ヨーロッパとロシア共同の火星探査「エクソマーズ」の火星到着が近づいてきました。
今週になって、着陸実証機「スキアパレッリ」の降下・着陸に関する指令(コマンド)が、探査機に送信されました。あとは切り離されて、コマンド通りに降下・着陸してくれることを祈るのみです。
スキアパレッリは周回機「微量ガス探査周回機」(TGO)にくっついた形で火星に向かっていますので、このコマンド送信はTGOのチームが実行しました。

エクソマーズの火星到着に向けてのシミュレーションを行う管制チーム

エクソマーズの火星到着に向けてのシミュレーションを行う管制チーム。ドイツ・ダルムシュタットにあるヨーロッパ宇宙運用センター(ESOC)にて。(© ESA)

火星とは電波でのやり取りに数十分かかってしまいますので、地球から直接周回機やスキアパレッリにコマンドを送って「ああしろ」「こうしろ」というわけにはいきません。ですので、あらかじめ探査機にコマンドを送り、当日はその通りに探査機にコマンドを実行してもらう必要があるわけです。
すべてのコマンドは時間が決まっており、そこから1秒、いや、0.01秒遅れても探査機には致命的になります。
また、着陸機は着陸後しばらくはスリープ状態となりますが、そこからの回復もあらかじめ送信された指令に沿って行われます。
今回送られたコマンド群は2つに大きくわけられます。1つはスキアパレッリ自身、及び搭載している科学機器の起動(休眠からの目覚め=ハイバネーション)を行うもので、これは3日に送られました。もう1つは残りの動作を制御するもので、こちらは7日に送られています。

火星表面に着陸したスキアパレッリの想像図

火星表面に着陸したスキアパレッリの想像図 (© ESA/ATG medialab)

TGOの飛行管制担当者のマイケル・デニス氏は、「コマンドを送信することは、探査にとっての重要な通過点になる。ミッションコントロールチームと探査機製造者との緊密な連携により、ここまでやってくることができた。」と語っています。

スキアパレッリの着陸は、ヨーロッパ中央標準時で19日の午後4時48分11秒(日本時間では午後11時48分11秒)が予定されています。時間が固まったので、それに向けてコマンドを順次カウントダウン、あるいはカウントアップ(予定に合わせて実施する)していくことになります。

着陸の途中では、こういったコマンドにより、探査機の前面・後面のシールドの分離や、パラシュートの展開・分離、3つのヒドラジンで稼働するスラスターによる減速など、一連の動作が実施されます。
スキアパレッリの高さを測定するのはレーダーで、上空7キロ付近から稼働を開始、地上ちょっと上の2メートルの高さまで稼働し続けます。そして最後は「ドスン」と落下して地面へと到達するというわけです。

無事着陸できれば、今度は科学機器の準備に入ります。これには最低で2日、おそらくはもう少し長くかかるかと思います。辛抱強く待つことが必要です。
スキアパレッリは直径2メートルくらいと非常に小さいので、搭載できる電源なども限られています(バッテリーで駆動します)。そのため、稼働時間は1日6時間となる予定です。

スキアパレッリからの科学データは、火星上空を飛行する数多くの探査機…NASAのマーズ・リコネサンス・オービター2001マーズ・オデッセイメイバン、及びヨーロッパのマーズ・エクスプレスなどによって中継されて地球に届きます。
打ち上げから半年とちょっと。いよいよ、そのときが近づいてきました。

  • ESAのページ