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オポチュニティについて知るべき6つのこと

残念ながら運用終了となってしまった火星ローバー「オポチュニティ」。その歴史と意義については別の記事をご参照いただくとして、ここではビジュアル中心に、オポチュニティに関する6つの事実について述べていきましょう。

オポチュニティが撮影したエンデバー・クレーター

オポチュニティが撮影したエンデバー・クレーター。クレーターの西の縁から振り返って撮影。ローバーは南を目指して進行している。2014年夏撮影。
(Photo: NASA/JPL-Caltech/Cornell/ASU)

1. オポチュニティは双子である

「スピリット」と「オポチュニティ」の比較

「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」の2台のローバー、「スピリット」と「オポチュニティ」の比較。左側がスピリットの成果、右側がオポチュニティの成果。2019年2月4日現在(但しミッション終了時も変わらず)。
Photo: NASA/JPL-Caltech

探査をよく知る方であれば、オポチュニティは2つのローバーのうち1つであることをご存知かと思いますが、ご存じない方も多いかも知れません。
オポチュニティはもう1台のローバー「スピリット」と共に、火星を探査するために打ち上げられました(打ち上げ日は異なります)。両者をまとめたミッション名が「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」です。
オポチュニティ・スピリット共に、同一の機構を持ったローバーです。

この両者を比較した数値を並べたのが上の絵です。英語なので日本語で簡単に解説しましょう。なお、左側がスピリット、右側がオポチュニティの成果です。

<スピリットの成果>

  • ミッション期間…約6年
  • 写真撮影枚数…12万4838枚
  • 総走行距離…4.8マイル(約7.7キロメートル)
  • 最大登はん斜度…30度

<オポチュニティの成果>

  • ミッション期間…約14年
  • 写真撮影枚数…21万7594枚
  • 総走行距離…28マイル(約45キロ)
  • 最大登はん斜度…32度

スピリットは2011年5月にミッション終了が宣言されていますが、それよりも早く動けなくなったタイミングをミッション期間としているようです。

いずれにしても、2台のローバーが達成した成果はこの簡単な数字だけをみてもすごいものがあると思います。

2. オポチュニティとスピリットは、火星がかつて液体の水が多い環境であることを実証した

オポチュニティが発見した鉱物粒

オポチュニティが発見した鉱物粒。その色と形から通称「ブルーベリー」と呼ばれるこの鉱物はヘマタイトというものであることが判明。水によってできる鉱物であることから、火星がかつて水に富む環境であることが明らかになった。ファーム・クレーター近くにて2004年4月にオポチュニティが撮影。
(Photo: NASA/JPL-Caltech/Cornell/USGS)

2台のローバーの最大の成果は、なんといってもこれでしょう。

もともとこの2台のローバーは、火星に水があるのか、あればどのくらいの量なのかを調べるということが最大の目的でした。そして、ミッション開始から3ヶ月も経たないうちに、その最大の証拠を発見することになったのです。
それが、この写真にある丸い玉でした。

写真では大きそうにみえますが、直径は数ミリ程度です。この形状から「ブルーベリー」と研究者の間で呼ばれるようになりました。
この「ブルーベリー」ですが、内部を分析したところ(このローバーは写真撮影だけでなく、分析できる装置を持っていた、というところもポイントです)、赤鉄鉱(ヘマタイト)と呼ばれる鉱物が内部に存在することがわかりました。赤鉄鉱は地球上では鉄鉱石の原料としてよく出てくるもので、その成因として、湖のような場所、あるいは鉱泉のような場所で生成されます。その成因を考えると、火星でこのような鉱物がみつかるということは、かつて湖…つまり、液体の水が存在していたことを示すわけです。

スピリットとオポチュニティは、ほかにも水が存在する数多くの証拠を発見しています。
例えば、「堆積岩」と呼ばれる種類の岩を地球以外ではじめて発見しています。堆積岩は、元の岩石が風化してできた砂や岩などが水中で堆積し、それが地中の圧力を受けることでできる岩で、その存在はとりも直さず水の存在を意味します。オポチュニティの観測では、この堆積岩は一時的な湖のような場所で堆積したものではないかと考えられます。

さらにオポチュニティは石膏の岩脈を発見しています。石膏もまた、地球上ではごくありふれた鉱物ですが、これは実は塩分を含んだ水(端的にいえば海水です)が干上がることで生じるものです。石膏の岩脈は、そういった水が岩のすき間に入り込んでいたことを示す証拠といえます。

まだあります。オポチュニティは、エンデバー・クレーター内で中性のpH(ペーハー)を示す粘土鉱物をみつけています。粘土鉱物は、岩石が水の作用を受けて風化され、細かくなってできるものです。しかもそれが酸性でもアルカリ性でもなく中性ということは、いわゆる飲料水のような中性の(実際の飲料水はpH値が6〜8程度。7が中性です)水が存在していたことを示します。

こうして2台のローバーは、火星がかつて水に富む環境であったことをはっきりと示す証拠を多数みつけ出してきたのです。

3. オポチュニティは数多くの記録保持者

オポチュニティによるパノラマ撮影

オポチュニティによるパノラマ撮影。火星到着から2470火星日に撮影(2010年10月31日)。
(Photo: NASA/JPL-Caltech/Cornell)

約15年にわたって活動を続けてきたオポチュニティ。その活動の長さも記録ではありますが、ほかにもいくつかの記録もあります。
火星表面の総走行距離は45.16キロメートル。これは地球外を走行した人工物としては最長の記録です。2014年に達成しました。
ちなみに、当初の予定は90日間活動することでした。オポチュニティはその60倍にもわたって活動を続けたことになります。

4. オポチュニティは「小さいけどできるやつ」だった

「ピリンガー・ポイント」のパノラマ写真

オポチュニティが撮影した、「ピリンガー・ポイント」という場所のパノラマ写真。エンデバー・クレーターの西の縁にある。表面の様子を見やすくするため、色を若干変えて強調する「フォールスカラー処理」が行われているため、実際の色と若干違うことに注意。
(Photo: NASA/JPL-Caltech/Cornell/ASU)

オポチュニティが14年間も活動できたのは、決してミッションが簡単だったからではありません。むしろそのミッションは困難の連続でした。例えば、右前輪がほかの車輪よりも多く回転することがしばしばで、そのため技術者がローバーを後ろ向きに走行させて右前輪の寿命を伸ばすようなことも強いられたりしました。

写真をみればおわかりの通り、火星の表面は決して「走りやすい」なんてものではありません。だいたい舗装されているわけがありません。岩だらけ、砂だらけ、しかもクレーターであれば急傾斜もあります。こんな過酷な環境を、14年間にわたり、オポチュニティは1人(?)で走り続けてきたわけです。

ローバーはイーグル・クレーターというクレーターの中に着陸しました。これを当時は「ホール・イン・ワン」と呼んだりしたものですが、その喜びもつかの間、このクレーターからの脱出が大変でした。
ローバーの車輪はクレーターからはい上がる際にスリップを繰り返し、これに対応するため、ローバーの運用者は特別な運用法(運転法)を編み出す必要に迫られました。そしてこの方法は別のクレーター、エンデュランス・クレーターからの脱出にも使われました。このクレーターから脱出する際、クレーターの縁の壁の傾斜は31度にも達していました。一口に31度といいますが、実際に地球上で31度の坂に出会ったら、それが舗装されていてもものすごい急坂であることはおわかりでしょう。火星の岩と砂だらけの環境での31度の坂への挑戦がいかに大変なものか、ご想像いただけるでしょうか。

2005年4月26日、オポチュニティは車輪を風で堆積した柔らかい砂にとられ、動きが取れなくなります。数週間にわたり「パータゴリー砂丘」と名付けられたこの場所で、オポチュニティは進退窮まる状態となってしまいました。そこで技術者は、探査機を運用するジェット推進研究所(JPL)内に同様の砂を入れた砂箱を作り、そこでテストを繰り返し脱出方法を練りました。最終的にローバーは振動を繰り返すことで脱出に成功します。

オポチュニティを襲った危機の中でも最大のものは砂嵐でしょう。砂嵐が起こると太陽光がさえぎられ、オポチュニティの運用に必要な太陽光が得られなくなってしまいます。2007年に発生した砂嵐の際には、活動を最低限に絞った上でバッテリーの消耗を最小限に抑え、嵐が終わるのを待ちました。しかし2018年の全球規模の砂嵐を乗り切ることは結局はできませんでした。オポチュニティは1ヶ月近くも暗闇の中に閉ざされ、これがエネルギーを奪い、通信途絶の原因となりました。

5. オポチュニティとスピリットは、美しい火星の画像をたくさん送ってきた

オポチュニティが捉えた塵旋風

オポチュニティが捉えた塵旋風。オポチュニティは、「マラソン谷」の南側の縁の一部を構成する「クヌーセン尾根」に向けて登ろうとしているところで、後ろを振り返って撮影している。
(Photo: NASA/JPL-Caltech)

スピリットとオポチュニティの写真が何となく「等身大」の感じがあるのは、おそらく、そのカメラの位置(アイポイント)が人間の目の高さと大きく変わらないということもあるのではないでしょうか。
2台のローバーは、そのカメラで火星の美しい風景をたくさん撮影しました。

2台のローバーが撮影し、地球に送信した写真の総数はなんと34万2000枚にも上ります。さらに、これらは全て撮影後速やかに一般に公開されました。科学者だけでなく、一般の人も、火星表面の写真をすぐに入手することができたのです。インターネット時代の探査であったからとはいえ、これは本当に画期的なことでした。
2台のローバーは、さらに31枚もの360度パノラマ写真を撮影しています。

6. オポチュニティとスピリットの物語は、これからも続く

オポチュニティの轍

オポチュニティが自身のナビゲーション用カメラで撮影した自身の轍。2010年8月4日撮影。
(Photo: NASA/JPL-Caltech)

オポチュニティとスピリット、2台のローバーの成功により、NASAの火星探査計画は劇的な復活を遂げました。
NASAはその前、1998年と1999年に、相次いで2機の火星探査機「マーズ・クライメイト・オービター」と「マーズ・ポーラー・ランダー」を失ってしまいました。2001年に火星に到着した「2001マーズ・オデッセイ」に続き、7年ぶりに火星に送り込まれた2台のローバーは、火星の探査を順調に行うと共に大きな成果を挙げ、アメリカの火星探査計画の進展を後押しします。

ローバーもその後大きな進展を遂げます。2012年に火星に到着した「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(キュリオシティ)は、まさにその英語の名称の通り、「動く火星実験室」として、オポチュニティとスピリットを上回る装備を持ち、火星表面の岩石などをより詳しく探査できるようになりました。
そしてさらにその後輩…オポチュニティとスピリットからいえば「孫」というべきでしょうか、次の大型ローバーが2020年に打ち上げられる予定です。この「マーズ2020」ローバー、そしてキュリオシティも、オポチュニティとスピリットが残した経験や教訓、実績を元に設計・製作されています。この2台のわだちの上を、後輩にあたる2台のローバーが進んでいるといえるでしょう。

そして、オポチュニティとスピリットという2台のローバーのミッションは、何百人という技術者や科学者を育てました。こういった人材は、将来の火星探査計画に置いて重要な役割を果たすことでしょう。いや、火星探査だけでなく、他の月・惑星探査計画でも、その経験をいかんなく発揮し、新しい知識、新しいデータをもたらしてくれるはずです。

2台のローバーの運用は終わりましたが、彼らが残した伝説は、次の時代、次の世代へと引き継がれていきます。

2019年2月14日(木)|Categories: マーズ・エクスプロレーション・ローバー|

火星ローバー「オポチュニティ」ミッション終了、15年の活動に幕

2003年に打ち上げられ、2004年に火星に到着、火星表面で活動を続けてきたローバー「オポチュニティ」が、ミッションを終了しました。当初の90日という予定を大幅に超える、約15年間にわたる活動を終えることになりました。

火星探査ローバー「オポチュニティ」

マーズ・エクスプロレーション・ローバーのうちの1台「オポチュニティ」。もう1台のローバー「スピリット」も同じ形。
(Photo: NASA/JPL-Caltech)

オポチュニティは、昨年(2018年)6月10日より、地球との交信ができない状態となっていました。当時、火星では全球を覆う激しい砂嵐が発生しており、その影響を受けて太陽電池の発電量が低下、そのままローバーの機能が回復できない状態に陥った可能性があります。
上のローバーの絵をみるとわかりますが、テーブルのように水平に設置されている太陽電池は砂が上にたまりやすい構造です。90日のミッションを想定していたのでこれでも十分と判断したわけですが、これがとんでもなく長く生き延びられたのは、火星の朝晩の気温差によるつゆがこの太陽電池の上に降り積もるチリを洗い流したり、火星の風が砂を吹き飛ばしたりしたためと考えられています。しかし、今回発生した巨大な砂嵐によって、それではとても除去できない量の砂が太陽電池の上に積もり、結果的に発電量が低下、通信が不能になった可能性が考えられます。もちろん、15年も経過したローバーですから、電池や各種機能に老朽化の影響があったことも否定できないでしょう。

NASAでは通信途絶後、8ヶ月をかけて1000回以上にわたってオポチュニティとの通信を試みましたが、全て失敗に終わりました。そして12日(アメリカ現地時間)、探査機を運用するジェット推進研究所(JPL)の宇宙フライト運用施設(SFOF: Space Flight Operations Facility)の技術者たちが、最後となる交信を試みましたが、オポチュニティからの信号はありませんでした。
これ以上の回復試行は無理と判断し、NASAとしてはオポチュニティの運用終了を決定したことになります。これで、15年(最後の交信が2018年6月10日でしたから、そこまでを考えれば14年半)にわたるオポチュニティの長い長い活動に、幕が降ろされました。
最後の交信は、NASAの深宇宙通信網(DSN)の1つ、カリフォルニア州にあるゴールドストーン通信所にあるアンテナから行われました。

マーズ・エクスプロレーション・ローバーのプロジェクトマネージャーであるジョン・カラス氏は、「我々はオポチュニティを回復させるためのあらゆる技術的な努力を傾け、このたび、(オポチュニティからの)信号を受け取る可能性が、これ以上努力を続けたとしても極めて低いと判断した。」と結論づけました。

オポチュニティについて振り返ってみましょう。
オポチュニティがアメリカ・フロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられたのは今から16年前、2003年7月7日でした。この年は「6万年に一度」ともいわれる火星大接近が話題になり、そのこともあってこの火星探査機が大きな話題になったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。月探査情報ステーションが、月探査以外の話題としてはじめて火星を選び、「火星・赤い星へ」というコーナーを設けたのもこの年です。

約半年間の飛行ののち、オポチュニティは翌2004年1月25日に火星に着陸しました。着陸した場所は、メリディアニ平原という、火星の赤道付近にある平原地帯です。ここはかつて水が存在した痕跡があり、水、あるいは生命につながる手がかりが得られるのではないかということで着陸地点に選ばれました。もちろん、比較的平坦で着陸に適しているということも選択の理由ではありました。
なお、同時に打ち上げられた双子ローバーである「スピリット」は、火星の反対側に位置するグセフ・クレーターに着陸しています。
着陸に際しては、探査機をエアバッグで包み、バウンドしながら着陸するというユニークな手法が採用されました。

火星の上でローバーを走らせるということは、決して簡単なことではありません。
それまで火星の上を走ったローバーは「マーズ・パスファインダー」だけでした。こちらは非常に小さいローバーで、運用範囲も限られていました。それよりも大きな、重さ174キロもあるローバーを動かすということはまさに大きな挑戦だったわけです。
そのため、NASAのエンジニア、科学者、ローバー運用担当者が一丸となってこの難題へ挑むことになりました。当時の記録をみると、みんな火星時間に合わせて出勤し、退勤する(火星の1日は24時間37分ですので、地球時間と少しずつずれていきます)生活を送っていたとのことで、いかに努力していたのかが伺えます。

ローバーですから、一点にとどまることなく、あちこちに向かって走り、その場所で調査を行わなければなりません。しかし、途中にはローバーにとって決して条件がいいとはいえない場所もあります。道順も効率よく選ばなければなりません。そして地球との時間差(光の速度で10分以上の時間差があります)も考える必要があります。安全で効率がよいルートを選んだ上で、それをオポチュニティに覚えさせて動かす。特にはじめの頃はトラブルもいろいろありました。
そのうちローバー運用にも習熟してきますと、運用メンバーはいろいろなチャレンジも行いました。32度もある石だらけの斜面を登ったり(地球外におけるローバーの登攀記録)、クレーター内部に入り込むという危険な挑戦を行ったり(斜面を滑る途中で転倒したり、車輪が滑って登れなくなったりすればそこでローバーが立ち往生してしまいます)、丘を登ったりと、様々な挑戦をオポチュニティは行ってきました。

オポチュニティが最後に挑んでいたのは、パーシビランス谷(Perseverance Valley)の西側の縁でした。それについてJPLのマイケル・ワトキンス所長はこう振り返っています。
「パーシビランス谷よりもオポチュニティにとって適していた場所を私は思いつかない。この小さいながらも勇敢なローバーが成し遂げた数多くの記録や発見、そして不屈の粘り強さは、このローバーを開発し、適切に運用した人々の創意工夫、献身的な努力、そして忍耐力(perseverance)の賜物といえるだろう。」

オポチュニティはもともと、90日(3ヶ月)間、約1000メートル(1キロメートル)動くことを想定して設計・製造されていました。
しかし実際には、その当初予定をはるかに上回り、約14年間(2018年6月の通信途絶まで)にわたって動き続けました。当初予定の60倍にあたります。移動距離は45キロメートルにわたり、これは他の天体の上を動いたローバーの移動距離としては最長記録です。

オポチュニティの影

火星探査開始後180日目(2004年7月26日)に撮影された、オポチュニティの影。搭載されている障害物検知カメラで撮影。ローバーは当時、メリディアニ平原をエンデュランス・クレーターへ移動中。 (Photo: NASA/JPL-Caltech)

ここで、オポチュニティが成し遂げた記録をいくつかみてみましょう。

  • 1日での火星移動距離の記録。220メートル。2005年3月20日に記録。
  • 21万7000枚の写真を撮影。15枚の360度パノラマ写真を含む。
  • 52個の岩石の表面を詳細に観察。さらに内蔵の研磨装置を利用し、72個の岩石についてスペクトロメーター、顕微鏡での観察を実施(火星でのその場岩石研磨観測は世界初)
  • ヘマタイトという鉱物を発見。ヘマタイトは水が関与してできることがわかっている。
  • エンデバー・クレーター内で、火星の太古の時代に淡水(飲料水に近いもの)の池あるいは湖が存在した可能性が高いという強力な証拠を発見。

オポチュニティ、そして双子ローバーであるスピリットは、火星にある岩石を詳細に調べることができる装置を積んでおり、それがこの探査の目的の1つでもありました。それは、火星の過去の環境がどのようなものであったかを知ること、そして水が存在していたか、もししていたのならそれがどのくらいであったかを知ることが目的です。それらは、過去、火星が生命を育むのに十分な環境であったかどうかを知る(そしてもしかすればその生命が今でも生き延びているかも知れない)という期待にもつながっていきます。
オポチュニティの観測で、着陸したメリディアニ平原は、かつて水が多く存在し、生命を育むのに適切な環境であったことがわかりました。

マーズ・エクスプロレーション・ローバーの科学機器の主任研究者である、惑星科学者でコーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ教授は、「探査の最初から、オポチュニティは水に関する証拠をもたらしてくれた。オポチュニティとスピリットがもたらしてくれた発見をつなぎ合わせると、太古の火星は現在の火星…乾燥して寒冷で、荒涼とした世界とは全く違う環境であったことが明らかとなった。しかし古代の火星に目を向ければ、液体の水が地下、そして表面に存在したという明らかな証拠がある。」と述べています。
2台のローバーの探査がなければ、こういう「火星における液体の水の存在」の証拠、それもダイレクトな証拠をつかむことはできなかったでしょう。

ただ、オポチュニティが決してずっと順調に探査を進めていたわけではありません。むしろ、オポチュニティは数多くの困難に直面し、それを乗り越えて探査を継続してきたのです。
2005年だけでも、オポチュニティはまず前輪のうち1つを失い、発生電力が原因不明の減少を起こし、砂嵐によってできた砂溜まりに突っ込んで危うく動けなくなるトラブルを起こしました。月探査情報ステーションのアーカイブに残されている当時の記録をお読みいただければ、実際本当にハラハラドキドキの探査であったことがわかります。

2007年には2ヶ月にわたる砂嵐のため運用が危ぶまれたことがありました。2015年には搭載されている256メガバイト(256ギガバイトではありません。メガバイトです)のフラッシュメモリが使えなくなり、2017年にはとうとうもう片方の前輪の操縦ができなくなりました。

困難が発生するたび、地球の運用チームはローバーを再び運用できるようにする方策を編み出し、それは実際全て成功してきました。しかし、2018年の巨大な砂嵐は、ついにこのオポチュニティにとっての致命傷となってしまったのです。
こうして、オポチュニティの15年にわたる(実稼働期間は14年強)活躍は終焉を迎えました。

「オポチュニティのことを思うとき、私はこの頑強なローバーが、皆が思っていたよりもはるかに遠いところに赴いた、その場所のことを思い出すだろう。しかし、私がいちばん心にしまっておきたい思い出は、オポチュニティが地球上にいる私たちにもたらしてくれた効果だ。非常に大きな成果が得られ、驚くべき発見が成し遂げられた。それを支えたのは、このミッションによって育っていった若い科学者、技術者たちだ。一般の人たちと一緒に探査の1つ1つの道のりを歩んでいったということも忘れてはならない。マーズ・エクスプロレーション・ローバーの技術的な遺産は、すでに火星での活動を精力的に行っているマーズ・サイエンス・ラボラトリー『キュリオシティ』に引き継がれ、さらに来年打ち上げ予定の『マーズ2020』に引き継がれていくことだろう。」(カラス氏)

そうです。火星ローバーはこれで終わりではありません。
2012年に火星に到着した「キュリオシティ」は、現在精力的に火星表面での探査を継続しています。すでに到着から6年半も経過していますが、現在も着陸点のゲール・クレーター周辺の調査を行っています。
昨年11月には、火星内部構造を調べるという初の探査機「インサイト」が火星に無事到着・着陸しました。
そしてカラス氏の言葉にある通り、来年、2020年7月には、新たな火星探査ローバー「マーズ2020」の打ち上げが予定されています。なお、この同じ7月には、ヨーロッパとロシアが共同で行っている探査「エクソマーズ」のローバーと周回機の打ち上げも予定されています(エクソマーズの大気観測周回機および着陸実証機は2016年に打ち上げ。周回機は探査中。着陸実証機は着陸に失敗)。
マーズ・エクスプロレーション・ローバーの経験を踏まえ、「後輩」たちが次々に火星に向かい、さらに新しい発見を成し遂げていくことになるでしょう。

「10年以上にもわたって、オポチュニティは惑星探査におけるシンボルであった。私たちに、火星は過去水が豊富に存在し、生命の存在が可能であったことを教えてくれ、これまでみたこともなかった火星の景色を私たちの眼前に届けてくれた。オポチュニティは失われたが、私たちはオポチュニティによって得られた経験を次に活かしていく。それはキュリオシティであり、インサイトである。そして、JPLのクリーンルームでは、マーズ2020が打ち上げを待っている。」(NASA科学ミッション部門担当副長官のトーマス・ザブーチェン氏)

そして、最後にNASAのブライデンスタイン長官の言葉で締めくくることにしましょう。

「オポチュニティのような先駆的な探査があるからこそ、私たちは将来、火星表面で勇敢なる宇宙飛行士が歩く姿をみることができるようになる。そしてその日がやって来たとき、最初の足跡の一部は、過去に例のない、そして非常に多くのことを成し遂げた小さなローバー、オポチュニティに携わった人々のものでもある。」

2019年2月14日(木)|Categories: マーズ・エクスプロレーション・ローバー|

NASA、火星ローバー「オポチュニティ」と最後の交信へ

NASAは12日(アメリカ現地時間)、昨年6月より行方不明になっている火星探査ローバー「オポチュニティ」と最後の交信を試み、その結果を13日(同)に記者会見を行って発表すると発表しました。

火星探査ローバー「オポチュニティ」

マーズ・エクスプロレーション・ローバーのうちの1台「オポチュニティ」。もう1台のローバー「スピリット」も同じ形。
(Photo: NASA/JPL-Caltech)

「オポチュニティ」は、2003年に打ち上げられた2台のローバー「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」の1台です。もう1台の「スピリット」(spirit)は2011年に活動を停止しています。

2台のローバーは2003年6月に打ち上げられ、2004年1月に火星に到着、活動を開始しました。
本来の寿命は90日のはずだったのですが、どういうわけか2台とも90日を過ぎ、1年、2年…を経過しても順調に活動を続けました。活動が90日と予想(予定)されていたのは、火星の大気中のチリがローバーの太陽電池に降り積もり、発電を不可能にして最終的に動作不能になると予想されていたからですが、おそらく火星の朝晩の気温差によって発生する露がこのチリを洗い流し、太陽電池をずっと動作可能としていたと考えられます。

到着直後の2004年3月には、火星表面にかつて水が存在した直接的な証拠を発見、生命が存在した(する?)可能性を大きく広げました。
2台のローバーはその後も活動を続け、火星表面を精力的に探査しました。しかし、もともと90日の動作を想定していたローバーですから、何年も経過するにつれて劣化が徐々に進んでいきました。

2011年3月を最後に、2台のうち「スピリッツ」と交信が途絶、NASAは2011年5月24日、スピリットの運用終了を発表しました
残るオポチュニティはその後も問題なく活動を続けていました。しかし昨年(2018年)に発生した火星全球規模の大規模な砂嵐の影響を受け、6月から通信ができない状態になっていました。
NASAはその後も通信回復作業を続けてきましたが、今回が最後のチャレンジとなります。半年以上にわたって通信が回復しないことに加え、すでに14年も経過していることから、老朽化により回復が難しいと判断しているものとみられます。

NASAによる最後の通信は12日夜(アメリカ現地時間)に行われ、その結果は翌13日午後2時(アメリカ東部現地時間。日本時間では14日午前4時)に開催される記者会見で発表されます。

なお、記者会見の出席者も発表されています。その中には、NASAのブライデンスタイン長官や、探査機を運用してきたジェット推進研究所(JPL)のマイケル・ワトキンス所長、マーズ・エクスプロレーション・ローバーのプロジェクトマネージャーであるジョン・カラス氏など、そうそうたるメンバーが並んでいます。長官までが出席するということで、この記者会見では、(残念ではありますが)ミッション終了を宣言するとともに、マーズ・エクスプロレーション・ローバーによる功績を振り返る場となるのではないかと考えられます。もちろん、交信が回復するいちるの望みを持つことも必要であり、そうなればまた異なった内容の発表になることはもちろんです。

また、記者会見には、来年打ち上げ予定のアメリカの大型火星探査ローバー、マーズ2020のプロジェクトマネージャー、ジェニファー・トロスパー氏が出席することになっています。記者会見の場は、過去・現在・未来の火星ローバー探査をつなぐ場となるのかもしれません。

6月から行われている交信の試みが未だ成功していない中、今回の最後の交信で成功するという劇的な「大逆転ストーリー」は、期待したいものの非常に望み薄とはいえるでしょう。とはいえ、希望は捨ててはなりません。そして仮に交信ができず、運用終了となったとしても、14年に渡るオポチュニティの成果は現時点でさえ大きなものといえるでしょう。
まさに最後の願いをかけた交信の試みに期待したいところです。

 

 

2019年2月13日(水)|Categories: マーズ・エクスプロレーション・ローバー|

日本惑星協会、「はやぶさ2」応援メッセージ企画「運用チームへの宅配便」を開始

日本惑星協会は、「はやぶさ2」運用チームへの応援メッセージ送付企画「はや2ホットライン 運用チームへの宅配便」を、1月29日から開始しました。2月11日まで実施する予定です。

人工クレーターにタッチダウンする「はやぶさ2」

「はやぶさ2」に搭載された衝突装置によって形成されたクレーターにタッチダウンする「はやぶさ2」の想像図 (出典: JAXAデジタルアーカイブス、© 池下章裕)

延期されていた小惑星への第1回タッチダウン・試料採集が、間もなく、2月第4週(18日の週)に実施される予定です。これを前に、日本惑星協会では、「はやぶさ2」運用チームへの応援メッセージを募集し、それを取りまとめた上でチームへと届けます。
取りまとめとお届けを担う「お届けがかり」は、日本惑星協会(アウトリーチ・惑星科学教育推進チーム)、毎日新聞社大正製薬の3者が担います。
大正製薬…と不思議に思われた方は、ぜひ月探査情報ステーションのページをお読みくださいね。実は大正製薬さんと「はやぶさ」、そして「はやぶさ2」には深いご縁があるのです。そして、月探査情報ステーションをパートナーとしても支えてくださっています。

以下のページから、100文字以内でメッセージをご記入下さい。主な注意点としては以下が挙げられます。

  • メッセージは、社会的妥当性が認められる内容をお願いします。妥当性が認められないと判断したメッセージは対象と致しません。
  • メッセージの内容は、国内報道機関等に提供させて頂く場合があることを、あらかじめご了承ください。
  • この活動は、「はやぶさ2」プロジェクトについて TPSJ が一般の皆様を対象としたアウトリーチ支援になります。このため、プロジェクト側に直接送られたメッセージは対象になりません。メッセージは、プロジェクト側に直接送られても適用できません。

編集長(寺薗)も日本惑星協会のカウンシラーであり、本企画に全面的に協力します。
考えてみれば、14年前、初代「はやぶさ」運用に関わっていたとき、あまりの困難さや過酷なスケジュールに心身ともにくじけそうになっていた私たちを奮い立たせてくれたのは、多くの方々から寄せられた応援メッセージでした。
「はやぶさ2」は初代よりはるかに順調とはいえ、岩だらけの小惑星リュウグウへのチャレンジは決してたやすいものではありません。皆さんの応援がミッションを動かす力になります。ぜひ皆様、メッセージをお寄せ下さい。

2019年1月31日(木)|Categories: はやぶさ2|

ニューホライズンズ、人類史上最も遠くでの天体探査に成功、速報写真も届く

2019年1月1日、NASAの探査機「ニューホライズンズ」は、カイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」への最接近(フライバイ)に成功、地球から65億キロも離れた天体の探査に成功しました。人類史上はじめて、カイパーベルト天体の直接探査に成功したことになります。そして、人類史上最も遠い、天体の直接探査を成功させたことになります。
(「最も遠い天体」ではなく、「最も遠い、天体の直接探査」です。読点「、」が重要です。)

「ウルティマ・トゥーレ」に最接近するニューホライズンズ探査機の想像図

カイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」に最接近するニューホライズンズ探査機の想像図
(Photo: NASA/JHUAPL/SwRI)

ニューホライズンズは、2019年1月1日午前0時33分(アメリカ東部標準時。日本時間では同日午後2時33分)、カイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」に最接近、そばを通り過ぎながらの探査(フライバイ)を行いました。
カイパーベルトとは、海王星の先に広がる領域で、この領域に冥王星を含めたやや大きめの天体が多数存在することが、1990年代以降観測により実際に確かめられ、太陽系の誕生の謎などとの関連で注目を浴びてきました(詳細はニューホライズンズのページにある「ウルティマ・トゥーレとは」をご参照下さい)。今回このカイパーベルトにある天体を直接探査することで、これまで望遠鏡でも点にしかみえず、正体が謎とされてきたカイパーベルト天体を解明できるのではないかと期待されています。

ただ、先ほど申しました通り、とにかく遠い天体への探査です。65億キロ先の探査機からのデータを受信するためには、光の速度をもってしても6時間以上かかります。
ニューホライズンズ探査機の運用を行っているジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(JHUAPL)では、探査機からのシグナルを1月1日の午前10時29分(アメリカ東部標準時。日本時間では1月2日午前0時29分)に受信しました。

ニューホライズンズのプロジェクトマネージャーで、サウスウェスト研究所のアラン・スターン博士は、「本日(1月1日)、探査機は所定の動作を実施し、史上最も遠くでの直接探査を成功させた。太陽から65億キロ(原表現では「40億マイル」)も離れた天体だ。すでに我々のところに届いているデータはすばらしいものだ。ウルティマ・トゥーレについて、我々はすでにすぐ近くからいろいろなことを学びつつある。今後、データはよりよいものになっていくだろう!」と、探査を成功させた安心感と自身の中にも若干興奮をにじませたコメントをしています。
最後の「今後データがよりよくなる」は若干の補足が必要でしょう。
繰り返しますが、ニューホライズンズは我々から65億キロも離れたところにいます。ここから地球へ送られる電波は、地球に到達する頃にはものすごく弱くなっています。このため、通信速度が極めてゆっくりになってしまうのです。
そこで、ニューホライズンズでは、まず速報的なデータだけを送り、その後ゆっくり、最接近当時に撮影したデータや科学データなどを時間をかけて送ってきます。冥王星への最接近の際も同様で、全てのデータが送られてきたのは最接近から1年3ヶ月後の2016年10月27日でした。今回は冥王星よりより遠くにおり、探査の内容上データ量は若干少ないと思われますが(冥王星探査の際には冥王星の衛星カロンなども撮影しています。また、冥王星はウルティマ・トゥーレより大きな天体です)、それでも全てのデータの送信には20ヶ月(2年弱)かかるのではないかとみられています。
ともかくも、じっくり待ちましょう。

今回ニューホライズンズは、ウルティマ・トゥーレに約3500キロメートルまで近づき、接近している間に写真を撮ったり、科学データを取得したりしています。
もちろん最接近の前後にも科学観測は行っています。
その成果の1つが、以下の写真です。

最接近時のウルティマ・トゥーレの写真

現時点で最もウルティマ・トゥーレ全体の状況をよく表している写真。ニューホライズンズ探査機に搭載された広範囲観測カメラ(LORRI)によって撮像された写真2枚をつなぎ合わせたもの。長さは約32キロ(原文では20マイル)、幅は16キロ(原文では10マイル)と推定される。
右側はウルティマ・トゥーレの自転のイメージ。赤い矢印が自転の方向を示している。
Photo: NASA/JHUAPL/SwRI; sketch courtesy of James Tuttle Keane

これは、ウルティマ・トゥーレの全体像を表す現時点で最良の写真です。かなりぼんやりとした姿しか写っておりませんが、「現時点」ではここまで。
それでもいろいろなことがわかります。まず、全体の大きさは、長さが約30キロメートル(原文では「20マイル=約32キロ」)、幅が約15キロ(原文では「10マイル=約16キロ」)というサイズであることがわかります。
また、以前から観測で指摘されていたように、全体が「鉄アレイ」あるいはピーナッツのような、2つの丸い天体がくっついた形をしていることがわかります。以前指摘されていた、2つの天体からなる連星系という可能性はなくなったようです。
また、自転軸が下を向いている、つまり、自転が逆方向であるということもわかりました。自転がわかったのは、接近しながら連続写真を撮影したからです。

ウルティマ・トゥーレの自転

ウルティマ・トゥーレの自転の様子を連続写真で表したもの。3枚の写真を使っている。2018年12月31日に受信したデータ。撮影は広範囲撮像カメラ(LORRI)で、ウルティマ・トゥーレとの距離は約110〜135キロメートル(原文では「70〜85マイル」)。
Photo: NASA/JHUAPL/SwRI

ものすごく小さな写真ですが、ウルティマ・トゥーレの自転がこれでわかります。今後より詳細な画像が地球に届けば、より詳細な自転の様子がわかり、自転時間やより正確な自転軸の傾きなどもわかるでしょう。
また、この写真から、ウルティマ・トゥーレの謎の1つが明らかになりました。
一般的に、天体の自転時間を決める際には、明るさの変化をみます。例えば「はやぶさ2」の目的地である小惑星リュウグウに関しては、この手法によって、地上からの観測で自転時間が7時間37分と極めて正確に決められました。ところが、ウルティマ・トゥーレは、遠くから探査機などによる観測を行っても、明るさがほとんど変わらないのです。
これは、自転軸が実はニューホライズンズ探査機の方向を向いていたためとわかりました。ちょうど飛行機のプロペラのようなもので、これでは明るさの変化は期待できません。

ニューホライズンズの快挙に、関係者からも祝福のメッセージが寄せられています。
NASAのブライデンスタイン長官は、「また新しい金字塔を打ち立てた、NASAのニューホライズンズのチーム、そして(探査機を共同開発した)JHUAPL及びサウスウェスト研究所の皆様に心からお祝い申し上げる。史上初の冥王星探査に加え、今日ニューホライズンズは探査機が訪れた最も遠い天体を探査した。そして、太陽系形成の名残りを留める天体を調査するという偉業を成し遂げたのだ。これこそ、宇宙探査におけるリーダーシップが何を意味するかを物語っている。」と祝辞を述べています。
「勇敢に長期にわたって活躍を続ける小さな探査機、そして偉大な写真家でもあるニューホライズンズは、私たちの心の中では愛しい存在だ。今回の最接近(フライバイ)は、JHUAPLやNASAだけではなく、私たち全てにとっての『はじめて』である。そしてこれは、冒険を成し遂げた科学者・技術者チームの輝かしい証でもある。」(JHUAPLのラルフ・センメル所長)
「65億キロも離れたウルティマ・トゥーレへの到達成功は、半端ない成功である。ニューホライズンズ探査の中でも最もすばらしい瞬間だろう。冥王星とカイパーベルトについて教科書を新たに書き始められるだけの成果を残した、ミッションパートナー、そしてニューホライズンズの科学チームたちに賛辞を送りたい。私たちは次章を読むのが楽しみでならない。」(サウスウェスト研究所のアダム・ハミルトン所長・CEO)

しかし、ニューホライズンズの旅はここで終わりではありません。
ニューホライズンズが打ち上げられたのは2006年。当時はアメリカの大統領はジョージ・W・ブッシュ氏(子どもの方のブッシュ氏)であり、打ち上げ当時は目的地であった冥王星はまだ「惑星」でした。ツイッターがサービスを開始したのが2006年。月探査情報ステーションはまだブログを始めておらず、当時の情報は古いフォーマットの記事に残されています。ちなみにニューホライズンズチームの記事によれば、2006年の雑誌タイムの「今年の人」は、「あなた…インターネットでつながっている全ての人」だったそうです。
そして打ち上げから9年後の2015年、ニューホライズンズは冥王星への最接近(フライバイ)を果たし、世界的な話題となりました。打ち上げ当時は存在しなかったツイッターのタイムライン上で冥王星についての話題が世界的に展開されたのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。月探査情報ステーションでも、接近からその後の解析などについて詳細にブログでレポートを続けました。
そして打ち上げから13年後の2019年の、カイパーベルト天体への最接近。
ニューホライズンズチームは、遅くとも2021年までに、次のカイパーベルト天体の探査を行うことを計画しています。またより多くのカイパーベルト天体の探査を行うこともチームでは考えているようです。ニューホライズンズの「偉大な旅」はまだまだ、終章を書けそうにはありません。

2019年1月2日(水)|Categories: ニューホライズンズ|