日本の火星衛星探査機MMXの打ち上げが、予定されている2024年(来年)から2年遅れて2026年になるという報道が出ています。

MMXと火星

火星を背景にして飛行するMMX探査機の想像図 (© JAXA)

MMXは、火星の衛星フォボスで表面の物質のサンプル採取を行うとともに、もう一つの衛星デイモス(ダイモス)、そして火星本体の探査も目指す計画です。サンプルは地球に持ち帰られ、分析に供されます。サンプル採取に成功すれば、フォボスからのサンプル採取は世界初となります。

今回の打ち上げ延期報道の原因は、打ち上げに使用するH3ロケットの開発難航によるものです。
ご存知の通り、H3ロケットは1号機が今年3月に打ち上げられましたが、第2段が点火せず、上空で指令破壊されました。
原因の調査も進み、失敗の原因もかなり絞り込まれてきました。JAXAは今年度中に2号機の打ち上げを目指す意向ですが、具体的な日付などはまだ公表されていません。

H3は実は打ち上げ予定がぎゅうぎゅうに詰まっています。そもそも打ち上げに成功したとしても、準天頂衛星や情報収集衛星の打ち上げ予定がずらりと並んでいます。すべてを予定通りに、あるいは最小限の遅れで済ませるとなると、かなりの頻度でH3ロケットを打ち上げる必要が出てきます。

一方、火星探査機の打ち上げチャンスは、約2年に1回と限られます。
これは地球と火星との位置関係のためなのですが、この理由により、もし延期になると一気に2年先の2026年を目指さざるを得ないのです。

それでは、例えば既存のロケット…H-IIAなどを使えないか、という考え方もありそうですが、すでにMMX自体がH3ロケットでの打ち上げを前提に開発されているため、他のロケットでの開発となるとその分の修正が必要になり、結局時間と費用がさらにかかることになります。
そもそもH-IIA自体すでに開発終了となっている(2024年度の打ち上げで運用終了)となるため、新たに作るということも難しいと思われます。
海外のロケットでの打ち上げについても同じような問題が出るほか、輸送費なども新たにかかり、さらに輸送に伴うスケジュールなどの調整も必要になります。
打ち上げまで1年という状況では、これらを行うとするとかなりきつい状況になります。

JAXAとしての優先度を考えた場合、おそらく最優先とされているのは、次期基幹ロケットであるH3の安定した打ち上げであり、2026年度への延期が「一応」可能なMMXはおそらく優先度として下がらざるを得ないかと思われます。
そもそもロケットがなければ火星には行けません。そして、安定したロケットがなければ安定した探査もできません。
私が考えているような代替策はおそらくJAXA及び関係者ではすべて検討し、その上でのこの選択肢かと思います。もちろん、この報道が正しければ、ということですが。

なお、今回の情報は、12月後半に来年度予算の内示があることなどが関係しているのかも知れません。

いずれにせよ、JAXAは現時点でMMXの打ち上げ延期について何も情報を発表していません。これは先日のSLIM着陸日と同様で、報道が先行している形です。あくまでもそういう情報があるということで参考程度に捉えておき、正式発表を待つという姿勢が重要かと思います。