月にはいろいろな資源があります。それらを、順番にご紹介していくことにしましょう。
- アルミニウム
- アルミニウムは、地球でもよく使われる金属です。飛行機の機体からアルミ箔まで、様々な使われ方をされています。
月でのアルミニウムの使われ方としては、金属としての性質を活かして、建設材料や、ロケットなどの輸送機に使うことが考えられます。また、アルミニウムは酸素と化合しやすいので、この性質を利用して、ロケットの燃料として使うこともできます。
アルミニウムは、月の高地にたくさんある「斜長石」という鉱物に大量に含まれています。場所によっては、斜長石を90パーセント以上含む岩石がある場所も、月の高地にはあるそうです。
月でアルミニウムを取り出す方法として、炭素や塩素と化合させてアルミニウムを取り出す方法が検討されています。最初に炭素や塩素などを地球から運ぶ必要はありますが、これらはリサイクルして使うことができます。 - 酸素
- 酸素はもちろん、人間が呼吸するときにも必要ですし、水素と化合させれば水を作ることができます。ロケットの燃料(酸化剤)や燃料電池の燃料にもなりますし、将来、人間が月面に基地を作ったときには、酸素は必要不可欠の物質になります。
月には大気がありませんから、酸素は気体の形では存在しません。そこで、取り出すとすると、岩石か水から取り出さなければなりません。岩石の中には、酸素と化合した酸化鉱物があります。とくに、イルメナイトという、チタンと酸素が結びついた鉱物は、月にも比較的豊富に存在します。
イルメナイトから酸素を取り出すためには、水素や炭素を加えて熱するという方法が一般的です。この方法を使うと、比較的低い温度(900度くらい)で酸素を取り出すことができます。 - 水素
- 水素は、ロケットの燃料になりますし、水を作るための材料にもなります。また逆に、酸素のところでも述べましたが、イルメナイトから酸素とチタンを取り出すために使うこともできます。
水素は、太陽から吹きつける太陽風に含まれており、月の砂(レゴリス)にそれらが吸着されています。しかしその量はごくわずかなので、大量のレゴリスを処理する必要があります。例えば、1トンの水素を取り出すためには、0.7平方キロの範囲にあるレゴリスを処理しなければいけないという計算結果もあります。
ヘリウム3と同様、レゴリスを加熱することによって、水素を得ることができます。 - チタン
- チタンはアルミニウムと同じように、構造物(月面基地や資源採掘のための道具)、ロケットなどの輸送機器を作るために使うことができます。
チタンを含んでいるイルメナイト(酸素の項を参照)は、月の表側、海の部分に存在する、玄武岩という黒っぽい岩石に含まれています。例えば、アポロ11号が着陸した静かの海の岩石には、イルメナイトが15~20パーセントも含まれていたという報告があります。ただ、月の海の岩石が必ずしも、これだけ大量のイルメナイトを含んでいるわけではないため、資源として採掘する場合には、イルメナイトがどこに含まれているかを調べる必要があります。
このためには、ガンマ線分光計などを使って、月の元素の分布を明らかにしてやるのがもっとも確実な方法です。 - 鉄
- 鉄が資源として役に立つことはいうまでもありません。構造物としては鉄は理想的です。月面基地を作るときにも、鉄を素材として作れば、頑丈な建物をつくることができるでしょう。
鉄は月の岩石の中にも含まれていますし、ときには、鉱物の中に鉄が粒として含まれていることもあります。ただ、これらから純度の高い鉄を取り出すのは難しい作業になります。
鉄を取り出す鉱物として期待されているのは、チタンと同じ、イルメナイトです。イルメナイトから酸素とチタンを取り出すときに、副産物として鉄も作り出すことができます。 - ヘリウム3
- ヘリウム3(ヘリウム・スリー)は、月の砂にごくわずかに含まれている気体で、核融合発電でエネルギーを産み出せるのではないかと期待されています。
- 水
- 人間が月面に滞在するときに、水は欠かすことができません。生活にも生命維持にも、あるいは工業利用でも、水は不可欠です。また、水を酸素と水素に分解すれば、呼吸のための酸素や燃料としての水素・酸素を取り出すこともできます。
- レゴリス (月表面の砂)
- レゴリスは、それ自身が金属や水素などを取り出すための資源の素材として重要ですし、レゴリス自身も資源となります。レゴリス自体を焼き固めてレンガやガラスブロックを作れば、太陽熱を蓄積するための材料や建設資材として使うことができます。
レゴリスは、事実上月のどこにでもありますから、資源としてもっとも得やすいものといえるでしょう。資源として利用するためには、レゴリスを輸送したり、ふるいにかけたりするための装置をどのように造るかが重要になります。
その他にも、資源として月に豊富に存在するものとしては、ケイ素があります。ケイ素は半導体の材料などに使うことができます。その他にも、月に豊富な元素としては、マグネシウムやカルシウムなどもあります。
また、月では、希土類元素を多量に含むKREEP(クリープ)と呼ばれる岩石が見つかっています。Kはカリウム、REEは希土類元素(Rare Earth Elements)、Pはリンの略です。これらを比較的多く含む鉱物です。また、ウランやトリウムなども比較的多く含まれています。KREEPは高地に存在し、資源としてみると量はごくわずかですが、その組成から、月の起源などを探る上でも注目されています。
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