皆様、新年あけましておめでとうございます。
旧年中は月探査情報ステーションをご愛顧いただきまして、ありがとうございました。

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新型コロナウイルスのパンデミックで世界的に暗い1年であった2021年ですが、宇宙開発という面からみると、将来につながるような大きな発展が見受けられました。

7月、民間宇宙企業のヴァージン・ギャラクティックブルーオリジンが相次いで初の民間人を乗せた試験有人宇宙飛行に成功しました。これは、民間企業が一般の人を乗せて宇宙飛行を行う、いわゆる「商業宇宙飛行」あるいは「宇宙旅行」にとっての画期的かつ大きなステップでした。これまで何年も、民間宇宙飛行の実現が叫ばれながらもズルズルと先延ばしになってきていたのです。
この2つの飛行、そしてスペースXなども実施している有人飛行などが、今年以降定常的かつ安全に実施されていけば、有人宇宙飛行へのハードルが劇的に下がると期待されます。
民間人の宇宙飛行という意味では、前澤友作さんが12月にソユーズ宇宙船でISSに赴いたことも大きな話題となりました。宇宙への敷居が少しずつ、また確実に下がり始めています。

月・惑星探査の分野でも着実な前進がみられました。
2月には2020年に打ち上げられた3機の火星探査機がいずれも無事に火星に到着しました。この中には、初の火星探査となるインドとアラブ首長国連邦(UAE)の探査機が含まれます。3機とも2021年末現在順調に稼働しています。特に中国の天問1号は、中国初の火星探査機ながら、周回・着陸・ローバーのフルセットであり、それらをすべて成功させました。ここでも中国が持つ月・惑星探査レベルの高さが示された形です。
10〜11月には、アメリカの小惑星探査機が2機、相次いで打ち上げられました。10月に打ち上げられたルーシーは、初の木星のトロヤ群探査を目指す探査機であり、太陽系のごく初期の頃の物質がそのまま残っている小惑星を探査できるのではないかという期待が高まっています。また、11月に打ち上げられたダートは、小惑星の地球衝突問題に焦点を当てたはじめての探査機であり、その探査の成果が注目されます。
月探査については、アルテミス計画をはじめ、いろいろな計画で進捗がありました。ただ、11月22日を目指していたアルテミス1の打ち上げは延期となり、現在2022年春頃の打ち上げが有力視されています。
JAXAでも12月に宇宙飛行士の公募が始まりましたが、岸田首相がつい先日の宇宙開発戦略会議で述べたように、2020年代後半には日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指すという、日本政府としての方針が示されました。現在募集中の宇宙飛行士はまさに「アルテミス世代」として月面探査に関わる可能性が非常に高いといえます。月探査は日本にとっても日本人にとっても他人事ではなく、いろいろな意味で自分たちのこととして考えなければならない時代となってきました。

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2022年の宇宙開発、そして月・惑星探査はどのようになるでしょうか。

2022年は、2年に一度やってくる火星探査機打ち上げの好機です。ただ、現時点で打ち上げが予定されているのは、2020年の打ち上げが延期されたヨーロッパとロシア共同の探査機「エクソマーズ」だけです。この2022年のミッションでは、ヨーロッパ(ヨーロッパ宇宙機関=ESA)が開発した初の火星ローバー「ロザリンド・フランクリン」と、ロシアが開発した着陸モジュールが打ち上げられます。打ち上げは秋(9月〜10月)が予定されています。

小惑星探査については、新たな打ち上げ機として「サイキ」が予定されています。サイキは、金属質の小惑星「プシケ」の探査を目指すもので、8月に打ち上げ予定です。金属質小惑星はこれまで近接探査されたことがないだけに、科学的な発見も大いに期待されます。また、金属質小惑星は宇宙資源という観点からも重要で、サイキがもたらすデータは将来の宇宙資源採掘に大きな影響を与えるかも知れません。
また、昨年打ち上げられたダートは、9月にいよいよ、小惑星への衝突実験を行います。この実験の結果は、将来、小惑星の地球衝突問題の解決にも活かせるかも知れません。また、数年後にはこの衝突実験の跡を探査する探査機も打ち上げられる予定です。

そして、やはり気になるのは、月探査でしょう。
延期されたアルテミス1は春にも打ち上げとのことですが、こちらもNASAからはまだ正式なアナウンスがありません。すでにSLSと宇宙船は完成しているだけに、諸々の問題を解決し、1日も早い打ち上げを迎えることを期待したいと思います。ただ、そのためには安全の確保が絶対条件であり、拙速な打ち上げだけは絶対に避けて欲しいものです。
また、同じNASAによる民間ベースの月輸送プログラム「商業月輸送プログラム」(CLPS: Commercial Lunar Payload System)も、今年からいよいよ本格化します。最初の打ち上げは2022年当初とされていますが、こちらも現時点で日程のアナウンスはありません。第1回の輸送はアストロボティック社のローバーとなっており、これに同乗する形で、日本の超小型ローバー「YAOKI」が打ち上げられます。成功すれば、はじめて月面に到達する日本の探査機となるだけに、大きな注目をしていきたいところです。
民間ベースの月探査は、今年中に日本の宇宙ベンチャー企業「アイスペース」もHAKUTO-Rの打ち上げを予定しています。今年打ち上げの探査機は月着陸機です。来年にはローバーも打ち上げ、月面探査を本格化させる予定です。
この他にも、7月には韓国初の月探査機「韓国極周回月探査機」(KPLO)が、第3四半期(7〜9月)にはインドの月探査機「チャンドラヤーン3」がそれぞれ打ち上げられる予定で、世界が官民揃って月探査に本格的に挑む年になります。
そのような中で、日本としての月探査の意味付けをどう行っていくのか、また国民に対してこの巨額のプロジェクトの意義をどのように説明していくのかも問われていくことになりそうです。

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さて、昨年は編集長(寺薗)にとって落ち着かない1年となりました。
2020年12月の転職で一旦は落ち着きを取り戻すという期待もありましたが、半年強での退職というまさかの事態に直面し、そのために自身の合同会社(月探査情報ステーションの運営を中心事業とした合同会社)の強化を急遽行わなければならず、引っ越しの片付けもままならないまま、会社の各種手続きに忙殺されるという状況でした。2021年末現在でもまだこの混乱は続いており、引っ越し荷物が家の中でまだ開封されていないままになっているという状況は1年前とそう大きく変わっていません。
また、打ち続くコロナ禍は講演やイベントの中止、あるいは制限という形でも影響を与えてきました。

それでも、期せずしてではありますが、私自身が人生の目標としていた「アウトリーチで飯を食う」、すなわち、月・惑星探査の広報・普及啓発で食べていくということが実現することになりました。もちろん、食べていくための十分なお金をまだ払えない状況ではありますが、私自身、これがライフワークであったのだということを改めて認識しています。
今年は会社としてしっかりとした収益を上げ、経営そのものや経営基盤を安定させ、本格的に事業としてのウェブ運営を軌道に乗せていくことが必要です。
また、コロナ禍の状況を見据えながらではありますが、講演やイベントも積極的に再開していきたいと思います。幸い、年明けより少しずつ講演などのお話をいただいております。リアルとバーチャル、両方を組み合わせながら、月・惑星探査の広報・普及啓発を図っていきたいと思います。

月探査情報ステーションは、合同会社の事業のコアとなるものです。このサイトを構築する過程で入手した情報や培われた知識、さらには研究者とのネットワークが、事業として活きてきています。
ここ数年、私自身の多忙もあって、月探査情報ステーションに力を入れていくことが難しくなってきています。月探査情報ステーションが弱くなることは本業が弱くなることでもあります。かといって今までのやり方では強化が難しいこともわかってきています。人を入れるにしても、これまでのテイストを活かしながら進めていく必要があります。数年来、あるいは10年近くにわたって続いている課題ではありますが、立場も状況も変わったいまこそ、ここにドラスティックに手を入れていくことが可能になっているかも知れません。
皆さまからもお知恵を拝借しつつ、新しい、あるいは現代にあった形での情報発信を模索していきたいと思います。

本年も月探査情報ステーションをご愛顧・ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2021年1月2日
月探査情報ステーション 編集長
合同会社ムーン・アンド・プラネッツ 代表社員
寺薗 淳也