ティコ(Tycho)クレーターやコペルニクス(Copernicus)クレーターなど、月面のクレーターの中には、クレーターのまわりに放射状に広がる、白い模様が見られることがあります。これは「光条」(英語ではレイ: ray)と呼ばれています。
いかにも、何かがぶつかって飛び散ったような模様になっていますが、やはりこの光条は、クレーターができたときに、飛び散った物質によってできたと考えられています。

このクレーターができるとき、どんなことが起っているのでしょうか?もう少し詳しくみていくことにします。
月面に天体がぶつかって、クレーターができます。このとき、月面にあった物質は吹き飛ばされて、遠くへ飛ばされます。
当然、重い破片ほどクレーターの近くに落ち、軽いものほど遠くへと飛ばされていきます。飛ばされる飛散物のことをイジェクタ(ejecta)といいますが、このイジェクタは遠くへ飛ぶものほど高速で飛んでいきますので、まるでカーテンのようになってクレーターから四方八方へ飛んでいきます。
このとき、浅いところにあったものほど遠くへ飛ばされていきます。これは、飛び出すときに、深いところのものほど急角度で飛ばされるためです。浅いところにあった物質は低い角度で飛び出していき、その分遠くまで飛ばされます。

光条が白っぽくみえる原因としては、クレーターができた時期が比較的新しくて、そのために光を強く反射して見えているためではないかと思われます。
光条は、例えば他のクレーターからの破片が上に積もったり、宇宙線による風化作用などを受けて、次第に暗くなってきて、消えていきます。つまり、光条がみえるクレーターというのは、かなり新しい時代(といっても、数千万年前とか数億年前)にできたものと考えられるのです。
また、光条を作っている物質自体が明るいために、光条が白く輝いてみえるのだという説もあります。

このようにいろいろな説があり、光条がどのようなものでできているのか、またなぜ明るいのか、具体的なことはよくわかっていないのが現状です。



クレメンタインが撮影した画像をもとに作成した月面のモザイク画像。
いくつか光条が極めて明確なクレーターが写っている。
写真下の方にある光条がはっきりしたクレーターがティコクレーター。
出典: NSSDC Photo Gallery, Photo: NASA/USGS
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地上から撮影されたティコクレーター(画面中央)。
特に右側に非常にはっきりとした光条が延びていることがわかる。
出典: Wikipedia [en], Photo: Joe Huber, This work is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.
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ハッブル宇宙望遠鏡により撮影されたコペルニクスクレーター(右上)。
左側にある、やはり光条が非常に目立つクレーターはケプラークレーター。
出典: NSSDC Photo Gallery, Photo No.: STScI-PRC99-14, Photo: John Caldwell (York University, Ontario), Alex Storrs (STScI), and NASA
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また、原図(TIFF画像)は ここ をクリックすると表示またはダウンロードされます(3.7MB)。


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