先月(3月)末日をもって「誰も月へ到達できず、賞金は授与されず」という形で終了したはずだったグーグル・ルナーXプライズ(GLXP)ですが、運営元のXプライズ財団が、レースを再始動させることを検討していると、5日に発表しました。
ただ、賞金はない形のようです。

Xプライズ財団の発表によると、本日(5日)をもって、この月探査競争は、賞金がない形ではあるが新たな形で「再起動」(re-launch)されるとのことです。また同様に、Xプライズ財団はこの月探査競争の新たなスポンサーを探すとのことです。
Xプライズ財団自身はお金がないため、何らかのレースはスポンサーがついてはじめて実行されます。この月探査競争の最初に来る「グーグル」、つまりあのIT大手のグーグルが今回の月探査競争のスポンサーだったわけですが、これは3月末で無効となったようで、Xプライズ財団としては新たなスポンサーを探さねばならなくなっています。もちろん、もしスポンサーがついたときには、レースの名前も「○○Xプライズ」 という形で一新されることでしょう。

Xプライズ財団共同創設者でもあり、民間有人宇宙飛行を競った「アンサリ・Xプライズ」優勝者でもあるピーター・ディアマンテス氏は、今回の決定について、2007年から長年にわたってサポートを続けてきたグーグルに謝意を表すると共に、「少なくとも5つのチームが、打ち上げ契約を交わせれば月面に2年以内に到達できる状態にあり、このように競争によって大きな進歩がもたらされた一方で、近未来にも達成できる可能性がある見通しがある(原語では”near-term potential”)ことを考え、新たなスポンサーを探すこととした」と述べています。

また、Xプライズ財団の専務理事であるチャンドラ・ゴンザレス・マウラー氏は、このGLXPを通じて、合計で3億ドル(日本円で約320億円)以上の民間資金がこのレース、すなわち月探査に投じられ、このレースを通じて育ってきたベンチャー企業が着実に成果を上げつつあることを強調しています。その上で、いまの(中途半端な?)状態でレースを終わらせるのは得策ではないとして、「私はこれらのチームのいずれかが近いうちに月面に着陸し、宇宙開発の新たな章を開くことを確信している。」と述べています。

また、GLXPに参加していたチームからも再開要請があったようです。これは、ハクトが1月初めにロケット調達の失敗で飛行断念を発表した際も「レースの延長を探る」と袴田代表が述べていたように、常にチームからの要望に上がっていたようですが、今回の再起動はその点も考慮に入れたもの、と財団が述べているのが興味深いところです。
各チームの声が入っていますが、例えばハクトの袴田代表は、「GXLPは世界に対し、このレースの考え方が民間宇宙開発を新しいレベルに引き上げるためにどのような点で必要不可欠なものであったかを如実に示したものとなった。そして一般市民の宇宙への関心を高め、これまで宇宙に関心がなかった民間企業をも宇宙開発に巻き込むきっかけを作った。新しいレースによって、我々の産業はまたもやさらに高いレベルへと達することだろう。我々は新しい月探査競争を熱烈に歓迎する。」と、Xプライズ財団のプレスリリースの中で述べています。

確かに、5チームすべてが月に向かうローバーを用意できたにもかかわらず、全てのチームが「ロケットの調達ができなかったばかりに」レース失格というのはちょっともったいない気がすることは確かです。ですから、袴田代表(そして各チームの代表)が要望していたように、レースの延長、それができないのであれば新たな形でのレースの再始動はあってしかるべきかとは思います。
ただその際には、いくども期限が延長された挙句最終的に目標を達成できたなかったGXLPの運営についての反省もしっかりと行う必要があるでしょう。逆にそれがなければスポンサーも二の足を踏むのではないでしょうか。

上記の通り、問題は「月へ向かう輸送手段の調達費用をどのチームも捻出できなかった」という、シンプルではあるが(袴田代表の言葉と逆になりますが)民間宇宙開発にいままさに存在する大きな問題点をどう解決するかにかかっています。
新しい月探査競争は、この問題を解決することが絶対的に必要であり、それをどのように解決するのかを各チーム、さらにはそれを見守る一般市民にも明示することが、Xプライズ財団には求められると思います。

なお、現時点(4月10日)では、ハクトは特に公式の反応を示していません。ただ、ハクトの公式ツイッターはこの再起動を伝えるメディア記事やXプライズ財団のツイートのリツイートを行っています。
レースが曲がりなりにも再起動され、「第2幕」がどのように進むのか、楽しみに見ていきたいと思います。