ボイジャー1号に続き、ボイジャー2号も太陽系の縁に近づいてきたようです。
NASAは10月6日、ボイジャー2号が太陽系の端に近づいていると発表しました。ボイジャー2号が捉えた、太陽系の外からやってくる宇宙線の量が増加しているのです。
現時点でボイジャー2号は地球から約177億キロというとてつもない距離を飛行しており、この距離は太陽-地球間の距離の約118倍にあたります。
ボイジャー探査機は1号と2号の2機からなり、いずれも1977年に打ち上げられました。その大きな目的は、外惑星、つまり木星・土星・天王星・海王星の探査です。
ボイジャー1号は木星と土星を、ボイジャー2号は木星・土星・天王星・海王星を探査しました。特に天王星と海王星については、いまだ人類が送った探査機はボイジャー2号だけです。
1989年に海王星の探査を終えたあと、ボイジャー2号は1号と同様、ひたすら太陽系の外へ向けての飛行を続けています。2013年、ボイジャー1号は太陽系を脱出し、現在は恒星間空間を飛行しています。人類が作った人工的な物体が太陽系の外に出たのは、ボイジャー1号がはじめてのことになります。
ボイジャー2号は2007年以来、太陽から吹き付ける電気を帯びた粒子(荷電粒子)である太陽風が届く範囲である「太陽圏」(ヘリオスフェア: heliosphere)の最も外側の部分を飛行しています。このあたりは荷電粒子の泡が広がっている範囲でもあります。
このヘリオスフェアと恒星間空間、すなわち太陽系の外との境目をヘリオポーズ(heliopause)といいます。
この8月終わり頃より、ボイジャー2号に搭載されている宇宙線サブシステムが検知する宇宙線の量が、8月初め頃と比べて5パーセントほどの上昇を示しています。また、同じく探査機に搭載されている低エネルギー荷電粒子検出装置も同じような値の上昇を示しています。
2012年に、ボイジャー1号が今回と同じような宇宙線の量の上昇を検知しています。これは、ボイジャー1号がヘリオポーズを通過したと考えられる時期のほぼ3ヶ月ほど前のことでした。
ですが、ボイジャー探査機の運用チームは慎重で、宇宙線の量の上昇は必ずしもヘリオポーズ通過のサインだと断定することはできないと考えています。そもそも、ボイジャー2号は、ヘリオシースと呼ばれる、宇宙線と太陽風が入り混じった領域を現在飛行していますが、ボイジャー1号とは異なる方向を飛行しています。ですから、ボイジャー1号と同様に、「3ヶ月経てばヘリオシース突破」と考えることはできない、というのが探査チームの見方です。
いずれにしても、ボイジャー1号と同様、ボイジャー2号がヘリオポーズへ近づいている、ということは間違いがないようです。
また、ヘリオポーズ自身、太陽活動が活発になる11年周期で、張り出したり縮んだりします。太陽は11年の周期で活発な活動と低調な活動を繰り返していますが、その周期に合わせて太陽風の勢いも変わります。太陽風が活発に(高速に)吹き出すときはヘリオポーズは恒星間空間へと大きく張り出し、逆に勢いが弱いときには「押し込まれて」縮んでしまいます。
今回の量の変化について、ボイジャー計画のプロジェクトマネージャーとして探査機を40年にわたって見守り続けてきたジェット推進研究所(JPL)のエド・ストーン博士は、「私たちはボイジャー2号周辺の環境が何らかの形で変化しているということをみていて、そのこと自体疑う余地はない。今後数カ月間、私たちはいろいろなことを知ることになるだろうが、少なくとも今、(ボイジャー2号が)ヘリオポーズに近づいているかどうかはわからない。間違いなくいえることは…私たちはまだそこ(ヘリオポーズ)までは行っていない、ということである。」と述べ、慎重な見方を示しています。
ただ、今回はボイジャー1号という先例もありますし、どのようなことが起きるかを我々もある程度予測できることから、時間の問題として、いずれはヘリオポーズを越すだろうということは間違いありません。そして、ボイジャー2号がそのヘリオポーズにぐんと近づいているということもまた、確かでしょう。
ボイジャー1号に続き、ボイジャー2号が「人工物体として2番めに太陽系を脱出した物体」となるのか、というより、なるのはいつか、楽しみです。
さて、今回題名に「太陽系脱出」と書きましたが、太陽系の境目を何で定義するかという点については様々な考え方があります。カイパーベルト天体の一部も、このヘリオポーズの外側に出るような軌道を公転しているものがあると推測されますので、必ずしも「ヘリオポーズ=太陽系の境界」とならないということだけは一応ご注意いただければと思います。今回は記事のわかりやすさや、「恒星間空間の物質と太陽系内の物質がせめぎ合うところ」という意味での境目として「太陽系の境目」という言い方をしております。
- NASAの記事