エクソマーズの打ち上げが近づいていますが、本来今年は2機の火星探査機が打ち上がる予定でした。そのもう1機は、NASAの火星探査機「インサイト」です。
打ち上げは2018年3月…つまり、今月に設定されていましたが、搭載機器のトラブルにより、延期となっておりました。NASAは9日、インサイトの打ち上げを2018年5月に再設定すると発表しました。
新しい予定では、打ち上げは2018年の5月5日(正確には打ち上げウィンドウがこの日から開始)となり、この日に打ち上がった場合、到着は同年の11月26日になるとのことです。

インサイト想像図

火星探査機インサイトの想像図 (Photo: NASA)

インサイトは、火星の内部構造を探ることを目的にしたはじめての探査機です。これまで、バイキング探査機には地震計が積まれ、火星の地震を調べることで内部を調べようとしましたが、データが十分に集まらず、結局うまく行きませんでした。
インサイトでは、地震計のほか、地下から流れ出してくる熱を量る熱流量計なども備え、火星の地下構造を本格的に明らかにすることを目指しています。

ところが、打ち上げ延期は、この地震計が問題となったのでした。搭載される地震計の内部を真空に保つための密封(シール)が、本来の打ち上げ直前の12月21日に行われた試験で破損するという問題が発生し、打ち上げまでに問題を解決するめどが立たなくなってしまったためです。
この地震計の開発はフランス国立宇宙研究センター(CNES)が行っており、原因究明もCNESが実施しました。探査機開発を行っているジェット推進研究所(JPL)はその作業を支援し、緊密な協力関係で原因究明に当たっています。そして、両者は今後6ヶ月で中間的な原因究明のリポートを出し、進展状況や解決方法について報告するとしています。
以上のようなスケジュールにより、両者は2018年の打ち上げが可能と判断しています。

なお、打ち上げが2年延期となったために新たに必要となる費用についてはまだ見積もりができておらず、8月をめどにこの見積もりが出されるとのことです。これは、(新たな)打ち上げロケット提供業者が決定してからとなるためです。

以前の記事でも書きましたが、この地震計(SEIS:、内部構造解明用火星地震計)は大変精密な環境で動作する必要があり、NASAのプレスリリースでは、「水素原子の半径の半分くらいの地表の動き(編集長注: 水素原子の半径は53ピコメートル…0.053ナノメートルという、極めて小さいものです)を捉えられるとのことです。当然空気、あるいは火星大気などが入ってしまったら性能が発揮できないわけで、極めて高度な真空に地震計内部を保つ必要があります。そのためにシール機構が必要となるわけです。
このため、試験はかなり厳密な手順を必要とし、全体試験は2017年に再実施されます。

CNESのトゥールーズ宇宙センターのマーク・ピルヒャーセンター長は、「共同の、そして新たになった協力の責任は、火星中心部を調べることで、火星の誕生初期の謎の存在を明らかにすることへと続いていく。」と述べています。

一方NASA側は、NASAの科学ミッション部門長のジョン・グランスフェルド氏が、「インサイトの科学的な目標は非常に重要なものであり、NASAとCNESによるこの目標の達成は問題なく進められる。火星の内部を探査するというこのミッションの目標は、長年科学者が抱いてきた目標でもあった。打ち上げは2018年となったが、打ち上げに向けての行程にまた戻ることができたことを非常にうれしく思う。」と語っています。

非常に精密な機器の故障、打ち上げ延期という大きな代償を伴う決定、そして複数機関の協力といういくつもの困難な条件を(一応)クリアして、打ち上げを再設定できたという点で、私たちとしてはほっとすべきところでしょう。ただ問題は、地震計の問題の解決のめどがまだ完全には経っていないということです。それによっては数カ月後にまた「再設定」が行われるかも知れません。
一応、ここまで自信を持って発表したのであれば、おそらく解決のめどがある程度立っているのだろうと考えて、期待していくことにしましょう。