バイパー (VIPER: Volatile Investigating Polar Exploration)

VIPER想像図

月の南極を探査するバイパー探査機(ローバー)の想像図
Photo: NASA Ames/Daniel Rutter

バイパー(VIPER)は、月に存在するとされる水を探査するため、月の南極地域を探査する月面ローバーです。

アポロ計画における月探査の結果、月には水をはじめとする揮発性物質が非常に少ないという結果が出ていました。
しかし、1990年代に行われた2つの月探査「クレメンタイン」「ルナープロスペクター」の探査で、月に水が存在する可能性が指摘されるようになりました。
さらに、2009年に実施された衝突探査「エルクロス」、及びインドの月探査機「チャンドラヤーン1」に搭載された測定機器「月面鉱物マッピング装置」(M3)によって、月にはかなり多くの水が存在していることがわかってきました。
また、水が存在している主な場所は、月の局地(南極及び北極)のクレーター内にある「永久影」(太陽の光が永久に当たらない場所)という領域であることもわかってきました。

とはいっても、まだ人類は月の水について直接その存在を確かめたわけではありません。これまでの探査はすべてがリモートによる探査で、実際に月の水(氷)が存在するのか、あるいは存在するとしてどのくらいの量存在するのかはまだほとんどわかっていないというのが実情です。
一方、これまでの常識を覆して月に水が存在するとすれば、将来行われるであろう月面への人類の長期滞在に明るい材料となります。高い打ち上げ費用を費やして地球から水を運ばなくても、月の水を利用すれば、人間が生存するため、あるいは生活していくための水を安い輸送コストで得られることになります。
このように、将来の有人月探査において大きな鍵となる月の水の存在を確認するための打ち上げられるのが、バイパーです。

バイパーは、月の南極に向かい、月の水(氷)が存在する可能性がある領域を探査します。
バイパーの大きさは1.5メートル×1.5メートル×2.5メートル、重さは450キログラムで、月・惑星探査用としては中型のローバーです。100日の探査期間で月の水の存在を探ることを目的にしています。搭載する4つの科学機器はすべて月の水の検出に特化していて、バイパーの目的がただ一つであることを物語っています。
月の水が存在する領域は「永久影」というだけあって真っ暗な場所です。また気温もマイナス200度を切るなど、大変寒い(というか極低温の)場所です。ローバーは上部に設置されたライトを頼りに探査を行うほか、こういった極低温での動作を行えるような工夫も施されています。

バイパーは、NASAの商業月輸送プログラム(CLPS)の第5号機によって月に運ばれます。輸送はアストロボティック社が担当します。

バイパーは当初2019年に打ち上げられる予定でしたが、その後計画が変更され2023年11月打ち上げとなりました。しかしNASAは2022年7月、安全を確保するためより詳細な地上テストが必要として打ち上げを延期、2024年11月の打ち上げとしました。



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