moonstation

About 寺薗淳也

This author has not yet filled in any details.
So far 寺薗淳也 has created 1182 blog entries.

エクソマーズのローバー着陸点、2箇所への絞り込みを実施へ

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は、2020年に打ち上げが予定されているヨーロッパとロシア共同の火星探査「エクソマーズ」の着陸機およびローバーの着陸点について、27日に第4回の検討会議を行うと発表しました。これまでの検討でかなり絞り込んできた着陸点を最終的に2箇所にまで絞り込むのが今回の目的です。
重要な会議ということで、2日間にわたって行われます。場所はオランダ・ノルドバイクにある、ヨーロッパ宇宙技術研究センター(ESTEC)です。

エクソマーズ2020年ローバー

エクソマーズ計画で2020年に打ち上げられる予定のローバーの想像図。(© ESA)

エクソマーズ計画は、火星に2回にわたって探査機の打ち上げを行います。そのうち、第1回の周回機の打ち上げは昨年3月に実施され、10月には軌道に投入されました。しかし残念なことに、周回機と同時に火星に向かい、着陸実験を行った着陸実証機「スキアパレッリ」は行方不明となり、他の火星探査機が撮影した画像データなどから、地上に激突したことがほぼ確実視されています。

この次の段階として、着陸機とローバーの打ち上げが予定されています。なお、本来この第2回めの打ち上げは2018年に行われるはずでしたが、昨年5月、ヨーロッパとロシアは開発の遅れから2年の延期を決定しました
ローバーの目的は、地表の物質を分析し、生命の痕跡、とりわけ有機物や水などを探り、かつての火星がどのような姿であったかを探ることにあります。
ローバーは着陸機から数キロほど移動することが可能で、このような物質が発見されることが期待される場所などを重点的に探査することができます。特に、ローバーには2メートルの深さまで掘削が可能なドリルが搭載されており、これによって、これまであまり調査されてこなかった地下の物質を直接採取、ローバー内部で分析することができます。新たな発見が期待できそうです。

さて、2015年10月に行われた前回の着陸点選定会議で、選定会議のメンバーは3箇所を着陸地点候補と選定し、詳細な調査を実施すべきと結論づけました。この時点ではまだ打ち上げは2018年で、最有力の着陸点として「オクシア高原」(Oxia Planum)が挙げられていました。
しかし、打ち上げが延びたこともあり、選定会議メンバーは改めてこのオクシア高原を候補地の1つとし、他に2つの場所として残っていたアラム尾根 (Aram Dorsum)及びマワース峡谷 (Mawrth Vallis)のうちどちらか1つをもう1つの候補として、いったん2箇所に絞ることにしました。

エクソマーズの3箇所の着陸点候補

エクソマーズの3箇所の着陸点候補。オクシア高原は緑色の点、アラム尾根とマワース峡谷は青い丸で示されている(アラム尾根が下、マワース峡谷が上)。赤い丸で示されたヒパニス峡谷(Hypanis Vallis)は第3回選定会議時点で候補から外れた。© ESA/CartoDB

オクシア高原は全体に平らな地形からなっており、また、これまでの探査で多くの粘土鉱物が存在することがわかっています。粘土鉱物は水中で砂や泥などが堆積してできるものですので、この地形の様子からみて、この平原がもともと大きな湖だったのではないかと考えられます。
アラム尾根は「尾根」と表記していますが、この周辺はわりと平らで、水が流れたような跡が多数みつかっており、またかつて洪水があったと思われる平原に囲まれています。
マワース峡谷にはやはり非常に厚い粘土鉱物の層があることが知られており、かつて多量の水があった場所ではないかと考えられています。

今回の会議では、選定委員がこれまでの検討結果を持ち寄った上で議論し、その候補地点の状況からどのような科学的な成果を期待できるかについて話し合います。また、着陸及びローバー走行の際の問題点がないかどうかについても検討の中に含められます。そして、それぞれの地点について、ローバーを3キロ走行させた場合の模擬ミッションが提案される予定です。
そしてこれらの議論の結果を踏まえ、会議2日目に投票が行われ、最終的に2つに候補地店が絞られます。発表はヨーロッパ時間で28日(火)午後とのことです。

[おことわり] 火星の地名につきましては、国際天文学連合(IAU)の下部組織、惑星システム命名ワーキンググループ(WGPSN)が決定しています。命名は固有の名前と、地形的な特徴を表す単語の組み合わせからなっています。
今回の地名については、日本語版ウィキペディアの記述に沿う形で、Planumを「高原」、Dorsumを「尾根」、Vallisを「峡谷」と記述しています。ただ、地形的な特徴を表す単語についての日本語訳は確定したものではなく、あくまでウィキペディアにおける記述です。日本天文学会や日本惑星科学会などの学会でもこの訳語は定めていません。
さらに、地名の固有の名前についても、月探査情報ステーションの方針に乗っ取り、発音に近い形での記述としましたが、今後より正確な発音が分かればこの部分の変更がありえます。
上記の点をご了承くださいますようお願いいたします。

2017年3月23日(木)|Categories: エクソマーズ|

小惑星サンプルリターン計画(アーム計画)、NASAが2018会計年度で予算を要求しない方針

NASAが、アメリカの次の会計年度である2018会計年度(今年=2017年10月から1年間)の予算の方針を関係者に明らかにしています。その中で、これまでNASAが進めてきた小惑星探査フレームワーク「小惑星イニシアチブ」の目玉、小惑星捕獲計画(ARM=アーム)について、2018会計年度に予算要求をしないと述べていることが明らかになりました。編集長(寺薗)がNASA関係者から入手した情報により明らかになったものです。

小惑星表面で岩をつかむアーム探査機

小惑星表面で岩をつかみ、サンプル回収を試みるアーム探査機の想像図 (Photo: NASA)

小惑星イニシアチブは、NASAが推進する小惑星探査の大きな枠組み(フレームワーク)で、その中に含まれるものとして、

  • 小惑星捕獲計画(ARM=アーム)…小惑星表面の岩を無人探査機で捕獲し、これを地球と月の間にある軌道まで移動、そこへ有人宇宙船(オライオン)を打ち上げ、有人での探査及びサンプルリターンを実施する計画。
  • 小惑星グランドチャレンジ…地球に近いところにある小惑星のうち、地球に衝突する危険がある小惑星(PHA: 潜在危険小惑星)の監視などを行う計画。監視はNASAだけではなく、大学や民間企業、アマチュア天文家、さらには国際的なネットワークで行うことを検討中。

の2つの大きなプロジェクトが入っています。
問題はこのアームです。
計画当初は「小惑星をまるごと持ち帰る」という派手なものでしたが、技術的にかなりの無理があることがわかり、現在では表面の岩(ただし数トンレベル)を持ち帰ることを目指しています。
ただ、アーム計画に関しては現時点でも開発の遅れや難航が目立っており、2017会計年度(2016年10月から1年)においてはアームについてNASAが暫定予算で対応している、さらにはアメリカ議会でも中止すべきであるという議論が出るなど、むしろ逆風にさらされているといってもよいでしょう。

そんな中で出てきた今回の動きですが、そのNASA関係者に宛てたメールによると、NASAは2月(現地時間)の議会での一般教書演説において、トランプ大統領が「アメリカが遠い世界に足跡を残すということはもはや遠い夢ではなくなった」と述べ、火星以遠の探査に力を入れることをほのめかしたことを踏まえて、予算内容を検討している、と述べています。
そのうえで、アーム計画についてはこう述べています。

我々は引き続き深宇宙有人ミッションの検討は続けていく。しかし、今回の予算計画においては、アーム計画については予算を追い求めることはしない。しかしこれは、すでにチームがアーム計画について行っている献身的な努力が失われてしまうことを意味するものではない。我々は、(アーム計画により開発が進められている)太陽光利用の電気推進システムが、将来の他の宇宙ミッションにおいて役立つ可能性を考え、開発を進める。

「追い求める」ことをしない(原語ではpursue)という表現も含みをもたせるものですが、一義的にはアームに関し、次期会計年度で予算要求を行わないものと判断してよいでしょう。そのうえで、アーム計画の無人探査機に使用されることとして開発を進めてきた太陽光利用の電気推進システムの開発は続行するという形で、アームの「遺産」を残すことを考えているようです。
一方で、これまで数年間にわたるチームの努力にも配慮する文言も含まれるなど、職員に対してショックを和らげるような内容も含まれています。

注目すべきなのは、編集長(寺薗)が入手した文章において、具体的なミッションに言及しているのはこのアームだけだという点です。このことからも、NASAが2018会計年度予算においてアームについてとりわけ重視していることがわかります。
この内容からみるに、おそらくアームは一旦キャンセルとなり、要素技術の検討のみが進むものと思われます。ただ、小惑星イニシアチブ全体についてどのように取り扱われるかはわかりません。こちらも、個々の技術要素や普及啓発活動に絞って進めていくということが考えられます。
その場合には、2013年に大々的にNASAが打ち出した「小惑星イニシアチブ」自体がバラバラになってしまうことを意味します。ただ、それでもNASAとしては、既存の探査であるオサイレス・レックス(オシリス・レックス)や、将来探査であるルーシーやサイキなどを1つの枠組みとして考え、規模を縮小しながらもより科学面へフォーカスした「小惑星イニシアチブ2.0」を打ち出していく可能性も残されています。

ただ、予算案はまだあくまで「たたき台」の段階です。メディアでも、国防費の増額や環境保護局(EPA)の予算減額などが報じられていますが、今後議会での折衝などを経た上で正式に予算案として認可されていくことになります。したがって、今後NASAの予算についても変更されていくことは十分に考えられます。ただ、これまでの情報から考えて、アームに今後明るい未来がないであろうことは、想像に難くないでしょう。

2017年3月17日(金)|Categories: 小惑星イニシアチブ|

NASAのエウロパ探査機の名前が正式に「エウロパ・クリッパー」に

私など以前からそう呼んでいましたし、月探査情報ステーションのカテゴリー名もこうなっていたので「いまさら」感はあるのですが、一応NASAがそう言っているのですから、そうなのでしょう。
NASAは10日、現在検討中のエウロパへの探査計画について、正式に名称を「エウロパ・クリッパー」とする、と発表しました。

探査機ガリレオが撮影したエウロパの姿

探査機ガリレオが撮影したエウロパの姿 (Photo: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute)

19世紀、「クリッパー」という名前は、大西洋を高速で横断する帆船に名付けられました。より速く横断できたものが「最速」の称号を得られる、クリッパーとはそのような栄誉を意味する言葉なのです。時代は移り変わり21世紀となりましたが、この「最速」の称号を意味するクリッパーの名を冠した探査機は、木星の衛星、エウロパまで高速で飛ぶことになります。そして、一度エウロパに到着すれば、最高で2週間に1回はエウロパに接近し、エウロパの様子をこれまでにないほど事細かに調べることになるでしょう。NASAでは、40〜45回程度最接近を行うとしています。
もちろんただ接近するだけでなく、そのたびに探査機は高解像度の写真を撮影するほか、各種の科学観測を実施します。
エウロパは、地下に(塩水の)海があるとされ、その海はひょっとすると生命を育んでいるかも知れないと期待されています。さすがに潜るのは難しいにしても、エウロパの海の証拠、そしてあればどのような海なのかを、上空からの観測によってできる限り明らかにする、これがエウロパ・クリッパーの目的です。
NASAでは、エウロパ・クリッパーの究極の目的として、エウロパが生命を育める天体であるかどうかを明らかにすること、そしてエウロパに生命を育むことができる3つの要素…水、有機物、そして適度なエネルギーが存在するかどうかを明らかにすることとしています。

エウロパ・クリッパーのプロジェクト科学者であるジェット推進研究所(JPL)のロバート・パッパラード氏は、「エウロパに接近するということは、木星の強力な放射線帯の中を通過するということではあるが、探査機の速度が速いためその時間は短くて済むだろう。エウロパ接近の際には大量の科学的なデータを集めることになり、それは私たちの未来への帆を高く揚げることにつながる。」と、クリッパーになぞらえながら期待を述べています。

現在のところ、打ち上げは2020年代を予定しており、エウロパには数年かけて飛行する計画です。エウロパに限らず、太陽系の特定の衛星(月を除いて)をここまで詳細に探査するミッションは世界ではじめてです。成功すれば、太陽系に新たな生命の存在という大発見があるかも知れません。
ヨーロッパも、現在「ジュース計画」というエウロパ探査計画を立案しており、この計画には日本も機器提供などで協力する見込みとなっています。2020年代というとまだもう少し先ですし、実際のミッションの成果が出てくるのは2030年代になってしまうかも知れませんが、まだ見ぬ生命への旅が火星を超え、いよいよ外惑星系へと向かっていきます。楽しみです。

2017年3月14日(火)|Categories: エウロパ・クリッパー|

情報通信研究機構、東大などが2020年に火星周回衛星打ち上げを検討 朝日新聞が報道

あまり予想していなかった思わぬところ、ただいわれてみるとそうかなというところから、驚くべきニュースが入ってきました。

朝日新聞の記事によると、情報通信研究機構(NICT)や東京大学が、2020年に火星を周回する超小型衛星を打ち上げることを検討しているとのことです。
もし成功すれば、日本でははじめて火星周回軌道へ探査機を投入できることになります。

記事によると、総務省の専門家会議でこの計画が承認されたとのことです。なお、NICTは総務省が所管する国立研究開発法人です。
同じく記事によると、衛星には火星表面の水分などを検出できる装置を搭載した超小型衛星で、火星表面(深さ数十センチくらい)の水分や酸素の検出を目指すということです。
打ち上げロケットは未定と記事では述べています。費用は数億〜数十億とのことです。

現時点で、総務省、NICT、東京大学のウェブページには情報がありません。

短い記事から情報を読み解くのは困難ですが、いくつか推測してみましょう。
まず、記事では打ち上げロケットは「未定」とのことですが、恐らくはH-IIAロケットへの相乗りの形で打ち上げられるのではないでしょうか。2020年にはアラブ首長国連邦(UAE)の火星探査衛星「アル・アマル」の打ち上げをH-IIAロケットで行う予定になっており、このロケットに相乗りして同じ火星を目指すというのが自然です。
次に、搭載されるセンサーについては、単なるスペクトロメーターではなく、電波を使ったレーダーのようなもの、恐らくは超小型のレーダーではないかと思われます。
スペクトロメーターでは、火星表面の水分などの分布は解明できても、その下にある岩石や砂の水分などの分布はわかりません。地下の様子をみるためには、地下に到達できる電波を使ってその反射をみるという仕組みが最も適切です。実際、月探査衛星「かぐや」では、地下数十キロまでの様子をみるために「レーダサウンダー」という電波を発射する装置が搭載されています。こちらは地殻の構造を知ることがが主な目的でしたが、似たような方法を使うことを想定しているのではないでしょうか。
また、NICTは電波を利用した宇宙通信の実績を数多く積んでいます。超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)や今年1月に運用を終了した技術試験衛星「きく8号」などはJAXAとNICTが共同で開発した衛星であり、特に衛星通信技術や超高速通信技術などではNICTの高い技術が活かされています。
今回の火星周回衛星でどのような技術が使われるのかがはまだわかりませんが、NICTのこれまで培った宇宙通信技術が余すところなく使われるとともに、おそらくは実験的にさらに高度な技術を試すということも考えられるでしょう。
また、東京大学は、これまで小型衛星打ち上げについては数多くの実績があります。最近は、超小型の金星探査衛星「UNITEC-1」(予定した軌道に入ったものの通信途絶)の全体統括として関わった経験もあります。さらに、最近日本経済新聞で報道された内容ですが、2018年にアメリカから月着陸衛星(もちろん超小型衛星です)「オモテナシ」と「エクレウス」を打ち上げるという記事も出ています。編集長(寺薗)もメンバーはよく存じ上げておりますが、実力派十分にあるといえるでしょう。

いずれにしてもまだ報道は朝日新聞のみです。続報を待つとともに、日本としてこの試みが成功することを期待したいと思います。

2017年3月14日(火)|Categories: 火星探査 (ブログ)|

編集長(寺薗)の火星探査・研究に関するインタビュー動画が掲載されました

NPO法人日本火星協会による編集長(寺薗)のインタビュー動画が、同法人のユーチューブ(YouTube)チャンネルに掲載されました。
編集長が研究の道に入るきっかけやいまの研究への思い、さらに有人火星探査の意義について述べているビデオです。
日本火星協会のYouTubeチャンネルに掲載されています。ぜひご覧下さい。
なお、編集長は日本火星協会の特別アドバイザーです。

 

 

2017年3月10日(金)|Categories: お知らせ|