中国の月探査機「嫦娥3号」のローバー「玉兎」に搭載された粒子エックス線スペクトロメーター (APXS: Active Particle-induced X-ray Spectrometer)が、最初のデータを取得しました。中国科学院高エネルギー物理学研究所(IHEP)が発表しています。

この装置についてはリリースではあまり触れられていませんが、基本的には、マーズ・サイエンス・ラボラトリー「キュリオシティ」に搭載されている、同じ略称の装置(アルファ粒子・エックス線スペクトロメーター)と同じ、アルファ線粒子とエックス線を岩石に放射し、その反射エックス線を測定することで、岩石の元素組成を調べる装置と思われます(なぜ、略称が微妙に異なっているのかはわかりません)。
今回は、月面の土(レゴリス)の測定結果が発表されました。

嫦娥3号搭載のAPXS

嫦娥3号に搭載されたAPXSの写真。左の円筒状の物体がセンサー本体。真ん中の線が出ている円筒状の放射性元素の熱源。いちばん右の物体は、飛行中にセンサーを校正するための玄武岩標準試料。(Photo: IHEP)

測定は12月25日に行われ、その結果、月面の岩石を構成していると思われる8つの元素(マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄)が検出されました。また、微量な元素としてサマリウム、イッテルビウム、ジルコニウムが検出されています。
APXSは玉兎に取り付けられたロボットアームの先端に設置されており、レゴリスの2〜3センチメートル上からアルファ線やエックス線を照射、データを得ています。
装置自体の性能も非常に高く、IHEPでは「世界の月・惑星探査史上最高性能を誇るエックス線スペクトロメーターである」としています。

このAPXSは12月23日にはじめて電源が入れられ、このときは同時に持っていった標準試料の玄武岩の測定を行いました。これは装置の校正を行うためのもので、測定は5分で終了しました。
この結果、装置自体は月面で安定して稼動していることがわかりました。
また、IHEPではこの装置は単なる岩石の元素測定用センサーとしてだけではなく、ロボットアーム展開中にエックス線の強度を調べることによって距離測定もできるとしています。

APXSは、紫金山天文台とIHEPが共同開発したものです。IHEPはこれまでの嫦娥1号・2号の探査でも、エックス線スペクトロメーターを開発し、搭載してきました。

  • 中国科学院高エネルギー物理学研究所のリリース 
[英語] http://english.ihep.cas.cn/prs/ns/201312/t20131230_115114.html
  • 嫦娥計画 (月探査情報ステーション)
    https://moonstation.jp/ja/history/Chang_e/