人類が作り上げたものが、ついに太陽系を脱出する…壮大な、夢のようなの話が、現実になった可能性があります。

アメリカ地球物理学会(AGU)は20日、同会が発行する雑誌(GRL: Geophysical Research Letters)に、ボイジャー1号が太陽系を脱出した兆候があるという記事(投稿)を掲載しました。
この記事を投稿したのは、ニューメキシコ州立大学のビル・ウェバー名誉教授です。
教授は、2012年8月25日のボイジャー1号の観測データに注目しています。この数日前に、荷電粒子の放射線量が著しく減少し、代わって宇宙線起源と思われる放射線量が著しく増加しています。このことから、教授はこの投稿記事の中で、「(ボイジャー1号は)太陽系辺縁領域を脱出したと思われる。(水素及びヘリウムの)スペクトルデータをみると、恒星間空間のものと考えてよいであろう。」と述べています。
ただ、教授はこの件について、ボイジャー1号が太陽圏(heliosphere)を脱出したのか、この太陽圏の最先端部分にある、恒星間空間とは別の新しい領域に到達したのかについてはまだ議論の最中である」とも述べており、慎重な姿勢を崩していません。いずれにしても、教授は「通常の太陽圏の外側の新しい領域に入ったことは確かだ。観測結果がこれまでのものとは全く異なっており、それに大変興奮している。」と述べています。

これに対し、20日付のNASAジェット推進研究所(JPL)のニュースリリースで、ボイジャー1号のプロジェクトマネージャーであるカリフォルニア工科大学のエドワード・ストーン氏は、「ボイジャーのチームは、本日、ボイジャー1号が太陽系を脱出した兆候を発見したというニュースについて承知している。」と語り、脱出の可能性については検討が必要であると述べています。声明はさらに続いています。
「ボイジャーの科学チームは、ボイジャー1号はまだ太陽系を脱出していないという意見で一致している。昨年(2012年)12月には、科学チームは、ボイジャーがこれまで到達してきていない新しい領域、通称『磁場ハイウェイ』と呼ばれる領域を通過していることを確認した。ここは、高エネルギー粒子が非常にダイナミックに動き回っている場所である。磁場の向きの変化が、最終的には確実な惑星間空間入りの証拠となるが、現時点ではそのような方向の変化は確認されていない。」

声明を読む限りはプロジェクトチームとしては太陽系脱出との判断は時期尚早との考えのようです。データの解析から最終的な判断が下されるのがいつになるかわかりませんが、続報に注意していきましょう。

(注)本記事はいろいろな方からのご意見に基づいて、当初の記事から若干内容を変更してお届けしています。今後についても変更される可能性がありますので、ご了承下さい。新しい情報が入り次第、随時(本記事、あるいは別記事にて)掲載します。