【固定のお知らせ】SLIMが運用を終了したことから、今後SLIMに関する新たな記事については月探査情報ステーションブログに記載してまいります。(2024年9月1日午後2時30分更新)

【速報】SLIM運用チームは8月26日、公式X(旧: Twitter)を更新し、SLIMの運用終了を発表しました。また同日、JAXAからも運用を終了する旨のプレスリリースが出されました。
SLIM運用チームのX投稿によると、8月22日、23日にも通信を試みたもののSLIMからの信号がなかったため、今後SLIMが復活する可能性は低いとして、23日午後10時40分ころにSLIMに対して停波(電波を停止すること)コマンドを送信し、SLIMの運用を終了しました。なお、SLIM自身が活動していない場合、たとえコマンドを送ったとしても受信できていないことになりますが、運用チームとしては「念のため」の措置ということになるかと思います。
SLIMは2月、3月、4月の通信好機に、月の夜を生き延びて復活して通信に成功するのみならず、写真撮影や科学観測にも成功しました。しかし、5月以降の通信好機には通信ができていませんでした。6月・7月にも通信ができず、8月で4回目となりました。
繰り返しになりますが、SLIMは月の夜を生き延びるための装置を積んでいません。月の夜は温度がマイナス170度にも下がり、搭載機器に大きなダメージがかかる恐れがあります。通常、月の夜を生き延びるためには、こうした状況に対応するためにヒーターなど保温する機器を搭載していきますが、SLIMは最初から月の夜を超えることを想定していないため、そういった装置は搭載していません。これはミッション自体が月の夜を超えることを想定しないためのものです。
にもかかわらず、3回も月の夜を生き延びて復活したこと自体がすごいことです。また、通信を4回にもわたって試みたというのも、ミッションチームとしては非常に慎重に探査機の状況を判断したものと考えられます。

1月20日の着陸以来、SLIMは大きな成果を挙げてきました。
世界初の月面へのピンポイント着陸の成功、リアルタイム画像処理による画像誘導航法の実証、同じく世界初となる月面での超小型ロボットの運用、及び超小型ロボットによる写真撮影の成功、また着陸地点の岩石の科学観測など、科学・技術両面における重要な成果を挙げています。
これらの成果は今後の月探査に生かされると共に、月の科学的理解の推進にも大いに生かされると思います。何よりも、2025年度に予定されている日本とインドの共同探査計画「LUPEX」(ルペックス)に直接的に活かされることでしょう。
また、日本の民間企業による月着陸計画にもこれらの成果が活かされていく可能性があります。この年末にも予定されているHAKUTO-R M2をはじめ、今後も民間企業による月着陸計画が予定されていますが、これらにも今回のSLIMで得られた知見が活かされることでしょう。

なお、SLIMの情報を伝え続けてきたSLIMの公式Xアカウントですが、こちらについては「もうしばらくSLIMに関連する情報を発信したのち,年度内を目途に終了予定」とのことです。アカウント自体を削除するのか、凍結させる(ポストを残したまま運用をしない)のかは明言されていません。

ミッションチームの皆様、おつかれさまでした。
(2024年9月1日午後2時更新)

  • JAXAのプレスリリース
    https://www.jaxa.jp/press/2024/08/20240826-1_j.html

【速報】SLIM運用チームは30日、月上空を周回する月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」(LRO)からのレーザー反射実験に成功したと発表しました。
月上空約100キロを周回するLROから、SLIMに向けてレーザー光が複数回放たれ、そのうち2回の反射をLROで捉えることに成功したとのことです。
SLIMには小さな(NASAによると「クッキーくらいのサイズの」)レーザー反射板が搭載されています。これに向けて5月24日にLROからレーザー光が合計8回放たれました。そのうち2回の反射光を捉えることに成功したそうです。
こう述べるとごく簡単なことのように聞こえますが、実はそうではありません。そもそもSLIMはご存知のように本来の向きとは異なる方向で着陸しています。レーザー反射板も当然、本来の機能を果たせない方向を向いています。このためLROチームはJAXAと協力の上、SLIMの正確な位置と向きを調べ、その上でその上空にLROが来るタイミングを慎重に測りました。
レーザー光を発射したのは、LROに搭載されているレーザー高度計です。レーザー高度計は月面に向けてレーザーを発射し、反射してきたレーザー光の到達時刻を調べることで探査機と月面との距離を測り、ここから月面の高さを高精度で調べるための装置です。
ただ、レーザー高度計はあくまで「高度計」であり、探査機の反射板にレーザーを反射させるといった用途には設計されていません。

今回、SLIMに搭載されたレーザー反射板を作成したチームを率いたNASAゴダード宇宙飛行センター(GSFC)のXiaolin Sunさんは、「本来の方向とは異なる向きのレーザー反射板に対してもレーザー光反射が行われたということは驚くべきことである。このことは、今回のレーザー反射板が驚くほどの対応力を持っているいることを示すものだ」と述べています。
なお、このレーザー反射板は8つのコーナーキューブプリズムを搭載していて、光を反射するようになっています。ある程度傾いた方向からの光も反射する能力を持つとはいえ、90度傾いた探査機からの光を反射できるとは設計者も驚いたことでしょう。

SLIMに搭載されたレーザー反射板

SLIMに搭載されたレーザー反射板。直径5センチ(2インチ)ほどの大きさで、内部に8つの反射装置(コーナーキューブプリズム)が搭載されている。
Photo: JAXA

なお、LROからのレーザー照射に対し応答できた探査機は、インドのチャンドラヤーン3(の着陸機ビクラム)で、こちらは2023年12月12日に実験が実施されました。今回は成功した2例目となります。

月上空を飛行する探査機からのレーザー光を地上の探査機が反射し、それを再び上空の探査機が捉えられたことは、今後の月面探査に大きな意味を持ちます。
現在、アルテミス計画をはじめとして有人・無人を問わず多くの月探査が計画されています。その歳、地上と上空との通信に、混信しやすく帯域に制限がある電波ではなく、光(レーザー光を)を用いることも検討されています。レーザー光を用いた通信ができれば、地上の光通信と同様、大容量で安定した通信が行えることが期待されます。一方で、少なくとも上空の探査機は動いていますから、発射する側は自分の動きを計算しつつ、地上目標を的確に捉えることが必要になります。今回は、少なくとも動かない(と思われる)目標に対し、レーザー光のやり取りが成功したことになり、大きな一歩を踏み出したことになります。

今後さらに研究や実証が進めば、例えば現在JAXAとトヨタ自動車・三菱重工などが共同で開発している有人与圧月面ローバー(ルナークルーザー)と、上空との探査機、あるいはゲートウェイとの通信をレーザー光で行えるようになるかも知れません。月面探査で得られた大容量データを即座に上空に送るだけではなく、映像などを常に月面とやり取りすることにより、ローバー探査を適切にサポートできる可能性も高まります。
また、SLIMは(少なくともしばらくは)このまま位置や姿勢を変えることがないと考えられるため、今後は位置が変わらない、いわば光ビーコンとしての役割を果たすことも期待できます。
ただし、LROのレーザー高度計の本来の役割は地上との反射時間の測定を通した高度の把握であり、こういったレーザー光反射実験用途には設計されていない点には注意する必要があります。

いずれにしても、将来の月面利用にもつながる大きな成果といえるでしょう。

(2024年7月31日午後0時30分更新)


【速報】SLIM運用チームは29日、7月のSLIMとの通信好機に再度通信を試みたものの成功しなかったと発表しました。通信ができなかったのは5月、6月についで3回目となります。
本当に繰り返しになりますが、SLIM自身は月の夜を越える機能を搭載していませんので、月の夜を越えるということ自体が想定外のことです。2月、3月、4月と3回にわたって復活を果たしたことがむしろ例外的なことなのです。
一方、これで3回にわたって通信ができなかったことは、SLIM探査機もさすがに劣化が進んでいることを想像させます。そうなりますとミッション自体の終了も考えられるわけですが、現時点では運用チームとしては「議論中」とのことです。こちらも発表を待ちましょう。次の通信の好機は8月末となります。
(2024年7月31日午後0時更新)


【情報】JAXAは7月22日、SLIMが撮影した月面と超小型ロボットLEV-2 (SORA-Q)が撮影した月面及びSLIM探査機の写真が、国連の切手の図柄に採用されたと発表しました。
この国連の切手は、7月20日(アポロ11号が月面に着陸し、人類がはじめて月面に到達した日)の「国際月の日」(International Lunar Day)を記念して発行されたものです。
今回国連が発行した切手には、SLIMだけではなく様々な月面探査ミッションで撮影された写真が用いられていますが、その中にSLIMの写真も採用されたということで、SLIMがまさに月探査の歴史の中でも画期的なミッションであったことが国際的にも認知されたといえるでしょう。
図柄は2枚の写真が交互に掲載される形になっています。

SLIMの国連切手

SLIMとSORA-Qが撮影した画像を用いた国連切手の図柄。
JAXA/TOMY/Sony Group Corporation/Doshisha University © United Nations

(2024年7月31日午前11時50分更新)


【情報】SLIM運用チームは17日、SLIMミッションに対し多大な貢献をした個人・団体に感謝状を発送したと発表しました。
感謝状の贈呈は、過去いくつかのミッション(例えば初代「はやぶさ」や「はやぶさ2」など)でも実施されており、編集長(寺薗)自身初代「はやぶさ」と「はやぶさ2」では感謝状を受け取っております。
なお、SLIM運用チームはXへのポストで、「多くの皆様にご支援いただいたにもかかわらず、感謝状はごく一部の方にしかお送りすることができません。」とていねいなお詫びをしています。
運用チームによると、今回の感謝状のデザインは、これまでの「白地に金色」というデザインから少し変わったとのことです。どのようなデザインになっているのかは、届いた方が順次報告されると思いますので、楽しみに待ちましょう。
(2024年7月31日午前11時30分更新)


【情報】SLIM運用チームは7月8日、SLIMの追管隊(追跡管制部隊)の解散を発表しました。
追管隊はSLIMの追跡・管制を実施してきた部隊で、SLIMが月面着陸を果たし、これ以上の追跡・管制が必要ないと判断されたものと思われます。なお、運用チームは、この追管隊の解散は運用終了判断とは別個に行われる(そちらについては後日判断)と述べています。
SLIM運用チームのXポストによれば、解散に伴って宇宙研食堂で慰労会が実施され、その席で、SLIMの成功を祝し、國中均・宇宙科学研究所所長が、だるまの片目に目を書き込んだとのことです。これまでこのだるまは運用室に置かれ、左目のみ目が入った形でしたが、これで両目が入り、文字通り「成功」ということになります。着陸当初は「成功ギリギリの60点」という辛口評価をつけた國仲先生も、これで「成功を認めた」といってよいのではないでしょうか。
(2024年7月31日午前11時30分更新)


【情報】SLIM運用チームは6月28日、SLIMとの通信を試みたものの通信ができなかったと公表しました。
チームによると、6月21日〜27日夜(SLIMの太陽電池パネルに太陽光が当たり、発電ができていると思われるタイミング)でSLIMとの交信を実施しましたが、応答がなかったとのことです。応答がなかったのは前月(5月)に続いて2回連続となります。
繰り返しになりますが、SLIM自身は月面の夜を越える機能(越夜機能)を持っていません。そのため、これまで3回にわたって月面の夜を越えたことの方がむしろ奇跡的なことであり、今回通信ができなかったことも想定内の結果とはいえます。ただ、復活を期待していた人にとっては大変残念なお知らせとはなります。
また、2回通信ができなかったことで、探査機自体の劣化が相当深刻なことが考えられます。そのため、今後SLIMを運用し続けていくかどうかについても運用チームとしては判断を迫られるのはないでしょうか。なお、SLIM運用チームは「今後の予定は未定」としています。
なお、運用チームのXポストによると、現在「ここまで得られた知見や観測データについての解析も急ピッチで進めております。」とのことで、解析結果の論文などの準備が進められていることを伺わせます。こちらも楽しみに待ちましょう。
(2024年7月31日午前11時20分更新)


【情報】SLIM運用チームは5月28日、前日27日にもSLIMとの通信を試みたものの、通信ができなかったと発表しました。また、SLIM着陸地が夜を迎えたため、5月どの運用を終了すると発表しました。残念ですが、6月の好機での復活を祈るしかありません。
(2024年7月31日午前11時10分更新)


【情報】SLIM運用チームは5月27日、SLIMとの通信ができなかったことを公表しました。
SLIMの太陽電池に太陽光が当たり、探査機が起動できると思われるタイミングの同月24日・25日に通信を試みたものの、応答はなかったとのことです。なお、27日夜にも再度挑戦するとのことです。
繰り返しになりますが、SLIM自体には月面の夜を越えるための機能(越夜機能)は搭載されていません。これまで3度、月面の夜を越えて目覚め、本体からの写真も送られてきましたが、これ自体が「奇跡」のようなものであり、想定を越えたミッションを達成していることになります。したがって、通信ができなくても驚くことではない、まして悲しむことでも非難することでもありません。
なお現在、活発な太陽フレアが発生しており、人工衛星や通信などにも影響を与えています。太陽フレアの影響による強い太陽風は月面にも届いていますので、これがSLIMに悪影響を与えた可能性がありますが、詳細は不明です。
一方で、これまで遅れてきたので「4度目の復活」を待っている方もいらっしゃったかと思いますが、私も含めそういった方には残念なニュースとなります。
想定外の運用を続けてきたSLIMは探査機自体の劣化も進んでいると思われ、ここで復活しないとなると6月の好機の再度の復活は難しいかも知れませんが、期待してみる価値はあるかと思います。
(2024年7月31日午前11時更新)


【速報】SLIM運用チームは4月26日に、再起動したあとに撮影した写真の非圧縮版を公開しました。
SLIMにはもちろん太陽光が当たっており、月面は昼間ですと120度もの暑さになる環境ですので、カメラなどの精密機器に大きな負荷がかかります。そのため、温度の状況などをみながら、探査機に無理がないように運用しています。
非圧縮の画像はデータ量が多くなるため、コンピューターや通信系に負荷がかかります。そのため、太陽光がだんだん少なくなり(夕方に近づき)、全体の温度が下がってからの撮影となります。
また、今回の写真は非常に白っぽい(太陽光がよく当たっている)写真となりますが、これはSLIM運用チームによると「太陽電池が十分に発電してから最初に日本から月が見えるようになるまでの時間が異なる」とのことです。SLIMは長野県にある臼田宇宙空間観測所で通信を行っています。つまり、「日本から月が見えるタイミング」で探査機と通信しているわけで、そのタイミングの微妙な違いが写真の明るさの差を生んでいるようです。
このあたりに実は、SLIMが何度も夜を越えられる理由があるのかも知れません。
(2024年7月4日午後2時30分更新)

2024年4月25日にSLIMが撮影した月面の写真


【速報】SLIM運用チームは4月24日、SLIMが前日(23日)に再度起動したことをXにて報告しました。実に3回目の月の夜越え(越夜)となリます。なお、これまで2回よりも若干早い「目覚め」ということです。
繰り返しとなりますが、月の夜は温度がマイナス170度にも達することがあるという過酷な環境です。しかも、SLIMはその夜を越えるための装備(例えばヒーターなど)を装備しているわけではありません。そのような探査機が、一度ならず2度、3度と復活するというのはたいへん驚くべきことです。編集長(寺薗)も正直、夜を越えること自体が不可能であると当初考えていましたので、ただただ驚いています。
例えば、インドのチャンドラヤーン3の着陸機「ビクラム」は夜を越えて地球からの通信に応答することがありませんでした。2月に月に到着したアメリカのインテゥイティブ・マシーンズ社の着陸機「オデュッセウス」(オディシアス)も、月の夜をこえて復活することはありませんでした。
こうなってきますと、特にそのための装備をせず3回も夜を越えることができたということは、SLIM自身に特別な要因が存在する可能性が高いと思われます。例えば、着陸した環境が温度差などの点で有利であった、月の砂(レゴリス)に一部探査機が埋まっていることで温度差が緩和された、使用している機器類の耐久性が高かったなど、です。
これらを分析することで、今後の月着陸機の設計にも大きな知見が得られるかと思います。
なおSLIM運用チームによると、3回目の越夜にも関わらず主要機能は維持されているとのことです。写真も提供されています。
こうなってきますと4度目の復活の可能性も出てきます。もし復活するとすれば5月末…おそらく5月23日前後になるのではないかと考えられます。夜を越えるごとに機器の劣化は進みますから、可能性は回を減るにつれて低くはなります。ですがそうであったとしても、ここはぜひ、「前人未到」の4度目の復活を楽しみに期待したいところです。
(2024年4月28日午後5時更新)

4月23日に撮影されたSLIM着陸点付近の月面の様子。SLIMが復活した時間が月面の昼の時間帯としては比較的早かったため、過去の写真と比べると岩の影が短くなっている(太陽の高さが高い)ことがわかる。またそもそもカメラ機能が維持されていることも確認された。
Photo: © JAXA


【速報】SLIM運用チームは3月30日、2回めの復活後の運用を終え、SLIMは休眠状態に入ったと発表しました。月面が夜を迎え、太陽電池に光が当たらなくなるためです。
恒例により、月面の夕方における写真が公開されました。
運用チームによると、いくつかの機器についてスイッチを入れたり、負荷をかけたりする状態確認を行ったとのことです。また、前回(2月末)の復活で正常に動作しなかった観測機器「マルチバンド分光カメラ」(MBC)ですが、こちらも「一部機能の不調はあるもののスイッチは入る」(ポストより)とのことです。復活は厳しいかも知れませんが、後述するように劣化状態を見極めることも重要ですので、この結果に期待したいところです。

なお、今回撮影した月面画像は、以前の画像と比べて若干明るいものとなっていますが、これは日本からの可視時間(月をみることができる時間)の違いや、最終日の作業の順番などにより、撮影するタイミングが異なったためとのことです。
地球であれば風や雨などで石が動いたり、そもそも天気が違ったりして日の当たり方が変わるなど、写真を撮るたびに何らかの変化が現れるところですが、月は空気もなく、当然雨も風もありません。従って、日のあたり方の違いだけが際立つことになります。

SLIM撮影の月面(3月30日)

SLIMの航法カメラが撮影した月面の画像(3月30日)。4月1日公開。
Photo: © JAXA

夜を越えるような仕様を持った探査機ではないにも関わらず、2回の越夜成功という驚異的な成果を残したSLIM。こうなってくると、約1ヶ月後、次のタイミング(4月末)に3度めの復活を果たせるかどうかが気になってきます。これについては、毎度申し上げておりますが、回数を重ねれば重ねるほど厳しさが増してきます。
月の夜の環境はマイナス170度まで温度が下がるという極端な環境です。電子機器にもその影響は致命的に響いてきます。これまで2回、このような環境を越えられたこと自体が「奇跡的」ともいえますが、流石にダメージは徐々に大きくなっているかと思います。

もちろん、期待をもって見守りたいところではありますが、過大な期待はせず、「うまくいけばラッキー」のような気持ちで、4月末のさらなる吉報を待つことにしましょう。

(2024年4月1日午後1時更新)


【速報】SLIM運用チームは先ほど、SLIMが2回めの月面の夜を越すことに成功した(越夜に成功した)と発表しました。
SLIM運用チームのX(旧: Twitter)への投稿によると、昨夜(27日夜)にSLIMより応答があり、SLIMが機能を保っていることが確認されました。下の写真は(ポストと同様となりますが)、航法カメラから撮影した月面の風景です。なお、1回目の越夜の際にすでに分光カメラ(MBC)は機能を停止してしまっています。航法カメラは2回の月面の夜の環境を生き延びていることになります。

SLIM撮影の月面(2024年3月27日)

SLIMが撮影した月面の写真(2024年3月27日)。航法カメラによる撮影。2回の夜を経てまだカメラは機能している。
Photo: © JAXA

なお、投稿によると、使われていないバッテリーのセル(バッテリーの構成要素)や一部の温度センサーに不調が出始めているとのことですが、探査機全体としては、航法カメラの画像が示す通りまだ機能を保っています。

繰り返しになりますが、月の夜はマイナス170度にもなるという極限の環境です。しかも月面は夜が14日ありますので、このような環境に探査機は2週間もさらされることになります。にもかかわらず、一度ならず2回もこの夜を突破した、しかも機器や探査機全体を温める装置など、夜を乗り切るために必要とされる装置を全く装備していないSLIMが越夜に成功するというのは、まさしく驚くべきニュースといえるでしょう。

一方で、2回も夜を越えることに成功したことで、月面において夜を越すために必要な「最低限の」装備などについて、今後より詳しい知見が得られる可能性があります。
ひょっとすると、SLIMが置かれた環境が幸いしている(比較的断熱性に優れた月の砂=レゴリスに接している面積が大きいため、保温機能が働いた、など)、SLIMが使用した部品が優れていた、など、様々なことが考えられます。今後この部品の劣化の状況などを踏まえ、将来の人類の月面滞在(こちらは何回も夜を越えなければいけません)に必要な知識が得られると期待されます。

繰り返しになりますが、本当にすごいことです。

(2024年3月28日午前11時10分更新)


【速報】SLIM運用チームは3月1日、X (旧: Twitter)を通して、月面の夜に入ったためSLIMの運用を停止した旨発表しました。運用休止は3月1日午前3時過ぎとのことです。

SLIM自体は月の夜を越える機能(越夜機能)がありませんが、2月25日に電源再投入に成功、運用を行ってきました。また月の夜を迎えたため、発電ができなくなるため、停止するものです。

月の夜はマイナス170度という温度環境になり、電池や電子機器などには厳しい環境です。2月末に再復活したのもかなり「奇跡的な」ことではありますが、今回さらに夜を迎えると故障の確率がさらに上がり、次の復活はかなり厳しいものと思われます。それでもSLIM運用チームでは3月末に再度起動を試すと表明しています。

なお、SLIMに搭載された科学観測機器「マルチバンド分光カメラ」(MBC)については、2月末の再起動で観測を試したものの、正常に動作しなかったとのことです。やはり、月の夜の環境が厳しく、夜を越えられなかったものと考えられます。

また、SLIMの着陸地点の夕方の写真も公開されました。この写真はSLIM搭載の航法カメラで撮影されたものです。

次に月の昼を迎え、SLIMの太陽電池に太陽光が当たり、発電ができるようになるのは3月末と考えられます。「再々復活」の可能性は極めて低いですが、吉報を待ちたいものです。
(2024年3月4日午後2時30分更新)

SLIM撮影の月面(2月29日)

SLIMが撮影した月の夕方(日の入り前)の月面(2月29日午後11時(日本時間)撮影)
Photo: © JAXA


【速報】SLIMから、圧縮をかけていない月面からの写真が届きました。

月面写真(非圧縮)

圧縮をかけていない月面の写真。2月28日公開。
Photo: © JAXA

地球〜月間での電波でのデータのやり取りは、データ容量に限りがあるため、一般的にはその範囲内で行われます。この場合、画像データなどの容量の大きなデータは、圧縮という形でデータを少なくして送信されます。
画像の圧縮には「可逆」と「非可逆」の2種類があります。可逆圧縮は、圧縮率はそれほど大きくはできないものの、カメラが捉えたままのデータを再現できます。我々がよく使う画像としてはPNG画像が代表的な例です。
不可逆圧縮は、一般的に人間の目にあまり影響しない箇所などのデータを減らすことで、大きな圧縮率を実現させるものです。ただそうはいっても元のデータの一部は失われますので、科学的な解析や、あるいは場合によっては見た目に関しても影響を受ける場合があります。特に圧縮率を上げれば上げるほど、目に見える形での影響が出てきてしまいます。我々がよく使う非圧縮画像としてはJPEG画像があります。

SLIMでどのような画像圧縮形式を取っているかは公開されていませんが、非圧縮のデータは科学解析にとっても重要なデータとなります。上のポストにあるように、遠方の特徴的な「十字に並ぶクレーター」もよりはっきりとみることができており、これらの形成過程の分析にも役立つと期待されます。
非圧縮データは容量が大きいため、時間をかけて地球へ送信されることになりますが、今回はそれだけ運用に余裕があったことを示すものといえるでしょう。

(2024年3月4日午前9時30分更新)


【速報】昨日お伝えしたSLIMの再度の復活ですが、そのSLIMから新しい写真が届きました。SLIMの公式X(旧: Twitter)で告知されたものです。
SLIM航法カメラで撮影した月面

SLIMの航法カメラで撮影した月面。2月26日公開。越夜後の写真となる。
Photo: © JAXA

SLIM自体が90度傾いて着陸しているため、若干判別が難しいですが、着陸地点が傾斜していること、多くの岩がゴロゴロとしていることがわかります。そして何よりも、航法カメラが月の夜(と昼の高温)に耐え、無事稼働を続けることができたことが証明されました。
先月公開されたSORA−Q撮影の写真と比べると、岩の影が逆向きになっていることもわかります。

また、マルチバンド分光カメラ(MBC)観測チームは、さらなる観測に向けた準備をしています。前回の起動時に観測できなかったさらに外側の領域を狙うべく、探査機へ送る指令(コマンド)を準備しているとのことです。

着陸地点には、月のマントルが起源と思われるカンラン石らしき物質が露出しています。MBCではこれを詳しく調査し、月の成り立ちについてのより深い研究につなげることを目指しています。今回の再復活によって観測の範囲が広げられれば、それだけ私たちの月の知識もより広がるというわけです。
夜が近づいており時間は限られますが、チャンスは十分にあります。新たな成果に期待しましょう。
(2024年2月27日午前10時00分更新)


【速報】本日午後1時より開始された、文部科学省の宇宙開発委員会の宇宙開発利用部会において、SLIMの坂井真一郎プロジェクトマネージャーは、日本時間で昨夜(25日)の午後7時に、SLIMからのテレメトリーデータ(探査機の状態などを知らせる信号)を受信したと発表しました。
月の夜は14日続き、最低気温はマイナス170度にも達します。このような低温では、搭載されている電池や電子機器などが機能を保つことは難しいと考えられていました。そのため、夜を越えられるかはかなり厳しいと思われていましたが、SLIMはどうやらこの夜を生き延びたようです。
なお、現在送信機の温度が非常に高い(月面は昼過ぎの状態)ため、送信機に負担をかけないよう、通信を短時間で終了した上で現在は電源を切っている模様です。このため、探査機の詳細な状態は不明です。しかしいずれにしても、SLIMは越や(月の夜を越えること)にも成功してしまいました。(2024年2月26日午後1時50分更新)


【お知らせ】SLIMに関するよくある質問とその回答(FAQ)を更新しました。LEV-1、LEV-2の読み方、及び「重力天体とは何か」という質問とその回答を追加しています。(2024年2月22日午後3時20分更新)

【お知らせ】SLIMに関して、月探査情報ステーションや編集長(寺薗)によく寄せられる質問とその回答(FAQ)をまとめてみました。まだ4問程度ですが、随時情報を追加します。(2024年2月16日午後3時30分更新)

【速報】1月29日に運用を再開したSLIMですが、運用再開後は直ちに搭載している科学観測機器(マルチバンド分光カメラ=MBC)による観測を実施しました。もともと観測地点として設定されていた6地点(これらには「トイプードル」「土佐犬」など、相対的な大きさを示しやすいように犬の名前がつけられています)に加え、新たに数箇所の科学的に重要と思われるポイントを選定、これらの観測を実施しました。
しかし、SLIM着陸地点の夜が近づいているため、SLIM運用チームは1月30日午後10時から31日朝9時までの運用を最後に、一旦運用を休止しました。SLIMチームでは2月1日にも探査機へコマンド(指令)を送信し、応答がないことを確認して、SLIMが休眠状態に入ったことを確認しました。
SLIMがある場所ではこのあと2週間の夜に入ります。ご存知の通り、月は14日の夜と14日の昼があります。空気がないため月では温度差が極端となり、月の夜の間には最大でマイナス170度まで温度が下がる可能性があります。この状態では、探査機に搭載されている機器、あるいは電子部品などがもたない可能性が高いと思われます。さらに、SLIM自体が本来想定される姿勢とは異なる姿勢となって着陸しているため、再び昼を迎えてもしばらくは電力を確保できません。
ただ、仮にSLIMが夜を過ぎて通信が回復しなかったとしても、もともとこれは予定されていたミッションの範囲内です。SLIMは夜を越す(越夜)機能を搭載していません。具体的には、探査機の温度を保つためのヒーターなどは搭載されていません。これはもともと「月の昼の14日だけ運用できればよい」と割り切り、軽量化やシステムの簡素化を図ったためです。
もちろん、再びSLIM着陸点に昼が到来し、SLIMの太陽電池に太陽光があたり、再び発電できた際、SLIMの通信が復活する可能性もゼロではありません。非常に低い可能性ですが、「うまくいったらもうけもの」くらいの形で期待してみるのもよいかとは思います。

SLIMが撮影した夕方の着陸点

SLIMが撮影した夕方の着陸点。夕方のため近い地面は全体的に暗くなっている一方、日が当たっている遠くの山の斜面は明るくなっている。このあとSLIMは休眠状態に入る。SLIMの航法カメラが撮影。2月1日公開。
出典: https://twitter.com/SLIM_JAXA/status/1752919243581182344
Phoro: © JAXA

(2024年2月2日午前11時更新)


【速報】SLIMチームは先ほどX (旧: Twitter)のポストを更新し、月面で電力低下のため休止状態となっていたSLIMのとの通信確立に成功し、運用を再開したと発表しました。すでに搭載機器のマルチバンド分光カメラの観測を実施しています。この観測は、運用を再開した場合に最優先で実施すると、1月25日の記者会見で述べられていたものです。
SLIMは太陽電池の向きが太陽の方向と異なる形で着陸したため、月面の昼から夕方にかけて運用が再開できる可能性があるとはされていました。しかし、月面の昼は温度が100度以上にもなる過酷な環境です。搭載されている機器、とりわけコンピューター類や電池などがその環境で生き延びられるかどうかが心配されていました。今回、SLIMは見事「生き延び」、復活したことになります。新たな成果に大いに期待すると共に、運用チームの頑張りを讃えたいと思います。

(2024年1月29日午前10時30分更新)


【速報】アメリカの月周回探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」(LRO)が、SLIMの写真を捉えることに成功しました。
LROは最大で50センチメートルもの解像度を誇るカメラを搭載しており、2009年の打ち上げ以降、これまでにも様々な月面の人工物体(アポロ計画の月面着陸機、また月面に激突した着陸機など)を捉えてきました。今回公表された画像は、数年前の同じLROが撮影した画像と見比べて明らかに違いがあることから、SLIMを捉えたとみて間違いないものとみられます。

SLIM着陸地点

LROが捉えた、SLIM着陸点の画像(着陸前と着陸後のアニメーション)。着陸前(Before)と着陸後(After)で、画像中心部に前にはない物体が写っており、これがSLIMと考えられる。また、周辺の地面が「After」で少し白っぽくなっているのは、着陸の際のエンジン噴射で砂が飛ばされた影響と考えられる。
Photo: NASA/GSFC/Arizona State University

着陸前と着陸後の比演算画像

着陸前と着陸後の画像のそれぞれの画素値を割って得られた数値を元にした画像(画素値は拡大してある)。中央部の白い部分は、着陸時の噴射によって砂が吹き飛ばされたために生じたものと思われる。
Photo: NASA/GSFC/Arizona State University

(2024年1月29日午後0時30分更新) ※SLIM通信復活のニュースを先に出したため、更新時間はこちらがあとですが記事はこちらが順番としては前となっています。


【速報】JAXAは1月25日午後2時より、SLIMの状況、及び成果について記者会見を実施しました。この中で、坂井真一郎・プロジェクトマネージャーは、月面への高精度着陸に成功したと発表しました。予定地点からは55メートルほど離れたところで、後述のトラブルがなかった場合の着陸の実際の精度は3〜4メートルという驚異的な高精度であったと話しました。
ただ、高度50メートル付近でメインエンジン1機に問題が生じ、予定の推力が生じなかったと考えられています。そのため、探査機はメインエンジンを上面にして着陸したと思われます。SLIMが撮影した写真から、メインエンジン1機が脱落した可能性が示唆されています。着陸の最後の過程の詳細については現在も詳細は解析中です。
一方、2機の超小型ロボットについては、LEV-1は地球との直接通信、及び6回の跳躍動作(ジャンプして移動する動作)に成功しました。また、LEV-2(SORA-Q)の通信の中継にも成功しました。月面でのロボット同士の通信、超小型ロボットによる地球への直接通信は世界初です。
また、LEV-2 (SORA-Q)については、写真撮影に成功しました。公開された写真では、「さかさま」の姿勢になったSLIMがはっきりと写っており、ミッションチームの推定を裏付けるものとなっています。超小型ロボットによる撮像は世界ではじめて成功したことになります。また、LEV-2が目指した「変形しての動作」にも成功したことになります。
このように、SLIMは数多くの世界初を達成したことが明らかになりました。今後の月探査、そして月の科学にも大きな進歩につながる大成果です。
<写真> © JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学
SORA-Qが撮影した写真

SORA-Qが撮影した写真

(2024年1月25年午後3時30分更新)


【速報】JAXAは先ほど、今週1月25日午後2時より、SLIMの成果などに関する記者会見を開催すると発表しました。内容について月探査情報ステーションでも速報したいと思います。(2024年1月22日午後6時30分更新)

【速報】JAXA SLIMチームは先ほどX (旧: Twitter)を通して、SLIMの現状について報告しました。その中で、

  • 太陽電池パネルが西側を向いており、太陽光が当たっていない状態であること。このため、太陽電池で発電ができていない。
  • 今後、太陽の方向が変わり、太陽光が太陽電池パネルに当たる形になれば、再び探査機が起動する可能性がある。
  • 現在、探査機は電源を切った状態にある(20日午前2時57分に電源断)。
  • 着陸の過程で撮影された写真などすべてのデータのダウンロードは無事行えた。

と述べています。
月面は14日の昼、14日の夜があります。太陽光の向きが数日(10日ほど)で変われば、再び太陽電池に光が当たり、発電ができ、探査機が「復活」する可能性があります。但し、月面の昼は最高で100度以上になるという高温です。この高温に探査機が耐える必要があります。原因がわかったことで、今後の復活の可能性がみえてきたのは大きなポイントです。
(2024年1月22日午後6時更新)


【お知らせ】現時点で、20日未明の記者会見以上の情報は入っていません。
記者会見の内容を受けた記事を月探査情報ステーションブログに執筆する予定です。情報や写真の整理などが必要なので、いましばらくお待ちください。
なお、記者会見でも質疑応答がありましたが、軟着陸には成功しましたが、世界初である「ピンポイント着陸」(誤差100メートル以内での高精度着陸)の成否については、様々なデータからの検証が必要なため、数日〜1ヶ月程度かかるとのことです。今後探査機の状況なども含めて各種の情報の更新があると思います。
本ページも随時アップデートしますが、最も早いのは月探査情報ステーションのX (旧・Twitter)です。ぜひフォローをお願いいたします。
(2024年1月20日午後4時更新)

【速報】JAXAは午前2時10分より、相模原市の宇宙科学研究所にて記者会見を開始しました。
山川JAXA理事長より、SLIMの月面軟着陸は成功した旨発表されました。また、國仲理事よリ、信号は正常に受信されていること、ただし、探査機の太陽電池の発電ができておらず、現状充電されている電力だけで動作していることが説明されました。探査機内に存在するデータの受信を最優先させている状況とのことです。また、LEV-1及びLEV-2 (SOR-Q)の分離も成功し、LEV-1については電波も受信できているとの報告がありました。(2024年1月20日午前2時20分更新)

【速報】SLIMの状況について、このあと午前2時10分ころをめどに、JAXAは記者会見を行うとのアナウンスがありました。(2024年1月20日午前1時55分更新)

【速報】SLIMは引き続き状況を確認中です。(2024年1月20日午前1時45分更新)

【速報】SLIMは引き続き状況を確認中です。(2024年1月20日午前1時30分更新)

【速報】SLIMは引き続き状況を確認中です。(2024年1月20日午前1時15分更新)

【速報】SLIMは引き続き状況を確認中です。(2024年1月20日午前1時00分更新)

【速報】SLIMは引き続き状況を確認中です。(2024年1月20日午前0時50分更新)

【速報】SLIMは引き続き状況を確認中です。(2024年1月20日午前0時50分更新)

【速報】SLIMはテレメトリ上では着陸したと思われますが、現在JAXAでは状況を確認中です。(2024年1月20日午前0時35分更新)

【速報】SLIMはテレメトリ(探査機の信号)上は着陸を行ったと思われます。確認までもう少しお待ち下さい。(2024年1月20日午前0時20分更新)

【速報】SLIMの月面への降下(動力降下)が開始されました。(2024年1月20日午前0時更新)

【速報】SLIMの近月点降下マニューバ(月に最も近い点からの軌道変更)は、午後10時40分に無事終了しました。探査機の状態は正常です。(2024年1月10日午後11時20分更新)。

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【速報】SLIMは今夜(19日深夜、正確には1月20日午前0時20分)に月面に着陸する予定です。JAXAでのライブ中継も開始されています。(2024年1月19日午後11時10分更新)


【速報】SLIMは現在順調に月面に向けて高度を下げています。昨日夕方の時点で、SLIMの軌道は遠月点(月から最も遠い点)600キロ、近月点(月からもっとも近い点〜150キロに到達しています。さらに高度を下げながら月面着陸を目指します。(2024年1月18日午後8時30分更新)

月面に着陸したSLIMの想像図
(Photo: © JAXA)

スリム (SLIM)計画は、高精度な月着陸を実証することを目指す日本の月着陸計画です。2023年9月にH−IIAロケットで打ち上げられ、12月25日、月周回軌道への投入に成功しました。2024年1月20日に月面着陸を実施し、成功しました。日本は月面着陸で世界で5番目に成功した国となりました。また、当初目標としていた高精度(誤差100メートル以内)のピンポイント着陸にも成功しています。
SLIMは当初太陽電池の向きが本来想定していた方向と異なっていたため、太陽電池による発電ができていませんでしたが、1月29日に復活しました。その後、2月末、3月末、4月末と、月面の夜を越えることに成功しました。月面の夜の極低温を越える装備を持たない探査機が月面を越えた例は極めてまれです。しかし、5月・6月・7月には復活せず、8月の通信好機にも復活しなかったことから、JAXAは8月23日、運用を終了しました。