SLIM運用チームのX投稿によると、8月22日、23日にも通信を試みたもののSLIMからの信号がなかったため、今後SLIMが復活する可能性は低いとして、23日午後10時40分ころにSLIMに対して停波(電波を停止すること)コマンドを送信し、SLIMの運用を終了しました。なお、SLIM自身が活動していない場合、たとえコマンドを送ったとしても受信できていないことになりますが、運用チームとしては「念のため」の措置ということになるかと思います。
SLIMは2月、3月、4月の通信好機に、月の夜を生き延びて復活して通信に成功するのみならず、写真撮影や科学観測にも成功しました。しかし、5月以降の通信好機には通信ができていませんでした。6月・7月にも通信ができず、8月で4回目となりました。
繰り返しになりますが、SLIMは月の夜を生き延びるための装置を積んでいません。月の夜は温度がマイナス170度にも下がり、搭載機器に大きなダメージがかかる恐れがあります。通常、月の夜を生き延びるためには、こうした状況に対応するためにヒーターなど保温する機器を搭載していきますが、SLIMは最初から月の夜を超えることを想定していないため、そういった装置は搭載していません。これはミッション自体が月の夜を超えることを想定しないためのものです。
にもかかわらず、3回も月の夜を生き延びて復活したこと自体がすごいことです。また、通信を4回にもわたって試みたというのも、ミッションチームとしては非常に慎重に探査機の状況を判断したものと考えられます。
1月20日の着陸以来、SLIMは大きな成果を挙げてきました。
世界初の月面へのピンポイント着陸の成功、リアルタイム画像処理による画像誘導航法の実証、同じく世界初となる月面での超小型ロボットの運用、及び超小型ロボットによる写真撮影の成功、また着陸地点の岩石の科学観測など、科学・技術両面における重要な成果を挙げています。
これらの成果は今後の月探査に生かされると共に、月の科学的理解の推進にも大いに生かされると思います。何よりも、2025年度に予定されている日本とインドの共同探査計画「LUPEX」(ルペックス)に直接的に活かされることでしょう。
また、日本の民間企業による月着陸計画にもこれらの成果が活かされていく可能性があります。この年末にも予定されているHAKUTO-R M2をはじめ、今後も民間企業による月着陸計画が予定されていますが、これらにも今回のSLIMで得られた知見が活かされることでしょう。
なお、SLIMの情報を伝え続けてきたSLIMの公式Xアカウントですが、こちらについては「もうしばらくSLIMに関連する情報を発信したのち,年度内を目途に終了予定」とのことです。アカウント自体を削除するのか、凍結させる(ポストを残したまま運用をしない)のかは明言されていません。
ミッションチームの皆様、おつかれさまでした。
(2024年9月1日午後2時更新)
【SLIM運用終了のお知らせ】
8/22,8/23にSLIMプロジェクトは再度通信を試みましたがSLIMからの応答はありませんでした.そのため,今後もSLIMとの通信復旧の見込みはないと判断し,23日22時40分ごろにSLIMの活動を停止させるコマンド送る停波運用を行いました. pic.twitter.com/bhKH1mkuqI— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) August 26, 2024
SLIMプロジェクトの活動としてはもうしばらく続きますが,8/23を持ちましてSLIMの運用は終了となります.これまでSLIMを応援いただきましてありがとうございました. pic.twitter.com/HeKh3CBaLf
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) August 26, 2024
本アカウントについてはもうしばらくSLIMに関連する情報を発信したのち,年度内を目途に終了予定です.最後までよろしくお願いいたします.
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) August 26, 2024
- JAXAのプレスリリース
https://www.jaxa.jp/press/2024/08/20240826-1_j.html
月上空約100キロを周回するLROから、SLIMに向けてレーザー光が複数回放たれ、そのうち2回の反射をLROで捉えることに成功したとのことです。
SLIMには小さな(NASAによると「クッキーくらいのサイズの」)レーザー反射板が搭載されています。これに向けて5月24日にLROからレーザー光が合計8回放たれました。そのうち2回の反射光を捉えることに成功したそうです。
こう述べるとごく簡単なことのように聞こえますが、実はそうではありません。そもそもSLIMはご存知のように本来の向きとは異なる方向で着陸しています。レーザー反射板も当然、本来の機能を果たせない方向を向いています。このためLROチームはJAXAと協力の上、SLIMの正確な位置と向きを調べ、その上でその上空にLROが来るタイミングを慎重に測りました。
レーザー光を発射したのは、LROに搭載されているレーザー高度計です。レーザー高度計は月面に向けてレーザーを発射し、反射してきたレーザー光の到達時刻を調べることで探査機と月面との距離を測り、ここから月面の高さを高精度で調べるための装置です。
ただ、レーザー高度計はあくまで「高度計」であり、探査機の反射板にレーザーを反射させるといった用途には設計されていません。
今回、SLIMに搭載されたレーザー反射板を作成したチームを率いたNASAゴダード宇宙飛行センター(GSFC)のXiaolin Sunさんは、「本来の方向とは異なる向きのレーザー反射板に対してもレーザー光反射が行われたということは驚くべきことである。このことは、今回のレーザー反射板が驚くほどの対応力を持っているいることを示すものだ」と述べています。
なお、このレーザー反射板は8つのコーナーキューブプリズムを搭載していて、光を反射するようになっています。ある程度傾いた方向からの光も反射する能力を持つとはいえ、90度傾いた探査機からの光を反射できるとは設計者も驚いたことでしょう。
なお、LROからのレーザー照射に対し応答できた探査機は、インドのチャンドラヤーン3(の着陸機ビクラム)で、こちらは2023年12月12日に実験が実施されました。今回は成功した2例目となります。
月上空を飛行する探査機からのレーザー光を地上の探査機が反射し、それを再び上空の探査機が捉えられたことは、今後の月面探査に大きな意味を持ちます。
現在、アルテミス計画をはじめとして有人・無人を問わず多くの月探査が計画されています。その歳、地上と上空との通信に、混信しやすく帯域に制限がある電波ではなく、光(レーザー光を)を用いることも検討されています。レーザー光を用いた通信ができれば、地上の光通信と同様、大容量で安定した通信が行えることが期待されます。一方で、少なくとも上空の探査機は動いていますから、発射する側は自分の動きを計算しつつ、地上目標を的確に捉えることが必要になります。今回は、少なくとも動かない(と思われる)目標に対し、レーザー光のやり取りが成功したことになり、大きな一歩を踏み出したことになります。
今後さらに研究や実証が進めば、例えば現在JAXAとトヨタ自動車・三菱重工などが共同で開発している有人与圧月面ローバー(ルナークルーザー)と、上空との探査機、あるいはゲートウェイとの通信をレーザー光で行えるようになるかも知れません。月面探査で得られた大容量データを即座に上空に送るだけではなく、映像などを常に月面とやり取りすることにより、ローバー探査を適切にサポートできる可能性も高まります。
また、SLIMは(少なくともしばらくは)このまま位置や姿勢を変えることがないと考えられるため、今後は位置が変わらない、いわば光ビーコンとしての役割を果たすことも期待できます。
ただし、LROのレーザー高度計の本来の役割は地上との反射時間の測定を通した高度の把握であり、こういったレーザー光反射実験用途には設計されていない点には注意する必要があります。
いずれにしても、将来の月面利用にもつながる大きな成果といえるでしょう。
- NASAの記事 [英語]
https://science.nasa.gov/missions/nasa-jaxa-bounce-laser-beam-between-moons-surface-and-lunar-orbit/
- ルナー・リコネサンス・オービター (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/LRO/
(2024年7月31日午後0時30分更新)
NASA から月周回衛星であるLROが #SLIM に搭載されたレーザー反射鏡(LRA)に複数回レーザーを照射し、これまでにそのうち2回、反射光を観測することに成功した、との発表がありました!https://t.co/j7qlUJ556Phttps://t.co/kODeaZAmX7
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 29, 2024
#SLIM に搭載されたレーザー反射鏡(LRA)の位置はこれからもずっと不変であると考えられるため、今後のミッションにおけるビーコンとなることが期待されます!#JAXA #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 29, 2024
本当に繰り返しになりますが、SLIM自身は月の夜を越える機能を搭載していませんので、月の夜を越えるということ自体が想定外のことです。2月、3月、4月と3回にわたって復活を果たしたことがむしろ例外的なことなのです。
一方、これで3回にわたって通信ができなかったことは、SLIM探査機もさすがに劣化が進んでいることを想像させます。そうなりますとミッション自体の終了も考えられるわけですが、現時点では運用チームとしては「議論中」とのことです。こちらも発表を待ちましょう。次の通信の好機は8月末となります。
(2024年7月31日午後0時更新)
去る7/24, 25に再度、#SLIM との通信確立を目指しましたが残念ながら、SLIMからの電波を受信することはありませんでした。今後の運用については議論中です。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 29, 2024
この国連の切手は、7月20日(アポロ11号が月面に着陸し、人類がはじめて月面に到達した日)の「国際月の日」(International Lunar Day)を記念して発行されたものです。
今回国連が発行した切手には、SLIMだけではなく様々な月面探査ミッションで撮影された写真が用いられていますが、その中にSLIMの写真も採用されたということで、SLIMがまさに月探査の歴史の中でも画期的なミッションであったことが国際的にも認知されたといえるでしょう。
図柄は2枚の写真が交互に掲載される形になっています。
- 「国際月の日」に関する切手のページ (国連) [英語] https://unstamps.org/shop/international-moon-day/
- JAXAからのお知らせ
https://www.jaxa.jp/topics/2024/index_j.html#news22146
(2024年7月31日午前11時50分更新)
感謝状の贈呈は、過去いくつかのミッション(例えば初代「はやぶさ」や「はやぶさ2」など)でも実施されており、編集長(寺薗)自身初代「はやぶさ」と「はやぶさ2」では感謝状を受け取っております。
なお、SLIM運用チームはXへのポストで、「多くの皆様にご支援いただいたにもかかわらず、感謝状はごく一部の方にしかお送りすることができません。」とていねいなお詫びをしています。
運用チームによると、今回の感謝状のデザインは、これまでの「白地に金色」というデザインから少し変わったとのことです。どのようなデザインになっているのかは、届いた方が順次報告されると思いますので、楽しみに待ちましょう。
(2024年7月31日午前11時30分更新)
#SLIM プロジェクトの実施にあたり、特にお世話になった皆様に感謝の意を込めて感謝状を準備いたしました。今回準備作業に当たっては改めて大変多くの方にご支援いただいていたことを実感いたしました。順次お送りさせていただきますので、どうぞお受け取りいただけますと幸いです。#JAXA pic.twitter.com/zLPFDcUxQ3
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 17, 2024
多くの皆様にご支援いただいたにもかかわらず、感謝状はごく一部の方にしかお送りすることができません。この場をお借りして、これまでの読者の皆様の温かい励ましに心より感謝申し上げます。 #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 17, 2024
これまでのプロジェクトでは、白地に金色のデザインで筆書きの賞状形式が多かったのですが、今回は少し異なるデザインにしてみました。今後の宇宙科学プロジェクトにおいても、SLIM同様に引き続きご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 17, 2024
追管隊はSLIMの追跡・管制を実施してきた部隊で、SLIMが月面着陸を果たし、これ以上の追跡・管制が必要ないと判断されたものと思われます。なお、運用チームは、この追管隊の解散は運用終了判断とは別個に行われる(そちらについては後日判断)と述べています。
SLIM運用チームのXポストによれば、解散に伴って宇宙研食堂で慰労会が実施され、その席で、SLIMの成功を祝し、國中均・宇宙科学研究所所長が、だるまの片目に目を書き込んだとのことです。これまでこのだるまは運用室に置かれ、左目のみ目が入った形でしたが、これで両目が入り、文字通り「成功」ということになります。着陸当初は「成功ギリギリの60点」という辛口評価をつけた國仲先生も、これで「成功を認めた」といってよいのではないでしょうか。
(2024年7月31日午前11時30分更新)
7/4、#SLIM の追跡管制隊(追管隊)主任班長会議にて無事に追管隊の解散が決定し、食堂にて慰労会が執り行われました。解散に伴ってSLIMミッションの成果を祝し、これまでずっと願掛けを背負って左目で管制室で運用を見守ってきた達磨に國中所長によりとうとう右目が入りました! #JAXA pic.twitter.com/HgkWBu9W3Y
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 8, 2024
なお、この追管隊解散と #SLIM の通信状態や今後の運用に対する判断は特に関係しておりません。もともとSLIMは着陸までがクリティカルフェーズとされており、この時期の解散が予定されておりました。今後のSLIMの運用方針につきましては引き続き関係者にて検討を継続しております。 #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) July 8, 2024
チームによると、6月21日〜27日夜(SLIMの太陽電池パネルに太陽光が当たり、発電ができていると思われるタイミング)でSLIMとの交信を実施しましたが、応答がなかったとのことです。応答がなかったのは前月(5月)に続いて2回連続となります。
繰り返しになりますが、SLIM自身は月面の夜を越える機能(越夜機能)を持っていません。そのため、これまで3回にわたって月面の夜を越えたことの方がむしろ奇跡的なことであり、今回通信ができなかったことも想定内の結果とはいえます。ただ、復活を期待していた人にとっては大変残念なお知らせとはなります。
また、2回通信ができなかったことで、探査機自体の劣化が相当深刻なことが考えられます。そのため、今後SLIMを運用し続けていくかどうかについても運用チームとしては判断を迫られるのはないでしょうか。なお、SLIM運用チームは「今後の予定は未定」としています。
なお、運用チームのXポストによると、現在「ここまで得られた知見や観測データについての解析も急ピッチで進めております。」とのことで、解析結果の論文などの準備が進められていることを伺わせます。こちらも楽しみに待ちましょう。
(2024年7月31日午前11時20分更新)
SLIMプロジェクトはSLIMに十分な電力が発生していると想定される6/21夜~6/27朝にかけて再度SLIMとの通信を試みましたが、SLIMからの電波は確認できませんでした。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) June 27, 2024
今後の予定は、現時点では未定です。なお、SLIMは本来越夜を想定しておらず、目標としていたデータは最初の越夜を迎える前の段階ですべて取得することができております。したがって今回の状況がSLIMの成果に悪影響を与えるといったことはありません。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) June 27, 2024
また、ここまで得られた知見や観測データについての解析も急ピッチで進めております。引き続きSLIMプロジェクトやその先のさらなる宇宙探査について、応援の程、よろしくお願いいたします。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) June 27, 2024
(2024年7月31日午前11時10分更新)
27日夜も運用を再度実施いたしましたが、#SLIM からの応答はありませんでした。27日夜をもってSLIM周辺の日が暮れて発電もできなくなっているため、 残念ですが今月の運用は終了します。前日の投稿以降、非常に多くの応援をいただきましてありがとうございました。#JAXA
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) May 28, 2024
来月も太陽電池による発電が十分に得られると見込まれる頃に再度運用を試みる予定です。夜の間に電源がOFFされているので全体がリセットされて再起動することを期待しています。#SLIM #JAXA
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) May 28, 2024
SLIMの太陽電池に太陽光が当たり、探査機が起動できると思われるタイミングの同月24日・25日に通信を試みたものの、応答はなかったとのことです。なお、27日夜にも再度挑戦するとのことです。
繰り返しになりますが、SLIM自体には月面の夜を越えるための機能(越夜機能)は搭載されていません。これまで3度、月面の夜を越えて目覚め、本体からの写真も送られてきましたが、これ自体が「奇跡」のようなものであり、想定を越えたミッションを達成していることになります。したがって、通信ができなくても驚くことではない、まして悲しむことでも非難することでもありません。
なお現在、活発な太陽フレアが発生しており、人工衛星や通信などにも影響を与えています。太陽フレアの影響による強い太陽風は月面にも届いていますので、これがSLIMに悪影響を与えた可能性がありますが、詳細は不明です。
一方で、これまで遅れてきたので「4度目の復活」を待っている方もいらっしゃったかと思いますが、私も含めそういった方には残念なニュースとなります。
想定外の運用を続けてきたSLIMは探査機自体の劣化も進んでいると思われ、ここで復活しないとなると6月の好機の再度の復活は難しいかも知れませんが、期待してみる価値はあるかと思います。
(2024年7月31日午前11時更新)
#SLIM プロジェクトは電力が回復していると想定される5月の24日(金)、25日(土)に復帰のためのコマンドを送信する運用を行いましたが、SLIMからの電波を確認することができませんでした。27日(月)夜に再度挑戦する予定です。 #JAXA pic.twitter.com/q7RiFIgK5D
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) May 27, 2024
現時点で電波が確認できない理由はよくわかっておりません。5月の中旬に発生した大規模な太陽フレアとの関係も不明です。ただし、月着陸以降大半の機器が設計想定外の過酷な状況で使用されておりましたのでいよいよ影響が表れた可能性もあります。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) May 27, 2024
SLIMはこれまでの活動期間において既にミッションとして打ち上げ前に想定していたよりもはるかに多くの貴重なデータを地上に送信してきておりますが、少しでも長く活動してもらうため復旧に向けての活動を継続します。引き続き応援いただきたくよろしくお願いいたします。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) May 27, 2024
SLIMにはもちろん太陽光が当たっており、月面は昼間ですと120度もの暑さになる環境ですので、カメラなどの精密機器に大きな負荷がかかります。そのため、温度の状況などをみながら、探査機に無理がないように運用しています。
非圧縮の画像はデータ量が多くなるため、コンピューターや通信系に負荷がかかります。そのため、太陽光がだんだん少なくなり(夕方に近づき)、全体の温度が下がってからの撮影となります。
また、今回の写真は非常に白っぽい(太陽光がよく当たっている)写真となりますが、これはSLIM運用チームによると「太陽電池が十分に発電してから最初に日本から月が見えるようになるまでの時間が異なる」とのことです。SLIMは長野県にある臼田宇宙空間観測所で通信を行っています。つまり、「日本から月が見えるタイミング」で探査機と通信しているわけで、そのタイミングの微妙な違いが写真の明るさの差を生んでいるようです。
このあたりに実は、SLIMが何度も夜を越えられる理由があるのかも知れません。
(2024年7月4日午後2時30分更新)
昨晩の運用で初日に撮影した航法カメラの画像を非圧縮でダウンロードしました。通信再開直後はまだ各機器の温度が高く負荷の高い作業をすると壊してしまう可能性があるため、あまり無理をせず状態確認、撮影、日をおいて冷めてきてから非圧縮ダウンリンクという流れが定番になっています。 #SLIM pic.twitter.com/W7svFjGkSE
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 26, 2024
越夜ごとにSLIMと通信再開する月齢に差が出ている大きな要因として、太陽電池が十分に発電してから最初に日本から月が見えるようになるまでの時間が異なる、という点があります。運用は日本にあるアンテナで実施しているため、日本から月が見える時間になるまでは通信再開できません。#JAXA
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 26, 2024
ただ、それ以外にも要因はあるようで今月はかなり早いタイミングで日本(長野県にあるJAXA臼田局)からの通信ができました。この原因を探っていくと、SLIMが何回も越夜できている理由が少しわかってくるかも、と考えています。 #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 26, 2024
繰り返しとなりますが、月の夜は温度がマイナス170度にも達することがあるという過酷な環境です。しかも、SLIMはその夜を越えるための装備(例えばヒーターなど)を装備しているわけではありません。そのような探査機が、一度ならず2度、3度と復活するというのはたいへん驚くべきことです。編集長(寺薗)も正直、夜を越えること自体が不可能であると当初考えていましたので、ただただ驚いています。
例えば、インドのチャンドラヤーン3の着陸機「ビクラム」は夜を越えて地球からの通信に応答することがありませんでした。2月に月に到着したアメリカのインテゥイティブ・マシーンズ社の着陸機「オデュッセウス」(オディシアス)も、月の夜をこえて復活することはありませんでした。
こうなってきますと、特にそのための装備をせず3回も夜を越えることができたということは、SLIM自身に特別な要因が存在する可能性が高いと思われます。例えば、着陸した環境が温度差などの点で有利であった、月の砂(レゴリス)に一部探査機が埋まっていることで温度差が緩和された、使用している機器類の耐久性が高かったなど、です。
これらを分析することで、今後の月着陸機の設計にも大きな知見が得られるかと思います。
なおSLIM運用チームによると、3回目の越夜にも関わらず主要機能は維持されているとのことです。写真も提供されています。
こうなってきますと4度目の復活の可能性も出てきます。もし復活するとすれば5月末…おそらく5月23日前後になるのではないかと考えられます。夜を越えるごとに機器の劣化は進みますから、可能性は回を減るにつれて低くはなります。ですがそうであったとしても、ここはぜひ、「前人未到」の4度目の復活を楽しみに期待したいところです。
(2024年4月28日午後5時更新)
昨晩(4/23 夜)、再び起動した #SLIM と通信することに成功し、SLIMが3回目の越夜を達成したことを確認しました。早速航法カメラにて撮影した昨晩の月面の様子がこちらです。越夜後としてはこれまでで最も早い月齢での撮影のため、全体的に明るく影が非常に短くなっています。 #JAXA #たのしむーん pic.twitter.com/U0f88xNK9S
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 24, 2024
SLIMは設計上想定されていない越夜を3回実施してもまだ主要機能を維持した状態です。引き続きSLIMの状態を詳細に確認し、月の昼夜の環境によって劣化が進行する箇所や実は劣化しにくい箇所なども明らかにしていきたいと考えています。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 24, 2024
恒例により、月面の夕方における写真が公開されました。
運用チームによると、いくつかの機器についてスイッチを入れたり、負荷をかけたりする状態確認を行ったとのことです。また、前回(2月末)の復活で正常に動作しなかった観測機器「マルチバンド分光カメラ」(MBC)ですが、こちらも「一部機能の不調はあるもののスイッチは入る」(ポストより)とのことです。復活は厳しいかも知れませんが、後述するように劣化状態を見極めることも重要ですので、この結果に期待したいところです。
なお、今回撮影した月面画像は、以前の画像と比べて若干明るいものとなっていますが、これは日本からの可視時間(月をみることができる時間)の違いや、最終日の作業の順番などにより、撮影するタイミングが異なったためとのことです。
地球であれば風や雨などで石が動いたり、そもそも天気が違ったりして日の当たり方が変わるなど、写真を撮るたびに何らかの変化が現れるところですが、月は空気もなく、当然雨も風もありません。従って、日のあたり方の違いだけが際立つことになります。
夜を越えるような仕様を持った探査機ではないにも関わらず、2回の越夜成功という驚異的な成果を残したSLIM。こうなってくると、約1ヶ月後、次のタイミング(4月末)に3度めの復活を果たせるかどうかが気になってきます。これについては、毎度申し上げておりますが、回数を重ねれば重ねるほど厳しさが増してきます。
月の夜の環境はマイナス170度まで温度が下がるという極端な環境です。電子機器にもその影響は致命的に響いてきます。これまで2回、このような環境を越えられたこと自体が「奇跡的」ともいえますが、流石にダメージは徐々に大きくなっているかと思います。
もちろん、期待をもって見守りたいところではありますが、過大な期待はせず、「うまくいけばラッキー」のような気持ちで、4月末のさらなる吉報を待つことにしましょう。
(2024年4月1日午後1時更新)
SLIMは3/30日未明に二回目の越夜後運用を終え、再び休眠に入りました。今回の運用では、主にいくつかの機器についてスイッチを入れたり、負荷をかけたりして状況確認を行いました。MBCも一部機能の不調はあるもののスイッチは入るため、慎重に状態の確認を進めています。 pic.twitter.com/4oOiU4Es8n
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 1, 2024
添付は休眠前に取得した無圧縮の航法カメラの画像です。SLIMが十分な日照を受けている月齢の中で、日本からの可視時間が若干前後することや、最終日の作業の順番などにより、若干前回の休眠前とは違った趣の画像になりました。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 1, 2024
引き続きSLIMが機能を維持していた場合、三回目の越夜後運用は4月下旬頃となります。少しづつセンサー類など機能が失われてきているため3回目越夜が可能かは不透明ですが、引き続き応援いただければ幸いです。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) April 1, 2024
SLIM運用チームのX(旧: Twitter)への投稿によると、昨夜(27日夜)にSLIMより応答があり、SLIMが機能を保っていることが確認されました。下の写真は(ポストと同様となりますが)、航法カメラから撮影した月面の風景です。なお、1回目の越夜の際にすでに分光カメラ(MBC)は機能を停止してしまっています。航法カメラは2回の月面の夜の環境を生き延びていることになります。
なお、投稿によると、使われていないバッテリーのセル(バッテリーの構成要素)や一部の温度センサーに不調が出始めているとのことですが、探査機全体としては、航法カメラの画像が示す通りまだ機能を保っています。
繰り返しになりますが、月の夜はマイナス170度にもなるという極限の環境です。しかも月面は夜が14日ありますので、このような環境に探査機は2週間もさらされることになります。にもかかわらず、一度ならず2回もこの夜を突破した、しかも機器や探査機全体を温める装置など、夜を乗り切るために必要とされる装置を全く装備していないSLIMが越夜に成功するというのは、まさしく驚くべきニュースといえるでしょう。
一方で、2回も夜を越えることに成功したことで、月面において夜を越すために必要な「最低限の」装備などについて、今後より詳しい知見が得られる可能性があります。
ひょっとすると、SLIMが置かれた環境が幸いしている(比較的断熱性に優れた月の砂=レゴリスに接している面積が大きいため、保温機能が働いた、など)、SLIMが使用した部品が優れていた、など、様々なことが考えられます。今後この部品の劣化の状況などを踏まえ、将来の人類の月面滞在(こちらは何回も夜を越えなければいけません)に必要な知識が得られると期待されます。
繰り返しになりますが、本当にすごいことです。
昨晩SLIMから応答があり、SLIMが2回目の越夜に成功したことを確認しました。昨晩はまだ太陽が高く機器が高温であることから急ぎ航法カメラによりいつもの風景の撮影などを短時間実施いたしました。#JAXA、#SLIM、 #たのしむーん pic.twitter.com/vAWgh6K7NH
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) March 28, 2024
取得した機体データによると一部温度センサーや既に使用していないバッテリーセルに不調が出始めていますが、1回目の越夜で確認した主要な機能は2回目の越夜でも引き続き維持されているようです。#JAXA、#SLIM、 #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) March 28, 2024
(2024年3月28日午前11時10分更新)
SLIM自体は月の夜を越える機能(越夜機能)がありませんが、2月25日に電源再投入に成功、運用を行ってきました。また月の夜を迎えたため、発電ができなくなるため、停止するものです。
月の夜はマイナス170度という温度環境になり、電池や電子機器などには厳しい環境です。2月末に再復活したのもかなり「奇跡的な」ことではありますが、今回さらに夜を迎えると故障の確率がさらに上がり、次の復活はかなり厳しいものと思われます。それでもSLIM運用チームでは3月末に再度起動を試すと表明しています。
なお、SLIMに搭載された科学観測機器「マルチバンド分光カメラ」(MBC)については、2月末の再起動で観測を試したものの、正常に動作しなかったとのことです。やはり、月の夜の環境が厳しく、夜を越えられなかったものと考えられます。
また、SLIMの着陸地点の夕方の写真も公開されました。この写真はSLIM搭載の航法カメラで撮影されたものです。
次に月の昼を迎え、SLIMの太陽電池に太陽光が当たり、発電ができるようになるのは3月末と考えられます。「再々復活」の可能性は極めて低いですが、吉報を待ちたいものです。
(2024年3月4日午後2時30分更新)
3/1午前3時過ぎ(日本標準時)にしおりクレータは日没を迎え、SLIMは再び休眠に入りました。厳しい温度サイクルを繰り返すことになるため故障確率は上がりますが、次回の日照(3月下旬)でもSLIMは再び運用を試行する予定です。#JAXA #SLIM #たのしむーん
2/29 23:00過ぎ 航法カメラによる周辺画像 pic.twitter.com/xutv56uSU9
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) March 1, 2024
2/25夜から昨晩まで、越夜後の探査機や月面の状況に関する各種の貴重なデータを取得しながら、温度状況が改善するのを待っていたSLIMですが、昨晩、マルチバンド分光カメラ(MBC)による科学観測に挑戦しました。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) March 1, 2024
MBCは想定通り起動しましたが、残念ながら、正常には動作しませんでした。越夜の影響によるものと思われますが、今後、得られたデータ等から次回の機会へ向けて調査を行っていきます。越夜後運用に対しては多くの応援の声をいただき、大変大きな励みとなりました。ありがとうございます。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) March 1, 2024
航法カメラから非圧縮で画像をダウンロードしました。遠方の特徴的な十字に並ぶクレーターなどがはっきり見えます。機器の温度を見つつ慎重に運用内容を検討し作業を進めています。 pic.twitter.com/jG8YfTlwWt
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) February 28, 2024
地球〜月間での電波でのデータのやり取りは、データ容量に限りがあるため、一般的にはその範囲内で行われます。この場合、画像データなどの容量の大きなデータは、圧縮という形でデータを少なくして送信されます。
画像の圧縮には「可逆」と「非可逆」の2種類があります。可逆圧縮は、圧縮率はそれほど大きくはできないものの、カメラが捉えたままのデータを再現できます。我々がよく使う画像としてはPNG画像が代表的な例です。
不可逆圧縮は、一般的に人間の目にあまり影響しない箇所などのデータを減らすことで、大きな圧縮率を実現させるものです。ただそうはいっても元のデータの一部は失われますので、科学的な解析や、あるいは場合によっては見た目に関しても影響を受ける場合があります。特に圧縮率を上げれば上げるほど、目に見える形での影響が出てきてしまいます。我々がよく使う非圧縮画像としてはJPEG画像があります。
SLIMでどのような画像圧縮形式を取っているかは公開されていませんが、非圧縮のデータは科学解析にとっても重要なデータとなります。上のポストにあるように、遠方の特徴的な「十字に並ぶクレーター」もよりはっきりとみることができており、これらの形成過程の分析にも役立つと期待されます。
非圧縮データは容量が大きいため、時間をかけて地球へ送信されることになりますが、今回はそれだけ運用に余裕があったことを示すものといえるでしょう。
(2024年3月4日午前9時30分更新)
SLIM越夜後運用にて、航法カメラでの撮像を実施しました! pic.twitter.com/MhXQXdBAaG
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) February 26, 2024
SLIM自体が90度傾いて着陸しているため、若干判別が難しいですが、着陸地点が傾斜していること、多くの岩がゴロゴロとしていることがわかります。そして何よりも、航法カメラが月の夜(と昼の高温)に耐え、無事稼働を続けることができたことが証明されました。
先月公開されたSORA−Q撮影の写真と比べると、岩の影が逆向きになっていることもわかります。
また、マルチバンド分光カメラ(MBC)観測チームは、さらなる観測に向けた準備をしています。前回の起動時に観測できなかったさらに外側の領域を狙うべく、探査機へ送る指令(コマンド)を準備しているとのことです。
越夜の成功を信じ、MBCチームは前回見えなかった赤枠内を撮像する新たなコマンドを作りました!
さらなる観測の可能性にワクワクしています!#SLIM #JAXA
まだまだ #たのしむーん pic.twitter.com/1EQbUXstZT— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) February 26, 2024
着陸地点には、月のマントルが起源と思われるカンラン石らしき物質が露出しています。MBCではこれを詳しく調査し、月の成り立ちについてのより深い研究につなげることを目指しています。今回の再復活によって観測の範囲が広げられれば、それだけ私たちの月の知識もより広がるというわけです。
夜が近づいており時間は限られますが、チャンスは十分にあります。新たな成果に期待しましょう。
(2024年2月27日午前10時00分更新)
月の夜は14日続き、最低気温はマイナス170度にも達します。このような低温では、搭載されている電池や電子機器などが機能を保つことは難しいと考えられていました。そのため、夜を越えられるかはかなり厳しいと思われていましたが、SLIMはどうやらこの夜を生き延びたようです。
なお、現在送信機の温度が非常に高い(月面は昼過ぎの状態)ため、送信機に負担をかけないよう、通信を短時間で終了した上で現在は電源を切っている模様です。このため、探査機の詳細な状態は不明です。しかしいずれにしても、SLIMは越や(月の夜を越えること)にも成功してしまいました。(2024年2月26日午後1時50分更新)
昨晩、コマンドを送信したところSLIMから応答がありました。SLIMは通信機能を維持しての月面での越夜に成功しました!昨晩はまだ月の昼で通信機器の温度が非常に高かったことから短時間の運用のみで通信を終了しています。今後、温度が十分に下がったところで観測を再開できるように準備を進めます。 pic.twitter.com/dGbBkAAK1H
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) February 26, 2024
しかし、SLIM着陸地点の夜が近づいているため、SLIM運用チームは1月30日午後10時から31日朝9時までの運用を最後に、一旦運用を休止しました。SLIMチームでは2月1日にも探査機へコマンド(指令)を送信し、応答がないことを確認して、SLIMが休眠状態に入ったことを確認しました。
SLIMがある場所ではこのあと2週間の夜に入ります。ご存知の通り、月は14日の夜と14日の昼があります。空気がないため月では温度差が極端となり、月の夜の間には最大でマイナス170度まで温度が下がる可能性があります。この状態では、探査機に搭載されている機器、あるいは電子部品などがもたない可能性が高いと思われます。さらに、SLIM自体が本来想定される姿勢とは異なる姿勢となって着陸しているため、再び昼を迎えてもしばらくは電力を確保できません。
ただ、仮にSLIMが夜を過ぎて通信が回復しなかったとしても、もともとこれは予定されていたミッションの範囲内です。SLIMは夜を越す(越夜)機能を搭載していません。具体的には、探査機の温度を保つためのヒーターなどは搭載されていません。これはもともと「月の昼の14日だけ運用できればよい」と割り切り、軽量化やシステムの簡素化を図ったためです。
もちろん、再びSLIM着陸点に昼が到来し、SLIMの太陽電池に太陽光があたり、再び発電できた際、SLIMの通信が復活する可能性もゼロではありません。非常に低い可能性ですが、「うまくいったらもうけもの」くらいの形で期待してみるのもよいかとは思います。
昨夜(1/30) 22時から本日(1/31) 朝9時まで、分光カメラによるマルチバンド観測を行いました。得られた画像の詳細解析や追加撮像結果により昨晩もラブラドール、ダルメシアン、パピヨンなどが新たに仲間入りし、いくつかの対象は2回目の観測も行っています。#JAXA #SLIM #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 31, 2024
MBCチームの科学者の皆さんは、お犬様の観測結果に興奮冷めやらず、いろいろと議論が尽きないようです。約半年前、種子島で千倉の岩屋などむき出しの地層を見て、興奮気味に熱く語って頂いたことを思い出します。#JAXA #SLIM #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 31, 2024
千倉➡千座でした。失礼いたしました
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 31, 2024
1/30~1/31の運用をもって、SLIMは休眠期間に入りました。このあと、2週間に及ぶ月の夜を迎えます。SLIMはもともと過酷な月面の夜を想定した設計はされていませんが、2月中旬以降、SLIMの太陽電池に日が当たる時期に再び運用に挑戦する予定です。#JAXA #SLIM pic.twitter.com/rSEr4KkyB4
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) February 1, 2024
昨晩(1/31~2/1)も念のため探査機側の通信機をONにするコマンドを送り、反応がないことをもってSLIMが休眠状態に入ったことを確認しました。こちらはSLIMが航法カメラで夕暮れ前、最後に撮像した風景です。#JAXA #SLIM #たのしむーん pic.twitter.com/jaBIX8e363
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) February 1, 2024
(2024年2月2日午前11時更新)
SLIMは太陽電池の向きが太陽の方向と異なる形で着陸したため、月面の昼から夕方にかけて運用が再開できる可能性があるとはされていました。しかし、月面の昼は温度が100度以上にもなる過酷な環境です。搭載されている機器、とりわけコンピューター類や電池などがその環境で生き延びられるかどうかが心配されていました。今回、SLIMは見事「生き延び」、復活したことになります。新たな成果に大いに期待すると共に、運用チームの頑張りを讃えたいと思います。
昨晩SLIMとの通信を確立することに成功し、運用を再開しました!
早速MBCの科学観測を開始し、無事、10バンド観測のファーストライトまで取得しております。
下の図はマルチバンド観測のファーストライトにてトイプードルを観測したものです。 pic.twitter.com/vLVh4utQTT— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 28, 2024
トイプードルはSLIM近くの観測対象となる岩につけられた名前です。詳しくはこちらのプレスリリースをご参照ください。#JAXA #SLIM #たのしむーんhttps://t.co/xMeOhVOVkN
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 28, 2024
(2024年1月29日午前10時30分更新)
LROは最大で50センチメートルもの解像度を誇るカメラを搭載しており、2009年の打ち上げ以降、これまでにも様々な月面の人工物体(アポロ計画の月面着陸機、また月面に激突した着陸機など)を捉えてきました。今回公表された画像は、数年前の同じLROが撮影した画像と見比べて明らかに違いがあることから、SLIMを捉えたとみて間違いないものとみられます。
NASA 月周回衛星(LRO)が小型月着陸実証機(SLIM)の上空を通過し着陸領域の画像を取得しました📷🛰️🌕
月面の国際協力に新たな1ページが追加されました🤝!#NASA #SLIM #LRO https://t.co/ENL4KUAdUh— ISAS(JAXA宇宙科学研究所) (@ISAS_JAXA) January 29, 2024
(2024年1月29日午後0時30分更新) ※SLIM通信復活のニュースを先に出したため、更新時間はこちらがあとですが記事はこちらが順番としては前となっています。
ただ、高度50メートル付近でメインエンジン1機に問題が生じ、予定の推力が生じなかったと考えられています。そのため、探査機はメインエンジンを上面にして着陸したと思われます。SLIMが撮影した写真から、メインエンジン1機が脱落した可能性が示唆されています。着陸の最後の過程の詳細については現在も詳細は解析中です。
一方、2機の超小型ロボットについては、LEV-1は地球との直接通信、及び6回の跳躍動作(ジャンプして移動する動作)に成功しました。また、LEV-2(SORA-Q)の通信の中継にも成功しました。月面でのロボット同士の通信、超小型ロボットによる地球への直接通信は世界初です。
また、LEV-2 (SORA-Q)については、写真撮影に成功しました。公開された写真では、「さかさま」の姿勢になったSLIMがはっきりと写っており、ミッションチームの推定を裏付けるものとなっています。超小型ロボットによる撮像は世界ではじめて成功したことになります。また、LEV-2が目指した「変形しての動作」にも成功したことになります。
このように、SLIMは数多くの世界初を達成したことが明らかになりました。今後の月探査、そして月の科学にも大きな進歩につながる大成果です。
<写真> © JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学
(2024年1月25年午後3時30分更新)
- 太陽電池パネルが西側を向いており、太陽光が当たっていない状態であること。このため、太陽電池で発電ができていない。
- 今後、太陽の方向が変わり、太陽光が太陽電池パネルに当たる形になれば、再び探査機が起動する可能性がある。
- 現在、探査機は電源を切った状態にある(20日午前2時57分に電源断)。
- 着陸の過程で撮影された写真などすべてのデータのダウンロードは無事行えた。
と述べています。
月面は14日の昼、14日の夜があります。太陽光の向きが数日(10日ほど)で変われば、再び太陽電池に光が当たり、発電ができ、探査機が「復活」する可能性があります。但し、月面の昼は最高で100度以上になるという高温です。この高温に探査機が耐える必要があります。原因がわかったことで、今後の復活の可能性がみえてきたのは大きなポイントです。
(2024年1月22日午後6時更新)
SLIMについて国内外の皆さまからの暖かいご支援、ありがとうございます。その後の状況についてお知らせいたします。#JAXA #SLIM #たのしむーん
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 22, 2024
1/20 0:20(JST)の着陸後、太陽電池の発電が確認できなかったため、バッテリ残量12%の時点で復旧運用時に過放電で機能喪失したバッテリにより再起動が阻害される事態を避けるべく所定の手順に従ってバッテリを切り離しました。これにより、1/20 2:57(JST)に探査機は電源OFFとなりました。
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 22, 2024
テレメトリデータによればSLIMの太陽電池は西を向いていることから、今後月面で太陽光が西から当たるようになれば、発電の可能性があると考えており、現在復旧へ向けて準備を進めています。なお、SLIMは太陽電池からの電力のみで動作することが可能です。#JAXA #SLIM
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 22, 2024
着陸後、電源OFFするまでの間に、着陸降下中や月面で取得した技術データや画像データの地上への送信を完了できました。現在、そのデータの詳細な解析を行っています。プロジェクトチームとしてはたくさんのデータが取得できたことを確認し、ほっとするとともにワクワクしはじめています。#JAXA #SLIM
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 22, 2024
SLIMの状況や現段階での成果について、今週中に公表をするべく、準備を進めています。着陸後の姿勢は計画通りにはいきませんでしたが、たくさんの成果が出せるかもしれず、着陸に成功できたことを嬉しく思っています。会見の日時が決まりましたらまたお知らせします。#JAXA #SLIM
— 小型月着陸実証機SLIM (@SLIM_JAXA) January 22, 2024
記者会見の内容を受けた記事を月探査情報ステーションブログに執筆する予定です。情報や写真の整理などが必要なので、いましばらくお待ちください。
なお、記者会見でも質疑応答がありましたが、軟着陸には成功しましたが、世界初である「ピンポイント着陸」(誤差100メートル以内での高精度着陸)の成否については、様々なデータからの検証が必要なため、数日〜1ヶ月程度かかるとのことです。今後探査機の状況なども含めて各種の情報の更新があると思います。
本ページも随時アップデートしますが、最も早いのは月探査情報ステーションのX (旧・Twitter)です。ぜひフォローをお願いいたします。
(2024年1月20日午後4時更新)
山川JAXA理事長より、SLIMの月面軟着陸は成功した旨発表されました。また、國仲理事よリ、信号は正常に受信されていること、ただし、探査機の太陽電池の発電ができておらず、現状充電されている電力だけで動作していることが説明されました。探査機内に存在するデータの受信を最優先させている状況とのことです。また、LEV-1及びLEV-2 (SOR-Q)の分離も成功し、LEV-1については電波も受信できているとの報告がありました。(2024年1月20日午前2時20分更新)
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スリム (SLIM)計画は、高精度な月着陸を実証することを目指す日本の月着陸計画です。2023年9月にH−IIAロケットで打ち上げられ、12月25日、月周回軌道への投入に成功しました。2024年1月20日に月面着陸を実施し、成功しました。日本は月面着陸で世界で5番目に成功した国となりました。また、当初目標としていた高精度(誤差100メートル以内)のピンポイント着陸にも成功しています。
SLIMは当初太陽電池の向きが本来想定していた方向と異なっていたため、太陽電池による発電ができていませんでしたが、1月29日に復活しました。その後、2月末、3月末、4月末と、月面の夜を越えることに成功しました。月面の夜の極低温を越える装備を持たない探査機が月面を越えた例は極めてまれです。しかし、5月・6月・7月には復活せず、8月の通信好機にも復活しなかったことから、JAXAは8月23日、運用を終了しました。
- SLIM プロジェクトページ (JAXA宇宙科学研究所)
- JAXAのSLIMのページ (JAXAウェブサイト)