月探査情報ステーションをご覧の皆様、新年明けましておめでとうございます。

昨年はなんといっても、「はやぶさ2」の打ち上げが印象的な年でした。「はやぶさ2」は、成功裏に地球に戻ってきた「はやぶさ」の後継機という形をとっており、日本では次めて、月・惑星探査が、前の探査機の成果を受けて次に引き継がれるという「プログラム探査」として実施されたという点で、日本の月・惑星探査にとって大きな意味を持つものです。
探査自体はこれから2018年の小惑星到着まで、しばらく大きなイベントはなく、今年11〜12月に予定されている地球スイングバイまでは、私たちは探査機の動向を静かに見守ることになります。
また、昨年1年を振り返った記事でも話題にしましたが、中国、そしてインドのこの分野での著しい台頭が目立った年でもありました。とりわけ、インドの火星周回衛星「マンガルヤーン」の火星到着は、アジア初、世界でも4番め、中国も日本も成し得ていなかったものでした。さらにいえば、マンガルヤーン自体が2年という、月・惑星探査機としては並外れたスピードで開発されたことも、世界に大きな衝撃を与えました。この影響は今年以降、次第に大きな形で出てくると思います。

今年についてはまた別途記事を書きたいと思いますが、私が注目しているのは、まず前半(2月頃)でのアメリカの小惑星探査機「ドーン」のケレス到着でしょう。今や分類としては準惑星になってしまいましたが、ケレスは以前は「最も大きな小惑星」とされており、「はやぶさ」「はやぶさ2」などと違い、大きな小惑星の物性を調べるという点で非常に重要な探査機です。
そして7月、同じくアメリカの探査機である「ニューホライズンズ」が、いよいよ冥王星に到着します。9年間の旅を経てようやく辿り着く冥王星、そして、人類がはじめて探査機で垣間見る天体です。冥王星もまた「準惑星」となってしまいましたが、私たちはついに、この天体の素顔を人類としてはじめてみることになるのです。
一方、月探査については、中国の動向、そしてグーグル・ルナーXプライズ(期限は1年伸ばされ、2016年となりました)から目が離せません。
2010年12月に軌道投入に失敗した金星探査機「あかつき」の再挑戦も、年末に行われる可能性が高そうです。期待しましょう。

さて、月探査情報ステーションは、今年で17年めを迎えます。
昨年は新たに大正製薬さんがサポーターとして加わり、月探査情報ステーションは大きな力を得ることになりました。すでに、編集長1人でのページ執筆などの体制を変えるべく、動きを始めています。一部はすでに実現しており、今年早々にも成果をおみせできると思います。
長年にわたって構築されてきたサイト、そしてコンテンツは、今の状況では維持することが困難です。実際、「はやぶさ2」打ち上げや本執筆で多忙だった11〜12月は、サイトの更新がほとんど行えていませんでした。しかし、これについてもいよいよ、動き出すことになりそうです。
サイト全体を再構築し、コンテンツ構築システム(CMS)を導入して、複数人での編集、ページ作成負担の軽減を図る計画は、昨年「ムーンベース」(moonbase)導入という形で皆様にお知らせしましたが、それをさらに拡張する形でのシステム構築の話がスタートしようとしています。正式に決まり次第お伝えしますが、これが完成し、運用を開始すれば、月探査情報ステーションは17年目にして新たなスタートを切ることになるかと思います。

私自身のことでいえば、本サイトでこれまで書きためてきた内容、そして本サイトを通して培ってきたノウハウや思想を通して、この12月10日に『惑星探査入門』という本を上梓させていただきました。
本と合わせてお読みいただくことで、本サイトの内容の理解はさらに進むのではないかと思います。
今年も私は、皆様に月・惑星探査の情報を「素早く、わかりやすく、正確に」お伝えしていくというミッションを継続し、頑張ってまいります。
皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

月探査情報ステーション 編集長  寺薗 淳也