少し説明などを追加した映像はこちらでご覧いただけます。

今回画像処理を担当したバージニア州にあるハンプトン大学の研究者で、カッシーニの画像処理チームの共同研究者であるサヤナギ・クニオ氏(お名前からみて日系人の方でしょう)は、「六角形の境界や渦の境目の雲の壁が非常にシャープにみえたことには驚いた。こういった境目の雲が存続しているということは、より低い緯度から何かが供給されているということを示しているに違いない。」と述べています。

絵が常に四角ではなく、形が変わっているのは、探査機の姿勢が通過する際に次第に変わっているためです。
またこの写真を撮影している間に、カッシーニは雲がある領域に対して、高さ7万2400キロメートルから6700キロメートルまで一気に近づいています。それに伴って、解像度も1ピクセルあたり8.7キロメートルから810メートルにまで変わっています。

カリフォルニア工科大学の研究者で、カッシーニの画像処理チームに所属するアンドリュー・インガソル氏は、「今回の映像は非常に素晴らしいものであるが、(最初ということもあって)設定をやや安全側にしていた。この先、6月29日に予定されている土星本体と輪の間の通過の際にも同様の画像の取得を予定しているが、おそらくよりよい画像(映像)が取得できるだろう。」と述べています。ぜひ期待しましょう。

2017年5月6日(土)|Categories: カッシーニ/ホイヘンス|