ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が、2020年打ち上げ予定の火星探査機「エクソマーズ」のローバーのレゴモデルの写真を公開しました。これだけですとなんか微笑ましい記事でもあるのですが、実はしっかりとした目的があるのです。

レゴで作られた火星ローバーモデル

レゴで作られた、ヨーロッパの火星探査機「エクソマーズ」ローバーのモデル。(© ESA-G.Porter)

火星着陸機を火星にしっかりと着陸させるのは、当然のことながら重要、というよりは必ず行わなければならない任務です。ヨーロッパはかつて、「ビーグル2」という火星着陸機を2003年に火星に送りましたが、降下途中で行方不明となり、火星着陸に失敗したという苦い経験があります。ですから、次は失敗するわけにはいきません。

このローバーは、実は技術者たちが「出口テスト」(egress test)というものを行うために製作されたものです。
着陸後、ローバーをどのように動かすかというのは大きな問題です。なにしろ火星は遠いところにあります。指令を送ったとしても届くには十数分かかります。そして、カメラなどでしか状況を把握できませんので、下ろしたはいいがカメラに写っていない障害物があってローバーを着陸機から下ろせなかった、などという事態も起こりえます。

そこでこのテストでは、2方向あるローバーの下り口のどちらから降りるか、限られた情報をもとにどう判断するかというテストを行っているのです。
技術者たちがこの小さなレゴローバー・着陸機で経験を積むことによって、何らかの事態に対応できる技術も磨かれますし、ローバーや着陸機の制御プログラムもより洗練され、安全性の高いものにしていけます。

現在、ESAではフランス・ツールーズにある施設の中の一角「火星ヤード」に、実機の半分の大きさのローバーが置いてあり、これでの試験を行っているそうです。ローバーの操作チームはそこから1000キロ以上も離れたオランダ・ノルドバイクにあるESAの技術センター(ESTEC)から操縦しています。ここから、カメラの情報だけをもとに着陸機からローバーを下ろし、「火星」の地表の上を走らせるという訓練、というかテストを行っているのです。

このようなテストを繰り返すことで、ESTECの技術チームは、ローバーが置かれている正確な場所を知らなくても、限られた写真やセンサーの情報を頼りに、ローバーを正しく走行させることができるようになるというわけです。
このレゴ製ローバーは、その試験のために、状況をよりわかりやすくみせるという効果があるというわけです。

エクソマーズは、前段となる周回機および着陸実証機が3月に打ち上げられ、現在火星へと向かっています。後段となるこの火星ローバーを含めた打ち上げは、本来2018年に予定されていましたが、機器開発の遅れなどから2020年へと延期されました

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