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カッシーニ、土星探査最終ミッションの日程

カッシーニの最後に向けた探査機の主要イベントの時間(タイムライン)が、探査機の運用を行っているジェット推進研究所(JPL)から公開されています。

カッシーニの「グランドフィナーレ」における飛行の想像図

土星の北半球の上空を飛ぶ、最終ミッション「グランドフィナーレ」を実施中のカッシーニ探査機の想像図。これはグランドフィナーレにおける22回めの降下の際の状況。(Photo: NASA/JPL-Caltech)

現時点で、カッシーニが土星大気に突入し、燃え尽きて地球との通信が途絶したことが地球で確認できる時刻は、9月15日午前4時55分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では15日午後8時55分)となっています。
土星と地球とは約15億キロ離れているため、電波の速さをもってしても、土星で起きていることが地球でわかるためには83分の時間差があります。
また、上記の時間は完全確定ではありません。大気に探査機が突入したとしても、その大気の厚さ・濃さなどを含めた本当の状態はわかりませんので(最後にカッシーニが地球に送ってくるのは、まさにそういった情報になるでしょう)、数分か、あるいはそれ以上ずれることも考えられます。ご注意ください。

以下、カッシーニ探査機の最後の主要イベントについて、時系列で並べます。
時刻は土星上の時間で記されています。土星上の時間ではありますが、時刻表記はアメリカ太平洋夏時間です。年のため日本時間に変換した時刻も記してあります。
また、信号の送信などの場合、それが地球に届く時間も記してあります。

土星における時間
(アメリカ東部夏時間)
土星における時間
(日本時間)
地球への到着(日本時間) イベント内容
9月8日
午後8時9分
9月9日
午前9時9分
「グランド・フィナーレ」ミッション最後となる、22回めの本体と輪の間の空間の通過。土星表面(雲の頂上)から探査機までの距離は約1680キロメートル
9月9日
午前9時7分
9月9日
午後10時7分
9月9日
午後11時29分
上記、最後の通過の際に取得したデータの送信開始
9月11日
午後3時4分
9月12日
午前4時4分
軌道変更のための衛星タイタンへの最接近(フライバイ)。タイタンからの距離は11万9049キロメートル。
9月12日
午前1時27分
9月12日
午後2時27分
遠土点(土星からもっとも遠い点)に到着。距離は約130万キロ。
9月12日
午後7時56分
9月13日
午前8時56分
9月13日
午前10時19分
タイタン最接近のデータの送信開始
9月14日
午後3時58分
9月15日
午前4時58分
カッシーニ搭載のカメラによる最後の画像取得
9月14日
午後4時22分
9月15日
午前5時22分
9月15日
午前6時45分
探査機がアンテナを地球に向け、カッシーニ内のデータ記録装置の全データの送信開始。最後に取得した画像なども地球へ送信される。このあと、探査終了まで通信を続ける。
9月15日
午前11時15分
NASAの深宇宙通信網(DSN)のアンテナのうち、オーストラリア・キャンベラ局のアンテナが通信を引き継ぐ。
9月15日
午前1時8分
9月15日
午後2時8分
カッシーニがエンケラドゥスの軌道の距離まで土星に近づく
9月15日
午前3時14分
9月15日
午後4時14分
9月15日
午後5時37分
測定装置が土星大気成分の観測をできるように探査機の向きを5分かけて変更。探査機がシステム変更を行い、毎秒27キロビットでの地球との通信を確立。最後の瞬間までこの速度でリアルタイム通信を実施する(当然のことながらリアルタイムとはいっても電波が到着するまでには時間差がある)。
9月15日
午前3時22分
9月15日
午後4時22分
カッシーニがもっとも外側にある輪、Fリングの位置を通過。
9月15日
午前6時31分
9月15日
午後7時31分
9月15日
午後8時54分
カッシーニが土星大気に突入。逆噴射は10パーセントの推力で作動。
9月15日
午前6時32分
9月15日
午後7時32分
9月15日
午後8時55分
逆噴射は100パーセントの推力で作動。高利得アンテナ(ハイゲインアンテナ)の地球指向が外れる。通信途絶。

以上が、現在予想されているカッシーニの最後の瞬間です。
最終的には、土星大気の圧力によって探査機の向きが変わり、アンテナが地球の方向を向き続けられなくなります。その時点で通信が途絶し、ミッションは終了となります。

通信途絶の時間は、最後の5回の「ダイブ」、すなわち土星の本体と輪の間の通過によって若干変化しています。この5回の通過では実はカッシーニは土星大気の上部を通過していて、大気との摩擦によって探査機自身の速度が低下しています。その影響があって、カッシーニの最後の時間についても変化することになります。
もし大気の影響が予想以上であれば、すなわち大気によってより強く減速されているようであれば、ミッション終了の時刻は若干(数秒、最大数分程度)早まることになります。逆に大気が薄ければ、もう少し終了時刻が遅くなることになります。

カッシーニのチームは、探査機の土星の輪と本体の通過のたびに大気によって探査機の軌道がどう変化するかを観察しています。このデータによる計算で、最終的に時間の変更が起こりうるかもしれません。

【訂正】本文内で、土星と地球との距離を「2億5000万キロ」と表記しておりましたが、こちらは計算ミスで、正確には15億キロとなります。大変失礼いたしました。修正を完了しています。

2017年9月13日(水)|Categories: カッシーニ/ホイヘンス|

カッシーニ、土星の衛星タイタンに最後の最接近(フライバイ)

カッシーニのミッションの最後が少しずつ近づいてきました。
9月15日の土星大気への突入・ミッション終了に向けた作業は、着実に進められています。その一環として、探査機は11日午後0時4分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では12日午前4時4分)、土星の衛星としては最大の衛星であるタイタンへの最後の最接近(フライバイ)を実施しました。
リリースを出したジェット推進研究所(JPL)では、この最後の最接近を「お別れのキス」と称しています。なんと美しい例え方でしょうか。

カッシーニのタイタン最後の最接近の想像図

カッシーニのタイタン最後の最接近の想像図 (Image: NASA/JPL-Caltech)

最後となるタイタンへの最接近(フライバイ)の距離はタイタンから11万9049キロメートルでした。
カッシーニは12日の午後6時19分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では13日午前10時19分)から地球との交信を開始します。この交信で、最後の最接近で撮影したタイタンの写真、及び取得した各種科学データを地球へと送ってくることになる予定です。
また、カッシーニの軌道制御チームは、今回のタイタンへのフライバイによって探査機が所定の軌道を飛行しているかどうか確認する予定です。チームでは軌道が正確で、予定通りの時間及び場所に探査機が突入することを確認する予定です。

今回の最接近は、技術者からは「お別れのキス」(the goodbye kiss)と呼ばれています。なぜかというと、今回のタイタンへの最接近は、最後に土星の大気へと突入するための軌道に調整するためのものだからです。タイタンに最接近することで、探査機はタイタンの重力を利用して軌道を変更、土星の大気へと突入する軌道へと自らを導きます。
今回の最接近により、カッシーニは若干減速し、土星へと近づく軌道に入ります。こうして高度を次第に下げ、最終的には土星大気へと突入し、燃え尽きます。

2004年6月末にカッシーニが土星に到着して以来、カッシーニは何度となくタイタンに接近し、観測を行ってきました。その数は127回にも及びます。ものすごく近づいたこともあれば、今回のように比較的離れた接近もあります。しかし、もうカッシーニがタイタンのそばを飛行することはありません。
「タイタンはカッシーニにとっては長年の仲間のようなものだった。この13年、毎月のようにタイタンに近づいていたからだ。今回の最後の最接近は、いってみればほろ苦いお別れのようなものかもしれない。しかし、ミッションにとっては重要なことで、タイタンの重力によって、カッシーニは私たちが目指す場所へと導かれたわけだ。」(カッシーニ計画のプロジェクトマネージャーである、JPLのアール・メイズ氏)

9月15日の最後まであとほんのわずか。カッシーニは最後の瞬間までデータを取り続け、地球に送り続けます。

2017年9月13日(水)|Categories: カッシーニ/ホイヘンス|

カッシーニの最後はどうなる…ヨーロッパ宇宙機関の情報より

いよいよ、土星探査機カッシーニの最後が近づいてきました。
カッシーニは、15日夜(日本時間)に土星大気に突入、探査を終了することになっています。その点について、カッシーニ探査機を共同で作り上げたヨーロッパ宇宙機関(ESA)が情報のいわば「まとめ」を出しています。ぜひ一読されるとよいと思いますが、日本語化してお届けしましょう。

カッシーニの最後の1週間の様子を表した図

カッシーニの最後の1週間の様子を表した図。11日にタイタンに最後のフライバイ、14日には土星の最後の写真を取得し、15日夜に土星大気に突入。(Image: NASA/JPL-Caltech)

カッシーニの最後に向けた動きはすでに始まっています。11日には土星の最大の衛星、タイタンの最後の写真を取得、14日には土星の最後の写真を取得します。そして、14日午後2時45分(アメリカ東部夏時間。日本時間では翌15日午前3時45分)には、探査機内のすべてのデータを地球へと送信します。
そして、15日午前4時54分(アメリカ東部夏時間、日本時間では午後5時54分)、カッシーニは土星の北緯10度付近の大気に突入、燃え尽きて消滅する予定です。

カッシーニからの最後の写真の到着は15日の正午(日本時間)までには到着するものと思われます。そして、カッシーニのミッション終了後、午後9時頃(日本時間)からは記者会見も開催される予定です。

カッシーニの状況については、メールやブログでの情報よりは、いまやリアルタイムで更新されるソーシャルメディア上の情報がもっとも早いと思われます。とりわけ、ミッションチームのツイッター、@CassiniSaturnは確実にフォローすべきでしょう。すべての情報はここから流れています。13日朝現在でも非常にたくさんの情報が頻繁に投稿されていますので、ぜひチェックしましょう。

カッシーニの最後のミッションで観測し続ける8つの装置

カッシーニの最後のミッションで観測し続ける8つの装置 (Image: NASA/JPL-Caltech)

ESAでは、今回のカッシーニのミッションの最後において知っておくべき8つの情報を紹介しています。せっかくですので皆様にもご紹介しましょう。

  • 土星から地球への信号到達は83分(1時間13分)かかる。土星(探査機)と地球との距離は約14億キロ。
  • 土星への最後の突入時には写真は撮影しない。写真を送るためには、通信速度が遅すぎるためである。そのため、より重要な他の観測機器の観測データ送信を優先させる。
  • 土星の最後の写真はそれに先駆けた14日(前述の通り)に取得し、そこには木星の衛星タイタン、エンケラドゥス、小衛星「ピギー」、土星の輪のプロペラ状の構造や土星本体、土星北極のオーロラなどの写真が撮影される予定。
  • 8つの観測機器(赤外・紫外スペクトロメーター、ガススペクトロメーター・磁力圏撮像装置、電波科学(装置ではない)、ダスト分析器、電波・プラズマ観測アンテナ、磁力計)が、最後の瞬間までデータ取得・地球への送信を行う。
  • 探査をこのような形で終了させるのは、20年(さらにいえば土星到着から13年)を経過し、探査機の燃料が枯渇したため、探査機が土星周辺で今後制御不能な飛行をすることが内容にするため、あらかじめ決定された軌道で安全に土星の大気へ突入させ、確実にミッションを終了させることになった。とりわけ、生命の可能性が取り沙汰されているエンケラドゥスに影響を与えることを避ける意味合いが強い。
  • カッシーニの最後の観測は4月から実施されており、土星本体と輪の間の2000キロほどの隙間を22回にわたって飛行する「グランドフィナーレ」というミッションを実施している。このミッションは、土星本体周辺のチリや小さな岩などの様子を捉えることが目的である。
  • これらの22回の軌道は、ESAの地上局の支援によって追跡が行われている。観測データだけでなく、到着した電波そのものも観測データとして重要である(土星大気の様子などが、届いた電波の周波数などの解析からわかります。上記の「電波科学」というのはそのような観測です)。
  • 11日に実施されたタイタンへの最後の接近は、タイタンの重力を利用したフライバイで、これによって最後の突入軌道へと向きを変える。

カッシーニの最後までもう間もなくです。打ち上げから20年にわたった探査、私たちもその最後を見守りましょう。

2017年9月13日(水)|Categories: カッシーニ/ホイヘンス|

冥王星の地名が正式決定、「はやぶさ」やボイジャーの名前も

冥王星(及びカイパーベルト天体)探査機ニューホライズンズのチームは7日、2015年の探査機の冥王星最接近の際に発見された冥王星表面の各種地形に公に名前がつけられたと発表しました。
新たに命名された冥王星の名前は、地下(冥土…なんといっても「冥」王星ですから)の神の名前、歴史を変えるような発見を成し遂げた月・惑星探査ミッション、そして冥王星に関係する人の名前がつけられています。そのこともあり、地名にはあの日本の小惑星探査ミッション「はやぶさ」の名前もつけられています。

冥王星表面の地形名称

冥王星の表面の地形につけられた名称。冥土(地下)の神、歴史を変えた月・惑星探査、冥王星に関連する人たちの名前がつけられている。(Image: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Ross Beyer)

本来は地名がどのように名付けられたかからはじめなければいけないかと思いますが、気になる方も多いと思いますので、まずは今回命名された名前の一覧をご紹介します。

  • トンボー地域 (Tombaugh Regio)…冥王星で有名になった「ハート型模様」のハートの右側にあたる。トンボーは、冥王星を発見したアメリカ人、クライド・トンボー (Clyde Tombaugh)の名前から。
  • バーニー・クレーター (Burney crater)…スプートニク平原(後述)西側のやや大きめのクレーター。名前は、トンボーが新しい惑星を発見した際、名前を「冥王星」(Pluto)にするように提案した、当時(1930年)11歳の小学生、ベネティア・バーニー (Venetia Burney)にちなむ。
  • スプートニク平原 (Sputnik Planitia)…いわゆる「ハート型模様」の左半分を占める。名前は、旧ソ連が1957年に世界ではじめて打ち上げた人工衛星、スプートニク1号から。
  • テンジン山 (Tenzing Montes)、ヒラリー山 (Hillary Montes)…スプートニク平原の南部に位置する高い山。両者の名前は、1953年、世界ではじめて世界最高峰のエベレスト(チョモランマ)登頂に成功した、ニュージーランド出身の登山家エドムンド・ヒラリー (Edmund Hillary)と、シェルパ(ネパールの現地民族。登山の際荷物運搬や登山家の各種サポートを行う)のテンジン・ノルゲイ (Tenzing Norgay)にちなむ。
  • アル・イドリースィー山 (Al-Idrisi Montes)…スプートニク平原の西に位置する山。中世(12世紀)に活躍したアラビアの地理学者、ムハンマド・アル・イドリースィーにちなむ。彼は当時としては極めて正確な世界地図を作成し、またそれらの地図は「地平線を越えることを熱望した男の喜び」(The Pleasure of Him Who Longs to Cross the Horizon)と訳され、中世ヨーロッパに伝えられると大航海時代の基礎となった。
  • ドゥジャンガウル地溝谷 (Djanggawul Fossae)…スプートニク平原のかなり西に位置する谷。ドゥジャンガウルとは、オーストラリア原住民の神話において、彼らの祖先となる3人の神様の1人であり、オーストラリアから死者の国へと旅し、オーストラリアの地形を作り、木々で満たしたとされる。
  • スレイプニル地溝谷 (Sleipnir Fossa)…トンボー地域の東側に細く伸びる谷。スレイプニールは、古代北欧神話に登場する8本の足を持つ馬。巨神オーディンを乗せ、天や大地を自在に駆け巡ったとされる。また、日本ではブラウザーの名前やゲーム「ファイナルファンタジー」に出てくるモンスターの名前としても有名。
  • バージル地溝谷 (Virgil Fossae)…スプートニク平原西部に位置する谷。有名なローマ時代のローマの詩人、ウェルギリウス(英語読みでは「バージル」となる)にちなむ。ダンテの作品『神曲』では、地獄及び煉獄を案内する役として登場する。
  • アドリバン窪地 (Adlivun Cabus)…スプートニク平原南部に位置する谷。北極域先住民(イヌイット)の神話に登場する地下の神、アドリバンから。
  • ハヤブサ平原 (Hayabusa Terra)…スプートニク平原及びトンボー地域の北東に広がる広大な平原地帯。いうまでもなく、世界初の小惑星サンプルリターン探査を達成した日本のミッション「はやぶさ」にちなむ。
  • ボイジャー平原 (Voyager Terra)…スプートニク平原の北西側にある広い平原地帯。ハヤブサ平原の西隣にあたる。いまからちょうど40年前(1977年)に打ち上げられ、外惑星探査を実施し、現在(2017年)も探査を続行している探査機ボイジャーにちなむ。
  • タータラス尾根 (Tartarus Dorsa)…トンボー領域東側、スレイプニール地溝谷の南に位置する山脈地域。ギリシャ神話に登場する、もっとも深く暗い奈落の穴、及び冥界よりさらに下に住む神の名前であるタルタロスにちなむ。
  • エリオット・クレーター (Elliot crater)…恒星の掩蔽現象をはじめて太陽系の研究に活用し、天王星の輪の発見や冥王星の薄い大気の発見など、外惑星に関する様々な発見を成し遂げたマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者、ジェームズ・エリオット (James Elliot)にちなむ。

以上、地形の特徴を表す部分については以下のように日本語で表しています。

  • Regio…地域
  • crater…クレーター
  • Planitia…平原
  • Montes…山
  • Fossa, Fossae(複数形)…地溝谷
  • Cavus…窪地
  • Dorsa…尾根

地名の日本語表記については、綴りをもとにアメリカ英語での発音と考えられるカタカナに直してあります。そのため、「タルタロスにちなむタータラス尾根」といった(タルタロスはギリシャ語およびラテン語発音)表記があります。また、表記についてはインターネット上を調べてなるべくすでに使われている表記に合わせましたが、中には日本語表記が見つからないものもあるため、実際のアメリカ英語の発音とずれている場合もあるかもしれません。ご了承ください。

また、惑星システム命名ワーキンググループ (WGPSN)のページによれば、冥王星の地形の命名規則は以下のようになっています。

暗い点、明るい点、溝 神話、民話及び文芸作品において、地下世界と関連付けられる神、女神及びそれらに関係したもの
窪地、尾根、湖のような平原 神話、民話及び文芸作品における地下世界の場所、場面
地溝谷、谷 地下世界の英雄及び探検者
クレーター、領域 冥王星及びカイパーベルト天体に関係する科学者・技術者
細長い地形、平原 革新的な宇宙探査ミッションの名前
山、崖 地球上、海や空など、新しい世界を切り開いてきた歴史上の探検家

地名は、惑星探査を行う上で欠かせないものです。ある場所について、例えばチーム内で「あの白い場所」「そこにみえる細長い黒っぽいもの」といっているだけでは、互いにどれを指しているかわからなくなる場合があります。正確にどの場所であるかを示すためには、その地形に名前をつけ、それを確定させることで、誰が呼んでも一つに定まるようにしなければいけません。

これらの名前は、ニューホライズンズの2015年7月の冥王星最接近以降提案されました。それまではチーム内で「仮に」つけられた名前で地形を呼び合っていました。ハート型の模様を「スプートニク平原」と呼んでいたりしたことは当時のブログ記事などにもまだ残っています。

今回はこれら14の地名が、IAUによって正式に冥王星の地名として認定されました。さらにチームではもっと多くの地名、さらには冥王星の衛星についての知名の提案も行われており、今後承認されていくものとみられます。
ニューホライズンズ計画の主任科学者であるサウスウェスト研究所のアラン・スターン氏は、「今回の命名は、冥王星とカイパーベルト天体という、太陽系でもっとも遠方の地の探査へと道を開いてくれた、多くの先駆的な人たち、及び宇宙探査計画に敬意を表するものである。」と述べ、その意義を解説しています。

IAUのWGPSNグループ長のリタ・シュルツ氏は次のように述べています。
「今回の命名が、冥王星にとって重要な人たち、重要な探査、そしてなんといっても地下の神話から取られたことは大変うれしい。多くの人たちが今回の命名に際して示唆を与えてくださったこと、さらにはニューホライズンズのチームがこの命名を提案してくれたことに感謝したい。」

シュルツ氏の中に「一般の人の」という言葉がありましたが、これは2015年、冥王星最接近後に行われた一般の人に向けたキャンペーン「私たちの冥王星」(Our Pluto)を指します。これはインターネットで冥王星にふさわしい名前を一般の人が提案できるキャンペーンです。ベネツィア・バーニーを始めとしたいくつかの神話に基づいた地名がこのキャンペーンからきています。
ニューホライズンズの冥王星地名命名ワーキンググループの座長でもあり、IAUとのリエゾン(交渉役)でもあったSETI研究所のマーク・ショウォルター氏は、「今回認定された地名のほとんどが最初から一般の方に強い推薦を受けていたものであったことは大変うれしい」と述べています。

「はやぶさ」のときもそうでしたが、基本的に新しい天体を探査したときには、その探査したチーム内で命名規則を考え、名前を提案していきます。今回も基本的にはニューホライズンズのチームが命名規則や名前を考えましたが、インターネットで一般の人の意見を募集するというのは新しい試みかと思います。
また、このあとにも冥王星やその衛星の名前が決定されていく見込みとのことで、これもどのような名前になるかが楽しみではあります。

そしてなんといっても、あの「はやぶさ」が冥王星の地名として永遠に刻まれるというのは、「はやぶさ」ミッションに関わった編集長(寺薗)としてもこの上もない喜びです。遠くはるかな地に、人類のフロンティアを押し広げたミッションによって発見された地形が、フロンティアを押し広げたミッションの名を冠する。それは人類が永遠にフロンティアを探求し続けることを意味しているといってもよいでしょう。

ニューホライズンズの旅はまだまだ続きます。そして、人類のあくなき宇宙への冒険の旅も、終わることはないでしょう。今回の冥王星への地名命名は、そのような私たちの営みの一つの印でもあります。

2017年9月9日(土)|Categories: ニューホライズンズ|

ニューホライズンズの2019年初頭のカイパーベルト天体最接近に向けた飛行計画がまとまる

冥王星・カイパーベルト天体探査機「ニューホライズンズ」のチームは、2019年1月1日(アメリカ現地時間)に最接近(フライバイ)し観測する予定のカイパーベルト天体「2014 MU69」について観測計画をまとめたと発表しました。

2014 MU69に最接近して観測を行うニューホライズンズの想像図

カイパーベルト天体「2014 MU69」に最接近して観測を行うニューホライズンズの想像図。この想像図では、先の観測によって示された、2014 MU69が2つの天体からなる可能性を考慮し、2つの天体の脇を飛行する形でイラストが描かれている。(Image: NASA/JHUAPL/SwRI)

今回の最接近が行われる場所は冥王星から約15億キロも離れており、地球からでは約65億キロも離れたところになります。これだけ離れた場所で天体を観測するのは史上はじめてのことであり、観測できればもちろん、ニューホライズンズ自身が持つ「最も離れた天体の接近観測」(冥王星最接近)の記録を塗り替えることになります。

今回まとめられた飛行計画では、ニューホライズンズは2014 MU69の脇、最短約3500キロメートルのところを通り過ぎます。
また、先日の観測でこの2014 MU69が2つの天体からなる可能性が示されたことから、万が一周辺に何らかの物体が漂っていて観測が危険な場合を考慮し、別プランとして、接近距離を約1万キロと、少し離れた(といってもかなり近いです)ところから観測するプランも提示されています。なお、両者どちらの場合でも、冥王星への最接近距離、約1万2500キロよりは近いことになり、冥王星のときに比べて表面の様子をよりはっきりと捉えられることが期待されます。
なお、この距離ですが、ご参考までに、例えば地球上空で通信や気象観測を行う通信衛星や気象衛星がとる軌道「静止軌道」は上空約3万6000キロです。ニューホライズンズはこれよりももっとはるかに近い高さを秒速数十キロメートルという猛スピードで通過しながら、手持ちの観測機器(主にカメラ)を作動させて天体を観測するというわけで、まさに「離れ業」です。

さて、いまカメラの話をしましたが、ニューホライズンズが搭載する、広い範囲を撮影できる広範囲観測カメラ(LORRI)では、最大解像度70メートルが見込めるそうです。冥王星のときは最大解像度が183メートルでしたので、ぐんと細かいことがわかるということになります。

飛行計画決定のために、チームは様々な要素を検討した上で検討を重ね、また科学メンバーも議論に参加しました。ニューホライズンズの科学グループのリーダーである、サウスウェスト研究所のジョン・スペンサー氏は、「現在のところわかっている2014 MU69の大きさや形、また考えうる危険性などについての考慮を行っている。さらに、この天体のすぐ近くまで接近して非常にシャープでくっきりとした写真を撮影する挑戦や、探査機の燃料などの残された条件など、数多くの要素が検討の中に入っている。」と述べています。

ニューホライズンズのプロジェクトマネージャーである、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のヘレネ・ウインターズさんは、「2014 MU69に到達すれば、私たちはまさに文字通り全く新たな世界を目撃することになる。もちろん探査としても大きな金字塔を打ち立てることになるだろう。まさに誰も行ったことがないところへ我々は行こうとしているのだ。チーム一丸となって、この遥か彼方のフロンティアを垣間見るという新しい挑戦にワクワクしている。」と述べて、この最接近に大きな期待を寄せています。

ニューホライズンズの主任科学者であるサウスウェスト研究所のアラン・スターン博士は、「冥王星最接近の時よりももっと近い距離を飛行することで、今回はより高い解像度の画像が得られると期待される。そこから得られる科学的成果はまさに目を見張るものとなるだろう。」と、科学的成果への期待を述べています。

さらに、NASAの月惑星探査部門長であるジム・グリーン氏は、「もう一度ニューホライズンズがその最高の機能を発揮してくれることにいまから興奮を抑えきれない。このミッションは私たちの限界を日々押し広げつつある。これまで探査機が訪れた中でもっとも離れたこの天体からの画像、そしてデータが到着することが待ち遠しい。」と述べています。

最接近まではまだ1年3ヶ月ありますが、確かに「興奮を抑えきれない」感じがします。と同時に、これだけまだ先の計画でも、しっかりと計画を練って備えを万全にしているチームメンバーの働きには敬意を表したいと思います。編集長(寺薗)もこの最接近で何がみえるのか、ワクワクしながら待ちたいと思います。

2017年9月8日(金)|Categories: ニューホライズンズ|