NASAが2020年の打ち上げを目指す、マーズ・サイエンス・ラボラトリー(愛称「キュリオシティ」)後継とされるローバーについて、このほど記者会見でその概要を明らかにしました。
今回のローバーの目的は(「も」といった方がいいかも知れませんね)、火星における過去の生命(存在していれば)の探索や、サンプル回収、そして将来的な地球へのサンプル帰還、さらには将来的な有人火星探査のための情報収集とのことです。

今回発表されたのは154ページにもわたる資料で、1月にNASAがこの探査のための科学的な目標を明らかにすると述べたことに対し、その概要を明らかにしたものです。資料作成は大学や研究機関からの19人の科学者・技術者が担当して行い、2030年台にも実現したいとオバマ大統領が提唱している火星への有人飛行に際し、その足がかりとなるようなミッション概念を提唱したとしています。

この2020年のローバー探査については、NASAは公開での機器調達を考えているようです(競争方式)。ローバー全体はキュリオシティに似ており、あまり大きく構造などを変えないことにより、開発負担を最小限にすることを狙っています。

今回の2020年火星ローバーの探査科学定義チームでは、キュリオシティをはじめとするこれまで(及び現在)の火星探査の成果に基づき、内容をまとめたとしています。2004年から探査を行っているマーズ・エクスプロレーション・ローバー「スピリッツ」「オポチュニティ」(編集長注: スピリッツは現在活動停止)は、火星にかつて豊富な水が存在した証拠を発見しています。一方キュリオシティも、火星の過去の環境は微生物が繁殖できるものであることを見出しています。探査科学定義チームでは、これらの成果に基づき、次の段階としては過去の生命の痕跡を見つけ出すことが論理的なステップであると考えています。

探査科学定義チームのリポートでは、可視化装置、鉱物分析装置、さらには化学分析装置などを使って、顕微鏡レベルにまでの視点での細かい分析を行い、着陸場所周辺における環境を分析、過去の生命の痕跡や、生命活動によって生成されたと思われる岩石や土壌などを発見することを考えています。

探査科学定義チームの議長である、ブラウン大学の地球科学教室のジャック・マスタード教授は、「火星2020年ローバー探査は、過去に火星に生命が存在していたという仮定のもとに行われるのではない。だが、最近のキュリオシティの成果からみても、過去に火星に生命が存在した可能性はそれなりに高いと考えてよい。そこで、火星に生命の痕跡を探し求めるという、大変難しい課題に挑むのがよいと考えている。どのような結果が出たとしても(すなわち、それで否定的な結果が出たとしても)、過去の地球の環境、さらには系外惑星の環境などを理解する上で役立つものになる。」と、今回の火星ローバーの科学的な意義を強調しています。

過去に生命が存在したかも知れないという場所の探査や、過去の生命の痕跡を探査する調査手法については、そのまま、サンプル回収、及び将来の帰還に備え一時保管する手法にも用いられます。 探査科学定義チームでは、最大で31個のサンプルと、岩石のコア(ボーリングなどでくり抜いた岩石サンプル)、土壌などは、将来地球に持ち帰りより詳細な分析に備えて保管することを考えています。
ローバー機器によって行われる分析は、火星についての我々の知識を広げるだけではなく、そのサンプルを地球に持ち帰るべきかどうか(より詳細な分析を地球で行うべきか)の判断の材料としても用いられます。

NASA本部の惑星科学部のジム・グリーン部長は、「この火星2020年ローバー計画は、生命の存在可能性、さらには太陽系における生命という点について非常に特徴的な探査能力を供するものである。探査により、より高価値のサンプル回収・分析に向けた大きな一歩を踏み出すことができ、他の惑星探査によるサンプル回収への道筋を開くものともなる。」と解説しています。

回収・分析されるサンプルは、将来の火星有人飛行にも役立てられることになります。ローバー自体も、将来の有人火星探査計画に向け、火星表面のダストなどによる危険の防止や、ロケット燃料などに使えると期待される二酸化炭素の回収などの技術を実証する、あるいはそのためのデータを集めることになります。また、より精密な着陸技術は、有人火星探査などでも活用されるロボット技術に応用されることになるでしょう。

今回の報告書について、NASAの科学担当副長官のジョン・グランツフェルド氏は、「科学と探査における目標を決めるということは、次の大きな火星探査に向けての重要な第一歩となる。今回、探査科学定義チームの提言を受けてNASAが提出した目標により、今後科学機器の選定や開発などに向けた重要な基盤が整備されることになるだろう。」と、その意義を述べています。