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インド、月探査機チャンドラヤーン2を来年(2018年)第1四半期に打ち上げか

これまで打ち上げ予定が確定していなかった、…というより、「打ち上げ」という噂が出ては延期になっていたインドの月探査機「チャンドラヤーン2」ですが、どうも今度は確実なようです。
ウェブサイト「mashable」(マッシャブル)や、インドのニュースサイト「News Nation」(ニューズ・ネーション)などによると、今回の打ち上げ時期についてはインド宇宙機関(ISRO)のキラン・クマール総裁が、3月1日に開催されたベルス大学(Vels University)での会合で発表したものです。それによると、チャンドラヤーン2は来年の早い時期、おそらくは第1四半期の打ち上げの可能性が高いとのことです。また、ISROは現在、月着陸用のエンジン(小型ロケット)の試験を実施しているとのことです。
クマール総裁は、月着陸実験のため、人工的なクレーターを作成し、技術者たちが試験を行っていると述べています。

同じく総裁によると、探査機はインド国内3箇所で地上試験が実施されており、「打ち上げ準備は整いつつある」と述べています。

ニューズ・ネーションによると、チャンドラヤーン2は周回機、着陸機およびローバーから構成され、打ち上げはGSLV Mk.IIロケットで行われるとのことです。周回軌道からの観測を行うほか、軟着陸の試験も実施、最終的にはローバーを月面に走らせる予定です。
総裁によれば、この「無人での月軟着陸を実現するため、推力を調整できるエンジン(小型ロケット)を開発している」とのことで、これが上記の試験中のエンジンなのではないかと推測されます。

インドは2008年10月に、初の月探査機となる「チャンドラヤーン1」を打ち上げました。チャンドラヤーン1は月を周回する周回機で、11の科学観測機器を搭載するという非常に野心的な探査機でした。しかし、本来の寿命(2年)に届かない9ヶ月(2009年8月)に探査機に異常が生じ、これ以上の観測ができなくなりました。
ただ、搭載されたアメリカの観測装置のデータから、月面に多くの水(といっても正確にはOH基=ヒドロキシ基)が存在することが明らかになるなど、一定の成果をあげています。

チャンドラヤーン2については、2013年ころから開発、打ち上げの噂がありましたが、最初に述べた通り伸びに伸びてしまっています。これについては着陸機の影響が大きいようです。
当初はこの着陸機はロシアから提供されるということだったようですが、途中から自主開発の着陸機(おそらくはローバーも含めて)に切り替えられ、それで打ち上げが伸びているのではないかと考えられます。
ただ、今回の情報、すなわち2018年第1四半期の打ち上げはかなり確度が高いものと考えられます。

1つは発言者です。 ISRO総裁が明言しているということは、時期が多少前後するとしても、打ち上げが近いことを示唆するものと考えられます。試験についても場所などが明言されており、実際に開発が急ピッチで進んでいることが考えられます。
2つ目はタイミングです。このブログでもたびたびお伝えしている通り、2017年末を締め切りとする月着陸レース「グーグル・ルナーXプライズ」が、現在最終段階を迎えています。このレースに最終的に勝ち残っているチームに、インドのチーム「チーム・インダス」があります。このチームは日本のチーム「ハクト」のローバー「ソラト」と相乗りして(というか、ロケットはインドのPSLVなので、日本チームが乗せてもらう形になりますが)今年末に月への打ち上げを目指しています。
つまり、技術的にはインドは月着陸を十分行える(チーム・インダスの構成はわかりませんが、ISRO技術者との交流もあると考えてよいでしょう)実力を持っているとみて間違いありませんし、国としても民間チームとしても技術が熟成していると考えてよいでしょう。

さて、2018年第1四半期にチャンドラヤーン2が月へ向かうとなりますと、その前にグーグル・ルナーXプライズの各ローバーが月面着陸しており、一部は月面での活動を続けている可能性もあります。
さらに、中国の月着陸機「嫦娥3号」およびそのローバー「玉兎」もまだ活躍を続けています。来年初めころは、月面で多数のローバーが同時に活躍しているという状況も十分に考えられます。楽しみです。

なお、ニューズ・ネーション紙によれば、以前から噂があるISROの金星探査計画については総裁は議論は続いているもののまだ完全に固まっているわけではないと述べています。こちらも方も要注目です。

2017年3月8日(水)|Categories: チャンドラヤーン2|

中国が2025年までに小惑星探査を検討か? チャイナ・デイリー紙が報じる

最近の中国の宇宙開発の勢いは目を見張るものがありますが、それを象徴するような記事が、3月4日付のチャイナ・デイリー紙に掲載されていました。それによりますと、中国は「少なくとも1回の」小惑星探査を2025年までに計画していると、中国空間技術科学院(CAST: Chinese Academy of Science Technology)の深宇宙探査部門のYe Peijian氏が(漢字記述不明)述べたとのことです。
Ye氏によると、この小惑星探査は中国初の独自火星探査(2020年に打ち上げ予定)のあと、2025年までに実施されるとのことです。詳細(スケジュールや目標の小惑星など)についてはまだ決まっていないものの、それらについて現在検討を行っているとのことでした。

また、小惑星探査の目的として、小惑星の資源が人類にとって有用だからだ、ということを述べています。これは重要なことです。
月探査情報ステーションでも、アメリカを中心とした小惑星の(民間)資源開発についてずっと追いかけてきていますが、中国でも同じような動きがあるということも念頭に置かなければならなくなってきました。中国は、特に月探査については「エネルギー源確保(ヘリウム3)のため」と公言していますし、もともと宇宙開発は資源開発であるという側面を持っていたことは間違いありませんが、中国が小惑星の資源開発に乗り込んでくるとなると、アメリカの民間企業にとっては強力なライバルとなるでしょう。

さらに記事内では興味深いことに、木星探査についての基本的な検討も行っているということでした。インドが月、火星探査の次の目標を金星に定めている可能性が高いのに対し、中国はストレートに外(月→火星→木星)と進んでいくようです。
12月に公開された政府白書では、中国国家航天局は2017年〜2021年にかけて、木星及び小惑星の探査についての基礎的な検討、及び要素技術の開発を行うとしています。この場合、小惑星はいわゆる火星と木星の間の「小惑星帯」であるという可能性もありますが、記事ではその点には触れていません。

また、中国科学アカデミー会員で、南京の紫金山天文台の Ji Jianghui 氏は(同じく漢字読み不明)、中国の最初の小惑星探査は、フライバイ方(そばを通り過ぎる形)になるのではないかと、新華社のインタビューに対して述べています。この形は、嫦娥2号が小惑星トータティスのそばを通り過ぎた際に写真を撮影した探査と同様ですから、一応「実績」はあることにはなります。
おそらく、中国は最初は堅実にフライバイでの小惑星探査を目指し、その後ある程度まで技術が成熟してきた時点で着陸、さらにはサンプルリターンまでを行うのではないかと思います。サンプルリターンについては、現在開発中の月サンプルリターン探査機「嫦娥5号」の成否が大きく影響するのではないでしょうか。

大変注目すべき情報で、こちらは今後も注視していきたいと思います。

2017年3月7日(火)|Categories: 小惑星探査 (ブログ)|

嫦娥5号、8月にも打ち上げ場所へ移動、11月末に打ち上げ予定

このところ月探査関係の話題が多いですが、中国の月探査機「嫦娥5号」についての話題も入ってきました。
中国はいまちょうど、政治協商会議という大きな政治的な会議の時期で、それに合わせた国家的プロジェクトの発表が多くなっています。当然その中には、月探査なども含まれるというわけです。
この会議の席で、今年(2017年)打ち上げ予定の月探査機「嫦娥5号」が、8月にも打ち上げ場所である海南省の文昌衛星発射場に移動することになったとの発表がありました。人民網日本語版が伝えています。
さらに、打ち上げは11月末になるとのことです。

嫦娥5号は、中国がはじめて月からのサンプルリターン(試料回収)を行う探査機です。すべての工程は無人で行われ、地球の打ち上げからサンプル回収までは約1ヶ月を見込んでいます。
今回政治協商会議で発表を行ったのは、中国の月探査の総指揮を執る葉培建氏です。彼は全国協商委員の肩書も持っており、その席での発表はまさにふさわしいものであったといえるでしょう。

今回の嫦娥5号は、これまで中国が打ち上げてきた3機の月探査機に比べるとはるかに複雑なミッションになることが予想されます。そのため、早めに打ち上げ場所に移動し、しっかりと最終試験を行ったうえでの打ち上げを目指すようです。なお、嫦娥5号自体はすでにほぼすべての大型試験(重要な試験という意味でしょうか)を完了しているそうです。
海南省にある文昌衛星発射場は、中国でいちばん南に位置するロケット打ち上げ場所です。一般に、ロケットの打ち上げは南であればあるほど有利であることはご存じの方も多いでしょう。日本でも種子島に打ち上げ場があるのはそのような理由です。文昌衛星発射場は海南島のいちばん東にあり、東方向への打ち上げも有利です。
中国で最も新しいこの衛星発射場は2007年に建設許可がおり、昨年(2016年)には中国最大のロケット、長征7号の打ち上げに成功しました。基本的にこの文昌衛星発射場は、大型ロケットの打ち上げをメインに行っていくようです。今回の嫦娥5号も、中国の大型ロケット、長征5号を使用します。

今回早期に打ち上げ場所に運びこむ理由として、葉氏は衛星の複雑さを挙げています。
嫦娥5号は、サンプルを回収するという任務のため、全体が4つの構造に分かれる非常に複雑な衛星になっています。とりわけ、アポロなどもそうでしたが、月面から帰る際には上昇モジュールが月面から打ち上げられますが、その際に月面にある着陸モジュールにはロケットからの火炎が当たることになります。また、月面から離陸した上昇モジュールは軌道上で待機している軌道モジュールとドッキングして地球へと向かいますが、なにしろ38万キロも離れたところでの無人でのドッキングですから、技術的にも非常に難しいチャレンジになります。
このようなことが予想されるため、慎重を期したということがいえるでしょう。

さて、11月末に打ち上げられるとなると、タイミングとしてはあの「グーグル・ルナーXプライズ」、さらにいえばそれに参加している日本の月面ローバー「ハクト」の打ち上げ時期とわずかながら重なる可能性もあります。別にそれに合わせて打ち上げ時期を設定しているわけではないと思いますが、今年の後半は月探査がさらに盛り上がることは間違いないでしょう。

2017年3月6日(月)|Categories: 嫦娥5号|

月探査情報ステーションが宇宙ミュージアム「TeNQ」と提携しました

このたび、月探査情報ステーションは、東京・文京区の東京ドームシティ内黄色いビル6階にある宇宙ミュージアムTeNQ(テンキュー)と提携することとなりました。

TeNQロゴ

TeNQは「宇宙を感動する」をコンセプトとして、映像美とサイエンスを融合させた独自の展示を行う宇宙ミュージアムとして、2014年7月にオープンしました。それ以来、多くの方が来訪され、たいへん高い評価を得ている施設です。
音楽と映像美を体験感できる「シアター宙」(ソラ)では、まるで宇宙ステーションにいるかのように、覗きこむ形での映像体験という斬新なコンセプトのもと、4Kを超える圧倒的な精細美を誇る映像をお楽しみいただけます。
シアター宙を出たところにあるサイエンスエリアは、東京大学総合研究博物館との共同プロジェクトになっており、実際にガラス張りになった分室が展示となっています。また、過去・現在・未来の宇宙や宇宙探査についての解説などもあるほか、触れたり写真を撮ったり体験できるいろいろな展示もあり、宇宙探査に詳しい方もそうでない方も皆さんが楽しめるエリアとなっています。
そのほかにも、遊びながら宇宙について知ることができる「イマジネーションエリア」、宇宙と関連した展示を行う企画展示室など、宇宙をまるごと楽しめるミュージアムとなっています。

今回の提携により、日本最大級の月・惑星探査サイトと、日本でも最先端の宇宙ミュージアムが強固なネットワークで結ばれることになります。ウェブというサイバー世界とミュージアムというリアル世界の融合につながるとともに、展示内容をより最先端のものとしていくことができるなど、数多くの相乗効果をもたらすことが期待されます。

また、月探査情報ステーションのネットワーク、とりわけツイッターやフェイスブックなどのソーシャルネットワークを通して、TeNQの最新情報を皆様にもお知らせいたします。興味深い企画展やイベントのお知らせなどを、月探査情報ステーションのネットワークでも皆様にお届けいたします。
月探査情報ステーションで月・惑星探査の最新情報に触れたあとは、ぜひ、TeNQを訪れてみて下さい。

2017年3月3日(金)|Categories: お知らせ|

スペースX、2018年に2名を乗せた有人月周回飛行を実施すると発表

ことによると月探査、いや、宇宙開発の未来をも変えることになるかも知れない、まさにエキサイティングな発表です。
宇宙開発のベンチャー企業、スペースX社(スペース・エックス)は、2月27日声明を発表し、2018年中に2名の乗員を乗せた月周回飛行を実施すると発表しました。実現すれば、民間企業としてははじめての月周回飛行(あるいは「月飛行」といっても差し支えないでしょう)となります。また、人間が月の近くまで飛行するのは、1972年のアポロ17号による有人飛行以来、実に46年ぶりとなります。

まずはスペースX社のCEO(最高経営責任者)、イーロン・マスク氏のツイートから。シャレてますね。「私を月へ連れてって…OK」

民間による有人月飛行はこれまでにも計画はありました。宇宙旅行サービスを提供するスペース・アドベンチャーズ社が、ロシアのソユーズ宇宙船を利用して、今回と同じ月を回って帰ってくる宇宙旅行を提供しています。2005年に提案されたこの計画はDSEアルファ(Deep Space Expedition – Alpha)計画と呼ばれ、1人あたりの料金は1億ドル(日本円にしておよそ110億円)という破格のものでした。
この計画は一時、日本のJTBも取り扱いを行ったことで話題になりました(なお、現在JTBは本計画の取り扱いはしていません)。また、この計画自体、その後の進展は不明です。

スペースX社のリリースによると、打ち上げは来年(2018年)遅くになる予定で、月に着陸するわけではなく、月を一周して戻る帰還旅行になるとのことです。月に着陸するとなると着陸船の開発や実証などに相当な時間と手間、費用がかかりますので、この方式は理にかなっているといえるでしょう。
乗員は2名で、リリースによるとすでに「多額の前払金」を支払っているということです。ただ、リリースでは氏名は明かされておらず、健康診断などにより飛行に支障がないという結果が出ることを踏まえて公表するとスペースX社では述べています。

この2名の乗員については今年後半から飛行に向けた訓練や健康診断などを実施するとのことです。また、今回のメンバーに加え、他のメンバーでも興味を持っている方がいるとのことです。

今回の飛行は、スペースX社が有人飛行用に開発しているドラゴン宇宙船バージョン2(「ドラゴン2」=ドラゴン・ツー)を使用します。この宇宙船は、NASAの民間有人飛行プログラム(CCP: Commercial Crew Program)に沿って開発されたもので、今年(2017年)後半には無人での最初のテスト飛行を実施する予定です。
スペースX社では、人を乗せたドラゴン2宇宙船の飛行を来年の第2四半期には実施したいとしています。基本的に、ドラゴン2宇宙船の任務は国際宇宙ステーションへの物資補給及び人員輸送となりますが、スペースX社は年間4回の打ち上げを想定しています。そして、来年の終わり頃には月へ向けて飛行ということで、かなりハイペースな開発計画となります。

この有人月周回飛行の打ち上げは、アメリカ・フロリダ州にあるケネディ宇宙センター、それもアポロ宇宙船を打ち上げた「39A」射場となる予定です。この射場は、2月19日(アメリカ東部時間)にスペースX社が同社のロケット「ファルコン9」を打ち上げた場所でもあり、ミッションよりもその歴史的な観点が注目されたといってもよいでしょう。
ここから月に向けて打ち上げられるドラゴン2宇宙船は、月の周りを周回して飛行する約1週間の飛行を実施することになっています。
打ち上げるロケットは、現在スペースX社が開発中の大型ロケット「ファルコン・ヘビー」です。このファルコン・ヘビーは、今年夏の打ち上げに向けて現在開発が進められており、推進力としてはアポロ計画で使われた史上最大級のロケット「サターンV」(サターン・ファイブ)の3分の2ほどの力を持っているということです。

なお、気になる「2人の旅行者」ですが、すでにいろいろな名前が取り沙汰されています。アメリカの宇宙開発ウォッチングサイトとして有名なNASA Watchは、そのツイッターで、映画監督のジェームズ・キャメロン氏やグーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン氏などの名前をあげています。

ジェームズ・キャメロン監督は、小惑星資源採掘会社のプラネタリーリソーシズ社にも出資しています。セルゲイ・ブリン氏は、2008年にスペース・アドベンチャーズ社と契約し、国際宇宙ステーションまでの宇宙旅行を行うことを発表していますが、まだ実施されていません。
要は2人とも「ガチの宇宙好き」ということです。

今回の発表について、スペースX社はNASAに対し謝意を表しており、「商業有人プログラム(CCP)がなければ今回の開発はできなかった。ドラゴン2の開発資金は大半がCCPからの援助によるものである。今回の月への有人飛行はNASAも支援を約束しており、長期的には(政府が行う)有人飛行のコスト削減を通して、政府と民間両方に利益をもたらすものである。」と述べています。

NASAもこの発表に対して早速声明を出しております。以下のような内容です。

NASAは、開発パートナーがより高い目標を狙うことを賞賛しています。

NASAは、今回の月有人飛行が打ち上げ安全基準を満たすよう、スペースX社と緊密に協力を行っています。また、国際宇宙ステーションへの物資補給についても協力も継続しています。

数十年にわたり、NASAはアメリカの民間企業に対し、アメリカの人々の能力を高めること、そして商業的イノベーションの種をまくことにより、人類全体の宇宙における未来を推し進めていくことを続けてきました。

NASAは商業的パートナーシップを通して業務の進め方を変えようとしています。それは、アメリカの強い宇宙経済を立ち上げることに貢献するものであり、NASA自身が次世代のロケットや宇宙船の開発に注力できることで、人類が月、そしてそれを越えた深宇宙空間への進出を続けていけることを目指します。

さて、今回のスペースX社の野心的な発表は、単に「そういう時代がきた」というを意味するものでしょうか? ひょっとするとスペースX社、さらにはNASAも含めての深謀遠慮があるのではないかという気が私(編集長)はしています。

まず発表のタイミングです。このタイミングは、先日トランプ政権がNASAに対し、現在開発中のオライオン(オリオン)宇宙船で2018年中に有人飛行を行えないかどうか打診したというニュースが流れたタイミングと重なっています。また、飛行実施時期も2018年でピタリと一致しています。
NASAは政権側からの打診には否定的な回答をしたようですが、それはそうでしょう。開発されたばかりの宇宙船にぶっつけ本番で人間を乗せるというのはあまりに危険だからです。
その代わりというわけではないでしょうが、ドラゴン2宇宙船での月飛行という形で、NASAとしては「技術協力先が見事に実施した」ということができますし、スペースX社としても自社の宇宙船とロケットの性能を示すことができます。アメリカ政府としてももちろん、両者が属する国としてその偉業を誇示することができます。三者ともハッピー、というわけです。

また、スペースX社としては、開発資金を集めるという目的もあるでしょう。昨年、スペースX社は2回の打ち上げ失敗事故を起こしており、すでに受託されている打ち上げが遅れているほか、自ら設定した火星への無人機打ち上げを2年遅らせ、2020年にすると発表しています。
スペースX社は、上で述べたようにちょうどいまファルコン・ヘビー開発の正念場で、いちばん資金が欲しいところです。ここで大きな計画を打ち上げることで投資家を「振り向かせ」、より多くの資金を得るということも念頭にある可能性があります。

ただ、いずれにしてもファルコン・ヘビーもドラゴン2宇宙船もこれから開発されるものです。何かが起こればスケジュールが遅れることは当然予想されます。
さらに、月への輸送ということですから、宇宙船やロケットに求められる信頼性も格段に高くなります。現時点ではドラゴン2宇宙船がテストされてから1年強での打ち上げとなるわけですから、いくら回数を重ねたとしても、ちょっと無理があるような気がしないでもありません。

それでも、おそらく今回の乗員は、そのリスクも含めて承知したものと思います。こういった「フロンティア精神」がいかにもアメリカらしいところですが、これから先この月旅行計画がどのように進んでいくのか、そしてその計画が、イーロン・マスクCEOが思い描く「火星有人飛行」へどのようにつながっていくのか、私たちもワクワク(そして少し心配)しながら見守りたいと思います。

【おことわり】本記事では、スペースX社が実施する計画を「月飛行」と表現しています。月探査情報ステーションでは、現地に赴き、科学的・技術的な作業を実施するものを、有人・無人を問わず「探査」と呼び、単に現地に行って帰ってくるという計画については「飛行」「旅行」と表現します。

2017年3月1日(水)|Categories: 月探査 (ブログ)|