5ヶ月以上にわたって火星表層で探査を続けてきた火星探査機フェニックスが、地上との更新を停止し、活動を停止しました。フェニックスが着陸した火星北極の季節変化により、太陽光の量が減少し、活動に必要とされる電力を十分に供給できなくなったために、活動が停止することになったものです。
探査チームが最後に信号を受信したのは11月2日でした。この時点でフェニックスは太陽光が十分ではないという状況に加え、大気がちりだらけの状態になってさらに太陽光が弱い状態に追い込まれ、これに加えて雲や低温といった悪条件が追い討ちになりました(ちょうどこの時期、火星の北極は秋です)。
探査チームは、今後数週間にわたって、フェニックスから再び信号が送られてくるかどうかを慎重にモニターする予定です。しかし、技術者たちは、火星の気候条件が悪くなっていることから、交信が復活することはないだろうと考えています。なお、探査は終了しましたが、得られたデータの解析はまだ初期段階というところです。
フェニックスの探査主任、ピーター・スミス氏は、「フェニックス探査機は私たちにいろいろな驚きを与えてくれた。そして、このあと数年にわたって、この探査によって発見されたデータの中から、珠玉な結果を見つけ出すことができるだろう。」と述べています。
フェニックスが打ち上げられたのは2007年4月4日で、着陸は今年(2008年)の5月25日でした。着陸点はこれまでのいずれの火星探査機よりもはるかに北でした。着陸機は火星の土を掘り、すくい取って、それをあぶり、そして中の成分を分析したのでした。初期の成果の中でも、火星の地表すぐ下の場所に氷を見つけたというのは大きなものです。これは、現在でも火星を周回している2001マーズ・オデッセイが2002年にデータを提示していたものではあります。また、フェニックスのカメラは25000枚以上にわたる写真を撮影し、それらは着陸点周囲の風景から、地球外ではじめて使われた原子間力顕微鏡によって撮影された原子レベルのものまであります。
「フェニックスは、単に無事に着陸することに成功した、というだけではなく、それから152日間のうちの149日(火星日)、優秀な才能を持つ探査チームの元、探査をやり終えたのだ。」(フェニックスの探査責任者、NASA/JPLのバリー・ゴールドスタイン氏)
フェニックス探査機の成果により、火星の極地域がかつて微生物が住めるような環境であったかどうかということについての答えが導き出せる可能性が高くなっています。さらに、これまでの火星探査では発見されなかった、弱アルカリ性の火星の土壌を発見したこと、生命をはぐくむ可能性がある、塩分が少し集まっている場所を発見したこと、過塩素酸塩を含む土壌を発見したこと、液体の水の存在の証拠を示す炭酸カルシウムの発見、などが成果としてあげられます。
フェニックスの成果は、また火星の水の歴史について解き明かす手がかりを与えてくれました。上のような成果は、氷の上にある土壌を掘り出して見つけたものですし、フェニックスは少なくとも2種類の氷の堆積物を発見しています。また、上空の雲から降る雪や、探査期間中にわたる天気の記録(温度や気圧、湿度や風向・風速など)、ちりや雲、霜や嵐の観測などを行っています。また、現在でも上空を飛行しているマーズ・リコナイサンス・オービターと共同して、上空と地上からの同時観測も行いました。
NASA本部の火星探査プログラム長のダグ・マッキストン氏は、「フェニックスの成果は、火星がかつて生命が存在することができる環境にあり、さらには生命を宿していたかも知れない、ということを示すという私たちの望みを後押しする、重要なステップを与えてくれた。」と述べています。「フェニックスの成果は、上空でデータを中継してくれたNASAの周回探査機によって支えられていた。次に打ち上げられるマーズ・サイエンス・ラボラトリもあり、火星探査は決して休むことがなく続くのだ。」
・NASAのプレスリリース
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2008/nov/HQ_08-284_Phoenix_Finishes_Mission.html