月の資源は確かに魅力的ではあります。しかし、現時点では以下のような理由によって、開発をしようという国はまだ現れていません。
- 月に資源が豊富かということについて科学者の間でも議論がある
- 月には確かに、様々な資源があるといわれています。しかし、アポロ計画などによって、月そのものは、金属分が少ない、ということが分かってきました。
月の海には、チタンや鉄などが比較的豊富な場所が存在します。しかし、それらは、地球のように鉱脈になっているわけではありません。海全体にわたって、広く分布しています。そのため、商業的な採掘には向かないのです。 - 資源を地球まで運ぶためにお金がかかりすぎる
- 月で資源を採掘したとしても、それを地球に持ってくるためには大変な費用がかかります。また、地球近くの宇宙空間で利用するとしても、今の規模の宇宙ステーションや宇宙船を造るあれば、地球から資材を持っていったほうが安く、早く完成させることができます。
- 資源採掘のための法的な枠組みが未完成である
- 宇宙開発に関して基本的な事項を定めた国際条約に、「宇宙条約」があります。ここでは、将来的に月や他の惑星の資源を開発するときの約束事にも触れています。しかしこの条約の中では、基本的には、将来そのようなことが可能になったときに考える、とされています。
法的な枠組みが定まっていないので、企業や国が、月の採掘を具体的に考えるための前提が整っていないといえます。
科学者の中では、宇宙で資源を得る場所として、むしろ地球近傍小惑星(NEA: Near Earth Asteroid)を考えている人が多いようにみえます。
ただ、将来的に月面基地などができたら、月の資源を利用して構築することになるはずです。そのときまでには、上記の技術的、経済的、法的な課題を解決していかなければならないでしょう。
日本の月探査「かぐや」では、長期的には、月にどのような資源があるか、といったことに関しても、重要なデータを提供することになります。また、各国が打ち上げている探査機、特にインドや中国は、将来的に月の資源(特にヘリウム3)の開発を狙っているともいわれています。
このような月に関するデータの蓄積を、将来に向けて少しずつでも進めていくことは、将来月の資源を開発するためにも役に立つことになります。
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