火星探査機フェニックスが、採取した土壌のサンプルから水を検出しました。この水曜日(7月30日)に採取したサンプルを熱して検査したところ、水分が検出されたということです。
アリゾナ大学の研究者で、フェニックスに搭載されている熱・気化ガス分析器(TEGA)の主任研究者であるウイリアム・ボイントン氏は、「水があったんだ」と語っています。「これまで、水の氷が存在する証拠は、火星上空を周回する2001マーズ・オデッセイからも見つかっていたし、フェニックス自身、先日採取したサンプルが蒸発して消えてしまったことからも水の氷ではないかとは考えられていた。しかし、今回ははじめて、火星の水を直接捉えたのだ。」
また、フェニックスがこれまで順調に探査を続け、大きな成果を挙げていることから、NASAはフェニックスの探査期間を9月末まで延長しました。基本予定では着陸後3ヶ月でしたので、8月末に終了することになり、このため探査期間の延長は約1ヶ月強(5週間)ということになります。
「フェニックスは問題なく稼働していて、また太陽光の状態も問題ない。このため、火星の大変興味深い場所での探査をさらに長く続けることにした。(NASA本部の火星探査プログラムの主任研究員、マイケル・メイヤー氏)
水が発見されたサンプルは、火星の表面の下約5センチのところから見つかっています。フェニックスに装備されているロボットアームがこの深さまで掘り進んだところ、固く凍った土の層にぶつかりました。ロボットアームにより2回にわたって採取が試みられ、サンプルはそのまま探査機の中へと運ばれました。水曜日に採集されたサンプルはそのまま約2日間火星の空気にさらされ、水の中にある有機物が蒸発し、土壌サンプルを扱いやすくしてあります。
フェニックスの主任研究者である、アリゾナ大学のピーター・スミス氏は、こう語っています。「火星はいつも私たちを驚かせてくれる。発見が驚きをもたらすことにいつも興奮させられるのだ。1つは、土壌の振る舞いだ。氷を多く含んだ土壌は、太陽の光の中ではスコップにくっついたままになってしまっている。これは私たちの地上でのテストとはまったく違った状態だ。サンプルを探査機内に持ち込むのは、このために難しい挑戦になったが、何とか方法をみつけることができ、その結果土壌について多くの情報を得ることができた。」
5月25日に火星に着陸して以来、フェニックスは土壌をTEGAや顕微鏡、伝導度測定器やカメラなどの装置で分析しています。水の存在は2002年に、探査機2001マーズ・オデッセイが上空からの探査で明らかにしていますが、科学者たちは、氷が溶けることによって生物学的に十分な量の水が得られるのか、また、炭素を含む化学物質などが存在するのかどうかを調べています。
一方、カナダ製の測定装置により、フェニックスは大気の様子も調べています。これは、レーザー光を使って大気の雲やちりの様子を調べるものです。
「30ワットの電球を使って火星の大気にレーザー光線のショーをやっているようなものだ。」(カナダ宇宙局のビクトリア・ヒプキン氏)
また、フェニックス着陸点周辺の360度パノラマ写真も完成しました。「みた限りでは、地形の様子などは氷が主体の地形という感じがする。これにより、今後のロボットアームの探査の方向性や、より広いスケールで実験結果を理解することに役立つ。」(フェニックスの表層ステレオカメラの主任研究者である、テキサスA&M大学のマーク・レモン氏)
・JPLのプレスリリース
  http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2008-153
・フェニックス (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/Phoenix/