月探査情報ステーションとは

月探査情報ステーションは、月・惑星探査の情報を中心として、月の科学、さらには月や月・惑星探査にまつわる様々な情報を皆様にお届けする、「月・惑星探査のポータルサイト」です。

このサイトでは、月を中心として、「科学」という視点を中心に取り上げ、月についてどのようなことがわかり、どのようなことがわかっていないのかを解説しています。

そして、まだわからないことを調べようとする「探査」(ミッション)について、最新情報をいち早くお知らせするほか、その背後にある科学などについて、わかりやすく解説しています。

月について、私たちはどの程度のことを知っているのでしょうか? ここでは、月の不思議や謎、解明された事実などをまとめました。科学だけではなく、雑学などの広い話題も網羅しています。

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月は、見て楽しむものでもあります。このカテゴリーには、いろいろな楽しみ方ができるよう、クイズや参加型プロジェクト、ギャラリーなどを取り揃えてあります。

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人間は月に降り立ち、惑星へ探査機を飛ばしてきました。そのチャレンジは今も続いています。ここでは、そういった私たちの外の世界への挑戦をご紹介します。

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お知らせ

1908, 2016

オサイレス・レックス(オシリス・レックス)「探査の概要」ページを改訂

オサイレス・レックス(オシリス・レックス)の打ち上げが近づいてきました。
探査の内容をひと目で知ることができる「探査の概要」のページを改訂し、最新の情報に更新しました。同時に、これまでの旧・月探査情報ステーションデザインのページから、新デザインのページヘと移行しました。これにより、URLが変更されています。

旧ページ…http://moonstation.jp/ja/pex_world/OSIRIS-REx/outline.html
新ページ…http://moonstation.jp/challenge/pex/osiris-rex-asteroidexp/outline

リンクをされている方はお手数ですが新ページヘのリンク変更をお願いいたします。

1908, 2016

「中秋の名月はいつ」のページを小改良

月探査情報ステーションでもっとも人気があるページといってもよい、Q&Aページの「今年(2016年)の中秋の名月はいつですか」を少し改良しました。新たにこの先4年間(2020年まで)の中秋の名月の日付を直接このページで確認できるようになったほか、文面や構成を少し改良しました。

1908, 2016

「はやぶさ2」の目的地の小惑星リュウグウの観測に高校生が成功

夏休みらしい(いい意味での)ニュースです。
「はやぶさ2」の目的地である小惑星リュウグウを、高校生が観測することに成功しました。

この観測が行われたのは、岡山県井原市美星町にある美星スペースガードセンターです。この施設は(一財)日本宇宙フォーラムが所有し、NPO法人である日本スペースガード協会が運営しています。
この施設では、地球に近づく小惑星の発見や追跡、宇宙デブリ(宇宙ゴミ)の追跡などの観測を年間を通して行っています。そのための施設として、口径1メートル、50センチの望遠鏡が設置されています。

ここで今年の8月8日〜10日にかけて、高校生たちに小惑星などの観測を体験してもらう「観測体験合宿」が実施されたのですが、この合宿での観測で、兵庫県立舞子高校2年の辻希(のぞみ)さん、金村小春(かなむらこはる)さん、倉敷天城高校2年の伊藤友(いとうとも)さんのチームで観測したデータが、小惑星リュウグウを捉えていました。
なお、観測は1メートル望遠鏡で行われました。

小惑星は発見するだけでもなかなか大変ですが、すでに見つかっている小惑星を観測することにより、より正確な軌道を調べることができ、「はやぶさ2」の運用にも貢献することになります。高校生たちが挙げたビッグな成果といえるでしょう。
なお、今回辻さんはリュウグウの位置測定と測光も行い、この解析によって得られたデータは、国際的に小天体のデータを集めている国際小惑星センター(MPC: Minor Planet Center)に送られました。今後MPCにより、リュウグウのより正確な軌道が発表されることになるでしょう。

さて、小惑星の観測を行う際には、同じ方向に望遠鏡を向け、時間をおいて(例えば数分〜数十分)何枚かの写真を撮影します。こうやって撮影した数枚の写真を重ね合わせると、遠くにある恒星(いわゆる「星」)はほとんどといっていいほど動かないため重ね合わせても同じ位置にありますが、この恒星に比べてはるかに私たちに近い位置にある小惑星はその写真の中で動いてみえます。
以前は写真をまさに「パラパラマンガ」の要領で見比べて小惑星を発見していたのですが、現在ではすべてがデジタル化され、写真をデジタル形式で重ね合わせることで、移動する天体を見つけることができます。

この要領で、観測した写真を重ね合わせたものが下のアニメーションです。さて、この中からリュウグウ(動いている天体)を発見できますか?

なお、今回の大発見につながった「星の学校」は、(一財)日本宇宙フォーラム、井原市美星天文台、NPO法人日本スペースガード協会が共同で実施しています。

はやぶさ2ウェブページの記事
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20160810/
はやぶさ2 (月探査情報ステーション)
http://moonstation.jp/ja/hayabusa/2/

1908, 2016

オサイレス・レックス(オシリス・レックス)の打ち上げが近づく

これまで日本の探査機は「日本版○○」といわれることが多くありました。しかし、今回のこのアメリカの探査機に限っては、「アメリカ版はやぶさ」というキャッチフレーズがよく使われるという意味で、ある意味日本人にも馴染み深いものになるのではないでしょうか。

そのアメリカ版はやぶさ…オサイレス・レックス(オシリス・レックス)の打ち上げが迫ってきました。
打ち上げ時刻は、アメリカ東部夏時間で9月8日午後7時5分(日本時間では翌9月9日の午前8時5分)です。

オサイレス・レックスは、NASAがはじめて行う小惑星からの無人サンプル・リターン計画です。「NASAがはじめて」(しかも日本の方が先)というのはかなり珍しいですが、いずれにしてもそうなのです。
オサイレス・レックス探査機は、小惑星ベンヌへ向かい、サンプルを採取し、地球へと持ち帰ります。採取するサンプルの量は60〜2000グラム(最大で約2キログラム)と予想されています。日本の小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星のサンプルを持ち帰ったといっても、サンプル採取機構がうまく動作しなかったこともあって結局微粒子にとどまってしまったことを考えますと、もし2キロものサンプルを持ち帰ることができれば非常に大きな成果となります。

オサイレス・レックスの目的は、「はやぶさ」と同じで、小惑星のサンプルを調べることで、太陽系の成り立ち、地球など惑星ののなりたちなどを知ることにあります。小惑星は、太陽系ができた頃の物質をほぼそのまま残している、いわば「太陽系のタイムカプセル」です。その物質がどのようなものかがわかれば、私たちの地球、そして私たち生命を作った物質がどのようなものであったかを知ることにつながっていくのです。
このオサイレス・レックスは英語でOSIRIS-RExという名前を書きますが、これは Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security-Regolith Explorer (直訳しますと「(小惑星の)起源・スペクトル情報の解釈・資源の同定・安全につながる情報の探査を行う、レゴリス(からサンプルを採取する)探査機」となります)という、かなり無理やりな名前の頭文字を取ったものです。ただ、それぞれの単語には深い意味があります。

スペクトル情報というのは、単にサンプルを採取するだけでなく、目的地の小惑星ベンヌを詳細に(リモート探査で)調べて情報を取得するということも目指しています。
資源探査という言葉には、小惑星が将来、人類にとって有用な資源を採取する場所になる可能性があるという意味がこめられています。実際アメリカではすでに小惑星からの資源採掘を目的としたベンチャー起業が複数立ち上がっていて、今回のオサイレス・レックスの探査によって得られる情報は、これらの資源採取・採掘にとっても大きな意味を持つことでしょう。
「安全」という言葉はあまりピンとこないかもしれません。しかし、小惑星、それもベンヌのように地球に近いところにいる小惑星(地球近傍小惑星)を調べることは、将来地球にこういった天体がぶつかってくる可能性や、それを避けるための方策を研究する上でも非常に重要な役割を果たします。NASAは実際、小惑星の地球衝突の可能性を研究し、それを避ける方策を研究する「小惑星グランドチャレンジ」という計画を進めており、今回の探査のデータはそこにも確実に活かされることでしょう。

探査機は打ち上げ時の重量が2110キログラム、打ち上げはアトラスV(411型)ロケットで、アメリカ・フロリダ州のアメリカ空軍ケープカナベラル宇宙センターで行われます。なお打ち上げは、9月8日(現地時間)から34日間可能です。
打ち上げ後、目的地の小惑星ベンヌまでは約2年の飛行で、2018年に到着します。ここでサンプル採取や現地観測を行い、帰還は2023年9月の予定です。

NASAは最近小惑星探査へ大きく傾倒しています。小惑星に宇宙飛行士を送り込むとともに小惑星の一部を回収しようという「アーム」(ARM: Asteroid Return Mission)を含めた「小惑星イニシアチブ」という大きな枠組みをスタートさせ、これを火星有人飛行への足がかりにしようとしているのです。
オサイレス・レックス自体は、「はやぶさ」が小惑星イトカワのサンプル回収を行ったあと、2006年にスタートしました。いわば、日本の探査に刺激されて立案された計画ともいえるのですが、今やこのミッションは、NASAの小惑星に向けた意気込みを示すものとなっているといえるでしょう。
その意気込みは、NASA本部の科学ミッション部門の副部門長であるジョフ・ヨーダー氏の次の言葉に現れています。「この探査は、私たちの国(アメリカ)が太陽系、そしてその先に赴いて探査を実施し、宇宙全体、そしてこの私たちの地球をより深く理解しようとしていることの1つのよい例といえるだろう。NASAの科学こそはこの惑星の科学的な発見の大きな原動力であり、オサイレス・レックスは、『革新し、探求し、発見し、そして鼓舞する』(innovate, explore, discover and inspire)という、本部門の使命を象徴するものである。」

オサイレス・レックス計画の総責任者であり、私(編集長)とも何回かお話しさせていただいている、アリゾナ大学ツーソン校のダンテ・ローレッタ博士は、「小惑星ベンヌの新鮮なサンプルを得ようというオサイレス・レックスの7年にわたる旅はまさに今始まろうとしている。探査チームは素晴らしい探査機を作り上げた。ベンヌの調査には十分すぎるほどの科学機器を搭載しており、科学的に貴重な宝物(=サンプル)を持ち帰ってくるだろう。」と、探査への自信をのぞかせています。

オサイレス・レックスのプロジェクト・マネージャーであるNASAゴダード宇宙飛行センターのマイク・ダネリー氏は、「この打ち上げは、私たちの途方もない努力の上にようやく実現できたものであり、それは探査チームに属する科学者、技術者、技術支援者、財務担当者など、すべてのチームメンバーの力によるものである。私はこのチームを本当に誇りに思う。そして、便雨への、そしてベンヌからの旅を楽しみにしている。」と述べています。そうです、今度は『戻ってくる旅」もあるのです。

オサイレス・レックス探査機には、小惑星をリモートで調べるための5つの科学装置、そしてサンプル採集装置(TAGSAM: タグサム、Touch-And-Go Sample Acquisition Mechanism)が搭載されています。TAGSAMは「はやぶさ」シリーズの、弾丸を打ち込んでその破片を採取するやり方とは異なり、窒素ガスを小惑星の表面に噴射し、舞い上がった砂や小さな岩・石のかけらを採集するという方法をとります。この成否も、今回のミッションの見どころといえるでしょう。

オサイレス・レックスは、ちょうどいま小惑星に向かっている日本の探査機「はやぶさ2」と重なる形となりますが、両者は決して敵同士というわけではなく、よいライバル、というよりむしろお互いに目的を同じくする「友だち」に近いと思った方がよいでしょう。実際、日本とアメリカ間では両ミッションでの協力計画が結ばれていますし、「はやぶさ2」の関係者も打ち上げに招待されるなど、ミッションチーム同士も交流があります。もちろん私も、ダンテさんとは広報面などで協力していくことになります。
あとは無事の打ち上げ、そして7年間にわたる旅路の無事を祈るのみです。私も成功を心から祈っています。

NASAのプレスリリース 
http://www.nasa.gov/press-release/nasa-prepares-to-launch-first-us-asteroid-sample-return-mission
オサイレス・レックス (オシリス・レックス) (月探査情報ステーション)

オサイレス・レックス (オシリス・レックス) – OSIRIS-REx


「はやぶさ2」とともに太陽系誕生の謎に迫る …ダンテ・ローレッタ氏インタビュー (ファン!ファン!JAXA)
http://fanfun.jaxa.jp/feature/detail/5579.html
※2015年9月にJAXAウェブサイトにて公開されたインタビューです。本ミッションの概要を含め、ダンテさんの人柄がにじみ出る内容となっています。

おことわり
この探査計画は、多くの報道やブログ等において「オシリス・レックス」と呼ばれています。本来「オシリス」とは、日本語で古代エジプトの神の名前の呼び名とされているものです。もちろん、探査機の名称も強引にそれに当てはめているわけですが、OSIRISという単語については、アメリカでの現地発音とは異なった表記となっています。 月探査情報ステーションでは、探査記名についてはできる限り打ち上げ当事国での発音に近い形で表記することとしております。このため、このプロジェクトのメンバーへ確認の上、本サイトでは、もっとも現地(アメリカ)における発音に近い「オサイレス・レックス」という表記を用いております。

1908, 2016

月探査情報ステーションの支出・収入情報を更新

月探査情報ステーションの支出及び収入の情報を、本日現在の最新のものに更新いたしました。合わせて、収入で一部日付が誤った記述があったものを修正いたしました。大変失礼いたしました。

1408, 2016

北朝鮮が月探査を計画!?

月探査情報ステーションブログでは、めったに「!?」という感嘆符は使いません。あくまでも情報は信頼したい、そう思っているからです。
ただ、今回の場合、どうしてもこの「!?」をつけたくなる情報なのです。なにせ相手は北朝鮮です。そう、あの、北朝鮮です。あの国が月探査…? もちろん、すでにロケット(事実上の弾道ミサイル)の開発は進めており、技術はそれなりに蓄積されているにしても、経済や求められる宇宙技術のレベルを考えると、どうみても荒唐無稽としか思えないのですが、なにしろ北朝鮮の高官がそう発言している、というのですから、決してガセネタやギャグではありません。
以下、ロシアのインターネット系ニュースメディア、スプートニクの英語版の情報をもとに、この話題を追いかけていきましょう。

それによると、北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会 (North Korean National Aerospace Development Administration)の科学研究部門長であるヒョン・カンイル (Hyon Kwang Il) 氏が、北朝鮮は同国の宇宙開発・宇宙利用を阻止しようとするすべての企みに打ち勝ち、最終的には北朝鮮の国旗を月にはためかせることになるだろうと、通信社(記事から見るとAP通信と思われます)に語った、ということなのです。

「アメリカとその同盟国は我々の宇宙開発を阻止しようと躍起になっているが、我が国の宇宙開発、そしてそれに携わる科学者たちは必ずや宇宙空間を制し、北朝鮮国旗を確実に月面上にはためかせることであろう。この計画を実施するため、すでにプロジェクトは動き出しており、多くの成功をみている。」(ヒョン・カンイル氏)

もちろん、いきなり月探査衛星を打ち上げるというのは無謀です。北朝鮮もそのようなことは考えていないようです。
そこで、第1段階としては、地球周回軌道に地球観測衛星を打ち上げることで、人工衛星の開発技術、とりわけ通信技術を磨くことに重点を置くとのことです。これについてもヒョン氏は、月に向けた準備だと述べています。

そして、究極的には「我が国は有人宇宙飛行技術を習得し、科学的な実験を実施し、月への飛行を達成し、月探査を実施する。さらには他の天体への探査をも実施することになるだろう。」とヒョン氏は述べています。

ご存知の通り、北朝鮮は核開発により国際社会から厳しい制裁を受けており、核開発技術、そして核兵器を運搬する技術についての開発は禁止されています(もちろん、北朝鮮はそれを破りまくっていることはご存知のとおりです)。運搬する技術にはロケット(つまり、日本のニュースで繰り返される「事実上の弾道ミサイル」)も含まれており、北朝鮮がいくら「平和目的である」と強弁しようとも、あるいはそれが核兵器運搬用ミサイルの技術開発ではないと主張しようとも、ロケット開発は国際法違反となります。
また、北朝鮮はこれまで4回(1998年、2009年、2012年、2016年=今年)にわたって人工衛星の発射(日本の報道での言葉を借りれば「人工衛星の発射と称するミサイル発射実験)を実施しています。そして今年2月に実施されたロケット発射によって打ち上げられた「光明星4号」については、アメリカも地球周回軌道への投入を確認しています。
また、打ち上げ軌道はすべて南方向で、これは地球を縦に周回する「極軌道」と呼ばれる軌道へ衛星を投入することを意味しています。これらは地球観測衛星で使われることが多い軌道で、上記のヒョン氏の言葉「第1段階ではまず地球観測衛星」とも合致します。
とはいっても、ここから月探査というのはかなり飛躍がある…つまり、上記の言葉は、よく北朝鮮がやるような壮大な言葉ではないか、と思うの人は(私を含め)少なくないことでしょう。

ただ、ロシアの同じくインターネット系ニュースメディア、「がゼータ.ru」(gazeta.ru)に掲載された論評記事では、必ずしもそうではなく、北朝鮮が「真面目に」月を目指している可能性がある、との考察を掲載しています。それによると、
北朝鮮がアジア諸国の中で比較的早く、ロケット技術を確立させているという点は注目すべきであろう(編集長注: アジア諸国でロケット技術を確立し、継続的な打ち上げを実施しているのは、日本と中国、インド。イランと北朝鮮、韓国が開発中。ここにはイスラエルは含まない)。北朝鮮の宇宙開発(ロケット開発)は朝鮮宇宙空間技術委員会(編集長注: 記事中ではCommittee of Space Technologyとなっていますが、先のNational Aerospace Development Committeeと同組織です。なお、KCSTと略されることもあります)が監督しており、2012年12月2日には、初の人工衛星の打ち上げに成功した(編集長注: 光明星3号の2号機)。これにより、北朝鮮は世界で10番目に独力で人工衛星を打ち上げた国となった。北朝鮮は自国で開発された技術による宇宙開発の能力を持ち、それらを使って韓国の上を飛行することが可能だ(編集長注: 光明星のシリーズの飛行ルートは、厳密には韓国の西の公海上となります)。
北朝鮮は、すでに弾道ミサイルをベースとした3タイプの3段式のロケットを保持しており、これは旧ソ連のロケットの技術導入により開発されたものである。2016年2月にも、光明星4号を地球周回軌道に投入させている。
問題は、北朝鮮のロケット技術者が、このような小型衛星ではなく、大型衛星を打ち上げることができる大型のロケットを開発できるかどうかだ。

西側の専門家の意見はどうでしょうか。AP通信に語った専門家の意見では、北朝鮮が月探査を実施することはおそらく可能ではあるだろうが、時間がかかるとの見方を示しています。北朝鮮のミサイル及びロケットの専門家であるマーカス・シラー氏によれば、「北朝鮮が月軌道に到達できるとすれば、どんなに早くても10年、あるいはもっとかかるだろう…もし彼らが真剣に目指すとして、ではあるが。私の個人的な推測では、彼らは朝鮮はするだろうがおそらく失敗するだろう。そしてあと20年は北朝鮮の月探査機をみることがないだろう。」という意見です。
また、ロシアの専門家の意見もほぼ同様です。ロシア国防省第4中央研究所を退役した上級将校でもあるウラジミール・ドボーキン氏は、彼自身が1960年台から北朝鮮のミサイル開発プログラムに関わっていたという経験をもとにして、それでもなお月まで探査機を持っていくことには悲観的な見方を示しています。

「彼らは(月探査機を打ち上げるための)超大型ロケットを開発する技術的基盤もなければ、そもそも月探査機を開発することも難しいだろう。そのような(困難な)技術の習得には数十年という長い年月を必要とする。大体、北朝鮮がそのような計画を国家として主導しているかどうかさえ疑わしい。」

一方でガゼータ.ruは、2012年12月の光明星3号の打ち上げに触れ、この100キログラムの人工衛星の打ち上げ技術を拡張すれば(することができれば)、将来より大きな探査機が打ち上げられ、究極的に月に到達できるのかという議論を続けて展開しています。少しみてみましょう。
この打ち上げに使われたロケット「銀河3号」は重さ91トン、長さ30メートル、直径が2.4メートル。一方、アメリカがアポロ計画のために開発したサターンV型ロケットは、重さが2965トン、旧ソ連が有人飛行のために開発したN1ロケットは2950トンあります。N1の直径は17メートルもあり、さらに現在ロシア最大のロケットであるエネルギアは打ち上げ重量2400トンとなっています。
ガゼータ.ruは、これらの数値の比較から「今の北朝鮮のロケットはこれらの月探査ロケットに比べて『ただ軽い』というレベル以上の差がある」としています。
もちろん、有人宇宙開発用にデザインされた超大型ロケットと、やっと地球周回軌道に100キロの物体を打ち上げるだけのロケット(ミサイル転用ロケット、あるいはミサイルそのものといってもいいでしょう)とを一度に比較するのはあまりにも乱暴だとは私(編集長)も思います。ただ、ガゼータ.ruはまだ続けます。

「打ち上げ重量は月に到達するための燃料を示している。月に飛行するのであれば、最低でも120〜140トンクラスの重量を打ち上げることが必要となる。10年という期間をとったとしても、わずか100キログラムの探査機(ペイロード)を140トンまでに拡張するというのはかなり困難であろう。」

ただ、無人探査機であればそうでもありません。120〜140トンというのはあくまで有人探査機の話で、無人であれば場合によっては数十キログラム、あるいは数キログラムでもいいと思います。この点で、ガゼータ.ruの議論はやや混乱しているように思えます。

いずれにしても、多くの専門家は、北朝鮮が(少なくともこの10年くらいのうちに)月探査を行う、というのは、有人・無人を問わず難しいであろうと述べています。私も同意見です。
では、なぜ高官があのような発言を行ったのでしょうか。
可能性として考えられるのは、国内向けであるということです。つまり、北朝鮮の宇宙開発は平和目的であり、それは将来の(究極の)目標として月探査を掲げているのだ、ということを示したいということではないでしょうか。
また、おとなり、韓国への牽制というのもあるかと思います。ご承知の通り、韓国は2018年の打ち上げを目指して月探査機とロケットの開発を行っています(こちらも予定通りすすめるかどうかかなり微妙な情勢ですが)。北朝鮮がそのような韓国の情勢をみた上で、うちでも月探査を進める予定だ(そして場合によっては韓国より早いかもしれない)という一種の「脅し」をかけているのかとも考えられます。

繰り返しになりますが、北朝鮮におけるロケット開発は国際法違反です。従ってこのような状況のもとであれば、たとえ目的地が月であろうと地球周回軌道であろうと、打ち上げるたびに国際的な包囲網はぐんぐん狭まることになってしまいます。それは究極的に、北朝鮮の月探査という夢(野望)をより遠いものにしてしまうことは間違いありません。
もし北朝鮮が究極の目標を月探査に設定するのであれば、行うべきことはまず最初に核開発技術の放棄、そして国際社会との対話への復帰、そしてその後、平和技術としての宇宙開発の推進ということになるでしょう。もっともいまの情勢をみて、そのような経路へ進むかどうかについては、私(編集長)はかなり悲観的ですが…。

スプートニク英語版の記事 
http://sputniknews.com/science/20160806/1044008215/russian-analysis-north-korean-moon-plans.html

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