ニューホライズンズの新たな(もう、何回目になるかわかりませんが)発見です。冥王星の「ハート型領域」(通称「トンボー領域」)に、以前発見されたものとは別の山岳地帯が発見されました

新たに見つかった冥王星の山岳地帯

新たに見つかった冥王星の山岳地帯。いわゆる「ハート型領域」(トンボー領域)に位置している。(© NASA/JHUAPL/SwRI)

今回の写真は、ニューホライズンズの冥王星最接近の日、7月14日(アメリカ現地時間)に撮影され、7月20日に地球に送信されてきたものです。冥王星と地球の間は通信回線が細く(距離があるため、通信が大変なのです)、冥王星最接近(フライバイ)の際に取得された膨大なデータは、いま少しずつ、地球へと送られてきています。
撮影した距離は冥王星から約77000キロメートル、解像度は約1キロメートルです。

今回発見された山岳地帯は、冥王星のハート型領域(トンボー領域)の左下(南西)部分にあたります。今回の山岳地帯は、以前発見された山岳地帯よりは標高は低く、1000~1500メートルほどの標高とのことです。アメリカのプレスリリースだけあって、NASAの記事では、「前回発見された山脈がロッキー山脈だとしたら、今回の山脈はアパラチア山脈のようなものだ」という内容がありますが、やはりピンとこないですね。日本人であれば、前回発見された山脈は日本アルプス、今回の山脈は阿武隈山地や北上山地、中国山地と考えればよいでしょう。もちろん、地球上の山脈と成因がまったく異なる可能性が高いことは間違いありません。
なお、前回発見された山岳地帯は、ノーガイ山脈(Norgay Montes: Norgay Mountains)と非公式に呼ばれているようです。
また、今回発見された山脈は、前回発見された氷の平原領域、通称「スプートニク領域」から西へ約110キロメートル離れたところにあります。

ここでいつも通り、ニューホライズンズチームの地質学・地球物理学・撮像チームの科学者で、NASAエイムズ研究センターに所属するジェフ・ムーア氏に登場してもらいましょう。「この山脈地形の面白いところは、西側(写真では左側)のクレーターが多く暗い地形と、東側(写真では右側)の、平らで明るい平原とを明確に区切る形になっているということだ。このくらい物質と明るい物質との間では何らかの複雑な相互関係が(編集長注: おそらく地質学的に)あるのではないか。これから私たちが理解していくことが必要だ。」

スプートニク領域は地質学的な時間スケールでは比較的最近の地形と考えられており、ここ1億年くらいの間に形成されたものと考えられています。一方で、暗い領域は非常に古く、数十億年前の地形がそのまま残されているのではないかとみられています。ムーア氏は、古い地形と思われるクレーターに、新しいと思われる明るい物質(おそらくは氷)が流れ込んでいる様子に注目しています。写真中央やや左にやや大きなクレーターがありますが、これが典型的な例です。
今後より多くの詳細画像が地球に到着することで、この地域を含め、冥王星の表面についての理解がより深まり、それが冥王星の誕生や進化の謎の解明につながっていくことが期待されます。