皆様、新年あけましておめでとうございます。
旧年中は月探査情報ステーションをご愛顧いただきまして、ありがとうございました。

2018年は月・惑星探査に関しても話題が豊富な年でした。
やはりその中でもいちばんのニュースは、「はやぶさ2」の小惑星到着ではないでしょうか。13年ぶりに日本の探査機が小惑星に帰ってきました(同じ小惑星ではありませんが)。そして、「ミネルバII」「マスコット」の2種類のロボットの小惑星表面での動作に成功という世界初の快挙を成し遂げました。
編集長(寺薗)は先代「はやぶさ」に関わっていたこともあり、「はやぶさ2」のニュースはとりわけ興味深く、感慨深く眺めておりました。私よりも若い世代が小惑星探査に挑んでいる姿は、かつての私自身をみるようでもありました。

また、火星探査機「インサイト」の打ち上げ・着陸、日本とヨーロッパ共同開発の水星探査機「ベピ・コロンボ」の打ち上げなど、これからに期待させる出来事もありました。
年末にかけては、「はやぶさ2」のライバルともいえるアメリカの小惑星探査機「オサイレス・レックス(オシリス・レックス)」の小惑星到着というニュースも入りました。

月探査に関しては、アメリカが提唱する「深宇宙ゲートウェイ」構想を中心に、新たな有人月探査計画が次第に形を見せていく年ともなりました。
3月に日本で開催された第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)でもその方向性が確認された一方、日本として会議をリードしていく方向性がやや不明確だった点は悔やまれるところです。
一方、月探査という点では、12月に中国が嫦娥4号を打ち上げ、史上初の月の裏側への着陸を目指します。中国は着実に月探査を進めており、日本やアメリカなどが推進する有人月探査構想と正面からぶつかる形になりつつあります。今後このような対立の流れを修正し、世界ができる限り一丸となった形での(有人)月探査が進められることが望ましいと、編集長としては思います。

2019年は年明けからいきなり月・惑星探査のビッグニュースが飛び込んできます。
まさに今日、探査機ニューホライズンズがカイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」に最接近、探査を実施します。
人類史上最も遠い天体を直接探査するというこの計画、人類が未だかつてみたことがないカイパーベルト天体の姿が白日のもとに晒されることが期待されます。すでに遠方からの探査では、このウルティマ・トゥーレはかなり変わった形状を持っていることが明らかになっています。私たちの目の前にどのような世界がみえてくるのか、注目です。

そして1月3日には、嫦娥4号が月面へ着陸します。月の裏側がどのようになっているのか、また月の歴史で大きな鍵となっている巨大盆地「南極-エイトケン盆地」がどのようにしてできたのかが明らかになることが期待されます。
一方、中国のライバルともいえるインドは、2機目となる月探査機「チャンドラヤーン2」を打ち上げます。現在の情報ではまさにその1月3日が打ち上げ日とされています。こちらも月の南極地域への着陸を目指すことになっています。
インドは日本とも共同で月極域への着陸探査を行おうとしています。先ほど述べた世界の月への流れが、このような探査によりどう影響を受けていくのか、私たちもしっかりみていきたいと思います。

そして、「はやぶさ2」とオサイレス・レックスの、日米の小惑星サンプルリターン探査の共演も今年の注目です。
それぞれが異なる小惑星に、異なる手法のサンプル採集装置で挑むわけですが、一方でそれぞれの小惑星は互いに似ていることが明らかになっています。写真でみただけでも、2つの小惑星は見間違えるのではないかというくらいに同じひし形をしていますし、表面の組成も似ていることがわかっています。
1月から始まる「はやぶさ2」のサンプル採取チャレンジを皮切りに、小惑星の姿がより明らかになることを楽しみにしたいと思います。

そして今年は、アポロ11号の月着陸から50周年という節目の年にあたります。
1969年7月21日(日本時間)、アポロ11号が月面へ着陸、ニール・アームストロング宇宙飛行士が、人類としてはじめて、月面に第一歩を記しました。それから半世紀。人類は未だ、月へ帰っていません。
折しも「ふたたび月へ」という機運が高まる中での節目。世界の、日本の指導者が、この節目を捉えて月探査に対してどのような意志を表明するのかも注目してみていきたいと思います。

さて、月探査情報ステーションは昨年、満20周年の節目の年を迎えました。
1998年11月にスタートした月探査情報ステーションは、幾度もの波乱や危機的な状態を経ながらも、20年でここまで大きく成長することができました。ここで改めて、アクセスし、支えてくださる皆様に心よりお礼を申し上げます。

昨年は、月探査情報ステーションの「スピンオフ」ともいえる書籍『夜ふかしするほど面白い「月の話」』が刊行されました。月探査情報ステーションのQ&Aをベースにしたこの本は、全ての人に月についてより知っていただきたい、そのような思いから出版され、おかげさまで大変好評をいただいております。
1月2日(つまり、明日)からは、島根県立三瓶自然館サヒメルにて、本書と本サイトをベースとしたプラネタリウム番組、その名もずばり「夜ふかしするほど面白い月の話」の公開が始まります
皆様ぜひ、足をお運び下さい。

探査ではないですが、昨年は火星大接近が話題になりました。月探査情報ステーションとしての初の試みとして、公開時期限定の姉妹サイト「2018年 火星大接近!」をオープンし、火星と火星大接近の情報を発信していきました。おかげさまで好評のうちに、昨日12月31日をもって公開を終了いたししました。
皆様、ありがとうございました。

昨年は編集長にとっても大変重要、かつ忙しい年でした。
「はやぶさ2」の小惑星到着及び探査が影響したのか、講演やイベントへの出演依頼が引きも切らず、昨年は北は青森から南は福岡まで日本中を走り回ることになりました。10月は半分以上がホテル・外泊暮らしだったという状態でした。
そのようなこともあり、月探査情報ステーションの更新が滞り、まさに20周年の10〜11月にかけては2ヶ月以上にわたって更新が滞るという事態が発生してしまいました。

月探査情報ステーションはいまや個人としての運営から合同会社としての運営へとステップアップしており、体制構築も進めては来ていたのですが、合同会社といっても編集長1名の個人会社であり、スタッフや外部ライター雇用を行える十分な予算は未だありません。編集長1人が運営から記事執筆、イベントや講演と全てに走り回る体制がいかに脆いものであるかを、今回の事態がみせつけたことになります。

折しも世の中は宇宙ベンチャー起業ブームでもあります。この合同会社も極めて小さいながらも立派な宇宙ベンチャーでもあります。月探査情報ステーションが20年培ってきたノウハウや情報資産をコア価値として、より大きなステップへと成長させていく、そのような出発点に今年がなれればと考えております。
もちろん、270件以上にも上る未執筆の記事や、いまだ移行が完了していない旧サイトのページなどの移設なども着実に進めてまいります。
さらに、20年のノウハウを活かした英語版構築の検討(すでに英語版はありますが、かなり内容が古くなってしまっています)にも本格的に着手していく予定です。

月探査情報ステーションの飛躍は、編集長にとっての飛躍でもあります。新しい世界へのチャレンジは、探査の世界だけではなく、それを紹介するウェブサイトにもまた必要なことです。そしてそれが編集長のミッションである以上、今年もまた全力でこのミッションに挑んでいきたいと思っております。

本年も月探査情報ステーションをご愛顧いただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年1月1日
月探査情報ステーション 編集長
合同会社ムーン・アンド・プラネッツ 代表社員
寺薗 淳也