ルナープロスペクター (Lunar Prospector) は、1998年1月6日に打ち上げられた、アメリカ・NASAの月探査機です。
高さ1.3メートル、直径1.4メートルの円筒形の胴体に長さ2.4メートルの3本のマストがついた、小型で簡単な構造になっており、重さは燃料を満タンにしたときでも295キログラム(普通の乗用車の4分の1の重さ)です。

プロスペクターとは、探鉱者という意味で、月の表面全体について鉱物資源の存在や分布を探査し、月の構造や進化を知ることを目的としていました。
鉱物資源といっても金や銀を探すわけではありません。人間が月面で活動するときに必要な水や、将来宇宙基地を建設するのに使える鉱物、エネルギー資源となる水素、ヘリウムなどが調査の対象です。

ルナープロスペクターには次の観測機器が搭載されていました。

● 中性子スペクトロメーター
月の表面にある水素・ヘリウムの存在を検出します。水分子には水素が含まれるので、中性子スペクトロメーターは氷が存在するかどうかも調べることができます。今回の探査で、月の南極と北極には氷があると報告されました。

● ガンマ線スペクトロメーター
月の表面の元素組成(月面基地建設に利用できるアルミニウム・チタンや、放射性元素であるカリウム・トリウム)や、分布を調べます。

● アルファ粒子スペクトロメーター
月の地下から放出される、ラドンやポロニウムなどの放射性のガスが放出するアルファ粒子を検出します。

● 磁力計
地球磁場、太陽風による磁場、及び非常に弱いながらあるといわれている月の磁場を計測します。

● 電子反射計
月面の磁気異常を計測します。

その他に、衛星の運動のドップラー効果を測ることで、月の重力場についても詳しく調べました。

ルナープロスペクターは1999年7月31日に、月の南極に氷があるかどうかを確かめるため、月面に衝突し、その使命を終えました。
探査機が衝突したときにあがる水蒸気が地球から観測できるのではと考えられていましたが、分析の結果、今回の衝突では残念ながら水蒸気は観測されませんでした。しかし、

  • 氷のある地域に当たらなかった
  • 水分子が鉱物に取り込まれてしまっているため、水分子が観測されるには衝突のエネルギーが足りなかった
  • 望遠鏡の視野が狭かったので観測できなかった
  • 水蒸気の動きが速すぎてとらえられなかった
  • クレーター壁などにさえぎられて見えなかった

といった説もあり、ルナープロスペクターの衝突の結果だけでは、月に実際に水があるかどうかについて、結論を出すことができませんでした。

最終的に月に水が存在することをほぼ確実に確かめたのは、2009年に打ち上げられた探査機「エルクロス」ということになりました。
こちらは、事前にルナー・リコネサンス・オービターの観測により、水が多そうな地域を割り出しておき、その領域に衝突することで、月面に水(氷)が存在することを確実に裏付けることに成功しました。


ルナープロスペクター探査機 (想像図: NASA)
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