NASAの火星探査機「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL。愛称「キュリオシティ」)は、アメリカ東部時間で8月6日午前1時32分(日本時間では6日午後2時32分)、無事火星に着陸しました。
これまでの火星探査とまったく異なる複雑な着陸手法、そして900キログラムもある巨大ローバーの着陸を、世界中の人たちが見守っていましたが、着陸の瞬間、管制室は歓声に包まれました。
着陸直前は、このような複雑な着陸手順をすべて自動でこなさなければならないことや、最高で2000度以上の高温にさらされることなどから、「恐怖の7分間」と呼ばれ、これを切り抜けられるかが注目のポイントでした。この点について、NASA科学ミッション担当部の副部長であるジョン・グランズフェルド氏は、「恐怖の7分間は、勝利の7分間となった。私も成功の喜びで本当にいっぱいだが、それ以上はるかに大きな喜びを感じているのは、(ここJPLにいる)管制チームのみんなだろう。」と語っています。
NASAのチャールズ・ボールデン長官はこう語っています。「本日、ローバー『キュリオシティ』の6つの車輪が火星の大地を踏みしめた。これまででもっとも洗練されたローバーを、我々は火星へと送り込んだことになる。このローバーの探査目的は、これまでずっと繰り返されてきた疑問、すなわち、火星に生命が存在した(している)かどうか、その疑問に答えを出すことである…さらには、将来この赤い惑星に生命が存在しうるかどうかでもある。素晴らしい成功であり、世界中の科学者・技術者、そしてNASA、そしてここジェット推進研究所(JPL)の優秀な人々によって達成された成功である。オバマ大統領は、火星に2030年代半ばには有人飛行を行うという大胆な目標を設定しており、今回の着陸成功は、その目標に向かって偉大な前進となるものである。」
今回の着陸において、着陸成功の信号は、火星上空を周回する、2001マーズ・オデッセイ探査機によって中継され、地球へと送られました。地球でこの信号を捉えたのは、オーストラリア・キャンベラ郊外にある、NASAの深宇宙通信網のアンテナです。
今回のローバー「キュリオシティ」は10種類もの機器を搭載しており、その重量は、2003年に打ち上げられた火星探査ローバー「スピリット」および「オポチュニティ」のものの実に15倍にも達します。中にはレーザー照射型の岩石分析装置など、火星探査史上はじめての機器も搭載されています。
ローバーは、搭載しているドリルとスコップを使ってサンプルをすくいとり、ロボットアームを巧みに利用して分析機器にサンプルを送り込みます。これらのサンプルは、ローバー内部に搭載されているこれらの機器によって分析されます。
マーズ・サイエンス・ラボラトリー計画のプロジェクトマネージャーであるJPLのピーター・サイジンガー氏は、「キュリオシティは火星から呼びかけてきた。探査でもっとも危険な部分は、着陸によってもはや過去のものとなった。これからは、科学探査に向けて進むときだ。」と語っています。
キュリオシティは、このあと約2年間(正確には1火星年。約650日)にわたって探査を行います。今回着陸したゲール・クレーターは、周回機による探査の結果、水の痕跡がある可能性が高いことがわかっており、今後探査の目標である「生命の痕跡の発見」につながるような大きな成果をあげることが期待されています。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/aug/HQ_12-267_MSL_Curiosity_Lands.html
・マーズ・サイエンス・ラボラトリー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/mars/exploration/MSL/