19日に火星大気に突入し、着陸を目指したものの行方不明になっている、ヨーロッパとロシア共同の火星探査「エクソマーズ」の着陸実証機「スキアパレッリ」。状況についてはヨーロッパ宇宙機関(ESA)が現在分析中ですが、どうやら地上に到達しているものの、何らかの事態…恐らくは最悪の事態が発生している可能性が高くなってきました。

NASAは21日(アメリカ現地時間)、NASAの火星探査機「マーズ・リコネサンス・オービター」が撮影した、スキアパレッリと思われる残骸の写真を公開しました。

スキアパレッリと思われるものを示す写真

NASAの火星探査機「マーズ・リコネサンス・オービター」が撮影した、スキアパレッリと思われるものの写真。写真は2枚の写真を重ね合わせ、アニメーションとしたもので、1枚の写真はスキアパレッリ到達前の今年5月19日、もう1枚は10月20日に撮影されたもの。右側は黒い枠の拡大。写真のスケールはそれぞれの黒い線を参照。黒い枠の範囲に、5月の写真にはなかった黒い点が10月の写真には写っている。黒い枠の右下にごく小さく写る白く明るい点は、スキアパレッリのパラシュートと思われる。(Photo: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)は2005年に打ち上げられ、火星軌道投入から10年を経過した現在でも火星の周りを周回しながら観測を続けています。このMROが誇る観測機器が、火星表面の最大で50センチメートルのものまで見分けられるというカメラです。MROのカメラは2種類からなっており、この高解像度を誇る「高解像度撮像装置」(HiRISE)と、解像度は若干低いものの広範囲を一度に撮影することができる「広範囲カメラ」(CTX)からなります。
今回スキアパレッリの残骸と思われるものを撮影したのは、このCTXです。

上記写真は、スキアパレッリが火星に到達する前の今年5月19日に撮影された火星の写真と、同じ場所をスキアパレッリ到達後の10月20日に撮影したもの、2枚を重ねあわせてアニメーション上にしたものです。同じ場所を撮影していますから、動かないもの(例えばクレーターなどの火星の地形)と、動くもの、あるいはあとから加わったものは新たに撮影した写真に写っています。
写真右側は、写真の黒い枠の部分を拡大したものです。

まず一目でわかるのが、黒い枠の部分左上の方にある黒い点です。NASAはこれがスキアパレッリだと考えているようです。右側の拡大図を見るとお分かりの通り、この黒い点は楕円形をしており、その大きさは短いところで15メートル、長いところで40メートルとなっています。
スキアパレッリの直径は2.4メートルです。楕円形の大きさは着陸機の大きさからすると明らかに巨大で、着陸時の逆噴射(ただし、地上に降りるときには噴射は停止しています)の影響を考えたとしても明らかに大きすぎます。
NASAは、大きさからして、降下途中で分離された熱シールドの残骸と考えるには大きすぎることから、着陸機であろうと考えているようですが、それにしてもやはり大きすぎます。さらに、スキアパレッリはほぼ円形であるにもかかわらず、形状が楕円形になっているというのは不自然です。
このことから、…あまり考えたくないことではありますが、最悪の状況として、スキアパレッリが減速できずに火星地表に激突し、その際にできた穴(クレーター)をCTXが撮影した可能性が考えられます。
楕円形の形状が、中心部からだんだんと薄くなっていることからしても、衝撃によってできた穴(クレーター)の可能性を示唆しているようです。

また、写真の黒い枠の右下のところに明るい白い点がありますが、NASAはこれはパラシュートだと考えているようです。

NASAがまず超高解像度のカメラを使用せず、あえて低解像度の画像で撮影したのは、最初にスキアパレッリがどこにあるかを広い範囲で撮影した画像から特定し、その後より詳しい状況を高解像度のカメラ(HiRISE)で撮影しようという意図があるものと考えられます。
おそらく、場所が特定されたことから、数日内にHiRISEによる撮影が行われ、より詳しい状況が上空から確認できるものと思われます。そのときまで、あるいはESAの解析結果が出るまで断定は避けたいと思いますが、スキアパレッリに関しては最悪の事態を覚悟しなければならない状況が出てきたようです。

【2016年10月22日午後2時追記】ESAはこのNASAの写真を分析した結果、着陸機がかなりのスピードで地面に激突した可能性が高いという見解を発表しました。詳細はこちらの記事を参照して下さい。