2014年ももう間もなく終わります。
ここで、今年(2014年)の月・惑星探査を、主にブログ記事などから振り返ってみましょう。

◯1月
前年12月に月に軟着陸し、実に37年ぶりに(無人ではありますが)月表面に探査機を送り込んだ中国。その嫦娥3号が本格的な探査を開始しました。着陸機は搭載機器のデータ取得を開始、ローバーは所定の動作を開始しました。

◯2月
この嫦娥3号ですが、ローバー「玉兎」がトラブルを起こしたことが明らかになりました。機器の不具合で、月の14日間の夜を乗り越えられるのか、という心配が世界中から寄せられました。幸い、夜は無事に越すことができ、その後も玉兎は一部トラブルを起こしているものの動作を続けています。

◯3月
月や火星のクレーターの命名権を売り、それを惑星科学推進のための収益に充てようという活動を行っていた企業が、国際天文学連合(IAU)から抗議を受けました。この企業が掲げる理念はもっともであったと思いますが、せめてIAUに最初に相談を持ちかけていればここまでこじれることはなかったのではないかと思います。また、内容もかなり強引なもののようにみえました。私としても科学の振興にはもう少し別の手法があったのではないかと思います。

◯4月
昨年から月探査ミッションを行っていたアメリカの探査機「ラディー」が、燃料切れのためミッションを終了し、月面に制御落下しました。
ラディーは、月面の重力を詳細に探査することを目的とした小型の探査機で、2機の探査機からなるという珍しい構成になっていました。月の重力については、近年では日本の探査機「かぐや」が詳細な探査を行っていましたが、ラディーの探査で得られるデータはそれを上回る精度が出せるのではないかと期待されています。
ラディーのミッション終了にあたっては、その落下日時を当てるというキャンペーンも実施されました

◯5月
月に関する2つの話題がありました。1つはロシアです。ロシアが月探査に回帰し、往年の探査機シリーズ「ルナ」の名前を復活、早ければ2016年頃から探査を再開するかも知れないという発表がありました。
「月探査」情報ステーションの編集長としてはワクワクするニュースではあるのですが、現在のロシアの急速に悪化している経済状況を考えると、すんなりとこの計画が実現するのかどうか、不安な気持ちになります。
一方、日本の方では、大塚製薬の「ポカリスエット」がらみでのニュースがありました。大塚製薬が、ポカリスエットを月面に持っていくというプロジェクトを発表しました。こちらの方、現在の進捗は不明ですが、確実にたどり着いて欲しいと思います。

◯6月
以前からチラチラと話題に出ていた嫦娥5号(中国のサンプルリターン探査機。2017年打ち上げ予定)の試験機打ち上げについて、「中国の月探査の父」欧陽自遠氏が正式に実施を発表しました。この試験機は10月28日に打ち上げられました。また、この欧陽自遠氏の記事では、中国の火星探査についても触れられており、2020年に着陸探査、2030年にサンプルリターン機打ち上げと発言していたことが注目されます。その後の情報でも、この方向性であまり変化がないようで、今後中国の火星探査もどのような情報が出てくるかが注目されます。

◯7月
夏休みの時期ということでイベントに絡んだ記事がいくつか出てきました。特に、全天周映像「HAYABUSA 2 −RETURN TO THE UNIVERSE−」試写会の記事はその中でも特徴的なものといえるでしょう。
現在、各地のプラネタリウムや科学館での上映が行われていますので、みなさまもぜひご覧いただければと思います。
また、読売新聞の報道で、「日本が2019年に月探査を実施か」という記事がありました。こちらの方は、現在に至ってもそれらしい情報を私も入手していないので、おそらくは幻かと思いますが、これが幻ではなく現実になることは期待したいところです。

◯8月
天文関係の話題が多かった中で、8月は「スーパームーン」が話題になりました。和歌山大学の衛星UNIFORM-1がこのスーパームーン(満月)を撮影したという、ブログとしては珍しい天文関係の記事も、この時期ならではということでしょう。
また、火星探査では大きな動きがありました。アラブ首長国連邦が、2021年内の火星探査を目指し、宇宙庁を設立して動き出すというものです。こちらについては実際に本気での取り組みのようですが、ロケットの打ち上げ場所や探査機・ロケットの開発などをあと7年程度で実際に行えるのかどうかという点がポイントになりそうです。今後の動きを注視していきましょう。

◯9月
相次ぐ火星探査機の火星到着に世界が湧いた月です。
9月22日にはアメリカの火星探査機メイバンが火星への周回軌道投入に成功しました。その2日後、24日には、インドの火星探査機マンガルヤーンが火星周回軌道投入に成功しました。
マンガルヤーンはインド初の火星探査機で、火星周回軌道に投入できたのはアジア初、また世界でも4番目ということで、インドの宇宙開発技術ににわかに注目が集まりました。ただ、インドはこれまでにも地道な宇宙開発や月探査を続けていて、その延長線上にある成果と私としては思っています。
両探査機とも現在は軌道上での機器試験を続けており、来年早々には観測を開始する予定です。
また、9月30日には、注目されていた「はやぶさ2」の打ち上げ日が11月30日に決定するという記事もありました。

◯10月
「はやぶさ2」の打ち上げ日が決定したことで関連ニュースが増えてきます。打ち上げを見学する少年少女1日宇宙記者の募集や、オフィシャルサポーターに「妖怪ウォッチ」のジバニャンが決定したという記事など、打ち上げに向けて少しずつ盛り上がっていく雰囲気が感じられます。
10月19日には、火星に彗星が接近、すぐそばを通り過ぎました。火星周回機に影響が出ることが心配されましたが、すべて無事でした
10月28日には、中国の嫦娥5号の月サンプルリターンに向けた地球帰還のための試験機が打ち上げられ、試験機は月の裏側を1周、11月1日に無事地球に帰還しました。

◯11月
11月30日の「はやぶさ2」打ち上げが迫る中、日を追うに連れてメディアでも記事が増えていきました。また、多くの人が打ち上げ場所である種子島を訪れ、島も相当なにぎわいをみせました。私自身も種子島に向かいました。
しかし、11月29日、JAXAは打ち上げ日の延期を決定しました。天候の条件が悪いと予想されたためです。打ち上げ日がいつになるのか、多くの人がやきもきする月末となりました。

◯12月
再設定された「はやぶさ2」の打ち上げ日も11月30日に再延期が発表され、12月3日となりました。2度の延期というのはH-IIAロケットの打ち上げでは最近にはあまりなかったことで、私を含め多くの人があたふたすることになりました。
しかし、12月3日、「はやぶさ2」を搭載したH-IIAロケット26号機は無事打ち上げられ、探査機の分離に成功。現在「はやぶさ2」は初期機能確認も終え、順調に飛行を続けています。
一方、12月だからなのか、未来につながる話題も多い月でした。12月5日、将来の有人火星探査にも使用される予定のアメリカの有人宇宙船「オライオン」が試験打ち上げに成功しました。また、ヨーロッパの木星探査計画「ジュース」の開発がヨーロッパ宇宙機関(ESA)で承認されました。ジュース計画には日本も機器を提供することになっており、これからの展開が楽しみです。

以上、この1年をブログ記事から振り返ってみました。いろいろなことがあった1年ですが、月・惑星探査が着実に進んでいることはこのブログ記事からもお分かりかと思います。
来年もより多くの記事をお伝えできるよう、編集長も頑張ってまいります。引き続きご支援のほど、よろしくお願いいたします。