11月2日、月探査情報ステーションは満26周年を迎えることができました。
運営を続けることができておりますのも、ひとえに応援し、励まし、支えてくださる皆様の声があったからです。いつもご覧いただいている皆様に、そしてパートナーの皆様に、心から御礼を申し上げます。
1998年11月2日、当時セレーネ(SELENE)と名付けられていた、宇宙開発事業団(NASDA)と宇宙科学研究所(ISAS)共同の月探査計画のプロモーションサイトとして、月探査情報ステーション(当時の名称は「インターネットシンポジウム ふたたび月へ」)が産声を上げました。
それから26年、月探査は当時想像もしていなかったほど、劇的な進歩を遂げています。
今年1月、JAXAが開発した月着陸機SLIMが、月面への軟着陸に成功しました。世界で5番目に月面へ到達した国となりました。そして、日本初の月面軟着陸成功です。
私もメディアの一員として、その瞬間をJAXA宇宙科学研究所で見守ることができました。
かつて「ふたたび月へ」という言葉のもとに月探査を推進してきた身として、その言葉通り月面到達を成し遂げられたことに大きな喜びと深い感慨を覚えました。
そして4月には、アメリカのアルテミス計画の一環として、日本人宇宙飛行士2名が月面へ到達することが、NASAと日本政府(文部科学省)とで正式に合意されました。
まだこれからの話ではありますが、早ければ2030年前後にも日本人が月面に降り立つ可能性があると、私(編集長=寺薗)は考えています。
ごく近い将来に、日本人が日の丸の旗を掲げて月面から生中継する姿を、おそらくはインターネット中継で私たちが見守ることになるのでしょう。「ふたたび月へ」という言葉がまさに現実になろうとするときが、もう間もなくやってきます。
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そして、日本の挑戦はSLIMでは終わりません。むしろ、SLIMは日本の新たな月への挑戦の号砲といってもよいでしょう。
この冬には、2機の日本の月探査機が飛び立ちます。
1機はアイスペースが開発する、ハクトR(HAKUTO-R)の2号機(M2)です。前回2023年4月に月面着陸にチャレンジしましたが、あと一歩のところでうまくいきませんでした。今回はその失敗の教訓を元に改良を行い、万全を期しています。12月に打ち上げ、来年の春に月面に到達する予定です。
もう一つは、株式会社ダイモンが開発する、超小型ローバー「YAOKI」です。超小型の名の通り、長さ15センチ、重さは500グラムを切るローバーです。しかし、走破性能と耐衝撃性能に優れ、どのようなところでも「七転び八起き」で走れる性能を持ちます。YAOKIは2024年11月〜2025年1月、NASAの商業月輸送プログラム(CLPS)の第3弾となる、イントゥイティブ・マシーンズ社の着陸機に搭載され、月面に向かう予定です。
そして2025年度には、JAXAがインド宇宙研究機関(ISRO)と共同で実施する月探査「ルペックス」(LUPEX)が控えています。
ルペックスは、月の南極に降り立ち、水の存在を確かめることがミッションです。
月の南極、クレーターの内部には、水(氷)が存在するといわれています。しかし、現時点ではまだ直接水をみつけたわけではありません。ルペックスは様々な科学機器を駆使し、さらには月面を掘って地下の様子も探り、水の有無やその量を調べます。
同じように月の水を調べるために今年にも打ち上げ予定であったアメリカの探査機「バイパー」が、今年7月にミッション中止となりました。いまのところ、月の水を直接探るミッションとして進んでいるのはルペックスだけです。その一翼を日本が担うという点は強調しておきたいと思います。
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日本だけではなく、世界的に現在、月へのアプローチが熱を帯びています。
それは、月探査情報ステーションをご覧いただいている皆様が最もよくご存知かと思います。
この上り調子の月探査のトレンドに、月探査情報ステーションとして必ずしも十分な体制を提供できているかというと、そのようにはなっていないことを認めなければなりません。
これまでの情報発信・蓄積を元に、いまの月探査のトレンドをどれだけビビッドに伝えられるか。単なる情報ではなく、十分な洞察をもって情報を提供できるか。大きな宿題をもっていることを胸に、それを解決し、名実共に「月探査のポータル」として月探査情報ステーションを運営していく。
そのためには、皆様のお力添えがやはり必要であると感じます。
今年のSLIMのときも、月探査情報ステーションの情報がメディアの皆様のお役に立ちました。それは、普段からの情報発信と、それを元にした情報の分厚い蓄積が役立ったことを示していると思います。
これからの日本の月探査ブームの際にも、皆様がより深く、よりわかりやすい情報を求める際に、このサイトをお役立ていただけるようにしていきたいと思います。
今後とも、月探査情報ステーションをご支援・ご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。
2024年11月2日
月探査情報ステーション 編集長 寺薗 淳也