昨年12月に金星周回軌道への投入に成功した金星探査機「あかつき」が、先日一時交信不能になっていたことが明らかになりました。

24日に発表された宇宙科学研究所のウェブページによりますと、2月20日(土)に、「あかつき」との交信を担っている長野県の臼田局との間で、衛星の状態を示す信号であるテレメトリを受信できない状態となり、同時に地上からもコマンドを送ることができない状態となっていました。
翌21日になり、衛星側にセットされていたコマンド(恐らく、一定期間通信がない場合、自動的に衛星の向きを変え、地上との交信を試みるようなプログラムが組まれていたのでしょう)により探査機との交信が復帰しました。探査機の状態は正常とのことです。

今回の交信不能の原因は、地上から送信したコマンドが一部誤っており、間違った姿勢制御数値が探査機に送られたため、方向が乱れて地球との通信ができなかったとのことです。このため宇宙科学研究所では、コマンド送信の際、コマンド入力項目をチェックする手順を加えたとのことです。

「あかつき」は本来金星周回軌道に投入される5年前から運用は続けておりましたが、実際に本格的な金星周回軌道上の運用を始めたのは最近のことで、まだいろいろとチームメンバーが慣れていなかったことが考えられます。今回は致命的な誤りではなかったとはいえ、場合によってはそのようなことを起こしてしまいかねないミスでもあります(実際これまでも、地上から送られたコマンドのミスによって月・惑星探査機が制御不能・通信不能に陥った例はあります)。「あかつき」運用チームには、これまで以上に慎重な運用と、運用手順への習熟が求められます。
一方、今回の「あかつき」トラブルについては、まず最初に産経新聞が2月23日に報道、24日昼には時事通信が一報を入れています。その段階でもまだJAXA、あるいは宇宙研からは特に何らかの情報提供はありませんでした。24日夜になって宇宙科学研究所のウェブページに説明が出たという形で、今回は報道が先行したという形になっています。
何らかの混乱があったのかも知れませんが、多くの国民や宇宙ファンが状況を見守る探査機の動静であるだけに、JAXAや宇宙科学研究所には探査機の情報を迅速に伝える体制をいま一度確立・確認することを求めたいと思います。