火星上で約4年にわたって動き続けているマーズ・リコネサンス・オービター(MRO)は、その解像度1メートルにも達する強力なカメラが売り物となっています。このたび、このカメラ(HiRISE: ハイライズ)の撮影地点を一般の人から募集し、可能であれば撮影するという試みが始まりました。
このハイライズ、既に13000以上もの観測データを取得しています。撮影できる領域は数十平方キロくらいです。アリゾナ大学の研究者で、このハイライズの主任研究者でもあるアルフレッド・マキューエン氏は、「ハイライズのチームは、一般の方からの撮影場所提案を喜んで受け付ける。そして、火星のみてみたい場所を人間のスケールでみられるというこの上もないチャンスをみんなと分かち合いたい。」と述べています。
実なこのアイディア、ハイライズが開発された当初からありました。そもそもこのハイライズのニックネーム自体、「人々のカメラ」(The People’s Camera)だったのです。カメラチームとしては、より多くの人が火星探査に興味を持ち、既に十分すぎるほど上がっている火星探査の科学的な成果をさらに増やすということを期待しています。実際、これまでに数千枚の写真が撮影されているにもかかわらず、解像度が高い(つまり、一度に撮影できる領域は狭い)こともあり、ハイライズがカバーした領域は、火星表面全体の1パーセントにも達していません。
また、学生や研究者、そしてすべての人が、新たなオンラインツールを使って、これまで得られた火星表面の画像を見ることができるようになっています。このツールを使って、提案したい場所がどのような場所なのか、そして既に提案されていないかどうかを知ることもできます。
ハイライズチームでこのシステムのプログラムを行っているアリゾナ大学のガイ・マッカーサー氏は、こう語っています。「やり方はすごく簡単だ。このツールを使って、火星の表面、どこでも好きな場所に四角を描けばよい。」
この、マッカーサー氏が開発したシステムは「ハイウィッシュ」 (HiWish)と名付けられ、開発にはNASAエームズ研究センターの主任研究者・科学者のロス・ベイヤー氏や、カリフォルニア州にあるSETI研究所も加わっています。
このハイウィッシュでは、単に地図上で場所を決めるだけではなく、場所を提案した人が、その観測の名前、科学的な観点からの利益、さらにはカメラチームが掲げている18の科学テーマへの関連づけもできるようになっています。この18のテーマには、衝突過程(クレーター形成)の研究や火星の季節変化、火山地形の研究などが含まれています。
この提案をハイライズチームが審査し、優先度の高いものから順に撮影を行っていくことになります。既に数千も集まっているこれらの提案に基づく撮像は、探査機の軌道が撮影に適しているときに順次実施されることになります。
NASAのジェット推進研究所に所属し、MROのプロジェクト科学者でもあるリッチ・ズーレック氏は、「今回の試みで、学生をはじめとする多くの人たちに、現在進行形の火星探査に参加するチャンスができることになる。」と語っています。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2010/jan/HQ_10-014_MRO.html
・HiWishのページ (英語)
  http://www.uahirise.org/suggest/
・マーズ・リコネサンス・オービター (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/MRO/