皆様、新年あけましておめでとうございます。

昨年(2017年)を振り返ってみますと、全体的に非常に大きな話題はそれほどなかったものの、今後に向けた準備の年になりそうな感じがありました。その中でも、土星探査機カッシーニのミッション終了は大きな話題になりました。最後に土星大気に突入する際の予想図を、「はやぶさ」の大気圏突入と重ね合わせた方も多かったようです。

さて、2018年は、月・惑星探査にとって非常に大きな転換点になりそうです。
昨年後半から月探査に関する話題が盛り上がっています。2018年の前半は月探査の話題で埋め尽くされそうです。
3月を期限とするグーグル・ルナーXプライズは、いよいよ各チームが打ち上げの段階に入ってきます。日本のチーム「ハクト」もその中に入ります。どのチームが月に到達し、ミッションを達成できるか、ハラハラドキドキの競争が展開されるでしょう。
ちょうど同じ1〜3月に、インドは月探査機「チャンドラヤーン2」を打ち上げます。こちらはインド宇宙研究機関の着陸機で上記の競争とは別ですが、タイミングが全く同じであるばかりではなく、インドの宇宙開発技術の高さを示すものとなりそうです。
月探査に熱心な中国は、本来であれば昨年打ち上げ予定であった無人サンプルリターン機「嫦娥5号」を今年後半に、史上初となる月の裏側への着陸を目指す「嫦娥4号」を早ければ今年中に打ち上げる予定です。

そして、昨年暮れから一気に加速してきた有人月探査への流れは、今年もさらに加速されていくでしょう。
NASAが有人月探査の検討をスタートさせたり、日本がNASAの計画「深宇宙ゲートウェイ」に参画することを検討するなど、2020年代なかばと予想される、国際共同の月面宇宙ステーション実現に向けて、アメリカ、ロシア、そして日本の動きが活発になっています。
この流れの背後には、3月に日本(東京)で開催される宇宙機関の会議「第2回国際宇宙探査フォーラム」(ISEF2)があります。この会議は、世界の宇宙機関の長などが集まる非常に重要な会議で、おそらくこの席で、今後の有人宇宙探査の方向性が決められるのではないかと考えられます。そして、日本は議長国としてこの会議をリードし、有人宇宙探査についても方向性を示していくことが求められます。その1つの流れが有人月探査、そして月周辺の国際宇宙ステーションになるのではないでしょうか。
一方、これらについては問題山積という状況であり、それらをどう解決するのか、また予算負担をどう国民に説明するのかが問われることになるでしょう。

一方では、民間部門での月探査も大いに進むと思われます。
昨年12月には、日本の宇宙ベンチャー企業アイスペースが、月周回衛星と月着陸衛星の開発構想を打ち上げました。またすでに、アメリカの宇宙ベンチャー企業スペースX社は、今年中に有人月周回飛行を実現させると発表しています。
上記のような政府間の動きとは別に、民間による月探査の流れも加速し、両者が競い合いながら月に向けてのアプローチを取っていくのではないかと思われます。

今年は15年ぶりの火星大接近の年です。7月31日が大接近の日(最も近づく日)となっていますが、その前後は火星に関する話題が多数出てくるのではないでしょうか。2003年の火星大接近のときには、夜中まで科学館や天文台の観望会に行列ができる盛況ぶりでした。同じようなことがまた起こるかもしれません。
火星大接近はまた火星探査の好機でもあります。今年は火星探査機「インサイト」(本来は2016年打ち上げ予定でした)が打ち上げられます。さらに、2020年の打ち上げに向けて、各国の火星探査機の開発が進められるのではないかと思われます。

この火星大接近の頃には、もう1つの「お楽しみ」があります。
2014年12月に打ち上げられ、目的地「リュウグウ」への旅を続けてきた小惑星探査機「はやぶさ2」が、いよいよ6〜7月に目的地に到着します。
リュウグウの姿はある程度わかってはいますが、初代「はやぶさ」のときと同様、いってみるまでは本当の、そして細かい姿はわかりません。私たちの前にどのような天体の姿が現れるのか、楽しみです。
そして同じ小惑星サンプルリターン機であるアメリカの「オサイレス・レックス」も、年末には目的地の小惑星ベンヌに到着予定です。日本とアメリカが同時に小惑星の探査を行うことで、小惑星についての新たな発見をお互いに競い合う形になるでしょう。
そして、日本の探査機といえば、水星探査機「ベピ・コロンボ」が10月に打ち上げられます。日本ではじめての水星探査機でもあり、またヨーロッパとの共同開発となります。現地到着は打ち上げから数年かかりますが、これもまた大きな話題になるでしょう。

このように、月・惑星探査に関して話題が尽きないと考えられる2018年、月探査情報ステーションは開設から満20年を迎えます。
1998年11月2日、宇宙開発事業団(当時)など4団体が共同で設立したウェブサイト「インターネットシンポジウム ふたたび月へ」が、いまの月探査情報ステーションの母体でした。それから20年、運営主体やドメイン名などを変えつつ、その中心となる考え方や内容などをそのまま受け継ぎ、発展させる形で、月探査情報ステーションの運営が続けられてきました。
節目の年となる今年、早速1月上旬には編集長の2冊めの本『夜ふかしするほど面白い「月の話」』が出版されます。また、宇宙ミュージアムTeNQでは、月探査情報ステーション協力のもと、企画展「Over the Sailor Moon ~宇宙への招待~」がちょうどいま開催されています。
開始当時は1日に3000アクセス程度だったサイトは20年で大きく成長し、日本を代表する月・惑星探査の情報サイトとなりました。さらにその活動の幅はサイバー世界だけにとどまらず、本やイベントという形で現実の世界へ大きく広がりつつあります。
この1年、月探査情報ステーションは、20周年を祝いつつ、さらに「次の20年」を目指す形でいろいろな活動を展開していまいります。インターネットの世界で、リアルな場所で、多くの方に月の面白さ、惑星探査の意義をお伝えしていきたいと思います。どうぞご期待ください。

20年前に想像していた「ふたたび月へ」の世界が実現されようとする今年、月探査情報ステーションは、初心を忘れず、そしてさらなる飛躍を目指し、精力的に突き進んでまいります。
皆様のご支援・ご愛顧を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2018年1月1日
月探査情報ステーション 編集長 (合同会社ムーン・アンド・プラネッツ 代表社員)
寺薗 淳也