まさに奇跡の「逆転ホームラン」で、一度は投入に失敗した金星周回軌道に5年越しで再投入を果たした金星探査機「あかつき」。昨年(2016年)4月から本格的な科学観測を実施し、多くのデータが得られています。
このほど(7月11日)、「あかつき」の科学観測データが、ミッションを実行するJAXA宇宙科学研究所からはじめて公開されました。基本的には研究者向けですが、一般の方もダウンロードすることはできます。

「あかつき」科学データアーカイブのトップページ

「あかつき」科学データアーカイブのトップページ(クリックすると直接そのページヘジャンプします)

宇宙科学研究所は、科学探査を行っています。そして、そのような科学データは原則としてある一定期間後に無償で全世界に公開されます。これは世界的な慣例でもあり、NASAなどでも同じように探査データは無償で公開されています。
宇宙科学研究所では、DARTS(ダーツ)(Data ARchives and Transmission System)というサイトで科学データが公開されています。宇宙科学研究所が打ち上げた科学衛星のほぼすべてのデータがここで公開されています。天文衛星や月・惑星探査衛星のデータはここで公開されており、例えば月周回衛星「かぐや」や小惑星探査機「はやぶさ」のデータもここからダウンロードできます。
ただ、データは科学者が使用することが前提になっているため、そのためのフォーマットや形式で公開されています。そのため、データを実際に使用する(例えば、画像データを実際にご自身のパソコンなどでご覧になる)には、対応するソフトウェアなどが必要になります。

今回公開された「あかつき」データは、電波科学観測(RS)も含む全ての観測データです。
データの形式は、NASAが提唱する科学データ公開形式「PDS」(Planetary Data System)に準拠したものです。NASAが加わっているかどうかは別として、最近の探査データはこのPDS形式で公開されることが多くなっています。

なお、各観測機器のデータは、雷・大気光カメラ(LAC)を除いて画像データの形で公開されています。この画像データはFITSという、天文分野などで一般的に使われるデータフォーマットで公開されていますので、対応するソフトウェアをお持ちであれば、皆様のダウンロードしてご覧いただくことは可能です。
FITSに対応するソフトウェアは無償で手に入るものも多いですが、一般的なものとしてはgimpなどがあります。
例えば、IR1 (1μmカメラ)の2016年3月26日撮影の画像(データ名: ir1_20160326_120350_097_l1b_v10)という画像をダウンロードし、gimpで開きますと、このような金星の姿が現れます(Ubuntu 16.04に付属のgimpを使用)。

「あかつき」観測画像の一例

「あかつき」観測画像の一例(ir1_20160326_120350_097_l1b_v10) (© JAXA)

ただ、すべてのデータがきれいというわけではなく、中にはこのようなものもあります。報道向けにきれいなものが選択されているわけではなく、取得されたデータすべてが公開されているため、このようなものも含まれています。

「あかつき」観測画像の一例

「あかつき」観測画像の一例(ir1_20160326_080351_097_l1b_v10) (© JAXA)

今回公開されたデータについては「ピアレビュー前」、つまり研究者の正式なレビューなどを経る前の公開ということになっています。そのため、仕様に関しては自己責任で行うように、という注意書きがあります。ただし、論文を書いたり解析をしたりするのではなく、「あかつき」が撮影した金星の姿を見てみたい、というのであれば、問題なく使用可能です。

「あかつき」に限らず、多くの科学衛星のデータが、DARTSを通して公開されています。使いこなすにはかなりの手間と時間がかかりますが、皆さんでもこのように、ネットワークとパソコンさえあれば自由にデータを入手・閲覧し、解析することも可能です。もし「我こそは!」という方は、ぜひ挑戦されてみてはいかがでしょう。

  • 「あかつき」科学データセット トップページ (JAXA宇宙科学研究所)