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このことを知るためには、まず「角運動量」という量を理解することが必要になります。
回転している物体は必ず勢い(あるいは運動量)を持ちます。例えば、振り回したヨーヨーはぶつかると痛い思いをします。これは回転している物体が速度を持っているからです。
角運動量は、[速度]×[回転する物体の半径]×[その物体の重さ]という形で表されます。回転する速度が速い、物体の半径が大きい、あるいは重さが重い、という条件があれば、角運動量が大きくなります。
また、重要な法則として「角運動量の保存則」というのが存在します。これは、「外界から何か力が働かない限り、同じ力学系に属する物体の角運動量は保存される」というものです。これを表す端的な例としては、フィギュアスケートの回転があります。フィギュアスケートの選手が、手を次第に縮めながら回転させていくと、回転する速度が速くなってきます。これは、角運動量保存の法則が働いていて、手を縮めることで半径が減ったため、速度が上がったということになります。

以上をとりあえず理解した上で、地球と月の話にいきましょう。
まず、地球と月は、力学的には1つの物体として見なすことができます。これは、月が地球の周りを回っているからです。
もう少し正確にいいますと、地球の自転と月の公転の角運動量の合計が保存される、ということになります。
さて、地球と月の間には引力があり、そのために潮汐という力が働きます。潮汐力は、潮の満ち引きを起こす力でおなじみだと思いますが、この力により、地球は月の方向に向けて引っ張られることになります。特に、地球には海があり、海面が月の方向に引っ張られることによって、潮の満ち引きという現象が発生します。
そのため、地球と月との関係は、図のように、月の方向に向けて海面が引っ張られるという形になるはずです。


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しかし、実際にはそうはならず、下の図のように、ややずれた方向に海面の盛り上がりが向かうことになります。これは、地球が自転しているため、引っ張られた部分が自転の勢いで少し回ってしまうことが大きな理由です。


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このように、ふくらみが月と地球にいちばん近いところから少し離れてしまっているため、この海(地球)のふくらみの部分から、月に向けて引っ張られることになります。このため、地球の自転が月に引っ張られて、ブレーキがかかることになります。
地球の自転が遅くなる原因はほかにもあります。地球は東回りに自転していますが、海水が自転により海底と摩擦を起こすため、地球の自転に影響を与えるという問題があります。また、海水は地球よりも遅れて動くため、地球からみると自転と逆の方向へ動くようになります。つまり、海の西側の部分に海水がぶつかるようになります。実際、大きな海の西側を流れている海流(たとえば、太平洋の西側を流れている黒潮や、大西洋の西側を流れているメキシコ湾流)などは、非常に強い海流として有名です。この現象を西岸強化といいますが、この大陸と海水がぶつかる摩擦も、地球の自転を遅らせることになります。

このような理由により、地球の自転は少しずつ遅れてきています。
さて、地球の自転のスピードが遅れるということは、地球の自転が持つ角運動量が少なくなってきていることを意味します。ところが、先ほど述べたとおり、地球の自転の角運動量と月の公転の角運動量の合計は保存されます(変わらないということです)。地球の自転の角運動量が減れば、月の公転の角運動量が増えます。
月の公転の角運動量が増加するとどのようなことが起きるでしょうか。月の質量は増えませんから、半径が増加していくことになるのです。従って、月は地球から少しずつ遠去かっていくことになります。


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