moonstation

About 寺薗淳也

This author has not yet filled in any details.
So far 寺薗淳也 has created 1283 blog entries.

ハクト、3月末までのミッション達成困難を表明、しかし「挑戦を続けていきます」

おととい本ブログでもお伝えしましたが、月着陸を目指す技術競争「グーグル・ルナーXプライズ」(GLXP)に参加している日本のチーム「ハクト」が、このGXLPの達成期限である3月末までの打ち上げが難しくなったという報道がインド国内、さらには国内でも出てきました。これを受けてハクトの袴田武史代表は11日都内で記者会見し、この事実を認めた上で、3月末までのミッション達成が困難になったことを表明しました。しかし袴田代表は同時に、月着陸を諦めたわけではなく、様々な手段を通してミッション実現の可能性を引き続き探っていくと表明しました。

月面ローバー「ハクト」の最終デザイン

2018年初頭打ち上げ予定の月面ローバー「ソラト」の最終デザイン (© HAKUTO/KDDI)

GXLPは、月に探査機を軟着陸させた上でローバーを500メートル以上走行させ、月面から高精度の静止画・動画を最初に送信できたチームに、賞金2000万ドル(約23億円)を授与するという技術開発競争です。名前の通りグーグルがスポンサーになっています。
当初は30以上ものチームが名乗りを上げていましたが、現時点で残っているチームは5つとなっており、そのうちの1つが日本のチーム「ハクト」(HAKUTO)です。ハクトのローバーは「ソラト」と命名されています。
またこのレースには締切が設定されています。達成期限は過去何回も延長されてきましたが、現在は2018年3月末(つまり、あと2ヶ月半強)となっています。

今回の問題は、ハクトのローバー「ソラト」の打ち上げを、インドのチーム「チーム・インダス」が打ち上げるロケットに相乗りさせる形で行うというところから始まっています。
このチーム・インダス、ロケット(インドのPSLVロケット)を打ち上げロケットとして調達する予定でしたが、今年に入ってから実はそのための資金を確保できておらず、打ち上げ契約が行えていないということがわかりました。
PSLVはそもそもチーム・インダスが打ち上げるために契約されており、ハクトはそれに「相乗り」していく形です。従って、チーム・インダスが契約を履行できなければ、相乗りしていくハクトも月面に到着することができません。
この問題が公になったのは今年になってから、この数日のことで、大変急だったことがわかります。

この問題を受けて、11日、ハクトの袴田武史代表が都内で記者会見しました。
袴田氏は、上記の、PSLVとチーム・インダス間の契約に関する問題を認め(詳細については守秘義務というがあるためお話しできないとのことでした)、GLXPの達成期限である3月までに「ソラト」を月面に到達させることが困難であると表明しました。
その上で、決してGXLPから離脱するわけではないと強調した上で、「これまでHAKUTOのチャレンジに共感、ご支援いただている皆様の想いを無駄にしないために、Google Lunar XPRIZEそして民間による月面探査という挑戦を続けていきます。」と表明しています。

ただそうはいっても、実現するためには何らかの方策を考える必要があります。
その1つが、GLXPの期限延期です。現時点で参加している5つのチームすべてが、まだロケットの打ち上げについての日時を発表していません。つまり、どのチームもまだめどが立っていないという状況なのです。従って、このままではレースは誰も達成できず終わってしまうことも考えられます。
記者会見では、袴田代表はGXLPの期限延長を先方に依頼していることを明らかにし、これを含めた「あらゆる方策を検討している」ということを述べています。
仮にGXLPの期限が延長されれば、資金調達のための時間確保も可能となります。また、チーム・インダスの支援などを行う際にも多少の時間的な猶予が与えられるでしょう。

また、チーム・インダスについてはいろいろな問題が指摘されていますが、袴田代表は「チーム・インダスとのパートナーシップは今後も続けていきたい」と言明しました。

袴田代表自身も今回の問題について把握したのはつい最近だったようで、記者会見でいつ問題を把握したのかを尋ねられると「おとといの昼過ぎ、報道で知った」と述べていました。このタイミングは編集長(寺薗)が問題を把握したのとほとんど変わりありません。

また、仮にGXLPが期限を延長しなかった場合についても、「その場合も月への飛行を目指す」と答えています。
いずれにせよ、様々な方法で月に向かうことを検討する、ということになります。

今回の問題、先方のチームの財政面での問題などを把握できていなかった点で、ハクト側にも甘さがあったことは否定できないでしょう。また、そもそも相乗りではなく、自力でロケットを調達すべきであったという意見もあると思います。
しかし、ハクト側としてもチーム・インダスと交流を重ねた上で今回の結論に至っているわけで、それ以上彼らを責めるのはむしろ酷であると私は考えます。相乗りという決断にしても、当初参加していたチーム「アストロボティック」のキャンセルにより、大慌てで打ち上げロケットを探さなければならないという状況に陥り(2016年末までにロケットを決定していないチームは自動的にGXLPから脱落させると、主催者から説明されていました)、当時打ち上げロケットを明確にしていたチーム・インダスと組むという判断は妥当なものであったと考えられます。
もちろん、ロケットを自前で調達するという面もあったと思いますが、今度はそのための資金調達の問題が生じます。それができていれば…ということもあるでしょうが、今のハクトではそれが限界であるともいえるでしょう。その限界の中でできる限りのことをしてきたうえでの今回の結論であると、編集長は考えています。

袴田代表は、記者会見後に発表されたハクトの声明の中で、「どんな困難があっても歩みを止めずにいれば、解決案は出てきます。我々は引き続き挑戦し続けます。」と力強く語っています。
編集長が「はやぶさ」のミッションに関わっていたとき、あるいはH-IIAロケット打ち上げ失敗のさなかにいたときにも、まさに同じことがありました。どのような状況に置かれても、歩みを止めず、解決案を探っていけば必ず出口はある…。そのことは、私が身をもって知っています。

そしてそのような状況において、多くの人からの励ましの言葉がいちばん力になった、ということを私も体験しています。
頑張ろうという人を後押しすること、それがいま、私たちができる、ハクトへの最大の支援ではないでしょうか。

月探査情報ステーションでも引き続きハクトの状況を随時お伝えすると共に、彼らの挑戦を支援していきたいと思います。
皆様もぜひご支援いただきますよう、編集長よりお願い申し上げます。

【さいごに】 本記事のまとめにあたっては、大貫剛さんの記者会見の様子のツイートを参考にいたしました。大貫さんにこの場を借りて感謝申し上げます。

2018年1月11日(木)|Categories: ハクト|

ハクトと相乗り打ち上げのチーム・インダス、ロケット調達に失敗か? ハクトにも暗雲?

たいへん心配なニュースが入ってきました。
グーグル・ルナーXプライズ(GXLP)に参加しているインドのチーム「チーム・インダス」が、ロケットの調達に失敗した可能性があると、インドのウェブ系メディアの「ファーストポスト」(FIRSTPOST)が伝えています。
これだけならまだ大したことはないのですが、実はこのGXLPに参加している日本のチーム「ハクト」(HAKUTO)は、チーム・インダスが調達した(するはずだった)ロケットに相乗りする形で打ち上げられることになっています。もしこれが事実だとすると、ハクトの打ち上げもできないことになってしまいます。

月面ローバー「ハクト」の最終デザイン

月面ローバー「ハクト」の最終デザイン (© HAKUTO/KDDI)

チーム・インダスとハクトのローバーは、インドのロケット「PSLV」によって、3月末までに打ち上げられる予定でした。
記事によると、複数のインド宇宙研究機関(ISRO)の情報源から、今回このPSLVの打ち上げ契約に必要な3000万ドル(日本円で約30億円)が調達できなかったとの情報が入っているとのことです。なお、契約はISROと直接行うのではなく、ISROの関連会社で、PSLVなどの打ち上げサービスを提供しているアントリックス(ANTRIX)という会社と行うことになっていますが、いずれにしてもロケット打ち上げの契約ができなかったということになります。

なお、この情報はウェブメディア「The Ken」というところの記事が元になっています。このThe Kenは基本的に有料メディアで、より詳細な内情を伝えていますが、その点については省略します。いずれにしても、もしこれが本当であれば、打ち上げができない(少なくともGLXPの達成期限である3月までに打ち上げできない)事になります。それはまた、同じロケットに乗っていくハクトのローバーが月に到達できないということでもあり、ハクトにとっては大変な問題を抱えてしまったことになります。

また同じくThe Kenによれば、チーム・インダスは以前から問題を抱えており、資金調達ができたとしてもGXLPの期限までにローバーを仕上げ、打ち上げに間に合わせることができないことは明らかだったとのことです。
さらにファーストポストの記事では、The Kenの記事を引用する形で、打ち上げに欠かせない基幹部品である慣性航法ユニット(IMU: 衛星やロケットの位置や姿勢を知るための部品)が昨年末までに届いていないなど、チーム・インダスがかなり混乱した状況にあったことに触れています。

いまのところ、チーム・インダス、ハクト、どちらからも情報は出ていません。
The Kenの記事自体もソースが明示されておらず、また、インドの他の通信社から類似の記事は出ていません。
従って、この情報をすぐ額面通りに受け取るべきなのかはまだわかりません。ただ、このような情報が出てきているということは、ハクトにとってもたいへん厳しい状況であるといえるでしょう。

ただ、もしこの問題が事実であるとすれば、両チームとも解決に向けて動いていると思われます(少なくとも、そう信じたいです)。心配ではありますが、私たちにできることは、ただ1つ、しっかりと見守り、情報を待つことかと思います。

【1月12日午前10時30分】1箇所、軽微な表現の修正を行いました。
(旧) 慣性航法ユニット(IMU: 衛星やロケットの位置を知るための部品)
(新) 慣性航法ユニット(IMU: 衛星やロケットの位置や姿勢を知るための部品)

2018年1月9日(火)|Categories: ハクト|

2018年、編集長より新年のごあいさつ

皆様、新年あけましておめでとうございます。

昨年(2017年)を振り返ってみますと、全体的に非常に大きな話題はそれほどなかったものの、今後に向けた準備の年になりそうな感じがありました。その中でも、土星探査機カッシーニのミッション終了は大きな話題になりました。最後に土星大気に突入する際の予想図を、「はやぶさ」の大気圏突入と重ね合わせた方も多かったようです。

さて、2018年は、月・惑星探査にとって非常に大きな転換点になりそうです。
昨年後半から月探査に関する話題が盛り上がっています。2018年の前半は月探査の話題で埋め尽くされそうです。
3月を期限とするグーグル・ルナーXプライズは、いよいよ各チームが打ち上げの段階に入ってきます。日本のチーム「ハクト」もその中に入ります。どのチームが月に到達し、ミッションを達成できるか、ハラハラドキドキの競争が展開されるでしょう。
ちょうど同じ1〜3月に、インドは月探査機「チャンドラヤーン2」を打ち上げます。こちらはインド宇宙研究機関の着陸機で上記の競争とは別ですが、タイミングが全く同じであるばかりではなく、インドの宇宙開発技術の高さを示すものとなりそうです。
月探査に熱心な中国は、本来であれば昨年打ち上げ予定であった無人サンプルリターン機「嫦娥5号」を今年後半に、史上初となる月の裏側への着陸を目指す「嫦娥4号」を早ければ今年中に打ち上げる予定です。

そして、昨年暮れから一気に加速してきた有人月探査への流れは、今年もさらに加速されていくでしょう。
NASAが有人月探査の検討をスタートさせたり、日本がNASAの計画「深宇宙ゲートウェイ」に参画することを検討するなど、2020年代なかばと予想される、国際共同の月面宇宙ステーション実現に向けて、アメリカ、ロシア、そして日本の動きが活発になっています。
この流れの背後には、3月に日本(東京)で開催される宇宙機関の会議「第2回国際宇宙探査フォーラム」(ISEF2)があります。この会議は、世界の宇宙機関の長などが集まる非常に重要な会議で、おそらくこの席で、今後の有人宇宙探査の方向性が決められるのではないかと考えられます。そして、日本は議長国としてこの会議をリードし、有人宇宙探査についても方向性を示していくことが求められます。その1つの流れが有人月探査、そして月周辺の国際宇宙ステーションになるのではないでしょうか。
一方、これらについては問題山積という状況であり、それらをどう解決するのか、また予算負担をどう国民に説明するのかが問われることになるでしょう。

一方では、民間部門での月探査も大いに進むと思われます。
昨年12月には、日本の宇宙ベンチャー企業アイスペースが、月周回衛星と月着陸衛星の開発構想を打ち上げました。またすでに、アメリカの宇宙ベンチャー企業スペースX社は、今年中に有人月周回飛行を実現させると発表しています。
上記のような政府間の動きとは別に、民間による月探査の流れも加速し、両者が競い合いながら月に向けてのアプローチを取っていくのではないかと思われます。

今年は15年ぶりの火星大接近の年です。7月31日が大接近の日(最も近づく日)となっていますが、その前後は火星に関する話題が多数出てくるのではないでしょうか。2003年の火星大接近のときには、夜中まで科学館や天文台の観望会に行列ができる盛況ぶりでした。同じようなことがまた起こるかもしれません。
火星大接近はまた火星探査の好機でもあります。今年は火星探査機「インサイト」(本来は2016年打ち上げ予定でした)が打ち上げられます。さらに、2020年の打ち上げに向けて、各国の火星探査機の開発が進められるのではないかと思われます。

この火星大接近の頃には、もう1つの「お楽しみ」があります。
2014年12月に打ち上げられ、目的地「リュウグウ」への旅を続けてきた小惑星探査機「はやぶさ2」が、いよいよ6〜7月に目的地に到着します。
リュウグウの姿はある程度わかってはいますが、初代「はやぶさ」のときと同様、いってみるまでは本当の、そして細かい姿はわかりません。私たちの前にどのような天体の姿が現れるのか、楽しみです。
そして同じ小惑星サンプルリターン機であるアメリカの「オサイレス・レックス」も、年末には目的地の小惑星ベンヌに到着予定です。日本とアメリカが同時に小惑星の探査を行うことで、小惑星についての新たな発見をお互いに競い合う形になるでしょう。
そして、日本の探査機といえば、水星探査機「ベピ・コロンボ」が10月に打ち上げられます。日本ではじめての水星探査機でもあり、またヨーロッパとの共同開発となります。現地到着は打ち上げから数年かかりますが、これもまた大きな話題になるでしょう。

このように、月・惑星探査に関して話題が尽きないと考えられる2018年、月探査情報ステーションは開設から満20年を迎えます。
1998年11月2日、宇宙開発事業団(当時)など4団体が共同で設立したウェブサイト「インターネットシンポジウム ふたたび月へ」が、いまの月探査情報ステーションの母体でした。それから20年、運営主体やドメイン名などを変えつつ、その中心となる考え方や内容などをそのまま受け継ぎ、発展させる形で、月探査情報ステーションの運営が続けられてきました。
節目の年となる今年、早速1月上旬には編集長の2冊めの本『夜ふかしするほど面白い「月の話」』が出版されます。また、宇宙ミュージアムTeNQでは、月探査情報ステーション協力のもと、企画展「Over the Sailor Moon ~宇宙への招待~」がちょうどいま開催されています。
開始当時は1日に3000アクセス程度だったサイトは20年で大きく成長し、日本を代表する月・惑星探査の情報サイトとなりました。さらにその活動の幅はサイバー世界だけにとどまらず、本やイベントという形で現実の世界へ大きく広がりつつあります。
この1年、月探査情報ステーションは、20周年を祝いつつ、さらに「次の20年」を目指す形でいろいろな活動を展開していまいります。インターネットの世界で、リアルな場所で、多くの方に月の面白さ、惑星探査の意義をお伝えしていきたいと思います。どうぞご期待ください。

20年前に想像していた「ふたたび月へ」の世界が実現されようとする今年、月探査情報ステーションは、初心を忘れず、そしてさらなる飛躍を目指し、精力的に突き進んでまいります。
皆様のご支援・ご愛顧を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2018年1月1日
月探査情報ステーション 編集長 (合同会社ムーン・アンド・プラネッツ 代表社員)
寺薗 淳也

2018年1月1日(月)|Categories: お知らせ|

2017年、月・惑星探査を振り返る【後編 7〜12月】

昨日は前編として、1〜6月の月・惑星探査の話題をまとめました。
本日は後編として、7〜12月の月・惑星探査の話題を振り返ります。

【7月】
探査自体に大きな動きはなかったのですが、これまでの月・惑星探査の成果が出てくる月でした。
ブラウン大学の研究者により、月にこれまで予想されていたよりも多くの水が存在する可能性が指摘されました。水の存在は、今後の有人月探査におけるポイントにもなりますので、かなり期待される話題になりそうです。
また、金星探査機「あかつき」の初の観測データセットの公開がありました。
はやぶさ2」に関する機器開発や初期の科学的成果についての多数の論文公開もありました。

【8月】
冥王星を探査した「ニューホライズンズ」が次の目的地(2019年1月1日接近予定)としているカイパーベルト天体「2014 MU69」の不思議な素顔が明らかになりました。どうやらこの天体、2つの天体からなるというかなり珍しいもののようです。
また、日本の月探査機「スリム」の打ち上げが、当初予定されていたイプシロンロケットからH-IIAロケットに変更され、天文衛星「ひとみ」の後継機と一緒に打ち上げられることになりました。そのため、打ち上げが1年延期され、2020年度となりました。

【9月】
9月はなんといっても、土星探査機カッシーニのミッションの最後「グランドフィナーレ」が大きな話題でした。一般のテレビや新聞などのニュースとしても取り上げられたので、多くの方が目にしたのではないでしょうか。9月15日、カッシーニは土星大気に突入、打ち上げから20年、土星到着から13年にわたるミッションを完了しました。
その他の話題としては、中国の火星探査の話題があります。2020年に打ち上げが予定され、2030年頃にはサンプルリターンも計画されているとのことです。

【10月】
日本の月探査機「かぐや」が発見した月の縦穴。その縦穴周辺に大きな地下空間が広がっていることが明らかになりました。このような巨大な地下空間は、将来の月面基地の候補地として大いに期待されます。
また、中国の火星探査の話題も引き続き報じられ、2020年後から開始されることが伝わってきています。

【11月】
宇宙メディアspace.comが、ロシア富豪などによる土星の衛星エンケラドゥスの探査計画を報じています。実現すれば、民間部門で純粋な科学探査を行う世界初のプロジェクトとして注目されます。
アポロ12号で月に向かったリチャード・ゴードン氏が亡くなりました。ユージン・サーナン氏の死去と共に、アポロ時代がまたさらに遠くなったことを象徴するニュースとなりました。
韓国の月探査が無期延期となる可能性が報道されるなど、月探査に関しては逆風となるニュースが多い月でした。

【12月】
11月の「逆風」が一転して、月探査に関して大きな進展が次々に出てきました。
アメリカのトランプ大統領が、NASAに対して有人月探査を実施するように命令する大統領令に署名しました。一方、NASAが検討している月上空の宇宙ステーション「深宇宙ゲートウェイ」(ディープ・スペース・ゲートウェイ)に日本が参加を検討するというニュースが大きく報じられました。将来の有人月探査が大きく動き出し始めた一方、巨額の費用や技術的な問題など、これから検討すべき課題もまだ多数あります。
無人月探査でも、JAXAがインド宇宙研究機関と月極地域の着陸探査検討を開始するなどの動きが出ています。人類がふたたび月へと動き始める月となったようです。

以上、2017年の月・惑星探査のトピックをまとめました(なお、一部の記事については現時点でも執筆できていないため、リンクを設定しておりません。ご了承ください)。
来年も多くの月・惑星探査の話題を伝えられるよう、編集長も努力してまいります。月探査情報ステーションにどうぞご期待下さい。

2017年12月31日(日)|Categories: ブログ|

2017年、月・惑星探査を振り返る【前編 1〜6月】

2017年も残りわずかとなりました。
今年も、月探査情報ステーションをご愛顧いただきまして、ありがとうございました。
月・惑星探査に関しては、今年も様々な話題がありました。膨大なブログ記事の中から、月ごとに振り返っていきたいと思います。

【1月】
年明け早々の5日、NASAの新惑星探査ミッションとして小惑星探査が2つ選定されるというニュースが入りました。特に、金属質の小惑星「プシケ」を探査するという野心的なミッションは話題となりました。
16日、「月面を最後に歩いた男」、アポロ17号の宇宙飛行士ユージン・サーナン氏が死去しました。アポロもまた一歩、遠くなりました。
24日、グーグル・ルナーXプライズの最終候補5チームの1つに、日本のHAKUTOが選定。打ち上げは来年1〜3月となる予定です。
若干個人的なニュースではありますが、私の先輩であり、「かぐや」「はやぶさ2」開発に尽力し、44歳という若さで亡くなった飯島祐一氏の名前が小惑星に付けられました

【2月】
「かぐや」が取得したデータを解析することにより、地球の大気中に存在する酸素が月にまで届いているということが明らかになりました。大阪大学の寺田健太郎教授のチームの研究成果です。地球と月とのつながりを改めて感じさせる話題でした。
27日には、スペースXのCEO、イーロン・マスク氏が声明を発表、2名の乗員を乗せて月周回飛行を2018年中に行うと宣言しました。この計画のその後はどうなっているのでしょうか。

【3月】
インド、中国の月・惑星探査関係の記事が目立ちました。
月からの無人サンプルリターンを目指す嫦娥5号が打ち上げ場へ移動、打ち上げ体制が整いました。なお、その後打ち上げに使用するロケット「長征5号」の打ち上げ失敗の関係で本来の年末の打ち上げが延期されています。また、中国の小惑星探査計画も進展しています。
インドが月探査機「チャンドラヤーン2」の打ち上げを来年第1四半期に行うことが発表されました。1月に発表されたHAKUTOの打ち上げはインドのチーム「チーム・インダス」と行いますが、このチャンドラヤーン2はインド宇宙研究機関のプロジェクトです。インドの月・惑星探査の勢いを示すニュースといえるでしょう。
一方、アメリカの小惑星探査計画は継続が困難となってきています(現時点ではほぼキャンセルとなっています)。

【4月】
前月のスペースXの計画に対抗したのでしょうか、ボーイング社が3日、月・惑星探査機の構想を発表しました。競争による技術の進展が期待されます。
9月にミッションを終了する土星探査機カッシーニ、その最後のミッション「グランドフィナーレ」が始まりました。土星の本体と輪の間をくぐり、最後は土星大気に突入して消滅するという大胆なミッションです。27日にはその最初の探査を実施。これまでにない鮮明な写真が得られました。

【5月】
HAKUTOが、打ち上げロケットの変更に伴う費用の一部をクラウドファンディングで賄うことに成功しました。
木星探査機ジュノーが捉えた、木星のダイナミックな大気の模様の写真と動画が公開されました。これまで私たちが見たことのない木星の姿はまさに驚くべきものでした。
また、アメリカ中国で、宇宙資源関係の記事が出てきたことは注目されます。宇宙資源は将来の月・惑星探査の大きな目標になるかも知れません。

【6月】
嫦娥4号、5号関係の記事が目立ちました。嫦娥4号は史上初の月の裏側への無人着陸を目指す中国の探査機です。
嫦娥5号の打ち上げが11月30日着陸場所がリュムケル山という情報が流れました(打ち上げが延期され、来年になったのは先に述べた通りです)。また、嫦娥4号には初の生物実験装置が搭載されることもわかりました。
NASAの小惑星探査計画「小惑星イニシアチブ」の柱となっていた小惑星捕獲・有人探査機計画「アーム」の中止が報道されました。また、日本の有人月探査参入というニュースが早くも流れています。

7〜12月のまとめにつきましては、明日公開の予定です。

2017年12月30日(土)|Categories: ブログ|