「ポカリスエット」といえば、宇宙開発をよく知る人にとっては「宇宙と馴染み深い製品」であることをごぞんじでしょう。国際宇宙ステーションで世界ではじめてコマーシャル撮影を行ったり、何かと宇宙と結びつくことが多い飲料です。そして、今度は月と結びつくことになりました。

5月15日、このポカリスエットの販売元である大塚製薬は、このポカリスエットを月に持っていくという壮大なプロジェクトを発表しました。壮大ではありますが、実現は来年(2015年)の10月。もうすぐその先に迫っています。

「ルナ ドリーム カプセル プロジェクト」(LUAR DREAM CAPSULE PROJECT。以下プレスリリースと同様、ルナ・プロジェクトと略します)は、大塚製薬をはじめ、月面への宇宙機開発などを手がけるアストロボティック社、また国内の大学や中小企業などが協力しています。
このプロジェクトの最大の売りは、なんといってもポカリスエットを月に持っていくというところでしょう。民間企業が月に到達するというのもはじめてですが、宇宙開発企業ではない企業が自社の製品を月に持っていくというのもおそらくははじめてでしょう。

このルナ・プロジェクトのために開発される特製のカプセルは、自動販売機などで売られているポカリスエットの缶をそのまま模した形をしています。重量は1キログラム。月面の過酷な環境でも長期間耐えられるよう、チタン製のカプセルとなっています。

ルナ・プロジェクトで月面へ運ばれるカプセルの模式図(大塚製薬プレスリリースより)

ルナ・プロジェクトで月面へ運ばれるカプセルの模式図
(大塚製薬プレスリリースより)

カプセルの最上部の封は、「ドリームリング」と呼ばれる鍵によって簡単に解錠することができるようになっています。このドリームリングは、後述するメッセージを寄せてくれた子どもたちに渡されるものと同じで、また10本のドリームリングは、開発企業で保管されます。遠い(あるいは近い)未来、月面に到達した人類が、このドリームリングを使ってカプセルを開けることができるという設定です。

その下には、集められたメッセージをアルミニウム板に刻んだメッセージプレートが挟み込まれます。さらにその下には、粉末状のポカリスエットが格納されます。将来、月の水によってこれを薄めて飲むことができる…そのような意味が込められています。

さて、メッセージの方ですが、こちらはサイト内のLUNAR DREAM MESSENGER(ルナ・ドリーム・メッセンジャー、以下プレスリリースと同様「ドリームメッセンジャー」と表記します)から投稿することになります。
このドリームメッセンジャーは、スマートフォンなどから直接プロジェクトサイト(下にリンクを記しています)投稿サイトにアクセスした上で、メッセージを入力、さらに月がでているときにそのスマートフォンを月に向けて(!)送信することでメッセージが送られる、というものです。
ただし、そうそう月が出ているときに起きている人ばかりではないと思いますので、パソコンをお持ちの方であれば、24時間いつでも送信が可能とのことです。

このプロジェクトの背景にあるのは「月の水」です。
月探査情報ステーションでも、これまでの探査機での「月の水」発見の経緯をいろいろと述べてきましたが、月探査ではまだ確実に「月に水がある」とはなかなかいえない状況です。存在する可能性はかなり高いとはいえ、その量についてもはっきりしたことはまだわかっていません。
しかし、月に水があるかもしれないという大きな夢を持ちながら、それにある種賭けている今回のプロジェクトは、将来の世代への夢としての架け橋となるものではないかと、私自身も大いに期待しています。

また、このルナ・プロジェクトのもう1つの背景は「グーグル・ルナーXプライズ」です。
グーグルが賞金を出資し、月に最も早く辿り着いた民間団体に賞金を与えるというこの企画に多くの民間企業や団体が名乗りを上げていますが、コンテスト期間は2015年12月まで。そして、アストロボティック社は、有力とされている企業・団体の1つでもあります。
このプロジェクトはその意味で時間との戦いでもあり、この企業の探査機開発の進展状況もよくみていかなければなりません。

プロジェクトでは今後、サイトの充実やキャンペーンなどを行っていくとのことで、今後の発展に期待したいところです。