火星探査を順調に進めているローバー、マーズ・サイエンス・ラボラトリー(愛称「キュリオシティ」)の、2つめの掘削対象となる岩が決まりました。この岩は「カンバーランド」(Cumberland)と名付けられており、キュリオシティはここへ向けて数日以内に移動を開始する予定です。
このカンバーランドという岩は、キュリオシティが最初に掘削を行った岩「ジョン・クライン」から約2.75メートル(約7フィート)西にあります。このジョン・クラインの掘削結果からは、火星にかつて生命に適した環境があったことが明らかにされていますが、今回のカンバーランドもこのジョン・クラインと同様、平らで、薄い岩脈が入っており、さらに表面はでこぼことしています。また、両方とも、「イエローナイフ・ベイ(湾)」と名付けられた、浅い岩の窪みの中に位置しています。
これだけ似ているにもかかわらず、カンバーランドの方はジョン・クラインに比べると浸食に耐えているようで、表面のでこぼこは、その浸食に耐えた結果残ったもののようです。このでこぼこはれきか、あるいは鉱物の固まりの可能性があり、遠い昔、この岩が水に浸っていたときにできたものである可能性があります。そのため、この「でこぼこ」からサンプルを採取できれば、カンバーランド、さらには同じ環境でできたと思えるジョン・クラインの生成環境について、より多くの情報を得ることができると期待されます。
今回の2回目の掘削は、1回目の掘削の結果をさらに確かめるためのものでもあり、特に、ジョン・クラインから採取されたサンプルが、掘削する前に得られた砂のサンプルよりも酸化の度合いが低かったという点を確実に確認したいということがあります。
今回の決定に先立ち、NASAジェット推進研究所(JPL)の技術者たちは、4週間の中断をはさんでキュリオシティの操作用ソフトウェアのアップグレードを実施しています。この中断の間も火星大気のモニターはずっと続けてきていますが、この期間、火星が地球からみて太陽の反対側にあり、地球からコマンドを送信しても火星に届かない可能性が高いため、しばらくの間コマンド送信などの作業を中断していたのです。
キュリオシティは現時点で火星での活動期間が(地球時間で)9ヶ月で、目標としている1火星年(約2年)の半分近くを消化しています。今回の岩石掘削終了後は、着陸場所であるゲール・クレーターの近くにある山、シャープ山の麓へと向かう予定です。
キュリオシティの長期計画担当で、カリフォルニア大学デービス校のドーン・サムナー氏は、「サンプルには、以前採取したサンプルからの混入(コンタミネーション)がつきものである。今回類似した岩からのサンプルを採取することにより、以前のサンプルからのコンタミネーションの影響を最小限にすることができ、より精度の高い結果を得ることができる。」と述べています。
- NASAのプレスリリース [英語] http://www.nasa.gov/home/hqnews/2013/may/HQ_13-136_Curiosity_Second_Mars_Sample.html
- マーズ・サイエンス・ラボラトリー (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/mars/exploration/MSL/ - マーズ・サイエンス・ラボラトリー (月探査情報ステーション)