<2017年11月17日更新>
先日、日本の月探査機「かぐや」のデータにより、月に空洞が発見されたというニュースが流れ、本Q&Aに関しても「巨大な空洞があるではないか」というお問い合わせを頂いております。
本Q&Aにおける「巨大な空洞」の意味は、月の内部、すなわちコアやマントルに相当する月の奥深くの部分が空洞であるということがない、という意味です(全文をお読みいただければこの点についてお分かりいただけるかと思います)。
ただ、上記の成果を報道した記事の多くが「月に巨大な空洞を発見」といった内容で「巨大」「空洞」という言葉を使用していました。そのため、大変紛らわしいことになってしまっているように思います。
この状況を受けまして、本Q&Aについても記事内容を抜本的に見直し、現状に即してよりわかりやすい内容にしていきたいと思います。現在まだこの「月に空洞が発見された」というニュースについての月探査情報ステーションのブログ記事を執筆中です。これが執筆でき次第、本Q&Aの文章を見直し、最新の成果に即した形にしていきたいと思います。
皆様におかれましては紛らわしい部分が残ってしまい申し訳ありませんが、今しばらくのご辛抱をお願いいたします。

まず、我々はドリルで月の中心まで穴を掘ったわけではありませんので、「絶対に」空洞であるということはまずいえないと考えてよいでしょう。但し、月の内部が空洞である可能性は、科学の視点からみて極めて低いということはいえます。
理由はいくつかありますが、最大の理由は、「慣性能率」と言われるものです。慣性能率は、月や地球が自転するときに、その回転の大きさを表したものです。物体の中身の様子によって、回転の仕方が変わってくることは日常的にもよく経験することです。

さて、地球や月などの天体も自転しています。従って、慣性能率という値を持つことになります。実際には、この慣性能率の値を半径の2乗と質量とで割った値(慣性能率比)を使って、天体の自転の様子を表すことが多いのです。この値は、内部が均一になっているときに0.4という値になります。内部に重たいものが集中しているほどこの値は小さくなります。逆に、中に行くほど軽い(空っぽの場合も含めて)場合には、0.4を上回ります。

アポロなどが測定した月の慣性能率比の値は、0.389となっています。この値は、他の探査機などでも確かめられており、かなり信頼性が高いと思われます。この値を信用すれば、月の中身が空っぽである(あるいは、中に行くほど軽い)ということはあり得ないことになります。
もう1つ、やや間接的ですが、月の内部に起きている地震(月震)の存在があります。今のところ、月震の中には深発月震と呼ばれる、深さ800~1100キロメートルで起きる地震があることがわかっています。そこで、この深さには地震を起こすような物質があり、その深さより上には、地震波を伝えるような物質(=固体)があることは間違いありません。
地球でも「地球空洞説」が唱えられたことがありますが、地震波の伝わり方などの証拠により、現在ではほとんどの科学者が否定するところとなっています。月についても、内部が空洞ということはまず考えられないといってよいでしょう。

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