地球と月とをケーブルで結ぶ場合、大きな問題になるのはその重量です。強度を保つためには非常に強い物質が必要になります。
同じように、長いケーブルを使った宇宙構造物として、軌道エレベータがあります。これは、静止衛星と地表を結ぶために構想されているものです。軌道エレベータはせいぜい36000キロメートルですが、月までは38万キロメートルもありますので、それよりもはるかに強度が強い物質が必要です。
しかも、軌道エレベータも、まだ我々の技術では作ることが難しいとされています。それほど強度が強い物質を、大量に、しかも安価に作ることは困難だからです。
それに、距離が長くなればなるほど、電気抵抗が問題になります。超伝導物質でない限り、これだけ長い距離で電力をケーブルで送ることは現実的ではなさそうです。
月にエネルギーを送る、あるいは月からエネルギーを送るためには、レーザー光かマイクロ波を使うのがよいと思われます。また、地球から月への軌道上にいくつかの中継衛星を置き、エネルギーや通信を中継するというアイディアもあります。
月面でのエネルギー伝送については、レーザー光を使って、月の裏側に電力を送り込む可能性について検討が行われたことがあります。しかし、このような方法は理論的には可能ですが、月面上で着陸機やローバなどを運用するためには、今よりも効率がはるかに高い太陽電池が必要になりますので、今すぐ実現できるというわけではありません。
月の夜の間もローバーや着陸機を動作可能にするためには、1つのアイディアとして、昼の間に発電した電力を夜に利用する、というものがあります。再生型の燃料電池や、高効率の蓄電池などが検討されています。
通信を目的として、月の周りに衛星を打ち上げるという考え方もあります。月の裏側を常にみられる位置にあるような十分に高い軌道上に衛星を打ち上げ、月の裏側と通信を中継することは可能です。
「かぐや」でも、月の裏側から地球への通信を中継する「リレー衛星」を使いました。これと同じようにして、通信やエネルギーを中継する衛星は、将来的に月の裏側での活動を保証するために必要となるでしょう。
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