ルーシー 探査の概要

■木星のトロヤ群小惑星をはじめて探査、小惑星の「最初のかけら」を探しに向かう

ルーシーは、木星のトロヤ群小惑星を探査するミッションです。
トロヤ群小惑星とは、惑星の公転軌道上に存在する小惑星です。重力的に安定が確保できる、惑星の60度前方、あるいは60度後方(ラグランジュ点)に存在する小惑星の群をいいます。トロヤ群小惑星自体は木星だけではなく、火星や天王星、さらには地球など他の惑星でも発見されていますが、一般的に「トロヤ群小惑星」と呼ぶ場合には木星のトロヤ群小惑星を指すことが多いようです。以下の記述でも特に断りがない場合には「トロヤ群小惑星」と記述した場合は木星のものを指すこととします。

木星のトロヤ群小惑星

木星のトロヤ群小惑星の状況を示したアニメーション。右上は日付。もっとも外側の円は木星の公転軌道。その上にあるオレンジ色の点が木星、その60度前方と60度後方に密集している緑色の点がトロヤ群小惑星。
出典: https://www.nasa.gov/mission_pages/lucy/overview/index、Photo: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission)

惑星と太陽との重力のバランスが取れた場所に存在していることから、これらの小惑星は安定して存在していると考えられています。また、重力的に安定している場所であることから、はるか昔、太陽系の誕生時期からそのまま存在していると考えられています。そのため、トロヤ群小惑星探査は、太陽系が誕生した頃の「化石」を直接調べに行くことと同じ意味を持つということになります。

小惑星探査はこれまで、「はやぶさ」や「はやぶさ2」、オサイレス・レックスなど、地球近傍小惑星からのサンプル採取や近接探査、あるいはニアー・シューメーカーやドーンのように小惑星帯(火星と木星の間)を探査するパターンが多かったのですが、科学者にとっても興味深いトロヤ群小惑星の探査は、これまでの小惑星の知識を塗り替える可能性もあります。また、地球近傍小惑星の起源などを知る上でも手がかりになりますし、地球近傍小惑星や小惑星帯の小惑星との探査結果の比較から、小惑星という天体そのものについての新しい知見が得られることも期待されます。

なお、ミッション名の「ルーシー」(Lucy)とは、発見されている最古の人類の化石「ルーシー」から名付けられています。1970年代に発見されたこのルーシーは、比較的多くの骨が存在していたことから、人類の起源を探る上で重要な化石と認識されています。トロヤ群小惑星探査のルーシーも、まさに「太陽系の起源」を探る上で重要な発見を成し遂げるかも知れません。いや、成し遂げて欲しいものです。

■3つの機器でトロヤ群小惑星の姿を明らかに

ルーシーは、3つの機器を搭載していきます。木星の公転軌道と行き先がかなり遠いところ、次節で解説するようにミッションが非常に複雑なことから、最小限の機器を搭載したミッションとなっています。なお、サンプルリターンは行いません。あくまでも遠くからの観測のみです。

機器類は基本的にカメラとスペクトロメーターです。

ルーシー熱放射スペクトロメーター (L’TES)は、探査目標の小惑星の熱赤外線を測定するスペクトロメーターで、小惑星の表面温度を調べることで表面の物性などを調べます。

ルーシー広範囲観測カメラ (L’ROLLI) は可視光線、すなわち私たちの眼が捉える範囲の光で撮影する白黒カメラです。トロヤ群小惑星の表面の様子を捉え、科学者に詳細な情報を提供します。

ルーシー撮像装置 (L’Ralph) は2種類のスペクトロメーターからなる装置です。1つは赤外線領域のスペクトロメーター、もう1つは可視光線範囲のスペクトロメーターです。赤外線領域のスペクトロメーターは水やケイ酸塩、有機物などの存在を調べるために活用されます。また可視光線範囲のスペクトロメーターは表面の物質の組成を調べるために使われます。

■打ち上げは2021年、10年以上にもわたる壮大なミッション

ルーシーは2021年10月16日に打ち上げられる予定です。
打ち上げられてから4〜5年をかけて、木星のトロヤ群小惑星に到達します。

ルーシーの飛行経路図

探査機ルーシーの飛行予定図。外側の円が木星、内側の円が地球の公転軌道、中心が太陽。木星公転軌道上の左上及び右上のだ円形の領域が木星のトロヤ群小惑星存在領域を示す(左側がL4、右側がL5)。地球を出発してから図左上のトロヤ群小惑星(L4)に到達、いくつかの小惑星をフライバイして、いったん地球軌道まで戻ってきたあと、今度は右上のL5に向かうという複雑な軌道を取る。なお、木星及び地球は公転しているため実際には位置は変わっている。
Photo: Southwest Research Institute

まず2027〜2028年、木星のトロヤ群小惑星のうち「L4」というグループの小惑星を探査します。順番に、ユーリバテス(上手ではL4トロヤ群の中で白い点で描かれている)とその衛星ケータ、続いてポリメレ(同じくピンク色の点)、次にリューカスとオルース(いずれも赤い点)を順にフライバイします。

このあと、ルーシーはいったん地球軌道付近まで「戻って」来たあと、ちょうど太陽系を横断するかのような軌道をとって、今度は同じ木星のトロヤ群小惑星の「L5」グループへと向かいます。2033年にはこのグループの小惑星パトロクルスと、その衛星であるメノエティウスをフライバイ探査します(図のL5グループ内のピンク色の点)。

なお、最初にL4へ向かう途中、可能であれば2025年頃に、小惑星帯の小惑星「ドナルドヨハンソン」をフライバイ探査する予定です。なお、このドナルドヨハンソンという小惑星の名前ですが、人骨ルーシーを発見した人類学者、ドナルド・ヨハンソンにちなんで名付けられています。ルーシーをみつけた人の名が冠された小惑星を(もしかすれば)探査するという、なかなか粋なミッションといえるでしょう。


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