確かに、月には空気がありません。ですから、酸素もありません…といいたいところですが、実は月にも酸素はあります。ですから、地球から酸素を持っていかなくても、月面で酸素を作り出すこともできます。
ただ、地球のように酸素が(空気のような)気体の形になっているのではなく、別の物質と結びついているので、呼吸ができるようにするためには、月の表面にある岩や水から、どうにかして酸素を取り出す必要があります。

月の表面にある物質から酸素を取り出す方法として、現在は次のようなものが考えられています。

(1) 月表面の土(レゴリス)から取り出す
月表面の土(レゴリス)の土の中には、「酸化物」と呼ばれる物質がたくさん入っています。酸化物というのは、金属などと酸素が結びついたものです。たとえば、鉄と酸素が結びつけば「酸化鉄」(いわゆる「さび」)になります。
こういった酸化物に水素を反応させますと、金属は分離されて、酸素は水素と結びついて水になります。今度はその水を電気分解すれば、水素と酸素にわかれます。水素は再び酸化物との反応に使い、酸素は呼吸などに使うことができます。もちろん、金属もこの段階で取り出せますので、月で資源採掘をしながら、ついでに酸素も生産することができるわけです。

(2) 月の表面の氷から取り出す
クレメンタインルナープロスペクター、さらにはエルクロス探査機による調査で、月の表面にかなりの量の水があることがわかってきました。この水を電気分解すれば、水は酸素と水素に分かれます。この酸素を利用します。
水素は(1)で述べたような、月面での資源採掘に使ってもよいですし、ロケットの燃料などとしても使えます。
電気分解に使うための電気は、月面に降り注ぐ太陽光から得ることができます。

この2つの方法を使えば、月面でも酸素を作り出すことができるようになるでしょう。
ただ、酸素を作り出すためには、月面にそのための設備を作らなければなりません。月面基地が小さくて、滞在期間が短いうちは、地球から酸素を持っていって、月面で使うことになるでしょう。
月面基地が大きくなり、資源採掘などが始まれば、月で酸素を作って、それを使うことになるでしょう。


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