アメリカ国防総省やアメリカ航空宇宙局(NASA)などが協力して、1994年1月に打ち上げられた月探査機クレメンタインは、約2ヶ月にわたって月の周りを回り、100万枚を超える写真を撮ったり、月の起伏などについてのデータを集めたりしました。

さて、クレメンタインには月の観測を終えた後、今度は小惑星ジオグラフォス(Geographos)に向かう予定が組まれていたのです。予定では、同じ年の8月31日に、ジオグラフォスへフライバイを行うことになっていました。
しかし、1994年5月7日、月からジオグラフォスに向かおうとしているときに、搭載コンピュータに不具合が発生してしまいました。このため、探査機に積まれていた噴射装置(スラスター)が動作しっぱなしになってしまい、全ての燃料を使い切ってしまったのです。

この不具合のために、クレメンタイン探査機はジオグラフォスに行くことができなくなってしまいました。それだけではなくて、スラスターの暴走によって衛星は毎分80回転という異常なスピードで回転するようになってしまいました。
探査機が制御できなくなったため、探査計画はこの時点で中止されました。現在、クレメンタイン探査機は、地球を回る軌道を回り続けていると思われます。しかし、今どこにいるのかは全くわかりません。まさに、クレメンタインは”lost and gone forever“(永遠に失われた)となったわけです。


■関連Q&A


■関連ページ