月の裏側は地球から見えないため、探査機を使わなければ、どのようになっているかを知ることができませんでした。1960年代になって、アメリカや旧ソ連の月探査機が次々と月に送り込まれ、裏側の写真が撮影されるようになりました。
月の裏側の探査は旧ソ連が熱心で、そのため、月の裏側の地名には「モスクワ海」や「コロレフ」「ツィオルコフスキー」といった、旧ソ連・ロシアにちなむ名前が目立ちます。

さて、こういった探査でわかってきた月の裏側ですが、月の表側と比べてもっとも大きな特徴は「海が少ない」ということです。
月の表側は、わたしたちがよく見ているように、黒っぽい海の部分がいっぱいあります。しかし、月の裏側にはあまり海がありません。実際、表側では海が約30パーセントの面積を占めているのに、裏側では海の面積は、2パーセントしかありません。
海が少ないということは、白っぽい「高地」の部分が多いということで、実際、月の裏側はたいへん白っぽく見えます。


ガリレオ探査機が撮影した月の裏側の写真 (Photo by NASA)
(クリックするとより大きなサイズの写真を表示できます)

月の裏側は起伏が大きいことが、最近の探査によってわかってきました。月でもっとも深いところは、裏側にある「南極-エイトケン盆地」というところです。この盆地は、直径が2500キロメートルもある、非常に巨大な盆地です。
「かぐや」の探査により、この中にあるアントニアーディクレーターというところが月でもっとも深いところだということがわかりました。ここは深さが(月の平均半径を基準にして)9.02キロメートルほどあります。
逆にもっとも高いところは、同じく「かぐや」の探査により、ディリクレ・ジャクソン盆地の南側にある場所だということが判明しました。この高さは(同じく月の平均半径を基準にして)10.75キロメートルもあります。
ちなみにこの場所は、先ほどの南極-エイトケン盆地の北端から、もう少し北に行ったところにありますので、月では、最高点と最低点が、裏側、それもかなり近いところに同居していることになります。

月の裏側は地殻の厚さが厚いことも特徴です。クレメンタインの探査では、月の裏側の地殻は、表側に比べてやや厚い(平均68キロメートル。表側の地殻の厚さは約60キロメートル)ことがわかってきています。
このことは、「かぐや」の探査でも確かめられています。上で述べた月の最高点付近の近くの熱さは実に100キロを超え、110キロ近くにも達していることが明らかになりました。

月の裏側の地形でもっとも目立つものとしては、東側にあるオリエンタル盆地(Mare Orientale: 東の海)が挙げられます。
この盆地は直径が約300キロメートルほどですが、その周囲に3重に取り巻いたリングが見えます。これは明らかに、オリエンタル盆地が衝突によってできた巨大なクレーターであることを意味しています。

オリエンタル盆地は、月の歴史の中では比較的新しい時代にできたと考えられています。いっぽう、クレメンタインによる探査では、オリエンタル盆地の下の地殻は、厚さがわずか4キロメートルくらいしかないことがわかっています。
また、「かぐや」の探査により、オリエンタル盆地以外にも、地殻の厚さが10キロ以下の場所があることがわかってきました。このような場所は大きなクレーター(海)などに多いようです。
この厚さは、月の近くとしては極めて薄いため、オリエンタル盆地をはじめ、このような海がどのようにしてできて、現在までにどのようなことが起こったのか、今後の研究によってその謎が明らかにされることが期待されます。


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