月は、自らの自転周期と、地球のまわりを回る公転周期が同じです。
月が地球に対していつも同じ表側を向けているのはこのためです。よく、「月は自転していないからいつも同じ側を向けているのだ」という人がいますが、これは間違っています。試しに、何でもいいので丸い物体(ボールとか)に印をつけ、その物体が回らないように、自分のまわりを一周させてみると、その間違いがよくわかります。途中で印をつけた部分がみえなくなることがわかるでしょう。
物体も回ってるからこそ、いつも同じ側が見えるのです。

似たような関係は、太陽系の天体によくみられます。典型的なのが、木星のガリレオ衛星(イオ、エウロパ、カリスト、ガニメデ)です。これらの天体もまた公転周期と自転周期が1対1になっています。
土星の衛星でも、タイタンをはじめ、テチス、ミマス、エンセラダス、ディオネなど多くの衛星が、公転周期と自転周期が同じという関係になっています。

このよう公転周期と自転周期が一致するという現象は、潮汐力の結果と考えられています。
例えば月の場合、地球の重力によって月はわずかながら変形します(月が引っ張られてやや楕円形になる)。この力は潮の満ち引きを起こす力と同じであって、そのため潮汐力と呼ばれています。
西洋なしのように変形した月が公転周期よりも早く自転していると、地球重力は自転にブレーキをかけるように働きます。逆に月が公転周期よりも遅く自転していると、地球重力は自転に加速をかけるように働きます。
このような力の作用により、最終的に公転と自転が同じ周期を持つ状態に必ず落ち着きます。

木星や土星の衛星についても、同じような理由で、自転と公転の周期が同じになる発生していると考えられます。
このように、自転と公転の周期、あるいは他の天体との自転や公転の周期が、簡単な整数比で表されるような関係を、「尽数関係」(じんすうかんけい)といいます。月の場合には「自転周期と公転周期が1対1の尽数関係にある」といういい方になります。
ただ、尽数関係そのものについてはまだよくわかっていない部分もあります。
例えば、木星の衛星については、イオ、エウロパ、ガニメデは、公転周期が1対2対4という尽数関係にあります。つまり、ガニメデが1回木星のまわりを公転する間に、エウロパは2回、イオは4回公転します。なぜそのようになるのかは、いまだによくわかっていません。