火星サンプルリターン計画 (MSR: Mars Sample Return)

火星に着陸した火星サンプルリターン探査機(着陸機)の想像図

火星に着陸した火星サンプルリターン探査機(着陸機)の想像図
Photo: NASA/JPL-Caltech
Source: https://mars.nasa.gov/resources/26684/mars-sample-retrieval-lander-concept-illustration/

火星サンプルリターン計画は、ヨーロッパとアメリカが共同で開発する、火星からサンプルを持ち帰るための探査機です。2027年に周回機、2028年に着陸機を打ち上げる予定で計画が進められています。
成功すれば、人類がはじめて、直接火星で採取されたサンプルを回収できることになります。(注1)
また、「惑星」からのサンプルリターン(月や小惑星ではなく)ははじめてとなります。

2020年に打ち上げられた火星探査機「マーズ2020」(愛称「パーセビアランス」)では、火星表面の科学的な調査だけではなく、将来的に火星のサンプルを持ち帰ることを念頭に、サンプルを採取・格納することも行われています。マーズ2020が打ち上げられた時点ではまだ具体的なサンプル回収ミッションは設定されていませんでしたが、その後、MSRという形で徐々に具体化してきています。

MSRは周回機と着陸機によって構成されています。まず周回機が火星上空へと到達、火星を周回しながら着陸機を待ちます。
続いて着陸機が打ち上げられ、パーセビアランスが着陸しているジェゼロ・クレーター(の、パーセビアランスの近傍)に着陸します。
着陸機に向かってパーセビアランスが近づき、あらかじめローバー側にセットされていたサンプル回収ケースを着陸機に収納します。

一方、地面に置かれたままになっている回収サンプルは、着陸機に搭載されているヘリコプターを使用して回収します。このヘリは、パーセビアランスに搭載され、実験に成功したヘリ『インジェニュイティ」を改良したものです。着陸機から地面に置かれたサンプルに向けてヘリが離陸、サンプルを着陸機にまで持ち帰ります。その後着陸機は上空の周回機に向けてサンプルをミサイル状の上昇機を使って送り込み、周回機に格納します。

サンプルが火星上空の周回機に到着すると、周回機は火星軌道を離脱し、地球へと帰還します。このとき、サンプルが入ったカプセルを地球へと送り届けます(このあたりは「はやぶさ」やオサイレス・レックス(オシリス・レックス)とも似ています)。
地球帰還は2033年の予定です。

火星サンプルリターン機のコンセプト

火星サンプルリターン計画のコンセプト。右下が着陸機、その上で上空へと飛行しているミサイル状の物体がサンプル帰還機、上空にいるのが周回機。左側のローバー群は、これまで火星に送り込まれたローバーを示す。
Photo: NASA/JPL-Caltech
Source: https://mars.nasa.gov/msr/spacecraft/mars-ascent-vehicle/

 

人類は未だ、火星のサンプルを手にしていません。火星から来たいん石とされるものはありますが、そのいん石が確実に火星表面から放出されたところは誰もみていません。確実に火星から来たサンプルを人類が手にすることにより、火星表面の様子がわかることはもちろん、そのいん石についても新しい発見があるかも知れません。

また、かつて水に覆われていたとされるジェゼロ・クレーターのサンプルを調査すれば、火星がかつてどのような環境にあったのかをより確実に知ることができます。これまでは、例えばマーズ・サイエンス・ラボラトリーのように、可能な限りの測定装置を搭載した探査機を現地に送り込む形をとっていましたが、サンプルを地球に送ることができるようになれば、地球上・世界中の観測装置を使った様々な解析を行えるようになります。

将来人類が火星に到達した際、火星表面の物質を使って基地を構築したり人類が生活したりすることが想定されています。例えば火星の土を使って基地の構造材料を作り出したり、火星の地下にあるとされる水(氷)を使って生活用水を作り出すといったことです。そのためには、火星表面の物質がどのようなものなのかを詳しく知っておかなければなりません。火星サンプルリターン計画は、2030年代にも実現されるといわれている有人火星探査にも大きく役立つことでしょう。

(注1) 2024年に打ち上げが予定されている日本の火星衛星探査機MMXでは、火星の衛星フォボスからのサンプル採取に挑戦します。フォボスの表面には火星表面から飛ばされた火星のサンプルが付着している可能性があり、間接的にではあっても火星表面の物質を採取できる可能性があります。


火星サンプルリターン計画のページ (NASA/JPL)


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