まず、角運動量というものがどのようなものかということから入りましょう。
すべての回転している物体はエネルギーを持っています。これは、回転している歯車などが周りのものを動かしていくことからもわかると思います。
このような、回転しているもののエネルギーを表す量として、「角運動量」というものが定義されています。これは、次のような値です。

物体の質量×回転の速度×その物体の半径

例えば月を考えます(いまは、簡単のために月も地球も点とします)。月は地球から38万キロ離れていますので、物体の半径が38万キロ、月の質量が物体の質量、そして回転の速度は、地球の周りを回る速度、すなわち「月の公転速度」となります。
もう1つ、たいていの場合には、衛星が持つ角運動量と、惑星の自転の角運動量を合算して考えます。例えば地球の場合には、「地球ー月系の角運動量」という言い方をします。

さて、では問題の「地球型惑星の角運動量」にまいりましょう。
地球型惑星としては、水星、金星、地球、火星があります。
このうち、衛星を持っているのは地球と火星だけですが、火星の衛星は2つとも、本体(火星)に比べれば圧倒的に小さく、角運動量は無視してもいいほどです。それに比べると、地球の衛星(月)は、地球に比べても大きく(地球半径の4分の1)、遠く(38万キロも離れている)を比較的速いスピード(約29日で1周)で回っているので、大きな角運動量を持っています。

次に、自転を考えます。火星と地球はほぼ同じ自転速度ですが、火星は地球の3分の1ほどの大きさですので、角運動量は非常に小さくなります。一方、金星は地球とほぼ同じ大きさですが、自転周期が243日と非常にゆっくりであるため、自転の角運動量はきわめて小さなものです。水星も自転周期は58日と、地球に比べてはるかに遅い上に、地球と比べても大きさが3分の1以下ときわめて小さいため、地球の角運動量は他の地球型惑星に比べて際だって大きいのです。

特に、月という大きな衛星が遠くをそれなりのスピードで回っているということが、この「地球ー月系の角運動量問題」でいちばんのミソということになります。
ここで気をつけることは、「地球の公転と月の自転の角運動量がやりとりされている」ということです。この2つを一体として考えて、力学的な面ではじめて正しい考え方になります。

また、「月と地球の角運動量が大きい」という場合には、その惑星の単位質量あたりで考える必要があります。例えば、木星は高速で自転しており(約10時間)、質量も巨大ですから、大変大きな角運動量を持っていることになります。その点で考えると、地球と月の角運動量は並外れて大きいことになります。


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