ルナーA計画では、ペネトレーターは、母船から切り離されると方向を変え、月表面に自由落下していく予定になっていました。
減速用のモーター(小型ロケット)も姿勢制御機構も持っていませんので、そのまままさに自由落下します。そして、月の表面に秒速300メートル(時速1080キロメートル)というすさまじい速度で激突します。このときの衝撃は、瞬間的ですが実に1万Gという、とてつもないものです。

普通ですと、そのような速度でぶつかれば探査機は当然壊れてしまうはずです。しかもペネトレーターには、測定機器の中でも振動にもっとも弱い、地震計を積んでいます。このようなとてつもない衝撃が受けても、中の地震計などの計測機器はちゃんと動作するのです。
これは、ペネトレーターがちょうど1つの「かたまり」のようになっているからです。ペネトレーターの中には、地震計や電子回路、電池がぎっしりと詰まっていますが、そのすき間にはさらに、エポキシ樹脂を流し込んで、中はすき間なく固められています。そのため、ペネトレーター全体がかたまりとなって突入します。中にすき間がありませんから、衝撃で中で機械が動いたりして、壊れることもないというわけです。

もちろん、地震計や熱流量計といった観測機器なども、衝撃に耐えるように実験や理論計算を繰り返して作ってあります。
また、ペネトレーターの先頭は滑らかな形状をしていますが(これをオジャイブ型といいます)、これも貫入のときの衝撃がなるべく少ない形を選んだものです。ペネトレーターの外側(構体) も、軽くて強いCFRP(炭素繊維で強化したプラスチック)でできています。

こういった工夫で、ペネトレーターは月にぶつかるときの強烈な衝撃に耐えられるようになっているのです。



月面に突入するペネトレータ(想像図)(イラスト: JAXA宇宙科学研究所)
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