11月2日、月探査情報ステーションは満25周年を迎えることができました。
25年、四半世紀にわたってウェブサイトを運営し続けることができたのも、ひとえに応援し、励まし、支えてくださる皆様の声があったからです。いつもご覧いただいている皆様に、心から御礼を申し上げます。

1998年11月2日、当時まだ「セレーネ」(SELENE)というコードネームで呼ばれていた日本の月探査機(後に愛称「かぐや」)のプロモーションとして、比較的まだ珍しかったインターネット上での広報という形式を用い、「インターネットシンポジウム ふたたび月へ」という時限のイベントサイトでスタートしたのが、本サイトの誕生でした。
その後2000年11月に現在の「月探査情報ステーション」に改名、恒久ウェブサイトとして公開が始まりました。

1998年当時、月探査ということ自体が日本ではまだ珍しかったことを思い浮かべると、いまの月探査ブームは本当に隔世の感があります。今や月探査を目指す民間企業が東京証券取引所に上場するなど、25年前ではとても考えられなかったことが現実になっています。
これはもちろん、アメリカが主導し、日本も参加するアルテミス計画が大元になっていますが、それだけではなく、月が新たな経済圏、新たなフロンティアになるという思いを持つ人が日に日に増えていることが大きいと思います。

月探査が日本政府の科学技術・外交政策の中で重要な柱に位置づけられ、月を目指す民間企業が次々に誕生する。このような時代がやってきたのも、月探査情報ステーションが地道な情報発信を続けてきたことが少しは貢献しているのではないかと、編集長としてちょっとだけでも自慢していいのかなと思う昨今です。

月への歩みはますます加速しています。
9月に打ち上げられたJAXAの月探査機「スリム」(SLIM)は、年末から来年はじめにかけて月面着陸に挑戦する予定です。もし月面着陸に成功すれば、旧ソ連(ロシア),アメリカ、中国、インドに引き続く形とはなりますが、日本もようやく5番目の月面着陸国として名前を連ねられます。それよりも重要なことは、月着陸という技術的に重要なステップを日本が手にするということです。これは将来の火星探査、さらにはそれより遠い惑星への探査にも重要な技術となります。
さらに、24年にはアイスペースのHAKUTO-R 2号機の打ち上げも予定されています。今年の挑戦はあと一歩のところで及びませんでしたが、その失敗を教訓に、今度はぜひ着陸成功といきたいところです。
また、株式会社ダイモンが開発する超小型ローバー「ヤオキ」も間もなく月面へと旅立ちます。
日本とインドが共同で進めている月南極探査計画「ルペックス」(LUPEX)も、2024年度以降の打ち上げに向け、開発が本格化してきています。

世界的にも、今年はロシアの「ルナ25号」、インドの「チャンドラヤーン3」の打ち上げがありました。
来年もアメリカのローバー「バイパー」をはじめ、NASAが進める商業月輸送プログラム(これに先ほどのYAOKIが搭載されます)が本格的に稼働する予定です。そして何よりも、来年の今頃は、半世紀以上ぶりとなる人類の月(周辺空間)への帰還「アルテミス2」の話題で持ちきりになっていることでしょう。

月探査情報ステーションが始まった頃のキャッチフレーズは「ふたたび月へ」でした。
私たちは、月探査を一時のブーム、月バブルで終わらせることなく、人類の継続的な月・惑星へのアプローチを応援すべく、これからも月・惑星探査についてしっかりと、わかりやすく伝えていくことを目指します。
人類が「ふたたび」月面に降り立つまで、いや、火星へと歩みを進めるまで、いや、さらにその先まで、私たちは人間の月・惑星へのアプローチを応援してまいります。

最後となりましたが、月探査情報ステーションは、この25周年を迎えるにあたって、7〜9月にかけてサイトの基盤更新を行いました。大規模リニューアルから7年、今後も確実に情報を伝え続けられる体制を作るべく、動きをとっています。
また、なかなか更新ができていない状況には変わりありませんが、複数人での更新体制を構築すべく、少しずつ動きを取り始めました。
人手が足りない、あるいは編集長(寺薗)一人の体制になっていることは、長年の月探査情報ステーションの課題でした。25年という節目に、これまで解決できていなかった課題に新たに踏み込んでいきたいと思います。

月・惑星探査も月探査情報ステーションも、確実に歩みを進め、実績を重ねていくことが重要だと考えています。そのためには皆様の継続的な応援が不可欠です。
今後とも月探査情報ステーションをご支援、ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2023年11月2日
月探査情報ステーション 編集長 (合同会社ムーン・アンド・プラネッツ 代表社員)
寺薗 淳也